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レボノルゲストレル(Levonorgestrel)を有効成分とする緊急避妊剤「ノルレボ®錠」に関する特許権について

2015年12月25日、あすか製薬(株)より「レボノルゲストレルに関する特許権について」の謹告文が掲載されました(参照: 日刊薬業website: 【謹告】レボノルゲストレルに関する特許権について)。

あすか製薬は、レボノルゲストレル(Levonorgestrel)を有効成分とする緊急避妊剤「ノルレボ®錠0.75mg」を製造販売しており、レボノルゲストレルに関し、日本特許第5809367号および日本特許第5809368号の特許権等を有しているとのことです。

これら特許はいずれもレボノルゲストレルの結晶多形及びその製造方法に関するものであり、特許明細書の記載によれば、「ノルレボ®錠0.75mg」に含まれているレボノルゲストレル結晶はこれら特許出願(2014年4月23日)よりも前に公開されているWO2009/035527号公報に開示されたレボノルゲストレル結晶と同一の結晶であるとのことです。

「ノルレボ®錠0.75mg」のレボノルゲストレル結晶を保護したであろう肝心のそのWO2009/035527(出願人SCINOPHARM TAIWAN LTD)は権利化されることなく放棄されたようです。

「ノルレボ®錠0.75mg」は日本で2011年2月23日に製造販売承認され、同年5月から販売されています。再審査期間は4年(~2015年2月22日)。

参考:

1.「レボノルゲストレルの結晶多形α及びその製造方法」に関する特許5809367(特願2014-561675、出願日2014.04.23、登録日2015.09.18、存続期間満了日2034.04.23)

  • 請求項1:

    粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角度2θが、2θ=17.2°±0.2°,18.6°±0.2°,22.7°±0.2°,31.1°±0.2°及び35.5°±0.2°の角度に回折ピークを有し、2θ=17.2°±0.2°での回折ピークの強度が最も強く現れるレボノルゲストレルの結晶多形α。

  • 補正(上記下線部分)により特許査定となる前に通知された拒絶査定の内容:

    理由1(特許法第29条第2項)について

    ・請求項1-5
    ・引用文献等1-10

    引用文献1の請求項1-4および図4等には、レボノルゲストレルの結晶多形が記載されており、請求項6-8および2頁等には、当該結晶多形の製造方法も記載されている(以下、引用発明という)。本願請求項1に記載の発明と引用発明は、結晶多形の粉末X線回折スペクトル(回折角度2θ)において、前者が17.2, 18.6, 22.7, 31.1, 35.5度の角度に回折ピークを有するのに対し、後者が同角度に回折ピークを有さない点でのみ相違し、その他の点では一致する。しかし、引用文献1に記載されているように、レボノルゲストレルが容易に結晶化できることは本願優先日前に当業者に知られていたこと;引用文献2-6に記載されているように、化合物は1つ又は複数の結晶形態で存在し得ること、そして、これら複数の結晶形態の間でそれらの物理的および生物学的性質が相違することが観察されることは、医薬化合物の分野の当業者にとって技術常識であると認められるうえ、できるだけ純粋な目的化合物および/または多くの多形形態を得ることは、当業者にとって自明の課題であると解される。そうすると、引用発明に接した当業者であれば、化合物の精製を目的として、および/または、他の結晶形態や多形形態の存在を期待して再結晶を検討して行ったり、得られた結晶の構造をX線回折等の分光学的分析などにより特徴付けたりしようとすることは、極めて自然であると考えられる。してみれば、請求項1および同項を引用する請求項2-5に係る発明は、引用発明ならびに引用文献1-6に記載の発明および本願優先日当時の技術常識から当業者に自明なものであるし、本願発明による効果も当業者の予想を超えるほど格別顕著ではない。さらに、引用文献7の実施例3~4;引用文献8の1376頁;引用文献9の276頁;引用文献10の図2等にもレボノルゲストレルの結晶が記載されていることからすると、請求項1-5に係る発明は、上記の理由と同様の理由により、引用文献7-10ならびに引用文献2-6に記載の発明および本願優先日当時の技術常識から当業者に自明なものでもある。

    平成27年5月28日付けの意見書において、出願人は、本願明細書に記載の非特許文献1には、レボノルゲストレル結晶の融点が232~239℃であり、上記結晶には結晶多形を認めないと明記されていないから、当業者にとって、レボノルゲストレルには結晶多形が存在しないと認識されていた;引用文献には、所定の結晶多形αを有するレボノルゲストレルについては何ら開示も示唆もされていないと指摘し、本願発明は進歩性を有する旨主張する。しかし、一般に化合物は1つ又は複数の結晶形態で存在し得ることが技術常識であることからすれば、たとえ非特許文献1に結晶多形を認めないと明記されていたとしても、当該記載をもってレボノルゲストレルには結晶多形が全く存在しないと客観的に認識することはできないと解される。そして、複数の結晶形態の間でそれらの物理的および生物学的性質が相違することが観察されることは医薬化合物の分野の当業者にとって技術常識であることからすれば、上記の理由の通り、レボノルゲストレルの他の結晶形態や多形形態の存在を期待して再結晶を検討して行ったり、得られた結晶の構造をX線回折等の分光学的分析などにより特徴付けたりしようとすることは、極めて自然であると考えられるし、本願請求項3-4に記載の結晶化方法(ジオキサン+水)も、引用文献7の8頁等には、ジオキサン等の有機溶媒と水から結晶化することが記載されているから、当業者に格別困難を要するものとはいえない。そして、本願明細書および意見書に記載の本願発明の結晶多形による効果は、複数の結晶形態の間で観察されえる物理的および生物学的性質の相違の範囲であると解される。よって、上記出願人の主張は採用しない。

2.「レボノルゲストレルの結晶多形β及びその製造方法」に関する特許5809368(特願2014-561676、出願日2014.04.23、登録日2015.09.18、存続期間満了日2034.04.23)

  • 請求項1:

    粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角度2θが、2θ=13.9°±0.2°,14.5°±0.2°,21.3°±0.2°,24.9°±0.2°及び28.2°±0.2°の角度に回折ピークを有し、2θ=18.6°±0.2°の角度に回折ピークを実質的に示さず、2θ=13.9°±0.2°での回折ピークの強度をX1、2θ=14.5°±0.2°での回折ピークの強度をX2、2θ=21.3°±0.2°での回折ピークの強度をX3、2θ=24.9°±0.2°での回折ピークの強度をX4、2θ=28.2°±0.2°での回折ピークの強度をX5としたとき、X1及びX2が、X3、X4及びX5よりも強く現れるレボノルゲストレルの結晶多形β。

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