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2021.05.17 「メルク・シャープ・アンド・ドーム v. ワイス」 知財高裁令和2年(行ケ)10015

発明の効果に係る発明特定事項を相違点として認定し、これが容易想到でないとして発明の進歩性を肯定した審決の判断に誤りがないとされた事例・・・肺炎球菌ワクチン市場の覇権を握るのはファイザーそれともMSD?

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1.はじめに

プレベナー13水性懸濁注(ファイザー社ウエブページより)

プレベナー13®(Prevnar 13/Prevenar 13)は、13種類の肺炎球菌莢膜ポリサッカライド(血清型 1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F 及び 23F)を型別に無毒性変異ジフテリア毒素(CRM197)と結合させたものを含む13価肺炎球菌結合型ワクチン(Pneumococcal 13-valent Conjugate Vaccine)である。 

ファイザーが販売しており、2020年度のグローバル売上は、US$5,850mである(Pfizer SEC filing 2020 Q4/10-Kより)。

本件訴訟(知財高裁令和2年(行ケ)10015)は、ワイス(現・ファイザー)が特許権者であるプレベナー13®に関する特許に対して、15価肺炎球菌結合型ワクチンV114の開発を進めているメルク・シャープ・アンド・ドーム(以下、「MSD」と略す。)が、同特許の無効を求めている事件である。

本判決は、「発明の効果」に係る発明特定事項を相違点として認定し、これが容易想到でないとして発明の進歩性を肯定した審決の判断に誤りがないとされた事例として、法律実務の観点から注目すべきものであるとともに、この肺炎球菌結合型ワクチン特許を巡る紛争は、ファイザーとMSDとの間でグローバルに勃発しており、今後のグローバル訴訟戦略、ひいては2026年以降には100億米ドルに迫ろうかという世界での肺炎球菌ワクチン市場(参考: Evaluate Vantage, Amy Brown, “Merck and Pfizer square up for pneumococcal vaccine fight” (June 23, 2020))の覇権を握るのはどちらなのか、を占うものという観点でも注目すべき判決といえる。

本稿では、本件訴訟における裁判所の判断を紹介し、その争点の一つとなった「発明の効果に係る発明特定事項を相違点として認定」することについて考察したい。

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2.事件の背景

ワイス(被告)が特許権者である「免疫原性組成物を安定化させ、沈殿を阻害する新規製剤」に関する特許第6192115号について、MSD(原告)が無効審判を請求した(無効2018-800090号)が、本願発明と引用発明との相違点につき当業者は想到し得ない等、進歩性欠如の無効理由は認められないとして請求不成立の審決がなされたため、MSDが本件審決の取消しを求めて訴訟を提起した。

本件特許に係る特許権の20年の存続期間満了日は2027年4月19日である。プレベナー13®の効能効果追加承認(2020.05.29)に基づいて特許権の存続期間延長登録出願(特願2020-700365)がされている。

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3.本件特許発明

請求項1は、肺炎球菌(S. pneumoniae)の13種類の血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F 及び 23F)を型別に無毒性変異ジフテリア毒素(CRM197)と結合させたもの、リン酸アルミニウム、pH調節剤(pH:5.3~6.3)を含有するプレベナー13®の特徴と一致しているね(プレベナー13 インタビューフォームより)。プレベナー13®のプレフィルドシリンジ容器(材質はガラス)にシリコーン処理されているかは不明だけれど、通常、ガラスシリンジには潤滑油としてシリコーンオイル処理されていると考えられるね。

【請求項1】

シリコーン処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの、シリコーンにより誘発される凝集を阻害する、シリコーン処理された容器に入れられている製剤であって、

(ⅰ)pH緩衝塩溶液、ここで該緩衝液は、約3.5から約7.5のpKaを有する、

(ⅱ)アルミニウム塩および

(ⅲ)CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ(S.pneumoniae)血清型4多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6B多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型9V多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型14多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型18C多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19F多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型23F多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型1多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型3多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型5多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6A多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型7F多糖類およびCRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19A多糖類を含む多糖類-タンパク質コンジュゲート、

