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2017.07.27 「デビオファーム v. 武田テバファーマ」 知財高裁平成29年(ネ)10016

出願経過を参酌して「オキサリプラティヌムの水溶液」の技術的範囲を判断: 知財高裁平成29年(ネ)10016

「オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」に関する特許第3547755号(本件特許)を有する控訴人(デビオファーム)が、被控訴人(武田テバファーマ)の製造、販売する各製品(被控訴人各製品)は本件発明の技術的範囲に属し、かつ、存続期間の延長登録を受けた本件特許権の効力は被控訴人各製品の生産等に及ぶ旨主張して、被控訴人各製品の生産等の差止め及び廃棄を求めるとともに、損害賠償請求を追加した事案。原判決は、存続期間が延長された本件特許権の効力が被控訴人各製品には及ばないとして控訴人の請求を棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した。

原審:

知財高裁(第2部)は、

「延長登録された特許権の効力を及ぼすに当たっては,相手方の製品が特許発明の技術的範囲に属することが前提となるところ,本件特許に係る構成要件A③の「オキサリプラティヌムの水溶液からなり」との文言は,オキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であって,他の添加剤等の成分を含まないことを意味するものと解されるから,オキサリプラチンと注射用水のほか,有効成分以外の成分として乳糖水和物を含有する被控訴人各製品は,同構成要件を充足せず,したがって,被控訴人各製品に対し延長登録された本件特許権の効力は及ばない」

と判断した。控訴棄却。以下、判決抜粋。

「本件明細書の前記記載や上記出願経過を総合的にみると,本件発明の課題は,公知の有効成分である「オキサリプラティヌム」について,承認された基準に従って許容可能な期間医薬的に安定であり,凍結乾燥物から得られたものと同等の化学的純度及び治療活性を示す,そのまま使用できるオキサリプラティヌム注射液を得ることであり,その解決手段として,オキサリプラティヌムを1~5mg/mlの範囲の濃度と4.5~6の範囲のpHで水に溶解したことを示すものであるが,更に加えて,「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加剤を含まない」ことをも同等の解決手段として示したものである。以上によると,本件発明の特許請求の範囲の記載の「オキサリプラティヌムの水溶液からなり」(構成要件A③)との文言は,本件発明がオキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であって,他の添加剤等の成分を含まないことを意味すると解するのが相当である。そうすると,被控訴人各製品は,オキサリプラチンと注射用水のほか,有効成分以外の成分として,乳糖水和剤を含有するものであるから,被控訴人各製品は,構成要件A③を充足しないものというべきである。
・・・したがって,被控訴人製品は,その余の構成要件について検討するまでもなく,本件発明の技術的範囲に属しないので,延長登録された本件特許権の効力は,被控訴人各製品に及ばない。」

上記のとおり、知財高裁第2部は、延長された特許権の効力について判断した知財高裁大合議判決(2017.01.20 「デビオファーム v. 東和薬品」 知財高裁平成28年(ネ)10046)とは異なり、知財高裁第3部の判決(2017.07.12 「デビオファーム v. ホスピーラ・ファイザー」 知財高裁平成29年(ネ)10009・平成29年(ネ)10023)と同様に、延長された特許権の効力について判断した地裁判決について触れることなく、そもそも被控訴人各製品は本件特許発明の技術的範囲に属しないと判断して本事件を決着させた。

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