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2002.10.01 「ファイザー v. 特許庁長官」 東京高裁平成13年(行ケ)345

医薬用途発明の明細書には効果を示す数値データが必要か?: 東京高裁平成13年(行ケ)345

【背景】

本願発明は、医薬用途発明であり、薬理効果を示す薬理試験方法の記載があり、「実施例の化合物は全て、選択的ムスカリン様受容体拮抗物質としての有意な活性を有することがわかった。」との薬理効果を示す記載もあったが、阻害濃度を示すデータの記載はなかった。

【要旨】

阻害濃度が具体的に示されていない以上、これら化合物が実際に有意な活性を有しているかとの疑念を生じさせるものと認めざるを得ないので、当業者が容易に実施可能な程度に発明の詳細な説明の記載がされているとはいえない(実施可能要件違反)と判断した(出願拒絶)。

【コメント】

医薬用途発明において、薬理データは具体的に示さなければならない。「効果がある」と記述しているのだから良いではないか・・・と、個人的には少し厳しい判決のように感じる。

では、実際、最近の出願では、薬理データはどのように記載されているのかというと・・・例えば、50%阻害濃度(IC50)というin vitro薬理効果を示す場合、以下のような記載が主に見受けられる。

1) 本発明化合物全てのIC50を具体的な数値で示すケース。

2) 本発明化合物全てのIC50を一定のレンジで区分けして示すケース。

3) 「本発明化合物のIC50は全て~μM以下であった。」と記述するケース。

4) 本発明化合物の一部についてのみ上記いずれかの方法で記述するケース。

どのような記載方法を採用するかは、出願人が判断すべきことであろうが、クレームに包含されるある一部の化合物については薬理活性がないとのデータを得ているにもかかわらず意図的に明細書にその薬理データだけ掲載しない(隠匿する)ことは、米国においてはinequitable conductとされ、権利行使不能とされかねないのでその点だけは注意する必要があろう。

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