を含む製剤。

赤字の文言が、相違点かどうか争われた「発明の効果に係る発明特定事項」だよ。

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4.審決の判断

審決が認定した引用発明は、本件特許の優先日に既に上市されていた医薬製剤(「7価プレベナー」)から認定される発明であり、上記(ⅱ)については一致し、同(ⅲ)については、肺炎球菌CRMコンジュゲートではあるが肺炎球菌多糖類の血清型が7種類(7価)である点で相違していた(相違点1)。また、本件発明の「シリコーンによる誘発される凝集を阻害する」との発明特定事項は、引用発明には存在しない(相違点4)。

審決は、上記相違点に係る本件発明の構成はいずれも容易想到ではないと判断して、本件発明が進歩性を欠くとはいえず、無効請求は成り立たないとした。

本件優先日前に公然実施された発明(公知発明)である「7価プレベナー」は、審判においてインターネットアーカイブの検索結果に関する宣誓供述書等が提出されて、引用発明として認定されたんだね。

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5.裁判所の判断

本判決は、審決の判断に誤りはないとして、MSD(原告)の請求を棄却した。

本判決中、相違点4(本件発明の「シリコーン処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの,シリコーンにより誘発される凝集を阻害する」との発明特定事項は、引用発明には存在しない点)の容易想到性に関する判断の要旨は次のとおりである。

(1)相違点4に係る発明特定事項の技術的意義について

本件明細書の記載を踏まえると,本件発明の製剤がシリコーン誘発凝集の阻害という効果を奏するという発明特定事項の技術的意義は,次のように理解される。

① シリコーン誘発凝集には,肺炎球菌の血清型を問わず,遊離の肺炎球菌コンジュゲートが関与している。

② 本件発明の製剤が(i)~(ⅲ)の組成を備えることにより,溶液中においては,肺炎球菌CRMコンジュゲートとアルミニウム塩とが結合し,遊離の肺炎球菌CRMコンジュゲートの量が相対的に減少した状態にある。

③ 上記②の状態にあることにより,上記①の原理によるシリコーン誘発凝集が阻害される。

(2)引用発明の技術的意義について

引用発明の製剤(「7価プレベナー」)の製品情報には,同製剤においては7価の肺炎球菌CRMコンジュゲートがアルミニウム塩に吸着されている旨の記載があるが,アルミニウム塩への吸着の技術的意義について開示又は示唆する記載はない。また,本件証拠中の諸文献にも,当該技術的意義に関する記載は見出せない。

(3)相違点4の容易想到性

上記(1)のとおり,相違点4に係る本件発明の発明特定事項,すなわち「シリコーン処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの,シリコーンにより誘発される凝集を阻害する」は,肺炎球菌CRMコンジュゲートとアルミニウム塩が結合して,溶液中の遊離肺炎球菌CRMコンジュゲートの量が所期の量まで減少した状態であることにより,遊離肺炎球菌CRMコンジュゲートが関与するシリコーン誘発凝集が阻害されることを意味する。

これに対し,上記(2)によれば,7価プレベナーの製品情報に接する当業者は,アルミニウム塩に吸着された肺炎球菌CRMコンジュゲートが7価プレベナーに含まれることを認識するにとどまり,その溶液中における遊離の肺炎球菌コンジュゲートの有無及び量を,遊離の肺炎球菌コンジュゲートが関与するシリコーン凝集という課題との関係で認識することは容易ではなかったといえる。また,本件発明の製剤中における遊離の肺炎球菌CRMコンジュゲートの量は,7価プレベナーに対して追加する6種の血清型の肺炎球菌CRMコンジュゲートの量によって変わり得るし,追加する各血清型それぞれのアルミニウム塩への吸着しやすさによっても異なるから,当業者は,本件発明の組成を有する製剤の溶液中に遊離の肺炎球菌CRMコンジュゲートが存在するかどうかさえ引用発明から予測できず,その結果,遊離の肺炎球菌CRMコンジュゲートが関与するシリコーン誘発凝集が本件発明の組成の製剤において阻害されるか否かも予測できない。

以上によれば,相違点4に係る発明特定事項,すなわち,シリコーン処理された容器中において肺炎球菌CRMコンジュゲートのシリコーン誘発凝集を阻害するために,製剤が(ⅰ)~(ⅲ)の組成を備えることは,当業者にとって,引用発明から容易に想到し得るものではない。

