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2021.06.29 「ネオケミア v. メディオン」 知財高裁令和2年(行ケ)10051; 知財高裁令和2年(行ケ)10052; 2021.07.20 知財高裁令和2年(行ケ)10053

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1.背景

本件各訴訟(知財高裁令和2年(行ケ)10051知財高裁令和2年(行ケ)10052; 知財高裁令和2年(行ケ)10053)は、メディオン・リサーチ・ラボラトリーズ(以下、「メディオン」と略す。)が特許権者である「二酸化炭素含有粘性組成物」に関する特許4659980号及び特許4912492号(いずれも2018年10月5日に満了)及び「二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物」に関する特許5643872号(2019年5月6日に満了)について、それぞれ無効審判請求(無効2019-800048号事件、無効2019-800049号事件及び無効2019-800050号事件、2019年8月1日請求)をしたネオケミアが、それら請求は成り立たないとした審決の取り消しを求めて提起したものである。

「二酸化炭素含有粘性組成物」に関する特許4659980号及び特許4912492号に係る事件は知財高裁第2部が、「二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物」に関する特許5643872号に係る事件は知財高裁第4部が担当した。

争点は、進歩性の有無であるが、訴えの利益について(本案前の主張)も争われた。

記事「2020.08.05 「ネオケミア v. メディオン」 知財高裁令和元年(行ケ)10082; 10084」に、メディオンとネオケミアの先後願関係、発明者の関係、これまでの両社の特許係争結果をまとめている。

2020.08.05 「ネオケミア v. メディオン」 知財高裁令和元年(行ケ)10082; 10084
炭酸ガスの効能を利用したフェイス用パック剤、いわゆる「炭酸ガスパック」を巡る、株式会社メディオン・リサーチ・ラボラトリーズ(以下メディオン)とネオケミア株式会社(以下ネオケミア)との特許係争において、2020年8月5日に二つの知財高裁判決(知財高裁令和元年(行ケ)10082; 10084)が出された。これまで特許権者であるメディオンが、被告ネオケミアに対する特許侵害訴訟においても勝訴、ネオケミアに...
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2.そして、ネオケミアの破産

本件訴訟提起後の2020年11月19日、ネオケミアは、神戸地裁に破産申立てを行い、同年12月7日午前3時に破産手続開始決定(同裁判所令和2年(フ)第971号)がされ、破産管財人が選任された。破産管財人は、2021年4月12日、本件訴訟における原告に係る地位の放棄の許可を同裁判所に申請し、同月13日、許可がされた。 同年5月10日、原告の株主総会において、Aが清算人に選任された。この破産事件は、6月29日(判決言渡日)時点でまだ終結していなかった。

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3.裁判所は原告の請求を棄却・・・訴えの利益については第2部は判断、第4部は判断留保

メディオン(被告)からは、訴えの利益が消滅したものというべきである旨の主張(本案前の主張)がなされた。

これに対し、「二酸化炭素含有粘性組成物」に関する特許4659980号及び特許4912492号の無効審判請求に係る無効2019-800048号事件及び無効2019-800049号事件(知財高裁令和2年(行ケ)10051; 10052)において、知財高裁第2部は、以下のとおり、メディオン(被告)の本案前の主張には理由がないと判断したうえで、本件発明は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないとして、ネオケミア(原告)の請求を棄却した。

(1) 特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益は,特許権消滅後であっても,特許権の存続期間中にされた行為について,原告に対し,損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情がない限り,失われることはないというべきである(知財高裁平成28年(行ケ)第10182号,第10184号同30年4月13日特別部判決・判例タイムズ1460号125頁参照)。

(2) 本件においては,別件破産事件の手続がいまだ進行中であって,原告の主張する事情のうち破産事件の終結に伴う事情は,考慮すべきものではない。また,別件破産事件が終結したとしても,そのことから直ちに,被告から原告に対する損害賠償又は不当利得返還の請求を行うことができなくなるわけではないから,原告と被告との間で本件特許権の有効性の判断が求められる法的な可能性が全くなくなるということもできない。

したがって,被告の本案前の主張には理由がない。

一方、「二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物」に関する特許5643872号の無効審判請求に係る無効2019-800050号事件(知財高裁令和2年(行ケ)10053)において、知財高裁第4部は、以下のとおり、事案の性質及び双方の主張立証の状況に鑑み、メディオンの本案前の主張(訴えの利益が消滅したものというべきである)については判断を留保し、本案についての判断をすることによってネオケミア(原告)の請求を棄却した。

