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疼痛治療剤リリカ®(プレガバリン)の後発医薬品の特許権侵害訴訟で控訴審(知財高裁)判決出揃う 全ての「痛み」の用途特許は無効、特許権侵害認めず・・・4つの部で本件訂正が新規事項追加か否かへの向き合い方に違い

発明の名称を「イソブチルGABAまたはその誘導体を含有する鎮痛剤」とする特許第3693258号に係る特許権者であるワーナー-ランバートが、効能・効果を「神経障害性疼痛・線維筋痛症に伴う疼痛」とする先発医薬品リリカ®の後発医薬品を販売するなどする行為はいずれも特許権を侵害すると主張し、後発医薬品メーカーらに対し、その後発医薬品の製造、販売等の差止め及び廃棄を求めた特許権侵害差止請求控訴事件。

先発医薬品リリカ®(カプセル・OD錠)は、プレガバリンを有効成分とし、「神経障害性疼痛・線維筋痛症に伴う疼痛」を効能・効果とする。

本件特許権に係る専用実施権者であるファイザーが販売し、2019年度には国内売上が1000億円を超える大型製品となっていた(2021年9月にファイザーからヴィアトリス製薬へ製造販売移管)。

本件特許第3693258号は、20年の存続期間満了日が2017年7月16日であったところ、特許存続期間の延長が登録され、最長満了日は2022年7月16日となっており、その延長された特許権がリリカ®の後発医薬品参入に対抗する最後の砦となっていた。

しかし、2020年8月17日、リリカ®の後発医薬品(被告医薬品含む22社80品目!)が初承認となり、同年12月11日には各後発医薬品メーカーが一斉に後発医薬品を販売するに至った。

請求項訂正前訂正後
1(本件発明1/訂正前発明1)
式I(省略)(式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する痛みの処置における鎮痛剤。
(本件訂正後発明1)
式I(省略)(式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤。
2(本件発明2/訂正前発明2)
化合物が,式IにおいてR3およびR2はいずれも水素であり,R1は-(CH20-2-iC49である化合物の(R),(S),または(R,S)異性体である請求項1記載の鎮痛剤。
(本件訂正後発明2)
式I (省略)(式中,3およびR2はいずれも水素であり,R1は-(CH20-2-iC49である)の化合物の(R),(S),または(R,S)異性体を含有する,神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤。
3(本件訂正前発明3)
化合物が,(S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸または3-アミノメチル-5-メチルヘキサン酸である請求項1記載の鎮痛剤。
(本件発明3)
S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸または3-アミノメチル-5-メチルヘキサン酸を含有する,炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みの処置における鎮痛剤。
4(本件訂正前発明4)
痛みが炎症性疼痛,神経障害による痛み,癌による痛み,術後疼痛,幻想肢痛,火傷痛,痛風の痛み,骨関節炎の痛み,三叉神経痛の痛み,急性ヘルペスおよびヘルペス後の痛み,カウザルギーの痛み,特発性の痛み,または線維筋痛症である請求項1記載の鎮痛剤。
(本件発明4)
式I(省略)(式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤。
表1 本件特許の特許請求の範囲(請求項1~4)と本件訂正

原審(東京地裁民事第29部、第47部、第40部、第46部)は、いずれも、請求項1及び2に実施可能要件またはサポート要件違反による無効理由があり、請求項1及び2について訂正の再抗弁を認めず、被告医薬品は請求項3及び4に係る発明の技術的範囲にも属しない、と判断し、ワーナー-ランバートの請求を棄却する判決をしており、ワーナー-ランバートは地裁判決を不服として控訴していた。

知財高裁は、原判決は相当であると認めて控訴を棄却した。

本記事では、知財高裁の4つの部毎に、各事件での判断の概要を紹介する。

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1.知財高裁 第1部による判決

(1)小林化工

2022.07.07 「ワーナー-ランバート v. 小林化工」 知財高裁令和4年(ネ)10009

・・・原審記事: 2021.12.24 「ワーナー-ランバート v. 小林化工」 東京地裁令和2年(ワ)19927・・・疼痛治療剤リリカ®(プレガバリン)のジェネリック、医薬用途に係る特許権は非侵害と判断①

知財高裁(第1部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する本件発明1及び2については、サポート要件違反により無効である
  • 「当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願当時の技術常識から、本件発明1の化合物に含まれる本件発明2の化合物が、「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に対して鎮痛効果を有することを認識することはできないから、本件訂正によっても、本件発明1及び2の「痛み」の範囲に含まれるすべての「痛み」に対して鎮痛効果を有する鎮痛剤を提供するという本件発明1及び2の課題を解決できるものと認識することはできない。したがって、本件訂正によって、本件発明1及び2のサポート要件違反の無効理由が解消するものと認めることはできないから、本件訂正の再抗弁は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。」
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)