(4)原告の主張について

ア 実質的相違点ではない旨の主張について

原告は,7価プレベナーの製品情報に接した当業者は,7価プレベナーにおいてもシリコーン誘発凝集が何らかの理由により阻害されていると理解したこと,7価プレベナーにおいて生じていたリン酸アルミニウムによるシリコーン誘発凝集の阻害は,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートにおいても,程度はともかくおのずと生ずること,からすれば,相違点4は実質的には一致点であり,相違点とはならない旨主張する。

しかしながら,7価プレベナーの製品情報における「ワクチンは……投与の前に視覚的に物理面のいかなる粒子状物質や変化も詳しく調べられなければならない」との記載は,注射用薬剤の使用に先立っての一般的な注意事項として,製造上や保管上の不具合により変質が生じていないか確かめるべきことの指示としても理解できる記載であるから,多糖類-タンパク質コンジュゲート製剤のシリコーン凝集についての知見が存在しなかった本件優先日当時の当業者は,上記記載に接して,原告主張のように,凝集が生じ得るけれども通常はそれが阻害されていることを理解し得るとは必ずしもいえないし,ましてや,その凝集がシリコーンにより誘発されるものであるかどうかは断定し難いものといわざるを得ない。これに対し,本件発明は,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートの凝集の原因をシリコーン誘発凝集であると明確に特定した上で,その凝集を阻害することを発明特定事項としているのであるから,この点において,引用発明とは相違が存するものといえる。

したがって,審決が相違点4を認定したことに誤りはなく,原告の上記主張は採用できない。

イ シリコーン誘発凝集阻害という課題の発見の容易性について

原告は,タンパク質製剤におけるシリコーン誘発凝集は知られており,タンパク質の凝集が多糖類-タンパク質コンジュゲート凝集の原動力であることを当業者は理解していたから,引用発明に6種の血清型の肺炎球菌CRMコンジュゲートを追加することによりタンパク質含量が増える13価の肺炎球菌CRMコンジュゲート製剤でシリコーン誘発凝集が生じることは予見可能であった旨主張する。

しかし,原告がその主張の根拠とする公知文献は,多糖類-タンパク質コンジュゲートの構造的不安定性に関連する凝集について記載するのみであるから,これらの公知文献からは,多糖類-タンパク質コンジュゲートのシリコーン誘発凝集が本件優先日当時に課題として当業者に認識されていたとはいえない。

したがって,原告の上記主張は採用することができない。

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6.「物の発明」における「発明の効果」に係る発明特定事項の意義

今回の判決から提起される問題点は、「物の発明」において「発明の効果」に係る発明特定事項は、本願発明全体の構成との関係でどのように把握・認定され、引用発明との差異をどのように判断するのか、ということである。この問題点の本質は、「発明の効果」がその「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であるならば、引用発明との関係で発明の実体的な構成の差異にはなり得ないことにある。当然ながら、その判断は、特許発明の技術的範囲をどう解釈するかという判断にも大きく影響を与えることになる。

本稿では、以下に、「発明の効果」を発明特定事項とする「物の発明」において、どのように新規性及び進歩性を判断するのが妥当なのか、「発明の効果」を発明特定事項とする相違点4の判断について争われた本事件をもとにした仮想事例から、2つの考え方(本稿では便宜上「効果限定説」及び「物同一説」という。)を挙げた。

そして、引用発明との唯一の相違点が「発明の効果」に係る発明特定事項であり、本願発明自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であるならば、引用発明にも同じく備わっている機能や特性であって、引用発明と本願発明は「物の発明」として同一であり新規性は欠如しているとする考え方、また、進歩性判断においても、「発明の効果」に係る発明特定事項が本願発明自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であるならば、それを引用発明との実質的な相違点とせずに、発明の効果の顕著性の問題として判断するという考え方、すなわち「物同一説」に基づく考え方、が妥当であり、本事件において、「発明の効果」に係る発明特定事項(相違点4)が実質的な相違点として認定されるべきか否かについてはまだ議論の余地があると考える。参考となる判決等も紹介する。

(1)相違点4が唯一の相違点である場合に新規性をどう考えるか

例えば、「プレベナー13®が優先日前に知られていた」(引用発明)と仮定して、その製剤内で「多糖類-タンパク質コンジュゲートのシリコーン誘発凝集が抑制されていること(相違点4)」はプレベナー13®自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であるが、その事実を当業者は優先日に認知しておらず、容易想到でもはなかった、という事例において、本願発明の新規性をどのように判断するか。考え方は大きく二つあるだろう。

