2025年10月21日付のサワイグループホールディングス株式会社および旭化成ファーマ株式会社(以下、旭化成ファーマ)のそれぞれの発表によると、沢井製薬株式会社(以下、沢井製薬)と旭化成ファーマとの間で係争中であった特許権侵害訴訟について、2025年10月20日付で和解が成立しました。
本件は、骨粗鬆症治療薬「テリボン®皮下注用56.5μg」(有効成分:テリパラチド酢酸塩)に関する製法特許(特許第6025881号「高純度PTH含有凍結乾燥製剤及びその製造方法」)を巡る紛争です。
本件発明は、無菌注射剤の製造施設内におけるPTHペプチド含有凍結乾燥製剤の製造方法存に関するもので、PTHペプチド含有溶液と同無菌注射剤製造施設内空気に含まれる0.1ppm以下のオゾンとの接触を抑制することを特徴としています。
沢井製薬は、2022年2月15日に同成分の後発医薬品「テリパラチド皮下注56.5μg『サワイ』」(以下、沢井製品)について製造販売承認を取得し、同年9月9日より販売を開始しました。これに対し旭化成ファーマは、沢井製品の製造方法が上記製法特許に係る特許権を侵害すると主張し、製造販売差止めおよび損害賠償を求めて提訴していました。
2024年9月26日、大阪地方裁判所は旭化成ファーマの請求を認め、沢井製薬に対して本件特許発明の方法による製造・販売の差止めおよび損害賠償金の支払いを命じました(判決詳細は、2024.12.07ブログ記事「2024.09.26 「旭化成ファーマ v. 沢井製薬」 大阪地裁令和4年(ワ)3344 ― 引用文献に明示されていない酸化抑制の構成を相違点と認定し、内在理論に基づいた容易想到性を否定した事例 ―」(『医薬系特許的判例ブログ年報 2024』 Fubuki著 2025年3月発行, p248-264)参照)。

その後、沢井製薬は知的財産高等裁判所に控訴していましたが、両社は和解条件を総合的に検討した結果、和解による早期解決が合理的であると判断し、合意に至ったとのことです。
発表によると、和解の内容は、沢井製薬は本件特許権が有効に存続している限り沢井製品を製造または販売しないこと、沢井製薬は旭化成ファーマに対して和解金として40億円を支払うこと、一方、旭化成ファーマはその他の請求を放棄すること、というもののようです。
本件特許権の存続期間満了日は2032年5月31日であり、現時点で無効審判は請求されていません。
なお、沢井製薬は「本件が業績に与える影響について現在精査中」としています。
テリボン®は、旭化成ファーマの主力品であり、2024年度は410億円を売上げています。
参考:
- 2025.10.21 サワイグループホールディングス press release: 和解による訴訟の解決に関するお知らせ
- 2025.10.21 旭化成ファーマ press release: テリボン®皮下注用56.5μgに関する特許権侵害訴訟の和解に関するお知らせ
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