(2)ニプロ・全星薬品工業・全星薬品

2022.07.07 「ワーナー-ランバート v. ニプロ・全星薬品工業・全星薬品」 知財高裁令和4年(ネ)10021

・・・原審: 2021.12.23 「ワーナー-ランバート v. ニプロ・全星薬品工業」東京地裁令和2年(ワ)19925/22288

知財高裁(第1部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する本件発明1及び2については、サポート要件違反により無効である
  • 「当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願当時の技術常識から、本件発明1の化合物に含まれる本件発明2の化合物が、「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に対して鎮痛効果を有することを認識することはできないから、本件訂正によっても、本件発明1及び2の「痛み」の範囲に含まれるすべての「痛み」に対して鎮痛効果を有する鎮痛剤を提供するという本件発明1及び2の課題を解決できるものと認識することはできない。したがって、本件訂正によって、本件発明1及び2のサポート要件違反の無効理由が解消するものと認めることはできないから、本件訂正の再抗弁は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。」
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)
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2.知財高裁 第2部による判決

(1)武田テバファーマ・武田薬品工業

2022.07.11 「ワーナー-ランバート v. 武田テバファーマ・武田薬品工業」 知財高裁令和4年(ネ)10026

・・・原審記事: 2022.01.19 「ワーナー-ランバート v. 武田テバファーマ・武田薬品工業」 東京地裁令和2年(ワ)22290/26770・・・疼痛治療剤リリカ®(プレガバリン)のジェネリック、医薬用途に係る特許権は非侵害と判断②

知財高裁(第2部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する本件発明1及び2については、実施可能要件及びサポート要件違反により無効である
  • 「本件出願当時の当業者において、本件化合物2が「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」の処置に効果を奏することが本件明細書に記載されているに等しいと理解したとは認められず、その他、本件出願当時の当業者がそのように理解し得たものと認めるに足りる的確な証拠はない。以上によると、請求項2に係る本件訂正に関する技術的事項は、本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものというほかない」から、本件発明2の処置の対象となる痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する訂正の再抗弁は認められない(共に一群の請求項を構成する請求項1に係る訂正も許されない)
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)

(2)大原薬品工業・共創未来ファーマ・三和化学研究所・キョーリンリメディオ・杏林製薬

詳細は、記事「2022.06.29 「ワーナー-ランバート v. 大原薬品工業・共創未来ファーマ・三和化学研究所・キョーリンリメディオ・杏林製薬」 知財高裁令和4年(ネ)10015・・・疼痛治療剤リリカ®(プレガバリン)特許権侵害訴訟 控訴審も非侵害の判決」を参照。

2022.06.29 「ワーナー-ランバート v. 大原薬品工業・共創未来ファーマ・三和化学研究所・キョーリンリメディオ・杏林製薬」 知財高裁令和4年(ネ)10015・・・疼痛治療剤リリカ®(プレガバリン)特許権侵害訴訟 控訴審も非侵害の判決
Summary効能・効果を「神経障害性疼痛・線維筋痛症に伴う疼痛」とする先発医薬品リリカ®の医薬用途特許に係る特許権者(ワーナー-ランバート)とその後発医薬品を販売等する被告ら(大原薬品工業・共創未来ファーマ・三和化学研究所・キョーリンリメディオ・杏林製薬)との間で争われていた、特許権侵害差止請求事件の控訴審。知財高裁(第2部)は、ワーナー-ランバートの請求を全部棄却した原判決は相当であると...

知財高裁(第2部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する本件発明1及び2については、実施可能要件違反により無効である
  • 「本件出願当時の当業者において、本件化合物2が「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」の処置に効果を奏することが本件明細書に記載されているに等しいと理解したとは認められず、その他、本件出願当時の当業者がそのように理解し得たものと認めるに足りる的確な証拠はない。以上によると、訂正事項2に係る技術的事項は、本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものというほかない」から、本件発明2の処置の対象となる痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する訂正の再抗弁は認められない(共に一群の請求項を構成する請求項1に係る訂正も許されない)
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件訂正発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)