一つは、その「発明の効果」に係る発明特定事項(相違点4)は、引用発明において認知されていなかったという理由で実質的な相違点であるとされ、新規性が認められるという考え方である。「発明の効果」が実質的な相違点として認定される結果として発明の構成に「効果」が意義を与えることになることから、本稿では、この考え方を、便宜上「効果限定説」と呼ぶこととする。

もう一つは、その「発明の効果」に係る発明特定事項(相違点4)は、本願発明である「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であるならば、引用発明にも同じく備わっている機能や特性であって、また「物」を特定するのに役立っていない記載でもあるため、実質的な相違点としては認められず、引用発明と本願発明は「物の発明」として同一であり新規性は欠如しているという考え方である。引用発明の製剤中で起きている凝集抑制効果という特性が後になって明らかにされても、その特性を備えていたはずの引用発明自体は、既に優先日において公に知られて、パブリック・ドメインとなっているのであるから、誰でも実施できるはずである、というのが後者の考え方である。本稿では、この考え方を便宜上「物同一説」と呼ぶこととする。

パブリック・ドメインとなった「物の発明」と実体的構成が同じ「物の発明」が特許として登録されることによって、パブリック・ドメインとなっている発明を第三者が実施することに対して後発的に排他権が及ぶこととなりかねない状況は、「産業の発展に寄与することを目的とする」特許法の法目的の観点から適切ではないように思われ、「効果限定説」よりも「物同一説」が妥当であると思われる。

最近、「効果限定説」を前提とした判決がしばしば見られる。しかし、それら判決では、「物同一説」の是非にまで踏み込んで比較検討しているわけではない(2020.12.14 「ロシュ v. アムジェン」 知財高裁令和元年(行ケ)10076(後述(3)イ))。「物の発明」における「発明の効果」に係る発明特定事項については、その「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であるか否かを注意深く検討したうえで、引用発明との実質的な相違点として認定されるべきか否かが判断されるべきである。

(2)相違点4以外は容易想到である場合に進歩性をどう考えるか

前記(1)にて、「物の発明」における「発明の効果」に係る発明特定事項(相違点4)が唯一の相違点である場合には、その特定事項(相違点4)は、その「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であるため実質的な相違点としては認められないとされ、引用発明と本願発明は「物の発明」として同一であり新規性は欠如しているという考え方(「物同一説」)が妥当であると述べた。パブリック・ドメインとなっている発明を第三者が実施することに対して後発的に排他権が及ぶこととなりかねない状況は、「産業の発展に寄与することを目的とする」特許法の法目的の観点から適切ではないように思われるからである。

では、相違点4以外の発明特定事項が全て引用発明から容易想到である場合(一致ではない場合)に進歩性の判断はどう考えたらいいだろうか。

例えば、本願発明の製剤内で「多糖類-タンパク質コンジュゲートのシリコーン誘発凝集が抑制されていること(相違点4)」は本願発明の「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であるが、その事実だけについては、当業者は優先日に認知しておらず、容易想到でもはなかった、という事例(本事件)において、「相違点4以外の本願発明の特定事項は、優先日前に知られていた『7価プレベナー』から容易に想到できるものだった」と仮定すると、本願発明の進歩性はどのように判断されるべきかを考えてみたい。

前記(1)の新規性の判断の考え方と同様に、考え方はやはり大きく二つあるのではないだろうか。

一つは、その「発明の効果」に係る発明特定事項(相違点4)は、引用発明において認識されていなかったという理由で実質的な相違点であるとされ、さらにその点は当業者が容易に想到することもできなかった、という理由で進歩性は認められるという考え方である。本判決がそうであり、前記「効果限定説」の考え方である。

もう一つは、その「発明の効果」に係る発明特定事項(相違点4)は、本願発明である「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であって、また「物」を特定するのに役立っていない記載でもあるため、「物の発明」の実体的な構成になり得ないとして、実質的な相違点として取り上げることはせず(「物同一説」)、むしろ発明の効果の顕著性の判断において検討される、という考え方である。

