スポンサーリンク

2021.08.31 「沢井製薬 v. 旭化成ファーマ」 知財高裁令和2年(行ケ)10056 骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判②

・・・特許6043008の進歩性を認めた審決を取り消す。

>①から続く

前回記事「骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判①」

2021.08.31 「旭化成ファーマ v. 沢井製薬」 知財高裁令和2年(行ケ)10004 骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判①
・・・予測をすることができなかった顕著な効果を奏するものであると認めることはできない。特許6274634は進歩性なしと判断された。1.はじめに旭化成ファーマ(株)は、ヒト副甲状腺ホルモン(PTH)の活性部分であるN端側の1-34ペプチド断片であるテリパラチド(Teriparatide)酢酸塩を有効成分とする週1回皮下投与の骨粗鬆症治療剤「テリボン®皮下注用56.5μg」を製造販売してい...
スポンサーリンク

1.はじめに

旭化成ファーマが製造販売する週1回皮下投与の骨粗鬆症治療剤「テリボン®皮下注用56.5μg」のジェネリック参入障壁となっていると考えられるのが、テリパラチドの週1回投与を特徴とする発明に係る7つの特許(存続期間満了は2030年9月8日)である(表1)。いずれの特許に対してもジェネリックメーカーが無効審判を請求し、それらいずれの事件も審決の取消しを求めて知財高裁での訴訟にまで発展した(表2)。最近になり、それら判決が次々と出てきている。

本記事では、特許第6274634号についての前回記事(2021.08.31 「旭化成ファーマ v. 沢井製薬」 知財高裁令和2年(行ケ)10004 骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判①)に続いて、特許第6043008号の無効審判請求事件を判断した知財高裁判決(知財高裁令和2年(行ケ)10056)について紹介する。この事件は、旭化成ファーマの7つの特許の無効審判請求のうち、特許発明の進歩性を認めた審決の取消しを求めて沢井製薬が提訴したものである。

表1 テリパラチド酢酸塩を有効成分とする骨粗鬆症治療剤ないし予防剤に関する特許権7件の請求項1
表2 テリパラチド酢酸塩を有効成分とする骨粗鬆症治療剤ないし予防剤に関する特許権7件の係争状況
スポンサーリンク

2.背景

本件(知財高裁令和2年(行ケ)10056)は、旭化成ファーマ(被告)が特許権の設定登録を受けた発明の名称を「1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする,PTH含有骨粗鬆症治療/予防剤」とする特許第6043008号に対して沢井製薬(原告)がした無効審判請求(無効2018-800064号事件)を請求不成立とした審決の取消訴訟である。争点は、進歩性に関する判断の誤りの有無である。

本件発明1(訂正後請求項1):

1回当たり200単位のヒトPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする,ヒトPTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する,骨粗鬆症治療剤ないし予防剤であって,下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者を対象とする,骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤ないし予防剤;
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4)クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minである中等度腎機能障害を有する。
本件発明1甲7発明一致点/相違点
11回当たり200単位のヒトPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする,ヒトPTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する,骨粗鬆症治療剤ないし予防剤であって,1回当たり200単位のヒトPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする,ヒトPTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する,骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,一致
2下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者を対象とする,
・・・
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4)クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minである腎機能障害を有する。
厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された,年齢範囲が45歳から95歳の被検者のうち,複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し,スコアの合計が4以上の場合の患者であって,2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNによって示される腎機能が低下している患者は除外された患者を対象とする,相違点1
3骨折抑制のための(そのような特定がない)相違点2
4骨粗鬆症治療剤ないし予防剤骨粗鬆症治療剤ないし予防剤一致
表3 本件発明1と甲7発明との一致点及び相違点

