富士製薬工業は2026年1月30日、Alvotech社、Regeneron社およびBayer社との間で、アフリベルセプト(Aflibercept)2mg製剤のバイオシミラーに関する全世界での特許紛争を解決するライセンス・和解契約(以下「本契約」)が締結されたことを公表しました(2026.01.30 富士製薬工業 press release「バイオ後続品(バイオシミラー)アフリベルセプト BS に関するライセンスおよび和解契約締結のお知らせ」参照)。
参考:
- 2026.01.29 Alvotech press release: Alvotech Secures Settlement Agreement in Global Markets for its Biosimilar to Eylea® 2mg
富士製薬工業とAlvotech社は、2018年11月16日付「ALVOTECH 社との日本におけるバイオシミラーの開発と商業化における独占的パートナーシップに関する合意のお知らせ」のとおり、Alvotech社が有するバイオシミラーについて、日本における商業化に関する独占的パートナーシップを構築してきました。そのため、本契約の締結により、富士製薬工業が関与する日本国内において係属していた特許紛争についても、包括的に解決されたものとみられます。
本件は、2025年秋以降、日本におけるアフリベルセプトのバイオシミラーをめぐる特許実務の中でも特に注目を集めてきた事案です。
発端となったのは、2025年11月12日に公表された、Regeneron社による大阪地方裁判所への差止仮処分申立てでした(2025.11.12ブログ記事「リジェネロン社、アイリーア®特許権に基づき大阪地裁に富士製薬工業アフリベルセプトBSの差止仮処分申立て」参照)。

Regeneron社は、眼科用VEGF阻害剤「アイリーア®」(一般名:アフリベルセプト)についてBayer社と共同開発を行い、米国以外での独占的販売権をBayer社に許諾しています。同社は、アイリーア®に関する特許第7733706号に基づき、富士製薬工業が2025年9月19日に製造販売承認を取得したバイオシミラー「アフリベルセプトBS硝子体内注射液40mg/mL『NIT』」等の製造・販売行為が当該特許権を侵害すると主張し、差止めを求めていました。
問題となった特許第7733706号は、「血管新生眼疾患を処置するためのVEGFアンタゴニストの使用」を発明の名称とし、硝子体内投与における導入期および維持期の投与スケジュール、すなわち用法・用量の構成を特徴とする医薬用途発明です。同特許は2025年8月26日に登録され、存続期間満了日は2032年1月11日とされています。
同特許の登録直後である2025年8月29日、厚生労働省は薬事審議会(医薬品第一部会)において、富士製薬工業のバイオシミラーの承認を報告しました。その後、2025年9月19日に承認された富士製薬工業のバイオシミラーでは、サムスンのバイオシミラーでパテントリンケージ上問題となり承認されなかった「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」が承認された一方、サムスン品で承認されていた「糖尿病性黄斑浮腫」は承認されませんでした(2025.09.19 富士製薬工業 press release: バイオ後続品(バイオシミラー)3製品の製造販売承認取得のお知らせ―アフリベルセプト(遺伝子組換え)・ゴリムマブ(遺伝子組換え)・デノスマブ(遺伝子組換え))。
この点については、2025年8月26日に登録された特許第7733706号の存在が、富士製薬工業のバイオシミラーにおける効能・効果の承認可否に影響を与えた可能性も指摘されてきましたが、詳細な判断過程は明らかにされていません。
このような経緯から、富士製薬工業のバイオシミラーをめぐっては、特許第7733706号の登録時期、同特許クレームに記載された用法・用量構成との関係、さらには日本のパテントリンケージ制度の運用との整合性といった観点で、実務家の間で大きな関心が寄せられました。
こうした中で、Alvotech社とRegeneron社およびBayer社との間で全世界を対象とする包括的なライセンス・和解契約が成立したことは、日本において係属していた富士製薬工業に対する差止仮処分事件の帰趨にも、直接的な影響を与えるものとなりました。
富士製薬工業によれば、本契約に基づき、同社の販売提携先である日東メディックを通じて販売されているアフリベルセプト2mg製剤のバイオシミラーについて、2026年1月1日からは「糖尿病黄斑浮腫」を除く適応症について国内販売が可能となり、さらに2026年11月1日からは、すべての承認済み適応症について販売が可能になるとされています。
また、Alvotech社のプレスリリースによれば、本契約では地域ごとにアフリベルセプト2mg製剤バイオシミラーの市場参入時期が段階的に設定されています。具体的には、英国およびカナダでは2026年1月1日から、欧州経済領域(EEA)および米国を除くその他の国・地域では2026年5月1日から販売が可能とされています。
これに対し、日本についてのみ「すべての承認済み適応症」の販売解禁時期がさらに後ろ倒しで設定されている点は、当該特許クレームの権利行使可能性を踏まえ、当事者間の協議の結果として設定された可能性も考えられます。
本件は、最終的には裁判所による判断を経ることなく、グローバルな和解という形で整理されましたが、用法・用量特許の権利行使とバイオシミラー承認との関係、ならびに日本のパテントリンケージ制度の運用を考える上で、極めて示唆に富む事例であったと言えるでしょう。

アイリーア®(一般名:アフリベルセプト)はパテントリンケージの話題が盛りだくさんですね・・・アイリーア®関連事件をもっと知りたい方は是非こちらのリンクをご覧ください。
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