ここで、「発明の効果」に係る発明特定事項の意義は慎重に検討されるべきである。なぜなら、「発明の効果」が「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性なのであれば、前記の通り「物の発明」の実体的な構成になり得ないが(「物同一説」)、「発明の効果」が「物」の使い道・使い方という意味での医薬用途の提供なのであれば、いわゆる医薬用途発明の実体的な構成としての発明特定事項の意義を持つからである。このように、「発明の効果」に係る発明特定事項による限定が請求項に係る発明を特定するための事項としてどのような意味を有するかを慎重に検討しなければ、特許性の判断に大きく影響することになる。本稿では、本願発明の製剤内で「多糖類-タンパク質コンジュゲートのシリコーン誘発凝集が抑制されていること(相違点4)」を、本願発明である「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であるとの前提で議論を進めてきたが、これを「物」の使い道・使い方という意味での医薬用途の提供であると考える人は少ないのではないだろうか。

以上、「物の発明」において「発明の効果」に係る発明特定事項が引用発明との相違点である場合の「物同一説」に基づく新規性・進歩性判断の考え方をまとめると以下の表1のようになる。

「発明の効果」に係る発明特定事項「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性である場合「物」の使い道・使い方という用途の提供である場合
(1)唯一の相違点である場合実質的な相違点ではなく、「物」として同一(新規性なし)実質的な相違点として進歩性の有無を判断する
(2)他の相違点は容易想到である場合実質的な相違点ではなく、発明の効果の顕著性の問題として進歩性の有無を判断する実質的な相違点として進歩性の有無を判断する
表1 「物の発明」において「発明の効果」に係る発明特定事項が引用発明との相違点である場合の「物同一説」に基づく新規性・進歩性判断の考え方(まとめ)

(3)「発明の効果」(用途)を提供する医薬用途発明の意義

特許・実用新案審査基準 第III部 特許要件 「第4節 特定の表現を有する請求項等についての取扱い」には、以下の説明がある。

2.2.1 その物が固有に有している機能、特性等が請求項中に記載されている場合

この場合は、その物が公知であるならば、審査官は、その物について、新規性を有していないと判断する。請求項中に記載された機能、特性等は、その物を特定するのに役に立っていないからである。

例1:抗癌性を有する化合物 X (2.1.1の例1と同じ。)
(説明)
請求項に係る発明は、「化合物 X」そのものを意味しているものと認定される。したがって、化合物 X が公知である場合は、この請求項に係る発明の新規性は否定される。

医薬用途発明については、特許・実用新案審査ハンドブック 第3章 医薬発明に以下のように整理されている(医薬用途発明を審査基準では「医薬発明」という。)。

医薬発明は、ある物(注 1)の未知の属性の発見に基づき、当該物の新たな医薬用途(注 2)を提供しようとする「物の発明」である。・・・

(注 2) ここでいう「医薬用途」とは、以下の(i)又は(ii)を意味する。
(i) 特定の疾病への適用
(ii) 投与時間・投与手順・投与量・投与部位等の用法又は用量(以下「用法又は用量」という。)が特定された、特定の疾病への適用

医薬発明における「医薬用途」は、「特定の疾病への適用」という点で、「発明の効果」に係る発明特定事項に該当するが、あくまでも使い道・使い方という意味での用途の提供であって、その「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性ではない。

しかし、知られた医薬発明がどのようなメカニズムで体内で作用しているかや、知られた医薬製剤がどのような性質なのかという意味での「発明の効果」に係る発明特定事項(そもそも「効果」と呼ぶべきかは躊躇するが・・・)は、その「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であって、新たな用途を提供するものとはいえないだろう(上記審査基準第III部第4節2.2.1の考え方と同様に判断されるものだろう)。

すなわち、その「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であって、新たな用途を提供するものとはいえない類の「発明の効果」に係る発明特定事項については、「物の発明」の実体的な構成になり得ないとして、実質的な相違点として取り上げないという「物同一説」の考え方は、前記審査基準第III部第4節2.2.1に記述された考え方とも整合がとれると考えられる。

用途発明を巡る新規性の在り方については、以下の文献等において問題提起や判決比較等がされている。

(4)参考判決

ア 2014.12.18 「ユーロ-セルティック v. 特許庁長官」 知財高裁平成26年(行ケ)10059・・・「保存安定性を備えた」という相違点が判断された事例