本件審決は、

これらの文献の記載から、hPTH(1-34)の体内での分解・排泄が早く、軽度~中等度腎機能障害者に投与しても安全性の高い薬物であることまでは認められるが、他方、これらのいずれの文献にも、甲7発明の骨粗鬆症治療剤を、上記(1)~(3)の三条件を全て満たし、かつ、クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minである中等度腎機能障害を有する者を選んで投与することなどは記載されておらず、また、そのような4つの条件を全て満たす患者において、上述(b)の顕著な骨折抑制効果が期待されることなどを当業者は予測し得なかったと認められる。

そして、請求人が、本件特許発明の特許要件判断の基準日当時の技術常識として示す他のいずれの甲号証をみても、甲7発明の骨粗鬆症治療剤を投与したときに、これらの4つの条件を全て満たす骨粗鬆症患者において、上述の顕著な骨折抑制効果が発揮されることを示唆する文献などはない。

よって、甲号証、及び、合議体が引用する引用文献のいずれを組み合わせてみても、上記(1)~(3)の三条件を全て満たし、かつ、クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minである中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群に、200単位のhPTH(1-34)を週1回投与したときに、当該四条件の非充足患者よりも顕著に優れた骨折抑制効果が発揮されることを、当業者が予測し得たものであったとすることなどはできないから、相違点1に係る、当該4つの条件を満たす患者群に甲7発明の治療剤を投与することを、本件特許発明の特許要件判断の基準日において、当業者が容易に想到し得たとは認めることができない。

・・・述べたとおり、相違点1に係る患者群に甲7発明の治療剤を投与することを当業者が容易に想到し得たとはいえないのであるから、本件特許発明1は、相違点2について検討するまでもなく、進歩性を有するものである。

と判断した。

スポンサーリンク

3.裁判所の判断

裁判所は、相違点1が容易に想到できないと認定した本件審決の判断には誤りがあるから、相違点2について検討するまでもなく本件発明1の進歩性を認めた本件審決の判断に誤りがあり、進歩性に関する判断の誤りについての取消事由には理由があるから、その他について判断するまでもなく、本件審決を取り消した。

(1)相違点1の容易想到性について

本件条件(1)、(2)及び(3)(以下、「本件3条件」という。)について、裁判所は、

骨粗鬆症は,加齢とともに発生が増加するとの技術常識があり,高齢者は加齢を重ねた者であるのは明らかであるところ,高齢者を65歳以上の者とすることは常識的なことであり,・・・したがって,これらを参酌し,骨粗鬆症による骨折の複数の危険因子として,低骨密度及び既存骨折に並んで年齢が掲げられていることに着目して投与する骨粗鬆症患者を65歳以上として,本件条件(2)及び本件条件(3)に加えて本件条件(1)のように設定することはごく自然な選択であって,何ら困難を要しない。

として、甲7発明に接した当業者が、投与対象患者を本件3条件を全て満たす患者と特定することは、当業者に格別の困難を要することではない、と判断した。

そして、本件条件(4)についても、裁判所は、

骨粗鬆症と腎機能障害の罹患率はいずれも加齢とともに増加することや,大規模な疫学研究では骨粗鬆症女性の85%が軽度から中等度の腎機能障害を有していたことが知られていたから・・・,重度の腎機能障害患者を除くと明記された甲7文献の記載に接した当業者であれば,甲7発明の投与対象患者に軽度又は中等度の腎機能障害を有する患者が相当程度含まれていると認識することは明らかといえる。さらに,・・・骨粗鬆症治療薬についても腎機能障害を有する患者における安全性の確認が求められていたことが明らかであるから,甲7発明に接した当業者が,投与対象患者の腎機能に着目することは,当業者が当然に行うべきこととして格別なものではない。・・・そして,・・・甲7発明の投与対象患者の中から,腎機能障害の程度をクレアチニンクリアランスの値で表して,「30以上50未満ml/min」の者を「中等度」としてその投与対象とすることは,当業者であれば何ら困難を要しないものである。

