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2010.10.28 「ノース・キャロライナ・ステイト・ユニヴァーシティ v. 特許庁長官」 知財高裁平成22年(行ケ)10050

公知タンパク質をコードするDNAの進歩性: 知財高裁平成22年(行ケ)10050

【背景】

「バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus Licheniformis)PWD-1 のケラチナーゼをコードしているDNA」に関する出願(平成8年特許願第500873号、WO95/33056、特表平10-500863)の拒絶審決(不服2006-10472)取消訴訟。

請求項1:

「配列番号1のDNA配列を持ち,ケラチナーゼをコードしている単離DNA分子。」

特許庁は、「引用例」に記載された事項及び周知技術に基づいて進歩性なしと審決した。引用例に記載された事項は、精製された該ケラチナーゼが記載されているに過ぎず、該ケラチナーゼをコードしているDNA分子については記載されていなかった。

【要旨】

裁判所は、

「本願優先権主張日当時,有用なタンパク質が単離・精製された場合に,該タンパク質をコードするDNA分子を取得しようとすることは,当業者にとって自然の解決課題であり,タンパク質が単離・精製された場合,そのN末端領域や中間部分のアミノ酸配列を決定し,当該配列情報に基づいてプローブやプライマーを設計し,由来生物のcDNAライブラリーから当該タンパク質をコードするDNA分子を単離し,当該遺伝子の塩基配列を解読することが当業者の周知技術であったことは,当事者間において争いがない。
そして,~引用例には,ケラチナーゼの精製において単一のタンパク質が得られたこと,上記ケラチナーゼが各種プロテアーゼに比べてケラチンをより分解することが開示されていることが認められる。そうすると,当業者にとって,実用性の予測が可能であったか否かはともかく,より分解能力の高いケラチナーゼを得るべく,Bacillus Licheniformis PWD-1 株由来のケラチナーゼをコードするDNA分子を取得しようとする動機付けがあったと認められる。
(中略)
したがって,引用例記載のケラチナーゼに,前記周知技術を適用することにより,Bacillus Licheniformis PWD-1 株由来のケラチナーゼをコードするDNA分子を得ることは,当業者が容易になし得たといえる。
(中略)
ケラチナーゼをコードするDNA分子をクローニングすれば,該ケラチナーゼが高収率で得られることは,その当然の結果にすぎず,そのような作用効果が認められるからといって,顕著な作用であるとはいえない。」

と判断した。

請求棄却。

【コメント】

現在の周知技術を考えれば、公知タンパク質をコードするDNAの発明について進歩性を認めてもらうのは非常に難しいだろう。

参考:

特許・実用新案審査基準 第Ⅶ部 第2章 生物関連発明には下記のように記載されている。

1.3.3 進歩性
(1) 遺伝子
②タンパク質Aは公知であるが、そのアミノ酸配列は公知ではない場合、タンパク質Aをコードする遺伝子に係る発明は、タンパク質Aのアミノ酸配列を出願時に当業者が容易に決定することができた場合には進歩性を有しない。ただし、該遺伝子が、特定の塩基配列で記載されており、かつ、タンパク質Aをコードする他の塩基配列を有する遺伝子に比較して、当業者が予測できない有利な効果を奏する場合には、進歩性を有する。

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