本件については,事案の性質及び双方の主張立証の状況に鑑みると,本案について容易に判断可能であるから,以下,まず本案について判断することとする。・・・本件発明1は・・・当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないとした本件審決の判断に誤りはない。・・・以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決を取り消すべき違法が認められないことは明らかであるから,被告による本案前の主張については判断を留保し,原告が求める本案についての判断をすることが相当であると考え,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。

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4.コメント・・・訴えの利益

結局のところ、知財高裁(第2部と第4部)は、ネオケミア(原告)による進歩性欠如の主張を認めず、請求棄却の判断をしたわけであるが、本件3つの特許(特許4659980号、特許4912492号、特許5643872号)については、過去別事件においても、ネオケミアによる無効審判請求により進歩性の有無が争われ、結果、いずれもメディオンが勝訴しているという経緯がある。

そして、そのうち2つの特許(特許4659980号及び特許4912492号)に係る特許権については、メディオンがネオケミアに対して侵害訴訟を提起し、メディオンが勝訴した。

そのためであろう、本件各訴訟におけるメディオンの本案前の主張(訴えの利益の有無)について、それら侵害訴訟において争われた2つ特許(特許4659980号及び特許4912492号)について、知財高裁(第2部)は、訴えの利益ありと判断し、一方で、侵害訴訟に発展していなかった特許5643872号について、知財高裁(第4部)は、訴えの利益について判断を留保した。

訴えの利益について、知財高裁(第2部)は、

特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益は,特許権消滅後であっても,特許権の存続期間中にされた行為について,原告に対し,損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情がない限り,失われることはないというべきである(知財高裁平成28年(行ケ)第10182号,第10184号同30年4月13日特別部判決・判例タイムズ1460号125頁参照)。

と判示したのであるが、その部分について引用している「知財高裁平成28年(行ケ)第10182号,第10184号同30年4月13日特別部判決・判例タイムズ1460号125頁参照」の実際の判決文の該当部分は、実際は以下のような記載である。

平成26年法律第36号による改正前の特許法の下において,特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益は,特許権消滅後であっても,特許権の存続期間中にされた行為について,何人に対しても,損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情がない限り,失われることはない。

– 知財高裁平成28年(行ケ)第10182号,第10184号より抜粋(本件判示事項との比較したい部分を赤字とした)

特許異議申立制度の創設等についての平成26年特許法等改正法の施行期日は2015年4月1日。特許異議の申立て制度の創設に併せ、特許無効審判は利害関係人に限り請求できることとされた。 本件各訴訟に係る無効審判(無効2019-800048号事件、無効2019-800049号事件及び無効2019-800050号事件)は、その請求日が2019年8月1日であるから、請求人適格については、平成26年特許法等改正法123条2項(特許無効審判は利害関係人に限り請求することができる)が適用されることになる。

訴えの利益について本件訴訟判決が示している部分と引用判決の該当部分との記載を比べると明らかなように、訴えの利益についての本件判決文は、「改正前の特許法の下において」判示した過去判決文を、改正重要部分についての補足説明もなく置き換えて、過去判示事項と本件が完全整合しているかのように判決を引用しているように見える。判決文において過去の判決を引用する際には、ミスリードのないように、利害関係人であることを認定し請求人適格を満たすことを示したうえでなお訴えの利益は失われていないことについて知財高裁は丁寧な説明をしていただきたい。とは言うものの、当該特許の有効か無効かが前提問題となる損害賠償請求の紛争が過去に生じていた事実関係があることから、本件においても訴えの利益は認められるべきであろうし、訴えの利益ありとした結論には同意である。

引用判決についての過去記事:

2018.04.13 「日本ケミファ v. 塩野義」 知財高裁平成28年(行ケ)10182; 10184
知財高裁大合議判決「膨大な数の選択肢を有する一般式形式記載の化合物が引用発明となる場合とは」: 知財高裁平成28年(行ケ)10182; 10184【背景】塩野義製薬が保有していた「ピリミジン誘導体」に関する特許(第2648897号; 2017.05.28満了)無効審判請求(請求人として参加: 日本ケミファ)を不成立とする審決(無効2015-800095号)の取消訴訟。争点は、訴えの利益の有...

 

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