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パテントリンケージにおける特許権者の情報提供は不競法違反か ― アイリーア®事件・知財高裁抗告棄却決定の確定

バイエル薬品株式会社(以下「バイエル薬品」)は、眼科用VEGF阻害剤「Eylea®硝子体内注射40mg/mL」(一般名:アフリベルセプト、以下「アイリーア®」)をめぐり、サムスンバイオエピス株式会社(以下「サムスン」)が不正競争防止法に基づき差止めを求めた仮処分申立事件について、知的財産高等裁判所(以下「知財高裁」)がサムスンの抗告を棄却した決定が確定したことを公表しました(2026.01.26 バイエル薬品 press release「眼科用VEGF阻害剤「アイリーア®」の不正競争防止法に基づく差止仮処分命令申立却下決定に対する抗告棄却決定の確定について」参照)。

本件は、アイリーア®をバイエル社と共同開発し、米国以外における独占的販売権をバイエル社に許諾しているリジェネロン・ファーマシューティカルズ社(以下「リジェネロン社」)が、パテントリンケージ制度に基づき、厚生労働省および医薬品医療機器総合機構(以下「厚労省等」)に対して「後発医薬品(バイオ後続品)が特許権を侵害する」との情報提供を行った行為が、不正競争防止法2条1項21号にいう「虚偽の事実の告知」に該当するとして、後発メーカーであるサムスンが差止めを求めた仮処分命令申立事件です。

第一審である東京地方裁判所は、2024年12月16日、サムスンの申立てを却下しました(2025.04.22ブログ記事「2024.12.16 「サムスン v. リジェネロン」東京地裁令和6年(ヨ)30028 ― パテントリンケージにおける特許権者による情報提供と不競法の虚偽告知該当性(2) ―」参照)。

2024.12.16 「サムスン v. リジェネロン」東京地裁令和6年(ヨ)30028 ― パテントリンケージにおける特許権者による情報提供と不競法の虚偽告知該当性(2) ―
Summary本件は、後発医薬品メーカーであるサムスンが、そのバイオ後続品は本件特許権を侵害していないとの主張を前提として、先発医薬品の特許権者であるリジェネロンが厚労省に対して「特許権侵害である」との情報提供を行ったことが不正競争防止法2条1項21号に定める「虚偽の事実の告知」に該当すると主張し、その行為の差止めを求めた仮処分命令申立事件である。東京地方裁判所(民事第29部)は、パテントリンケー...

これに対し、サムスンは抗告しましたが、知財高裁は2025年8月13日、同社の抗告を棄却しました(2025.09.07ブログ記事「2025.08.13 「サムスン v. リジェネロン」 知財高裁令和7年(ラ)10003 ― アイリーア®(アフリベルセプト)のパテントリンケージにおける特許権者による情報提供と不競法の信用棄損行為該当性」参照)。

2025.08.13 「サムスン v. リジェネロン」 知財高裁令和7年(ラ)10003 ― アイリーア®(アフリベルセプト)のパテントリンケージにおける特許権者による情報提供と不競法の信用棄損行為該当性
Summary本件は、後発メーカーであるサムスンが、自社のバイオ後続品(バイオシミラー)は特許権を侵害しないと主張しつつ、先発医薬品の特許権者リジェネロンが厚労省等に対して「特許権侵害に当たる」と情報提供した行為が、不競法2条1項21号に定める「虚偽の事実の告知」に該当するとして、その差止めを求めた仮処分命令申立事件である。知財高裁(第1部)は、2025年8月13日、医薬品承認は薬機法に基づく行政...
Fubuki
Fubuki

なぜこんな申立てが後発メーカーからされたのか・・・その背景を知りたい方は是非上記ブログ記事をご覧ください。

その後、2025年10月10日に同社の許可抗告は不許可とされ、2025年12月12日に最高裁判所が特別抗告を棄却したことにより、本件は最終的に確定するに至ったとのことです。

知財高裁は、本件判断において、医薬品の承認は薬機法に基づく行政処分であり、自由競争が行われる取引社会における取引とは性質を異にする点を強調しました。その上で、厚労省等が先発医薬品の特許権者等に対して補足説明を求めるのは、厚労大臣が権限を適切に行使するための情報収集行為にすぎず、その情報が市場に伝播して、申請者の経済的価値に関する社会的評価を低下させるものとはいえないと指摘しました。そして、特許権者が厚労省等に対し、後発医薬品(バイオ後続品)が特許権を侵害する旨の情報提供を行うことは、不競法2条1項21号所定の不正競争には当たらないと解するのが相当であるとして、原決定(申立却下)を維持しました。

バイエル薬品は、本決定について、パテントリンケージ制度の目的と不正競争防止法の目的に基づく適切かつ合理的な判断であり、同制度下における特許関連情報提供に関する重要な先例を提供するものであると評価しています。また、特許に係る適正な情報提供を根幹とするパテントリンケージ制度の運用を維持する上で重要な決定であるとの見解を示しています。


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