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2007.03.28 「ノバルティス v. 特許庁長官」 知財高裁平成18年(行ケ)10371

バルサルタンの固体経口剤形: 知財高裁平成18年(行ケ)10371

【背景】

「バルサルタンの固体経口剤形」に関する発明(特表2000-506540; WO97/49394)について、拒絶査定を受け、審判請求とともに手続補正書を提出したが、手続補正を却下された上で、審判請求は成り立たない旨の審決をされたため、取消決定取消訴訟を提起した。

審決の理由は、補正後の本願発明は(ノバルティス自身の出願公開公報「特開平4-235149号」記載の)引用発明と同一であるから、特29条1項3号違反で特許を受けることができないとするものであった。

請求項1

a)バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩の有効量を含む活性成分
および
b)圧縮法による固体経口剤形の製造に適当な薬学的に許容される添加剤
を含み、活性成分が固体経口剤形の全重量に対し35(重量)%以上の量で存在する圧縮固体経口剤

【要旨】

原告は、

「請求項1に記載の「圧縮法」は、乾式法による間接打錠法であると理解することができる。一方、引用例に記載の錠剤の製造法は、「湿式法による間接打錠法」であるから、製造法において相違する。」

と主張した。

しかし、裁判所は、本願明細書に「乾式法による間接打錠法」に限定されることを定義した記載はないので原告の主張を採用することはできないとした。

また、原告は、

「引用例の記載では、「組成(10,000個の錠剤)」と記載されているが、「錠剤(重量:280mg)」等との記載と矛盾しており、引用発明は実施不能のものである。」

と主張した。

しかし、裁判所は、

「当業者は、引用例の記載が誤記であることを容易に理解することができるものと認められる。従って、引用発明を実施不能ということはできず、原告の主張は失当である。」

とした。

請求棄却。

【コメント】

原告主張の内容では、審決を取消すのはかなり困難であろう。

原告もダメモトでチャレンジしたのでは? 分割出願(特開2003-231634; 特開2007-238637)もしており、そちらのほうで再度勝負といったところだろうか。

ところで、US familyは特許として成立し、そのひとつのUS 6,294,197はValsartanをカバーする特許としてOrange bookに収載されている。

それにしても、引例とされた出願公開(特開平4-235149号)は、そもそも原告自身のしたバルサルタンの物質特許出願であり、そのUS family patentであるUS 5,399,578Orange bookにも収載されている重要な特許。それを「実施不能のものである」と自ら特許性を否定するかのような主張をするのはいかがなものだろうか?

Valsartan(バルサルタン)はノバルティスが製造販売するディオバン(DIOVAN)錠の有効成分。アンジオテンシンII受容体サブタイプAT1受容体に結合し、昇圧系として作用するアンジオテンシンIIに対して拮抗することによって降圧作用をあらわす選択的AT1受容体ブロッカー。

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