2021.10.06 「マルホ v. Stay Free」 知財高裁令和3年(行ケ)10032・・・登録商標「ヒルドプレミアム」について「ヒルドイド」に類似・混同するとのマルホの主張を認めず

>前回記事から続く

前回記事: 2021.09.21 「マルホ v. 健栄製薬」 知財高裁令和3年(行ケ)10028; 令和3年(行ケ)10029・・・健栄製薬の登録商標「ヒルドマイルド」について「ヒルドイド」に類似するとのマルホの主張を認める

2021.09.21 「マルホ v. 健栄製薬」 知財高裁令和3年(行ケ)10028; 令和3年(行ケ)10029・・・健栄製薬の登録商標「ヒルドマイルド」について「ヒルドイド」に類似するとのマルホの主張を認める
>前回記事から続く前回記事「2021.08.19 「マルホ v. 健栄製薬」 知財高裁令和3年(行ケ)10030; 令和3年(行ケ)10031・・・健栄製薬の登録商標「ヒルドソフト」について「ヒルドイド」に類似・混同するとのマルホの主張を認めず」1.はじめにマルホは、健栄製薬の「ヒルマイルド」の販売等が、ヒルドイド®に係るマルホの商標権の侵害及び不正競争行為に該当すると主張して、2...
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1.はじめに

「ヒルドプレミアム50g ヘパリン類似物質 薬用クリーム」 Amazon 店舗名:素肌べっぴん館(会社名: 株式会社StayFree)のストアフロントより

マルホは、株式会社 Stay Freeが登録した商標「ヒルドプレミアム」に対して、「ヒルドイド」又は「Hirudoid」に類似する等主張して商標登録無効審判を請求した。その請求不成立審決の取消しを求めてマルホが提起した訴訟が判決に至ったので、その判決内容を本記事にて紹介する。

株式会社 Stay Freeの商品である「ヒルドプレミアム」はヘパリン類似物質を配合した医薬部外品として販売されている。

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2.背景

本件訴訟(令和3年(行ケ)10032)は、株式会社 Stay Free(被告)が商標権者である以下の商標(以下、「本件商標」という。)に対して、マルホ(原告)が請求した商標登録無効審判(無効2019-890086号)において、特許庁が請求不成立審決をしたため、マルホが審決の取消しを求めて提起した訴訟である。争点は、本件商標の登録が商標法4条1項11号又は同項15号に該当するか否かである。

登録番号 第6088573号
登録出願日 平成30年1月29日
登録査定日 平成30年9月27日
設定登録日 平成30年10月12日
登録商標 ヒルドプレミアム(標準文字)
商品及び役務の区分 第3類
指定商品 化粧品

マルホ(原告)は、次の4件の商標(以下、総称して「引用商標」という。)の商標権者であり、いずれの商標も、現在有効に存続している。

引用商標1引用商標2引用商標3引用商標4
第459931号第1647949号第6017880号第6017881号
登録商標Hirudoidヒルドイドヒルドイド
(標準文字)
HIRUDOID
(標準文字)
商品及び役務の区分第5類第5類第3類第3類
指定商品「薬剤(蚊取線香その他の蚊駆除用の薫料・日本薬局方の薬用せっけん・薬用酒を除く。),キナ塩,モルヒネ,チンキ剤,シロップ剤,煎剤,水剤,浸剤,丸薬,膏薬,散薬,錠薬,煉薬,生薬,薬油,石灰,硫黄(薬剤),鉱水,打粉,もぐさ,黒焼き,防腐剤,防臭剤(身体用のものを除く。),駆虫剤,ばんそうこう,包帯,綿紗,綿撤糸,脱脂綿,医療用海綿,オブラート」「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」並びに第1類及び第10類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品「化粧品,せっけん類」「化粧品,せっけん類」
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3.裁判所の判断

裁判所は、本件商標は商標法4条1項11号及び同項15号に該当するものとは認められないから、これと同旨の本件審決の判断は結論において誤りはないと判断し、マルホ(原告)の請求を棄却した。

(1)取消事由1(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について

ア 類否の判断基準

裁判所は、本件商標と引用商標の類否判断をする前に、商標の類否判断については取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであることの原則を示したうえで、さらに、結合商標の構成部分の一部を抽出して当該部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、特定の場合を除き、許されないというべきであるとの類否の判断基準を、最高裁判決を引用しつつ述べた。

商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。

イ 本件商標と引用商標との類否判断

裁判所は、以下のとおり、本件商標が引用商標との関係で商標法4条1項11号に該当するとはいえないと判断した。

本件商標は,「ヒルド」と「プレミアム」とを組み合わせた結合商標と解される。そして,・・・化粧品の分野において,「プレミアム」の文字は,既存品に特別な成分を配合することによって優れた商品である旨を表示するため使用されているから,本件指定商品(化粧品)との関係においては,本件商標の「プレミアム」の部分は,出所識別標識としての機能は低いと認められる。一方,「ヒルド」の部分は,後記のとおり造語と認められるから,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。