過去に、容器に関連した安定性の課題を解決した医薬製剤発明について効果に係る発明特定事項が問題となった事件がある。

2014.12.18 「ユーロ-セルティック v. 特許庁長官」 知財高裁平成26年(行ケ)10059」は、本願発明では、乾燥リポソーム製薬組成物を、(A)「プラスチック材料製のパッケージ中に」、かつ、(B)「保存安定性を備えたパッケージ」に含む(保存する)ことが特定されているのに対し、引用例1発明ではこのような特定はされていない点が相違点であったが、相違点(A)が容易に想到し得たものであれば同時に相違点(B)の構成も達成されるものであるから容易に成し得たものであるとして、進歩性が否定された事例である。

2014.12.18 「ユーロ-セルティック v. 特許庁長官」 知財高裁平成26年(行ケ)10059
保存安定性に優れたポビドンヨード調製物のパッケージ: 知財高裁平成26年(行ケ)10059【背景】「ヨードホールを含有する乾燥リポソーム製薬組成物を含むパッケージ及び同組成物を適用する方法」に関する特許出願(特願2004-129590; 特開2004-346064)拒絶審決(不服2011-14812)取消訴訟。争点は進歩性。請求項1:プラスチック材料,紙又は厚紙製のパッケージ中に,ヨ...

上記参考判決では、他の発明特定事項が容易に想到し得たものと判断した結果として、発明の効果に係る発明特定事項(「保存安定性を備えた」)についての構成は実質的な相違点と判断しながらも、それは同時に達成されるから容易に成し得るとのロジックで結論を導いている。「発明の効果」に係る発明特定事項についての判断を最後に評価するというステップとすることで、本願発明の実体的構成が容易想到でもなお、効果に係る構成が付加されていることで当業者は容易に本願発明に到達できないのかどうかを判断している。

引用例1発明におけるヨードホール含有乾燥リポソーム製薬組成物について,保存容器の素材の如何にかかわらず本願発明の「保存安定性を備えた」を満足するとして,相違点(B)を実質的な相違点ではないと判断した審決には,この点において誤りがあるといわざるを得ない。~しかしながら,引用例1発明において,相違点(A)に係る本願発明の構成とすることに当業者は容易に想到し得たものであり,それと同時に相違点(B)に係る本願発明の構成も達成されるものであるから,引用例1発明において,相違点(B)に係る本願発明の構成とすることも当業者が容易になし得たものといえる。

上記参考判決のロジックステップとは異なり、本判決では、他の発明特定事項の容易想到性を判断するステップとは独立(または先行)して、「発明の効果」に係る発明特定事項(「シリコーンにより誘発される凝集を阻害する」)についての容易想到性を判断した。しかし、上記参考判決に倣って本判決も判断していたとしたら、「シリコーンにより誘発される凝集を阻害する」ことは同時に達成されるから当業者は容易に成し得る・・・という実際とは反対の結論になっていたかもしれないと想像することに違和感はないように思える。

イ 2020.12.14 「ロシュ v. アムジェン」 知財高裁令和元年(行ケ)10076・・・相違点は引用発明に内在する作用効果にすぎないのか争われた事例

「発明の効果」に係る発明特定事項が、その「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であるならば、「物の発明」においては実体的な構成ではないことから、そのような発明特定事項が相違点であることを前提に引用発明との関係を議論することは妥当ではなく、その発明特定事項の意義は発明全体の観点から慎重に検討されるべきである。

以下の参考事件は、本願発明と引用発明との相違点について「あくまで先願発明に内在していた効果にすぎないところ,それによって新たな用途が見出されたわけではない」と原告が主張し、新規性が争点の一つとなった事件であった。出願時には知られていなかった内在的特性(inherent feature)を構成に取り入れた物の発明についての新規性をどのように取り扱うかという重要な論点について、裁判所は「出願日より前に・・・知られていたとの証拠はない」として原告の上記主張を退けることによって真正面から検討しなかったため、判断プロセスに大きなフラストレーションを感じさせる判決となった。

2020.12.14 「ロシュ v. アムジェン」 知財高裁令和元年(行ケ)10076・・・相違点は引用発明に内在する作用効果にすぎないのか争われた事例

2020.12.14 「ロシュ v. アムジェン」 知財高裁令和元年(行ケ)10076・・・相違点は引用発明に内在する作用効果にすぎないのか争われた事例
1.はじめに本件は、本願発明と引用発明との相違点について「あくまで先願発明に内在していた効果にすぎないところ,それによって新たな用途が見出されたわけではない」と原告が主張し、新規性が争点の一つとなった事件である。出願時には知られていなかった内在的特性(inherent feature)を構成に取り入れた物の発明についての新規性をどのように取り扱うかという重要な論点について、裁判所は「出願日...