(3)共和薬品工業

2022.06.29 「ワーナー-ランバート v. 共和薬品工業」 知財高裁令和4年(ネ)10017

・・・原審: 2021.11.30 「ワーナー-ランバート v. 共和薬品工業」 東京地裁令和2年(ワ)19926

知財高裁(第2部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する本件発明1及び2については、実施可能要件違反により無効である
  • 「本件出願当時の当業者において、本件化合物2が「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」の処置に効果を奏することが本件明細書に記載されているに等しいと理解したとは認められず、その他、本件出願当時の当業者がそのように理解し得たものと認めるに足りる的確な証拠はない。以上によると、訂正事項2に係る技術的事項は、本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものというほかない」から、本件発明2の処置の対象となる痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する訂正の再抗弁は認められない(共に一群の請求項を構成する請求項1に係る訂正も許されない)
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件訂正発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)

(4)辰巳化学・陽進堂・三笠製薬

2022.07.13 「ワーナー-ランバート v. 辰巳化学・陽進堂・三笠製薬知財高裁令和4年(ネ)10037

・・・原審: 2022.02.16 「ワーナー-ランバート v. 辰巳化学・陽進堂・三笠製薬」 東京地裁令和2年(ワ)19931/22285/22289

知財高裁(第2部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する本件発明1及び2については、実施可能要件及びサポート要件違反により無効である
  • 「本件出願当時の当業者において、本件化合物2が「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」の処置に効果を奏することが本件明細書に記載されているに等しいと理解したとは認められず、その他、本件出願当時の当業者がそのように理解し得たものと認めるに足りる的確な証拠はない。以上によると、請求項2に係る本件訂正に関する技術的事項は、本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものというほかない」から、本件発明2の処置の対象となる痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する訂正の再抗弁は認められない(共に一群の請求項を構成する請求項1に係る訂正も許されない)
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)
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3.知財高裁 第3部による判決

(1)第一三共エスファ・第一三共

2022.06.30 「ワーナー-ランバート v. 第一三共エスファ・第一三共」 知財高裁令和4年(ネ)10002

・・・原審記事: 2021.12.10 「ワーナー-ランバート v. 第一三共エスファ・第一三共」 東京地裁令和2年(ワ)22283・・・疼痛治療剤リリカ®(プレガバリン)のジェネリック、医薬用途に係る特許権は非侵害と判断④

知財高裁(第3部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する訂正前発明1及び2については、実施可能要件及びサポート要件違反により無効である
  • 「訂正の内容が新規事項の追加に当たらないというためには、本件化合物が訂正に係る用途に効果を奏することが、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項に当たらなければならない。・・・訂正前発明2に係る本件訂正は、当業者によって、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、許されないというべきである。」から、訂正前発明2の処置の対象となる痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する訂正の再抗弁は、理由が無い(共に一群の請求項を構成する請求項1に係る訂正も許されない)
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)

(2)日本ジェネリック

2022.06.30 「ワーナー-ランバート v. 日本ジェネリック」 知財高裁令和4年(ネ)10003

・・・原審 2021.12.23 「ワーナー-ランバート v. 日本ジェネリック」東京地裁令和2年(ワ)19928

知財高裁(第3部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する訂正前発明1及び2については、実施可能要件及びサポート要件違反により無効である
  • 「訂正の内容が新規事項の追加に当たらないというためには、本件化合物が訂正に係る用途に効果を奏することが、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項に当たらなければならない。・・・訂正前発明2に係る本件訂正は、当業者によって、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、許されないというべきである。」から、訂正前発明2の処置の対象となる痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する訂正の再抗弁は、理由が無い(共に一群の請求項を構成する請求項1に係る訂正も許されない)
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)

(3)日医工

2022.06.30 「ワーナー-ランバート v. 日医工知財高裁令和4年(ネ)10012

・・・原審: 2021.12.24 「ワーナー-ランバート v. 日医工」 東京地裁令和2年(ワ)19924

知財高裁(第3部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する訂正前発明1及び2については、実施可能要件及びサポート要件違反により無効である
  • 「訂正の内容が新規事項の追加に当たらないというためには、本件化合物が訂正に係る用途に効果を奏することが、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項に当たらなければならない。・・・訂正前発明2に係る本件訂正は、当業者によって、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、許されないというべきである。」から、訂正前発明2の処置の対象となる痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する訂正の再抗弁は、理由が無い(共に一群の請求項を構成する請求項1に係る訂正も許されない)
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)

(4)東和薬品

2022.07.14 「ワーナー-ランバート v. 東和薬品知財高裁令和4年(ネ)10020

・・・原審記事: 2021.12.23 「ワーナー-ランバート v. 東和薬品」東京地裁令和2年(ワ)19929・・・疼痛治療剤リリカ®(プレガバリン)のジェネリック、医薬用途に係る特許権は非侵害と判断⑤

