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肺炎球菌結合型ワクチンを巡るグローパルな特許紛争でファイザーとMSDが和解

肺炎球菌結合型ワクチンを巡りファイザーとメルク・シャープ・アンド・ドーム(以下「MSD」と略す。)との間で勃発していた特許紛争は、実質的にはファイザーの勝訴的和解で決着しました。

肺炎球菌ワクチンのグローバル市場は、2026年以降には100億米ドルに迫ろうかという超巨大市場であり、その覇権を握るのはファイザーなのかそれともMSDが食い込んでいくかのかが注目されていました。

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1.肺炎球菌ワクチン

(1)肺炎球菌ワクチンのグローバル市場

肺炎球菌ワクチンのグローバル市場は、2026年以降には100億米ドルに迫るだろうとの予想がされています。

参考:

(2)ファイザーの肺炎球菌結合型ワクチン・プレベナー13®

プレベナー13水性懸濁注(ファイザー社ウエブページより)

特に、ファイザーが販売している13価肺炎球菌結合型ワクチン・プレベナー13®の2020年度グローバル売上は、約58億米ドルであり、さらに今年6月には、その後継品である20価肺炎球菌結合型ワクチン(Prevnar20™)が米国FDAで承認されました。

参考:

(3)MSDの肺炎球菌結合型ワクチン・Vaxneuvance™

MSDがファイザーの特許を無効にしたかった理由は、MSDが今年7月に米国FDAから承認を取得した15価肺炎球菌結合型ワクチン・Vaxneuvance™のFTO(freedom-to-operate)を確保したいということにありました。

MSDとしては、すぐにでもVaxneuvance™を販売し、少しでもファイザーが大部分を占める肺炎球菌ワクチンマーケットのシェアを奪いたいところですが、そのためにはファイザーの特許の存在が障害となっていました。

参考:

    • 2021.08.09 Merck SEC Filing 10-Q

The Company is involved in litigation challenging the validity of several Pfizer Inc. (Pfizer) patents that relate to pneumococcal vaccine technology in the U.S. and several foreign jurisdictions. The resolution of this litigation may result in the payment of royalties or other financial consideration to Pfizer.

– 2021.08.09 Merck SEC Filing 10-Qより

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2.肺炎球菌結合型ワクチンを巡るファイザーとMSDとの間の特許紛争

肺炎球菌結合型ワクチンを巡るファイザーとMSDとの間の訴訟事件や関係については、以下の記事

2021.05.17 「メルク・シャープ・アンド・ドーム v. ワイス」 知財高裁令和2年(行ケ)10015

に紹介しています(特に項目6(7)及び7参照)

2021.05.17 「メルク・シャープ・アンド・ドーム v. ワイス」 知財高裁令和2年(行ケ)10015
発明の効果に係る発明特定事項を相違点として認定し、これが容易想到でないとして発明の進歩性を肯定した審決の判断に誤りがないとされた事例・・・肺炎球菌ワクチン市場の覇権を握るのはファイザーそれともMSD?1.はじめにプレベナー13®(Prevnar 13/Prevenar 13)は、13種類の肺炎球菌莢膜ポリサッカライド(血清型 1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19...

上記事件は、「物の発明」における「発明の効果」に係る発明特定事項の意義について議論ある判決であり、上告・上告受理申立てがされ、最高裁で審理されることに期待が高まっていたものでしたが(残念ながら上告取下げ・上告受理申立て取下げ) 、その事件の背景には巨大な肺炎球菌結合型ワクチン市場を巡るグローバルな覇権争いがありました。

肺炎球菌ワクチン市場はファイザー/ワイスの肺炎球菌”結合型”ワクチンPrevnar13®が優勢である状況にあり、MSDは、”結合型”ワクチンとしてはファイザー/ワイスのPrevnar13®やPrevnar20の後を追い駆けている新参者です。MSDの肺炎球菌ワクチン事業にとって、Prevnar関連特許群に対するFTOを確保していくことは極めて重要な課題であったといえます。

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3.和解の内容

2021年月9月23日、MSDは、Vaxneuvance™を含むMSDの肺炎球菌結合型ワクチンに関するグローバルな特許侵害訴訟について、ファイザーと和解する旨、その主な和解条件を発表しました。

KENILWORTH, N.J., Sept. 23, 2021 – Merck (NYSE:MRK), known as MSD outside the United States and Canada, announced today it  has entered into a settlement and license agreement with Pfizer Inc., resolving all worldwide patent infringement litigation related to the use of Merck’s investigational and licensed pneumococcal conjugate vaccine (PCV) products, including VAXNEUVANCETM (Pneumococcal 15-valent Conjugate Vaccine). 

Under the terms of the agreement Merck will make certain regulatory milestone payments to Pfizer, as well as royalty payments on the worldwide sales of its PCV products as follows:

  • 7.25% of net sales of all Merck PCV products through and including Dec. 31, 2026.
  • 2.5% of net sales of all Merck PCV products from Jan. 1, 2027 through and including Dec. 31, 2035.

以上のとおり、肺炎球菌結合型ワクチンを巡るファイザーとMSDとの間の特許紛争は、MSDがファイザーに対して一定のマイルストンでの支払いと全世界売上についてのロイヤルティを一定期間支払いを行うという、実質的にはファイザーの勝訴的和解で決着しました。

MSDのVaxneuvance™がファイザーのプレベナー13®で占められた肺炎球菌ワクチンマーケットのシェアをどれだけ奪取するか、その後継品Prevnar20™との競争においてもどれだけマーケットに行きわたるか、今後の両社の競争はそれぞれの製品力・販売力次第ということになりそうです。

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