(5)「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」と「プロダクト・バイ・効果・クレーム」

最高裁は、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの発明の要旨の認定のあり方を、物同一説の立場を取って決着させた。プロセスによる発明特定事項がどうであろうと「物」が同じ「物」なら原則同一なのである(2015.06.05 「テバ v. 東理」 最高裁平成24年(受)2658)。

では、「発明の効果」に係る発明特定事項で限定されている又は定義されている「物」のクレームはどうだろうか。その特定事項がその「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性であるならば、「物」として同一であると考える「物同一説」について上述した。このように「発明の効果」に係る発明特定事項で限定されている「物の発明」の要旨の認定の在り方を、「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」において採用されている物同一説と同様に考えることも妥当なように思える。「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」に対応して「プロダクト・バイ・効果・クレーム」とでも呼ぶべきか。

「シリコーンにより誘発される凝集を阻害する」という構成を発明として表現するには、「物の発明」よりもむしろ「方法の発明」として表現することが親和性が高いように思われる。しかし、本件発明が、「・・・シリコーンにより誘発される凝集を阻害する方法」や「・・・シリコーンにより誘発される凝集を阻害することによる製剤の安定化方法」であったとしても、「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性にすぎず、実質的な相違点ではないのでは?という疑問点は依然として残るように思われる。

(6)まだ、議論は尽くされていない

本判決や原審決を見る限り、原告は、進歩性の問題であることを前提に、相違点4の不存在を主張したが、その要点は「当業者は、公知発明においても何らかの理由によりシリコーン誘発凝集が阻害されていたと理解する」との主張に留まっており、「発明の効果」が「発明特定事項」として採用されるべきかどうかという点で論じている訳ではない。そのためか、裁判所も、「記載に接して,原告主張のように,凝集が生じうるけれども通常はそれが阻害されていることを理解し得るとは必ずしもいえない」と述べて「公知発明とは相違が存するものといえる」とだけ判断した。つまり、裁判所は、「発明の効果」が「発明特定事項」として採用されるべきかどうかという点で検討しているわけではない。にもかかわらず、知財高裁のホームページに掲載されている判決要旨にはやや大袈裟にも「発明の効果に係る発明特定事項を相違点として認定し・・・審決の判断に誤りがないとされた事例」とのタイトルで紹介されている。このことは、知財高裁(第3部)が、『具体的個別事案としての相違点の存否ではなく、そもそも「発明の効果」が「発明特定事項」として採用されるべきか否かという大問題を争ってほしかった』とのメッセージを発しているように感じられるのは、私の穿った見方であろうか。

内在する効果や性質を発明特定事項とした発明について問題となった過去の事件を、ブログ右サイドバー「Categories(カテゴリーを選択)」からスクロールしてLegal issues下「Inherent anticipation」をクリックすれば見ることができるよ。

(7)その他

ア 別件無効審判請求事件(無効2020-800028)

本件特許(第6192115号)については別件無効審判請求事件(請求人MSD、無効2020-800028)が審理中であり、2021年5月11日に口頭審理が開催されたところである。

請求人は、13価を超える血清型を含む製剤について、「本件特許明細書には、13価を超える血清型を含む肺炎球菌CRM197コンジュゲートワクチンが開示されておらず、そのようなワクチンの免疫原性や有効性については当業者が理解することができない。従って、被請求人の主張する技術常識及び本件特許明細書の記載を基にすると、当業者は13の特定の血清型以外の抗体を含む免疫原性のある、又は、有効は製剤を実施することはできない。」と主張する等、実施可能要件違反による無効理由でも争っている。

イ 他の日本ファミリー特許

本件特許(第6192115号)の日本における出願ファミリーとして、他に以下の2つの特許が登録されている。いずれも無効審判請求はされていないことから、MSDにとって脅威な存在であるのは、ファミリー特許の中でも本件特許のみということになる。