として、甲7発明の骨粗鬆症治療剤の投与対象患者を本件条件(4)を満たす者とすることは、当業者にとって格別困難を要することとはいえない、と判断した。

被告は、本件4条件を一体として、その技術的意義が判断されなければならない等主張したが、裁判所は、

本件3条件と本件条件(4)とはその目的を異にする独立の条件であると理解するのが相当であるし,・・・本件基準日における技術常識に照らせば,甲7発明に接した当業者が投与対象患者をこれらの条件を全て満たす患者とすることに格別の困難はないところ,本件3条件の組み合わせが客観的観点からその選択において格別なものである,あるいは,他の骨折リスク因子等も含めた様々な組み合わせが想定される中で,本件3条件を組み合わせること自体に特別の意味合いがあると認めるに足りる証拠はない(被告が主張する層別解析は,後述するように,あくまで本件3条件の全てを満たす患者(高リスク患者)のグループと,本件3条件の全部又は一部を満たさない患者(低リスク患者)のグループのうちごく一部のグループとを比較するものにすぎず,また,その結果自体も被告主張の顕著な効果が認められると即断できるものではない。)。

として、上記被告主張は採用することができない、と判断した。

(2)効果について

裁判所は、発明の効果が予測できない顕著なものであるかについて最高裁判決を引用したうえで、その判断に際して引用発明の奏する効果や技術水準において達成されていた同種の効果を参酌することは許されると解した。

発明の効果が予測できない顕著なものであるかについては,当該発明の特許要件判断の基準日当時,当該発明の構成が奏するものとして当業者が予測することのできなかったものか否か,当該構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点から検討する必要がある(最高裁判所平成30年(行ヒ)第69号令和元年8月27日第三小法廷判決・集民262号51頁参照)。もっとも,当該発明の構成のみから予測できない顕著な効果が認められるか否かを判断することは困難であるから,当該発明の構成に近い構成を有するものとして選択された引用発明の奏する効果や技術水準において達成されていた同種の効果を参酌することは許されると解される。

裁判所は、本件発明1の構成は容易想到であると判断したわけであるが、これに対し、被告は、本件発明1は、当業者が予測をすることができなかった以下のような顕著な効果を奏するものである旨主張した。

  • 本件3条件を全て満たす患者に対する顕著な骨折抑制効果・・・効果①
  • 本件条件(4)を満たす患者に対する副作用発現率と血清カルシウムに関する安全性が腎機能が正常である患者と同等であるという効果・・・効果②
  • BMD増加率が低くてもより低い骨折相対リスクが得られるとの効果・・・効果③

しかし、裁判所は、これらの効果について検討しても、本件発明が、当業者が予測をすることができなかった顕著な効果を奏するものであると認めることはできないと判断した。

以下に、効果①②③についての裁判所の判断を抜粋する。

ア 効果①について

効果①を確認するためには,高リスク患者に対する骨折抑制効果と低リスク患者に対する骨折抑制効果とを対比する必要があるが,・・・実施例 1 をみても,高リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果が,低リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いということを理解することはできず,さらに,本件明細書のその他の部分をみても,高リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果が,低リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いということを理解することはできず,ましてや,200単位週1回投与群に関し,高リスク患者における骨折発生抑制が,低リスク患者における骨折発生抑制よりも優れていると結論付けることはできない。以上によれば,効果①は,本件明細書の記載に基づかないものというべきである。

被告は,効果①を明らかにするものとして,甲99証明書及び甲105証明書を提出する。

しかしながら,本件明細書の記載から,高リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果が,低リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いということを理解することができず,また,これを推認することもできない以上,効果①は対外的に開示されていないものであるから,上記各実験成績証明書を採用して,効果①を認めることは相当ではない

仮に,上記各実験成績証明書を参酌するにしても,本件3条件の全てを満たす患者(高リスク患者)のグループと,本件3条件の全部又は一部を満たさない患者(低リスク患者)のグループのうちごく一部のグループとを比較しているものにすぎないから,本件3条件の効果が明らかになっているとはいえない

