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2021.07.07 「ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア v. 国」 東京地裁令和2年(行ウ)423

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1.事件の概要

本件(東京地裁令和2年(行ウ)423)は、国際特許出願(PCT/US2016/065652)をした原告(ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア)が、特許法184条の4第1項が定める優先日から2年6月の国内書面提出期間内(2018年6月11日まで)に同項に規定する明細書等の翻訳文を提出することができなかったことについて、同条4項の正当な理由があるにもかかわらず、特許庁長官(処分行政庁)が原告に対して国内書面に係る手続を却下する処分(以下「本件処分」という。)をするとともに、特許庁長官が原告に対してした本件処分の取消しを求める審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をしたことが違法であるとして、その各取消しを求める事案である。

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2.本件処分及び本件裁決に至る経緯

  • 原告は、2018年6月5日、本件訴訟の原告補佐人となる弁理士(以下「担当弁理士」という。)に対し、本件国際出願の国内移行に係る手続をすること(以下「本件案件」という。)を依頼した。
  • 担当弁理士は、同月7日、事務担当補助者に対し、案件ファイルの作成及び国内書面の作成を指示するとともに、技術担当補助者に対し、本件国際特許出願に係る国内移行手続を担当するように指示した。
  • 事務担当補助者は、同日、本件案件のファイルを作成するとともに、未提出の国内書面の印刷物を添付し、技術担当補助者に渡したが、技術担当補助者は、受領した印刷物を特許庁に提出済みと誤認し、自らの机の中に収納したまま何らの手続を行わなかった。
  • このため、本件明細書等翻訳文の提出期限は徒過した(以下「本件期間徒過」という。)。
  • 担当弁理士は、同月14日になり、ようやく本件明細書等翻訳文がその期限(同月11日)までに提出されていないことを認識するに至った。
  • 原告は、同月14日付けで、特許庁長官に対し、本件国際特許出願について、本件明細書等翻訳文を含む国内書面を提出し(以下「本件提出手続」という。)、更に、同月15日付けで、手続補正書を提出した。
  • 原告は、同年7月20日付けで、特許庁長官に対し、本件期間徒過には法184条の4第4項の「正当な理由」がある旨の回復理由書を提出した。
  • 特許庁長官は、原告に対し、本件期間徒過には「正当な理由」があるとは認められず、本件提出手続を却下すべきものと認められる旨の却下理由通知書を送付した。
  • 原告は、特許庁長官に対し、本件処分の取消しを求め、行政不服審査法2条の審査請求をしたが、特許庁長官は、当該審査請求を棄却する旨の本件裁決をした。
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3.裁判所の判断

裁判所は、原告の請求はいずれも理由がないとしてこれらを棄却した。

以下、裁判所の判断を抜粋した。

本件期間徒過について,それがやむを得なかったと認め得るような「特段の事情」があったということはできない。・・・原告及び担当弁理士が,相当な注意を尽くしていたにもかかわらず,客観的にみて国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったということはできない。・・・以上のとおり,本件処分が違法の瑕疵を有し,又は無効なものであるとしてその取消しを求める原告の請求は理由がない。

・・・原告は,本件裁決が,「正当な理由」の解釈を含め,原告が問題とする審査請求の理由に答えないまま,原告の審査請求に理由がないと結論付けていることが,理由付記不備の違法を構成すると主張する。しかし,・・・本件処分は適法であって,本件処分に対する取消請求は棄却されるべきであるから,原告の主張する理由付記不備の違法は,本件裁決の取消事由とならない。・・・他に裁決手続に審理不尽の違法があると認めるに足りる証拠はない。・・・以上のとおり,本件裁決に取消事由があるとして,その取消しを求める原告の請求は理由がない。

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4.「相当な注意基準」から「故意基準」へ要件を緩和する権利回復制度へ

特許権等が手続期間の徒過により消滅した場合に、権利を回復できる要件を緩和する特許法改正案を含む「特許法等の一部を改正する法律案」が、2021年5月10日に可決・成立し、5月17日に法律第3号として公布されている(2021.05.17 特許庁ウエブサイト 「特許法等の一部を改正する法律(令和元年5月17日法律第3号)」)。手続期間の徒過を治癒する要件について「正当な理由(相当な注意基準)」から、「故意でない(故意基準)」に転換することにより、特許権等が手続期間の徒過により消滅した場合に、権利を回復できる要件を緩和することとなった。施行期日は、公布日から2年以内の政令で定める日とされている。

特許法184条の4第4項(外国語でされた国際特許出願の翻訳文)の改正箇所は以下のとおり。

本件も、上記法改正後の「故意でない(故意基準)」であったなら、権利を失うことはなかったのだろう。

参考:

2021.04.15 「メディミューン v. 国」 知財高裁令和2年(行コ)10005
PCT出願の日本移行(法184条の4第4項: 外国語でされた国際特許出願の翻訳文)手続期限徒過でみなし取下げ。「相当な注意基準」から「故意基準」へ要件を緩和する権利回復制度見直し法律案が国会で可決成立(2021.05.14)。1.知財高裁令和2年(行コ)10005控訴人メディミューン(以下、「MedImmune社」という。)は、2016年6月21日、Boston Pharmaceuti...
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5.本件国際特許出願に係る発明は何だったのか

本件国際特許出願(国際出願番号: PCT/US2016/065652、国際公開番号: WO2017100470)は、 その発明の名称を「METHODS OF TREATING AN OCULAR DISEASE OR DISORDER」として、少なくとも米、欧、中、韓、加に移行手続きがされている。発明内容は、発明者のひとりであるEda Isil Altiokの学位論文「Improving Anti-VEGF Drugs in the Vitreous」(Fall 2015)に記載された研究成果(そして他の発明者には担当教授も)に関連するようである。

WO2017100470のFig.1より

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