したがって,本件商標と引用商標との類否判断に当たっては,本件商標は,全体の構成文字に相応した「ヒルドプレミアム」の他,「ヒルド」の部分を抽出して引用商標と対比するのが相当である。

また,類否判断においては,まず,構成が最も類似する引用商標2及び3と対比することとする。

・・・引用商標の由来は「ドイツ語のHirudo(蛭属)とoid(~の様なもの)を組み合わせたもの」と認められるものの(甲11),そのような事実は一般的に知られておらず,辞書等に載録された既成語ではないから,本件商標のうち「ヒルド」の部分及び引用商標「ヒルドイド」は,いずれも,特定の意味合いを有しない一種の造語として理解され,特定の観念を生じない(なお,この点につき,被告は,「ヒルド」は北欧神話の女神の名前及び競走馬の産駒の名前であるからその観念を生ずる旨主張するが,インターネット上を検索すればそのような検索結果も得られたという程度のことにすぎず,化粧品の分野において取引者・需要者が「ヒルド」の語からこれらの名前を連想することを認めるに足りる証拠はない。)。したがって,観念において両者を比較することはできない。

・・・本件商標と引用商標2及び3とは,全体構成を対比した場合でも,本件商標のうち「ヒルド」の部分を抽出して対比した場合でも,観念において比較できず,外観及び称呼において明確に区別できる

そうすると,本件指定商品が「化粧品」であって,その需要者としては薬用化粧品のみならずその他の化粧品を含む一般消費者が想定されること,医薬品とは区別して販売されるものであること,必ずしも高価な商品ばかりとは限らないことなどの化粧品としての一般的・恒常的な取引の実情を考慮しても,本件商標と引用商標2及び3とは類似しないと認めるのが相当である。

以上の点からすれば,本件商標と引用商標1及び4とが類似しないことも明らかである。

(3)取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について

裁判所は、商標法4条1項15号にいう「商標」とは広義の混同を生ずるおそれがある商標を含むものと解するのが相当であるとし、また、「混同を生ずるおそれ」の有無における判断基準を、最高裁判決を引用しつつ述べ、本件商標と原告使用商標との間に混同を生ずるおそれがあるかどうかを、その基準に則して検討した結果、本件商標の登録は商標法4条1項15号に違反してされたものではないと判断した。以下に裁判所の判断を抜粋する。

ア 判断基準

商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」とは,当該商標をその指定商品等に使用したときに,当該商品等が他人の商品等に係るものであると誤信されるおそれ(狭義の混同を生ずるおそれ)がある商標のみならず,当該商品等が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(広義の混同を生ずるおそれ)がある商標を含むものと解するのが相当である。そして,「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者,需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者,需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)。

イ 本件商標と原告使用商標との類似性の程度

本件商標と原告使用商標とは,商標法4条1項11号該当性において非類似の商標である。また,原告使用商標には本件商標と共通する文字「ヒルド」が語頭にあってそれが5文字中の3文字を占めていることを考慮しても,前記のとおり,本件商標も引用商標もともに造語と認められるから何ら共通した観念は生ぜず,かえって両者とも造語であって「ヒルド」と「イド」を分離して観察する理由もないことを考慮すると,外観及び称呼における類似性の程度は低いというべきである。

ウ 原告使用商標の独創性の程度

原告使用商標は造語であり,日本語としての語感も特異なものといえるから,独創性の程度は高いといえる。もっとも,「薬剤」及び「化粧品」の指定商品について,語頭に「ヒルド」を冠した登録商標として「ヒルドシン」「HIRDSYN」が存在するから(甲14),語頭に「ヒルド」を冠した商標という意味での原告使用商標の独創性の程度は必ずしも高くない。

エ 原告使用商標の周知著名性の程度

本件商標の登録出願当時,原告使用商標は,処方薬としての原告薬剤を表示する商標として,処方薬の需要者である皮膚科の医師等の医療関係者の間において,広く知られていたものと認められる。これに対し,化粧品としての用途が,雑誌記事に取り上げられるなどして一般に知られるようになったのは,証拠上は平成26年以降である上(事実(オ)),その紹介記事の内容(別紙2)をみても,「知る人ぞ知る」という取り上げ方をされており,その時点において既に周知著名であったとはいえない。そして,これらの記事においては原告薬剤は処方薬であることへの注意喚起がなされていること(事実(オ)),原告が医師等に対して美容目的での処方をしないように啓発していること(事実(カ))も踏まえると,本件商標の登録出願(平成30年1月29日)の時点において,化粧品の需要者である一般消費者の間で,原告使用商標が周知著名であったとまではいえない。