・・・

以上によれば,いずれにしても効果①を認めることはできないから,その他の点について判断するまでもなく,効果①を予測することのできない顕著な効果という余地はない。

イ 効果②について

甲10文献の記載によると,PTH製剤であるテリパラチドの20μg又は40μgの連日投与について,PTHによる腎臓に関連する有害事象の発生率は,腎機能が正常,軽度障害,中等度障害のサブグループのいずれでも一貫しており,また,軽度から中等度の腎機能障害者と健常被験者の間には,あらゆる薬物動態パラメータに有意な差がないことが知られており,薬物動態パラメータは,薬物の薬理効果や有害反応の発現強度の指標であるといえるから,PTHに関して軽度又は中等度の腎機能障害を有する者と腎機能が正常である者との間には,薬物の有害反応の発現強度も異ならないものと理解できる。

また,被告は,甲7文献では,腎機能正常者と腎機能障害者との間での比較は行われておらず,腎機能障害者においてPTH200単位週1回投与の際の安全性は不明であった旨主張するが,・・・当業者であれば,・・・PTH200単位の投与についても,軽度又は中等度の腎機能障害者における安全性と,腎機能正常者における安全性とは同程度であると予想するものと解され,甲7文献において腎機能正常者と腎機能障害者での比較が行われていないことは,この予想を何ら左右しない。そうすると,効果②は,甲7発明と用量・用法・有効成分等が同じである本件発明の構成から当業者が予測し得る範囲内のものというべきである。

ウ 効果③について

本件明細書には,PTHの連日投与から想定されるBMD増加率と骨折相対リスクとの関係を記載した部分は見当たらず,上記主張は,明細書に記載されていない効果を主張するものであって失当というほかない。

スポンサーリンク

4.コメント

(1)判決内容は、令和2年(行ケ)10004とほとんど同じ

本事件で争われた特許6043008は元をたどると特願2011-530844(出願日2010年9月8日; 再表2011/030774; WO2011/030774)を原出願とするものであり、テリパラチドの週1回投与を特徴とする発明に係る7つの特許により構成される特許ファミリーのうちのひとつである。

本件判決内容は、同特許ファミリーのひとつであり前回記事で紹介した特許6274634について争われた事件の知財高裁判決の内容(進歩性なしの無効審決判断を支持)とほぼ共通するため、コメントについては同記事を参照してほしい(2021.08.31 「旭化成ファーマ v. 沢井製薬」 知財高裁令和2年(行ケ)10004 骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判①)。コメントの主な点は以下のとおり。

(1)旭化成ファーマの敗因

(2)効果の程度についての判断に参酌できる観点

(3)進歩性のための明細書記載要件

(2)特許庁は進歩性を認めていた

発明の構成がほとんど同じである特許6274634について争われた前回紹介事件(2021.08.31 「旭化成ファーマ v. 沢井製薬」 知財高裁令和2年(行ケ)10004 骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判①)では進歩性なしの無効審決であった(無効2018-800076号)。

しかし、本事件において、特許庁は、本件発明1について進歩性を認める判断をしていた(無効2018-800064号)。特に、特許庁は、本件特許発明1は顕著に優れた効果を奏することを認め、効果の評価において実験成績書の参酌も適切であると判断していた。別特許とはいえほぼ同じ構成である発明・同じ引用文献・技術常識による進歩性判断において、特許庁(審判合議体メンバーは同じである。)が上記事件と真逆の判断をするに至らしめた決め手は何だったのだろうか・・・。前記特許6274634号の進歩性なしの無効審決(2019年12月)の後を境に他の6つの事件(本事件含む。)に係るそれぞれの特許については全て進歩性を認める請求不成立審決を出し続けることになる(表2)。

