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2008.12.25 「バイエルクロップサイエンス v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10302

木材及び木質合板類浸み込用: 知財高裁平成20年(行ケ)10302

【背景】
「工芸素材類を害虫より保護するための害虫防除剤」に関する特許(特許第3162459号)に関し、原告が訂正審判請求したところ、特許庁が請求不成立との審決をしたことから、原告がその取消しを求めた事案。争点は、本件訂正が、独立特許要件を満たしているか(すなわち特開昭61-267575号公報(「刊行物1」)に記載された発明との関係で進歩性を有するか。)であった。

本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲は,次のとおりである(本件訂正発明。下線部は訂正部分。)。

【請求項1】
1-(6-クロロ-3-ピリジルメチル)-2-ニトロイミノ-イミダゾリジンを有効成分として含有することを特徴とする木材及び木質合板類をイエシロアリ又はヤマトシロアリより保護するための木材及び木質合板類浸み込用害虫防除剤。

  • 1-(6-クロロ-3-ピリジルメチル)-2-ニトロイミノ-イミダゾリジン: 一般名 「イミダクロプリド」

【要旨】
取消事由3(相違点3(害虫防除剤を「木材及び木質合板類浸み込用」と規定したこと)の判断の誤り)について

原告は、
「刊行物1(甲8)の「極めて卓越した殺虫作用」又は「強力な殺虫作用」は,実施例5~7の「散布」による殺虫効果にしかすぎず,本件訂正発明の「浸み込用」は,「散布」とはほど遠い害虫防除剤の適用形態である」
と主張した。

しかし、裁判所は、
「害虫防除剤の適用形態が「散布」であっても「浸み込用」であっても,害虫は,害虫防除剤の有効成分に接触して殺虫されるものであることに変わりはない。そして,害虫防除剤を「散布」するか「浸み込用」とするかは,同剤が害虫に接触する過程の違いにすぎず,殺虫作用自体は,害虫防除剤の有効成分の性質によるものというべきである。そうすると,このような害虫防除剤の適用形態の違いによって,害虫防除剤の殺虫作用に違いが出ることを直ちに導くことはできない。」
として原告の主張を採用せず。

また、原告は、
「害虫の種類に応じて害虫防除剤の適用方法を変えるのは当然のことであるが,刊行物1(甲8)の記載からイミダクロプリドがシロアリに対して殺虫作用を有することが知られていたとすることはできないから,イミダクロプリドを木材等の内部に浸み込ませてシロアリの侵襲を防除する方法は当業者が容易になし得るとすることはできない」
と主張した。

しかし、裁判所は、
「原告の上記主張は,刊行物1(甲8)にイミダクロプリドがシロアリに対して殺虫作用を有することが記載されているといえないことを前提とするものであるから,前記2(2)の説示に照らし,採用することができない。」
とし、よって取消事由3は理由がないと判断した。

請求棄却。

【コメント】
原告は、新たな修飾語「浸み込み用」をクレームに付け加えたが、裁判所は、適用形態の違いによって結局作用に違いが出ることを導くことはできないと判断した。本件は医薬発明のケースではないが、適用形態の違い(治療の態様)により特定しようとする医薬発明の考え方にとっても参考になる(?)かもしれない。
その他の原告の主張に対する裁判所の判断は下記判決内容とほぼ同様。

参照:

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