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ロスバスタチンとCYP3A4阻害薬剤の組み合わせに関する発明の拒絶審決(不服2007-17860)

特願2000-596937(特表2002-536331)の拒絶査定不服審判(不服2007-17860)。

出願人は、塩野義/アストラゼネカ。

ロスバスタチン(Rosuvastatin、販売名:クレストール(Crestor))とCYP3A4の阻害剤との組み合わせを特徴とする併用医薬に関する発明。

これまで一般的にスタチン(例えばアトルバスタチン(Atorvastatin)、商品名:リピトール(Lipitor))はCYP3A4に代謝されるため薬物相互作用の面で他剤との併用に安全性の問題があったが、ロスバスタチンはCYP3A4により代謝を受けないことを見出し、CYP3A4により代謝される薬物(例えばフィブラート系薬剤)との併用を可能にしたというもの。

審査の段階では、明細書に具体的な効果に関する記載が無いことから実施可能要件・サポート要件違反、さらに進歩性も問われていましたが、審判では、

「生体内での薬物相互作用の有無は消化管吸収、蛋白結合、排泄の面での検討も必要であり、それらが未知の場合には、動物実験や臨床試験などで、薬剤の併用投与が安全であることの確認がなければ、臨床的に重要な副作用の問題を回避する手段であるといえるのかを客観的に理解することができない。」

ということで実施可能要件・サポート要件違反により拒絶審決とされました。

しかし欧米特許庁での結論は異なっています。

欧州:
EP1185274B1
進歩性について指摘されず、ほとんど問題なく特許査定に。

Claim 1:
A non-interacting drug combination comprising a HMG-CoA reductase inhibitor, which is (E)-7-[4-(4-fluorophenyl)-6-isopropyl-2-[methyl(methylsulfonyl)amino]pyrimidin-5-yl] (3R,5S)-3,5-dihydroxyhept-6-enoic acid or a pharmaceutically acceptable salt thereof and a drug which is an inhibitor, inducer or substrate of P450 isoenzyme 3A4, as a combined product for simultaneous, separate or sequential use in therapy.

米国:
US6982157B1
Final Office Actionまで103(a)で、もめましたが、結局特許査定に。

Claim 1:
A non-interacting drug combination comprising a first drug, which is the HMG-CoA reductase inhibitor (E)-7-[4-(4-fluorophenyl)-6-isopropyl-2-[methyl(methylsulfonyl)amino]pyri- midin-5-yl](3R,5S)-3,5-dihydroxyhept-6-enoic acid or a pharmaceutically acceptable salt thereof, and a second drug, which is selected from the group consisting of bezafibrate, clofibrate, ciprofibrate, fenofibrate and niacin.

日米欧の進歩性及び記載要件の実務を比較検討できる題材であるだけでなく、権利行使という観点でも非常に興味深い事例ではないでしょうか。

これらの特許権が、ロスバスタチンとCYP3A4阻害活性を持つ他剤との具体的な併用療法において、将来権利行使する場面がやってくるのか、楽しみです。

ところで本特許は、ROSUVASTATIN CALCIUMをカバーするpatentとしてElectonic Orange Bookには収載されていません。

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