審決取消訴訟において、原告(沢井製薬)の主張が功を奏して、知財高裁は、低リスク患者において有意差がなかったとの結論が、少ない症例数をもとに導かれたものである(症例数が不足していることによることを否定できない)ことを見抜き、高リスク患者に対する効果が低リスク患者に対する効果よりも高いということを理解することはできない⇒効果が優れていると結論付けることはできない⇒効果は本件明細書の記載に基づかない⇒後出しデータの参酌も許されない、と一気に審決を取り消す判断に傾いた。

重要なのは、「何」と比較して「予測できない顕著な効果」なのかということに加えて、さらに、当然のことではあるのだが、その比較して差がある(本件では有意差がある。)というための試験設定(例えば例数)が妥当でなければ、その比較試験自体は成り立たないものとなり、「予測できない顕著な効果」であるかどうか理解することができないものとなってしまうことである。特許庁の判断はこの点について厳格さを欠いていたのかもしれない。

(3)主張立証責任を負う出願人は比較試験の妥当性を慎重に検討すべき

とはいえ、技術分野によっては「予測できない顕著な効果」の程度が適切な比較対象との間で明らかに認められることを当業者の技術常識等から合理的に導けるのであれば、効果の程度についての判断において、比較対象との間での統計学的に有意な差の有無や必要なサンプル数といった厳密さまでも必要とされるとは思えない。逆に、臨床試験となれば、定められたガイドライン等に従った統計手法の下で厳密に評価されていることが原則であろう。「予測できない顕著な効果」の程度を比較する試験の妥当性は技術常識を踏まえたケースバイケースの判断となるのではないだろうか。

しかし、予測できない顕著な効果の主張立証責任は、進歩性を肯定する側が負っているものと解される。だからこそ、予測できない顕著な効果の主張立証責任を負っていると解される出願人は、主張しようとする比較による差が妥当かどうかを注意深く検討したうえで明細書に記載する必要があるだろう。

参考:

上記のとおり,主引用発明に副引用発明を適用することにより本願発明を容易に発明をすることができたかどうかを判断する場合には,①主引用発明又は副引用発明の内容中の示唆,技術分野の関連性,課題や作用・機能の共通性等を総合的に考慮して,主引用発明に副引用発明を適用して本願発明に至る動機付けがあるかどうかを判断するとともに,②適用を阻害する要因の有無,予測できない顕著な効果の有無等を併せ考慮して判断することとなる。特許無効審判の審決に対する取消訴訟においては,上記①については,特許の無効を主張する者(特許拒絶査定不服審判の審決に対する取消訴訟及び特許異議の申立てに係る取消決定に対する取消訴訟においては,特許庁長官)が,上記②については,特許権者(特許拒絶査定不服審判の審決に対する取消訴訟においては,特許出願人)が,それぞれそれらがあることを基礎付ける事実を主張,立証する必要があるものということができる。

– 知財高裁大合議判決 知財高裁平成28年(行ケ)10182; 10184より

スポンサーリンク

5.おわりに

「1.はじめに」でも言及したが、テリパラチド酢酸塩を有効成分とする週1回皮下投与の骨粗鬆症治療剤「テリボン®皮下注用56.5μg」のジェネリック参入の障壁となっていると考えられる7つの特許に対する無効審判請求事件の知財高裁判決が次々と出てくると見込まれている。

本記事では、それら事件のうちのひとつである特許第6043008号の無効審判請求事件を判断した知財高裁判決について紹介したが、同日に以下の同ファミリー特許についての判決も出されている(いずれも旭化成ファーマの敗訴)。

テリボン®は旭化成ファーマの主力品である。本件発明の進歩性を認めた審決を取消した今回の知財高裁判決は、まだ判決が出されていない他のファミリー特許に対して極めて大きなインパクトを与えることになりそうである。審決が取り消されたことで差戻される特許庁での審理がどうなるか見守りたい。

>③に続く

次回記事「骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判③」

コメント

スポンサーリンク