また,・・・これらの記事が出た後に,複数の事業者からヘパリン類似物質含有商品が相次いで販売された事実,その広報宣伝において原告薬剤を引き合いに出すものや,名称に「ヒル」又は「ヒルド」を含むものが多くみられる事実は,化粧品の分野におけるヘパリン類似物質含有商品という市場自体が,原告薬剤の美容目的への流用という事態によって成立したという経緯を反映するものではあるが(例えば甲26の1(2018(平成30)年12月6日付け「日経doors」記事)の「『ヒルドイド』で知られる医療用保湿剤の成分,ヘパリン類似物質を配合した市販薬とコスメが,18年秋に相次いで登場した。背景には,化粧品代わりに求める女性が増え,健康保険財政を圧迫するまでになったという事情がある。」との記載),そのような経緯があるからといって,医療用医薬品である原告薬剤の名称としての原告使用商標が,化粧品の分野において周知著名性を獲得していたことになるものではない。

なお,本件アンケートにおいてヒルドイドの「認知度」が5割ないし6割にのぼっていた(事実(コ))としても,これらの「認知度」は,皮膚の乾燥に起因すると考えられるトラブルを抱えて何らかの皮膚薬を最近になって使用していた者の間でのものであるから(事実(コ)のa),原告薬剤が処方薬の分野で5割以上の高い市場占有率を得ていること(事実(ウ))に照らして,本件アンケートにおける「認知度」が高くなることはある程度必然的であり,化粧品の分野における一般消費者の間での周知著名性を明らかにするものではない。

オ 本件指定商品(化粧品)と原告薬剤との性質,用途又は目的における関連性の程度

効能が強く,また法的規制も厳重な順に,医療用医薬品,一般用医薬品,薬用化粧品(医薬部外品),その他の化粧品,となる。

そうすると,医療用医薬品と化粧品(薬用化粧品も含む。)との間には,一般用医薬品という別のカテゴリーの商品が存在しているから,医療用医薬品と化粧品との間における性質,用途又は目的における関連性は,必ずしも強いとはいえない。この点,医療用医薬品と一般用医薬品との間においては,スイッチOTC薬のようにその間を移行する商品もあるから,関連性が相当程度に強いといえるのとは事情を異にする。

カ 商品の取引者・需要者の共通性その他取引の実情及び本件指定商品の取引者・需要者において普通に払われる注意力について

本件指定商品(化粧品)の需要者は一般消費者であるのに対して,原告薬剤(医療用医薬品)の本来の需要者は医師及び薬剤師であるから,需要者の共通性は低い。この点,・・・美容目的で原告薬剤を購入しようとする一般消費者も一定程度は存在するものの,それは,原告自身が予定しない原告薬剤の購入目的であるから,重視すべき事情とはいえない。

キ その他の事情に関する原告の主張について

原告は,被告が「ヒルド」という奇異な文字列をあえて採用し,原告薬剤と類似する形状・配色の容器を用いて被告商品を発売したことは,本件商標の登録及び使用の動機が,周知著名な原告使用商標の顧客吸引力へのフリーライドにあることを示している旨主張する。

しかしながら,たしかに,商標法4条1項15号は,周知表示又は著名表示へのフリーライド等を防止し,商標の自他識別機能を保護することによって,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護することを目的とするものの,あくまで,同号に該当する商標の登録を許さないことにより上記の目的を達するものであって,フリーライドと評価されるような商標の登録を一般的に禁止する根拠となるものではない。

したがって,本件商標の登録及び使用の動機が,原告使用商標の顧客吸引力へのフリーライドにあることは,上記・・・のとおりの理由により本件商標が同号に該当するとはいえない旨の判断を左右しない。

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4.コメント(3つの合議体、判断は三者三様)

裁判所は、本件商標「ヒルドプレミアム」は商標法4条1項11号及び同項15号に該当するものとは認められないから、これと同旨の本件審決の判断は結論において誤りはないと判断し、マルホ(原告)の請求を棄却した。

マルホが請求している商標登録無効審判は、今回取り上げた事件を含めて5件ある。いずれも請求不成立審決となり、その取消しを求めて訴訟が提起され、知財高裁の判決に至っている(下記記事参照)。

マルホが製造販売する「ヒルドイド」

興味深い点は、無効請求不成立とされた登録商標「ヒルドソフト」、「ヒルドマイルド」、「ヒルドプレミアム」(本件商標)の審決取消訴訟が、それぞれ知財高裁の

  • 第4部(裁判官:菅野・中村・岡山)
  • 第2部(裁判官:本多・浅井・勝又)
  • 第3部(裁判官:東海林・上田・都野)