知財高裁(第3部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する本件発明1及び2については、実施可能要件及びサポート要件違反により無効である
  • 「本件発明2に係る本件訂正が新規事項の追加に当たらないというためには、本件化合物が「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏及び接触異痛の痛み」の処置における鎮痛剤として効果を奏することが、当業者によって、本件出願日当時の技術常識も考慮して、本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項として存在しなければならないというべきである。・・・本件発明2に係る本件訂正は、当業者によって、本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、許されないというべきである。」から、本件発明2の処置の対象となる痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する訂正の再抗弁は、理由が無い(共に一群の請求項を構成する請求項1に係る訂正も許されない)
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)
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4.知財高裁 第4部による判決

(1)沢井製薬

2022.07.13 「ワーナー-ランバート v. 沢井製薬」 知財高裁令和4年(ネ)10013

・・・原審: 2021.11.30 「ワーナー-ランバート v. 沢井製薬」 東京地裁令和2年(ワ)19917

知財高裁(第4部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する本件発明1及び2については、実施可能要件違反により無効である
  • 痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する請求項2に係る訂正は、「本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、本件明細書からその効果を奏することが理解のできない新たな痛み(神経障害性疼痛及び線維筋痛症)の治療用途という新たな技術的事項を導入するものといえる」から、一群の請求項である請求項1に係る訂正も含め、本件訂正は訂正要件を具備しないものといえ、仮に、訂正要件を具備するとしても、本件訂正によっても無効事由が解消しないことは明らかである
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件訂正発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)

(2)フェルゼンファーマ

2022.07.13 「ワーナー-ランバート v. フェルゼンファーマ」 知財高裁令和4年(ネ)10025

・・・原審: 2022.01.19 「ワーナー-ランバート v. フェルゼンファーマ」 東京地裁令和2年(ワ)19932

知財高裁(第4部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する訂正前発明1及び2については、実施可能要件及びサポート要件違反により無効である
  • 痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する請求項2に係る訂正は、「本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、本件明細書等からその効果を奏することが理解のできない新たな痛み(神経障害性疼痛及び線維筋痛症)の治療用途という新たな技術的事項を導入するものといえる」から、一群の請求項である請求項1に係る訂正も含め、本件訂正は訂正要件を具備しないものといえ、仮に、訂正要件を具備するとしても、本件訂正によっても無効事由が解消しないことは明らかである
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)

(3)日新製薬・Meiji Seika ファルマ

2022.07.13 「ワーナー-ランバート v. 日新製薬・Meiji Seika ファルマ」 知財高裁令和4年(ネ)10016

・・・原審記事: 2021.11.30 「ワーナー-ランバート v. 日新製薬・Meiji Seika ファルマ」 東京地裁令和2年(ワ)19918/22291・・・疼痛治療剤リリカ®(プレガバリン)のジェネリック、医薬用途に係る特許権は非侵害と判断③

知財高裁(第4部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する本件発明1及び2については、実施可能要件違反により無効である
  • 痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する請求項2に係る訂正は、「本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、本件明細書からその効果を奏することが理解のできない新たな痛み(神経障害性疼痛及び線維筋痛症)の治療用途という新たな技術的事項を導入するものといえる」から、一群の請求項である請求項1に係る訂正も含め、本件訂正は訂正要件を具備しないものといえ、仮に、訂正要件を具備するとしても、本件訂正によっても無効事由が解消しないことは明らかである
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件訂正発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)

(4)日本ケミファ・日本薬品工業

2022.07.13 「ワーナー-ランバート v. 日本ケミファ・日本薬品工業」 知財高裁令和4年(ネ)10028

・・・原審: 2022.01.19 「ワーナー-ランバート v. 日本ケミファ・日本薬品工業」 東京地裁令和2年(ワ)19920/22284

知財高裁(第4部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する訂正前発明1及び2については、実施可能要件及びサポート要件違反により無効である
  • 痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する請求項2に係る訂正は、「本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、本件明細書等からその効果を奏することが理解のできない新たな痛み(神経障害性疼痛及び線維筋痛症)の治療用途という新たな技術的事項を導入するものといえる」から、一群の請求項である請求項1に係る訂正も含め、本件訂正は訂正要件を具備しないものといえ、仮に、訂正要件を具備するとしても、本件訂正によっても無効事由が解消しないことは明らかである
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)

