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2015.08.27 「興和 v. 沢井製薬」 知財高裁平成26年(ネ)10129

ピタバスタチンのピタバとPITAVA(その10): 知財高裁平成26年(ネ)10129

【背景】

「PITAVA」の標準文字からなる商標(分割商標権第4942833号の2、指定商品はピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤)の商標権者である控訴人(興和)が、被控訴人(沢井製薬)に対し、「ピタバ」を錠剤の中央に付したピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤の販売差止め及び廃棄を求めた事案。

原審: 2014.10.30 「興和 v. 沢井製薬」 東京地裁平成26年(ワ)768

【要旨】

裁判所は、下記理由により、本件分割商標権の効力は被控訴人各標章に及ばないと判断し、控訴人の請求を棄却した。

  • 「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は、有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」の「略称」であることが認められ、需要者である医師、薬剤師等の医療従事者及び患者のいずれにおいても、被控訴人各標章から商品の出所を識別したり、想起することはないものと認められるから、被控訴人各商品の錠剤に付された被控訴人各標章は、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当する。
  • 被控訴人各商品の錠剤に付された被控訴人各標章は,「商品の原材料」である「含有成分」を「普通に用いられる方法で表示する商標」(商標法26条1項2号)に該当するものと認められる。

【コメント】

原審(2014.10.30 「興和 v. 沢井製薬」 東京地裁平成26年(ワ)768)は、本件商標登録は商標法4条1項16号に該当することにより無効にされるべきものであるから控訴人は本件商標権を行使することができないこと、及び、本件商標登録は不使用取消審判により取り消されるべきことが明らかであるから控訴人による本件商標権の行使は権利の濫用に当たり許されないこと、を理由に請求を棄却した。本控訴審では、このような商標権の無効を理由とはせず、むしろ、知財高裁第4部がPITAVAに関する事件で最近判決を下した2015.07.16 「興和 v. Meiji Seikaファルマ」 知財高裁平成26年(ネ)10098と同じく、被控訴人各標章が本件商標権の効力が及ばない商標であること(商標法26条1項2号、6号)を理由に、請求を棄却した。こちらの理由のほうが腑に落ちる。裁判官によりその理由は違えど、本件標章に対して権利行使できない点では一致しており、一連のピタバスタチンに関連する商標権侵害訴訟は決着に至ると思われる。

関連判決(ピタバスタチンのピタバとPITAVA(その1~9):

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