2020.09.16 「メディミューン v. 国」 東京地裁令和元年(行ウ)536

Boston Pharmaceuticals社がMedImmune社から取得したMEDI7169のPCT出願、日本移行手続期間徒過でみなし取下げ・・・本件(東京地裁令和元年(行ウ)536)は、MedImmune社(原告メディミューン)が、国(被告)に対し、MedImmune社が国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったことについて、特許法184条の4第4項所定の「正当な理由」があったにもかかわらず、特許庁長官が同条3項により本件国際出願(PCT/US2015/024650)が取り下げられたものとみなして国内書面に係る手続を却下したのは違法であると主張して、上記却下処分の取消しを求めるとともに、上記却下処分についてMedImmune社がした行政不服審査法による審査請求を棄却した特許庁長官の裁決には理由付記の不備の違法があるとして、上記裁決の取消しを求める事案である。

裁判所は、本件却下処分及び本件裁決には違法があるとはいえないから、MedImmune社の請求はいずれも理由がないので、これらをいずれも棄却した。

裁判所の判断(法184条の4第4項所定の「正当な理由」の有無(本件却下処分の違法の有無)について)を以下に抜粋した(一部加筆・修正)。

本件国際出願の国内移行に関する期間管理の責任を負っていたのはBP社(Boston Pharmaceuticals Inc.)であるというべきところ,同社は,本件国際出願の国内書面提出期間を認識していたにもかかわらず,国内書面提出期間の徒過を回避するための必要な措置を何ら講じることなく,同期間を徒過させたものであって,同期間の徒過を回避するのが困難な特段の事情があったとも認められない。・・・仮に,原告の主張に基づき,RPLLP(Ropes & Gray, LLP)が本件国際出願の国内移行手続を受任していたとしても,・・・RPLLPには国内書面提出期間の徒過について「正当の理由」があるということはできない。

・・・同部門のC弁護士及びD弁護士は,同部門として行うべき上記の基本的な業務を行っておらず,その理由が客観的な状況からして合理的であるということもできない。・・・RPLLPのコーポレート部門は,本件国際出願の国内移行手続を担当する知的財産部門に対し,同手続に必要な業務を開始するように明確な指示を与えるべきところ,適時に適切な指示を与えることを怠ったというべきである。

・・・E弁護士は,上記各メールを読み落としたというのであるから,本件国際出願に係る国内書面提出期間の徒過を回避することについて,その職務に求められる基本的な注意義務を尽くしたということはできない。・・・同弁護士が父の死により精神的なショックを受けていたという事情を考慮しても,特許分野において長年のキャリアを有する同弁護士が,事務所に復帰し,その業務を再開してから本件国際出願の国内書面提出期間の末日までの約1か月半の間に,不在中に送信された電子メールを開封してその内容を確認し,必要な指示や連絡をすることすら困難な状況にあったと認めるに足りる証拠はない。そうすると,上記の事情をもって,本件国際出願の国内書面提出期間の徒過を回避することが困難な特段の事情があったということはできない。

・・・したがって,BP社及びRPLLPは,いずれも,本件国際出願に係る国内書面提出期間の徒過について法184条の4第4項所定の「正当な理由」があるということはできないので,本件却下処分が違法であるとはいうことはできない。

Boston Pharmaceuticals社から本件国際出願の国内移行手続きを明示的に委託する旨の連絡がされていなかったこと、Ropes & Gray, LLPが行うべき基本的な業務を行っていなかったこと、適時に適切な指示を与えることを怠ったこと、職務の求められる基本的な注意義務を尽くしていなかったことなどが偶然にも重なったのだろうか・・・とても信じ難い経緯である。本件国際出願は日本以外の各国(US, EP, CN, CA, KR, AU, RU等)には移行手続きされているようである。

MedImmune社は、2016年6月21日、Boston Pharmaceuticals社との間で、その名称を「IL-21に特異的な結合性分子およびその使用」とする発明について、本件特許出願に係る特許を受ける権利を含むあらゆるMedImmune社の権利、権原及び利益(関係者からは「IL21資産」又は「MEDI7169」などと呼ばれている)を譲渡等する旨の契約を締結した。

Boston Pharmaceuticals社のウェブサイトによると、抗IL-21抗体であるBOS161721(Avizakimab)がパイプラインに挙げられており、Sourceは”AstraZeneca”(MedImmune社はAstraZeneca社の完全子会社化となっている)、”Global Phase 2 Proof-of-Concept study in SLE ongoing”とある。したがって、本件国際出願に係るMEDI7169とはBOS161721(Avizakimab)のことであると推測される。

Boston Pharmaceuticals Inc.のウェブサイトより

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