(5)ダイト・科研製薬

2022.07.13 「ワーナー-ランバート v. ダイト・科研製薬」 知財高裁令和4年(ネ)10036

・・・原審: 2022.02.02 「ワーナー-ランバート v. ダイト・科研製薬」 東京地裁令和2年(ワ)19923/22292

知財高裁(第4部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する本件発明1及び2については、実施可能要件及びサポート要件違反により無効である
  • 痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する請求項2に係る訂正は、「本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、本件明細書からその効果を奏することが理解のできない新たな痛み(神経障害性疼痛及び線維筋痛症)の治療用途という新たな技術的事項を導入するものといえる」から、一群の請求項である請求項1に係る訂正も含め、本件訂正は訂正要件を具備しないものといえ、仮に、訂正要件を具備するとしても、本件訂正によっても無効事由が解消しないことは明らかである
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)

(6)サンド

2022.08.08 「ワーナー-ランバート v. サンド」 知財高裁令和4年(ネ)10039

・・・原審: 2022.02.28 「ワーナー-ランバート v. サンド」 東京地裁令和2年(ワ)19919

知財高裁(第4部)は、ワーナー-ランバートの請求を棄却した原判決は相当であるとして、ワーナー-ランバートの本件控訴を棄却した。

  • 全ての「痛み」に関する本件発明1及び2については、実施可能要件及びサポート要件違反により無効である
  • 痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に特定する請求項2に係る訂正は、「本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、本件明細書からその効果を奏することが理解のできない新たな痛み(神経障害性疼痛及び線維筋痛症)の治療用途という新たな技術的事項を導入するものといえる」から、一群の請求項である請求項1に係る訂正も含め、本件訂正は訂正要件を具備しないものといえ、仮に、訂正要件を具備するとしても、本件訂正によっても無効事由が解消しないことは明らかである
  • 「炎症性疼痛又は術後疼痛」に関する本件発明3及び4については、被告医薬品がその発明の技術的範囲に属しない(文言侵害も均等侵害も成立しない)
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5.コメント

知財高裁(第1部~第4部)は、原判決は相当であると認めて各控訴を棄却した。

判決の内容を比べると、請求項1及び2に係る本件訂正について、控訴人の主張を退けた結論は同じだが、判断プロセスが知財高裁の4つの部で異なることに注目してほしい。

  • 第1部は、本件訂正が新たな技術的事項を導入するものであるかどうかについては判断せず、本件訂正によっても請求項1及び2のサポート要件違反の無効理由が解消するものと認めることはできないと判断している。
  • 第2部及び第3部は、本件訂正は、効果を奏することが理解のできない新たな痛みの治療用途という新たな技術的事項を導入するものであり、訂正要件を具備しないと判断した。
  • 第4部は、本件訂正は、効果を奏することが理解のできない新たな痛みの治療用途という新たな技術的事項を導入するものであり、訂正要件を具備しないと判断しながらも、仮に訂正要件を具備するとしても本件訂正によっても無効事由が解消しないことは明らかであると言及した。

結局のところ、本件訂正後の本件発明であっても実施可能要件又はサポート要件違反となるため、裁判所の判断の結論に異論はない。

しかし、明細書に具体的に記載されている事項(本件明細書には、本件化合物の処置対象となる慢性疼痛に含まれる痛みの名称を列挙した箇所があり、「神経障害」の痛みと「線維筋痛症」も当該箇所に記載されていることは原審でも認められている。)を訂正事項とする場合において、実施可能要件と同様なハードル(効果を認識し得ること)を設けて訂正要件を判断した第2部、第3部、第4部の論理は妥当とは思えないことを本記事でも記しておきたい。詳細は後述の原審についての記事参照。

一方、第1部の判断は、本件訂正が新たな技術的事項を導入するものであるとの判断を下すことなく、本件訂正によっても無効理由は解消しないため特許を受けることができるものでないとの判断プロセスに至っており(独立特許要件(特許法第134条の2第9項にて準用同法第126条第7項)の判断ということになろうか)、本件訂正が新規事項の追加に当たるとの判断を下さなかった(訂正要件を具備していると判断しているともとれる)ことを個人的には支持したい。

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6.原審(東京地裁判決)についての参考記事

(1)医薬用途発明について記載要件を満たすために必要とされる明細書への記載の程度とは

(2)延長特許権の効力について、武田薬品工業はだんまり

(1)医薬用途発明の実施可能要件を満たすためには明細書に「効果を有することの裏付け」の記載が必要
(2)明細書記載事項を訂正事項とする訂正可否に実施可能要件?
(3)痛みは原因で区別できず相互に重複するとの議論
(4)延長登録された特許権の効力についての議論
(5)パテントリンケージの運用が抱える問題が顕在化する可能性があった

(1)医薬用途発明の実施可能要件を満たすためには明細書に「効果を有することの裏付け」の記載が必要
(2)明細書記載事項を訂正事項とする訂正可否に実施可能要件

(1)明細書記載の訂正事項に「効果を奏すること」の記載を求めることは妥当か

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