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2020.02.18 「ネオケミア v. メディオン」 知財高裁令和元年(行ケ)10083

メディオンの炭酸パック特許: 知財高裁令和元年(行ケ)10083

【背景】

メディオン(被告)が保有する「二酸化炭素含有粘性組成物」に関する特許(第4912492号)の無効審判請求(無効2018-800054号)不成立審決取消訴訟。争点は進歩性。

本件審決が認定した引用発明、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点1:

  • 一致点

    医薬組成物又は化粧料として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって,/炭酸塩を含有する含水粘性組成物と,酸を含む剤の組み合わせからなり,/含水粘性組成物が,二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする,/含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット

  • 相違点1

    炭酸塩及び酸をそれぞれ含む組成物の構成について,本件発明1では,炭酸塩がアルギン酸ナトリウムとともに含水粘性組成物に含有され,酸が「顆粒剤,細粒剤,又は粉末剤」に含有されるのに対し,引用発明では,炭酸塩がポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースナトリウムとともに含水粘性組成物に含有され,酸が含水粘性組成物に含有される点

【要旨】

裁判所は、請求は理由がないとして原告の請求を棄却した。以下は、相違点1の容易想到性判断の誤りについての裁判所の判断の抜粋。

ア アルギン酸ナトリウムに置換する動機付けについて

アルギン酸ナトリウムは,粘性水性組成物を形成する増粘剤として周知であるとしても,皮膜形成能を有する増粘剤として周知であったことを認めるに足りる証拠はない。また,引用例1には,パック剤に適宜配合することができる成分の例として,・・・増粘剤・・・などの薬効剤,防腐剤,香料,色素が挙げられているが,アルギン酸ナトリウムを用いることは何ら記載されていない。以上によれば,粘稠液が造膜性のものであることを前提とする引用発明において,ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースナトリウムをアルギン酸ナトリウムに置き換えることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。

イ 酸を「顆粒(細粒,粉末)剤」に含ませる点について

引用発明は,その造膜過程において皮膚に刺激を与えて血行を促進すると共に,皮膚表面の汚れを吸着して清浄するパック剤であって,短時間で優れた血行促進作用を示すものであるから,使用時の二酸化炭素の発生を遅延させ,持続性を持たせることの動機付けがあるとはいえない。そうすると,引用例1に接した当業者は,二酸化炭素を適切に発生させるための徐放化技術として,炭酸塩と酸を1つの固形物に含有させることを想到することもできないというべきである。

ウ 小括
よって,相違点1は,当業者が容易に想到できたものではない。

【コメント】

本件特許第4912492号については、2019年2月4日付知財高裁判決でも、本件発明に容易想到性が認められないとした審決に誤りはなくネオケミアが主張する取消事由は理由がないとしてネオケミアの請求を棄却していた(2019.02.04 「ネオケミア v. メディオン」 知財高裁平成30年(行ケ)10033; 知財高裁平成30年(行ケ)10054)。

また、メディオンが炭酸パック化粧料を製造・販売したネオケミアらに対して提起した特許権侵害訴訟において、2019年6月7日、知財高裁(大合議)は、ネオケミアら製品は本件特許発明の技術的範囲に属し、特許の無効理由が存するとは認められないとした上で、ネオケミアらの控訴を棄却していた(2019.06.07 「ネオケミア v. メディオン」 知財高裁平成30年(ネ)10063)。

メディオンの特許についてはこちらに記載がある。

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