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2007.02.27 「味の素 v. 中外」 知財高裁平成18年(ネ)10038

先使用権の判断はされず: 知財高裁平成18年(ネ)10038

【背景】

中外の腎性貧血症治療剤「エポジン(遺伝子組換えヒトEPO)」と白血球減少症治療剤「ノイトロジン(遺伝子組換えヒトG-CSF)」の製造・販売行為が味の素の「生理活性タンパク質の製造法」とする発明の特許権(特許第2576200号)を侵害するとして味の素が損害賠償請求訴訟を提起した。

請求項1:

「生理活性タンパク質をコードする遺伝子及びジヒドロ葉酸還元酵素(以下dhfr とする。)遺伝子を発現可能な状態で有するプラスミドを元来付着性であるチャイニーズ・ハムスターオバリージヒドロ葉酸還元酵素欠損株(CHO dhfr-)細胞に予め形質転換して得られた形質転換細胞を培地中に懸濁させ,浮遊攪拌培養を継代して行うことにより浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を樹立し,当該浮遊攪拌培養に適した形質転換細胞を浮遊攪拌培養し,培養液中に目的生理活性タンパク質を生産させ,そして目的生理活性タンパク質を取得することを特徴とする生理活性タンパク質の製造法。」

【要旨】

裁判所は、進歩性の欠如により本件特許は無効にされるべきものと認められるから権利行使することはできないと判断した。

従って、他の争点である、先使用権による通常実施権の有無等は判断されなかった。

控訴棄却。

【コメント】

知財高裁では判断されなかったが、地裁では、中外の治験薬製造のための設備稼働等の一連の行為を、「製造販売する意図を有し、かつ、その意図が客観的に認識されうる態様、程度において表明されている」として、中外は先使用権を有すると判断された(東京地裁平成16年(ワ)8682)。

客観的に認識されるのであれば、治験薬製造のための設備稼働は、先使用権における「事業の準備」に該当する可能性が高い。

同日に、本件特許権の無効審決の取消を請求した事件についての知財高裁判決(2007.02.27 「味の素 v. 中外」 知財高裁平成17年(行ケ)10732)がなされている。

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