により担当され、同じ引用商標「ヒルドイド」との類否(商標法4条1項11号)、同じ原告(マルホ)使用商標「ヒルドイド」との混同を生じるおそれの有無(商標法4条1項15号)についての判断という点で共通しているにもかかわらず、本件商標を結合商標と解するかどうかや、取引の実情と需要者の認識について、3つの合議体で必ずしも同じ認定及び判断に至ったわけではないことである。

判断の分かれ目として際立つ点は、取引の実情から、需要者の間では「ヒルド」が「ヘパリン類似物質を配合した保湿剤であるヒルドイド」を想起させると認定した第2部の判断であった。

以下に、それら3つの商標についての各合議体による判断を対比した。

知財高裁合議体第4部
(菅野・中村・岡山)
第2部
(本多・浅井・勝又)
第3部
(東海林・上田・都野)
商標ヒルドソフトヒルドマイルドヒルドプレミアム
指定商品第5類「薬剤」第5類「薬剤」第3類「化粧品」
結合商標かどうか「ヒルド」と「ソフト」は不可分一体の造語として認識されるものであり分離して観察するのは相当でない。本件商標を「ヒルド」と「マイルド」の結合商標と解し、「ヒルド」部分を抽出して観察。本件商標を「ヒルド」と「プレミアム」の結合商標と解し、「ヒルド」部分を抽出して観察。
取引者及び需要者医師等医療関係者のみならず患者も含まれる。医師等医療関係者のみならず患者も含まれる。薬用化粧品のみならずその他の化粧品を含む一般消費者も含まれる。
取引の実情「取引の実情」は、商標の指定商品又は指定役務一般に係る取引に関する実情であって、特定の商品に係る「取引の実情」ではないから、原告商品の販売名「ヒルドイド」を念頭においた「取引の実情」を類否判断で考慮することは相当でない。需要者の間では、「ヒルド」は「ヒルドイド」を意味する単語として認識されていたと認め、「ヒルド」と「ヒルドイド」は、いずれも「ヘパリン類似物質を配合した保湿剤であるヒルドイド」を想起させ、観念を共通とするものと認める。本件指定商品が「化粧品」であって、医薬品とは区別して販売されるものであること、必ずしも高価な商品ばかりとは限らないことなどの化粧品としての一般的・恒常的な取引の実情を考慮。
引用商標「ヒルドイド」との類否判断引用商標「ヒルドイド」は造語であって特定の観念を生じさせず、両商標は外観において明らかに相違する。「ヒルド」は共通するものの、それに続く「ソフト」と「イド」の語数と音の違いによって両者は明瞭に聴別することができるから、両商標は、称呼において明らかに相違する。本件商標と「ヒルドイド」は、指定商品が同一で、外観、観念、称呼に共通している部分があり、同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるというほかないから、両商標は類似すると認めるのが相当である。本件商標の「ヒルド」部分及び引用商標「ヒルドイド」は、いずれも、特定の意味合いを有しない造語として理解され特定の観念を生じない。本件商標と引用商標「ヒルドイド」とは、全体構成を対比した場合でも、本件商標の「ヒルド」部分を抽出して対比した場合でも、観念において比較できず、外観及び称呼において明確に区別できる。
商標法4条1項15号該当性(混同を生ずるおそれ)の判断仮に原告使用商標が周知著名であるとしても「ヒルド」として認知されているわけではなく・・・本件商標が「薬剤」に使用されたときに、一般消費者を含む需要者及び取引者がその取引において通常払われる注意をもってすれば、その出所について混同を生じるおそれがあるとはいえない。判断せず。本件商標と原告使用商標「ヒルドイド」との類似性の程度、周知著名性や独創性の程度、商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者、需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、本件商標の指定商品等の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断し、本件商標と原告使用商標との間に混同を生ずるおそれは生じないと判断。
判決請求棄却
(マルホの敗訴)
審決を取消す
(マルホの勝訴)
請求棄却
(マルホの敗訴)
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5.おわりに

株式会社Stay Freeの「ヒルドプレミアム」の販売等に対してヒルドイド®に係るマルホの商標権による侵害訴訟が提起されているかどうかは定かでないが、マルホは、健栄製薬の「ヒルマイルド」の販売等がヒルドイド®に係るマルホの商標権の侵害及び不正競争行為に該当すると主張して、2021年1月21日付で、大阪地方裁判所に、「ヒルマイルド」の販売差止等を求めて仮処分の申立てを行っている(2021.01.22 マルホ press release: 健栄製薬株式会社に対する販売差止等仮処分命令申立てに関するお知らせ)。

健栄製薬の「ヒルマイルド」に対する販売差止め請求についての地裁判決の結果がどうであれ、知財高裁に控訴された場合に、どの合議体が担当するかによって判断が大きく変わる可能性があるかもしれない。

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