  • 特許第5612305号・・・存続期間延長登録出願(2020-700364)をしていることからプレベナー13®を保護すると考えられる。

【請求項1】
多糖類-タンパク質コンジュゲートを安定化させる製剤であって、(i)pH緩衝塩溶液、ここで該緩衝液は、3.5から7.5のpKaを有する、(ii)最終濃度が製剤の0.001%から0.05%ポリソルベート80重量/体積であるポリソルベート80、および(iii)CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ(S.pneumoniae)血清型4多糖類・・・(略)・・・を含む多糖類-タンパク質コンジュゲート、を含む製剤。

  • 特許第6321094号・・・髄膜球菌ワクチンに関する発明であり、プレベナー13®を保護しない。)

【請求項1】
髄膜球菌(N.meningitidis)2086タンパク質組成物を安定化させる製剤であって、(i)pH緩衝塩溶液(前記緩衝液は、約3.5から約7.5のpKaを有する)、(ii)ポリソルベート80、(iii)リン酸アルミニウム、および(iv)組換え脂質付加髄膜球菌2086タンパク質を含み、pHが5.8から6.0である製剤。

ウ 米国特許US8,562,999の現状

米国ファミリー特許のひとつUS8,562,999は、本件日本特許と同様に「発明の効果」に係る発明特定事項を含むクレームについて特許として成立した。そして、MSDにより特許無効が申立てられている。

Claim 1: A formulation comprising (i) a pH buffered saline solution, wherein the buffer has a pKa of about 3.5 to about 7.5, (ii) an aluminum salt and (iii) one or more polysaccharide-protein conjugates, wherein the formulation is comprised in a siliconized container means and inhibits aggregation induced by the siliconized container means.

Claim 18: The formulation of claim 1, wherein the one or more polysaccharide-protein conjugate comprises [(略)13 different S. pneumoniae serotype polysaccharides conjugated to a CRM197 polypeptide].

MSDにより申立てられた米国特許US8,562,999に対するIPR(IPR2017-00378、IPR2017-00380)において、PTABは、クレーム18を除く全てのクレームは自明であるとして特許性がないと決定した。

MSDはクレーム18を支持した両決定を不服として控訴し、CAFCは、クレーム18を支持した両決定には十分な裏付けが示されていなかっため無効とし、審理を差戻した(Merck Sharp & Dohme Corp. v. Wyeth LLC, No. 2018-2133, 2018-2134 (Fed. Cir. Nov. 26, 2019))。しかし、差戻しを受けたPTABは、MSDが無効であることを証明できなかったとしてクレーム18を再び支持する2回目の決定を下した。MSDは前記決定を不服としてCAFCに控訴している(2020.12.16 Notice of Appeal: IPR2017-00378IPR2017-00380)。

エ 欧州特許EP2676679の現状

欧州ファミリー特許EP2676679B1は、異議申立がなされ、審理中である。

Claim 1: A siliconized container means filled with a formulation which inhibits silicone induced aggregation of a polysaccharideprotein conjugate comprised in a siliconized container means, the formulation comprising (i) a pH buffered saline solution, wherein the buffer has a pKa of about 3.5 to about 7.5, (ii) an aluminum salt and (iii) one or more polysaccharide-protein conjugates wherein the polysaccharide-protein conjugate comprises one or more pneumococcal polysaccharides.

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7.おわりに

MSDが本件特許を無効にしたい目的は、MSDが現在開発・申請中の15価肺炎球菌結合型ワクチンV114のFTO(freedom-to-operate)を確保したいということにある。先日、プレベナー13®の後継品であるファイザーの20価肺炎球菌結合型ワクチン(Prevnar20)が米国FDAで承認された(2021.06.08 Pfizer press release: U.S. FDA Approves PREVNAR 20™, Pfizer’s Pneumococcal 20-valent Conjugate Vaccine for Adults Ages 18 Years or Older)こともあり、ファイザーが肺炎球菌ワクチン市場でさらに優位な状況となるだろう(参考: Evaluate Vantage, Amy Brown, “Merck and Pfizer square up for pneumococcal vaccine fight” (June 23, 2020))。MSDとしては、すぐにでもV114の承認を得て販売し、少しでもファイザーに追い付きたいたころだが、そのためにはこの特許訴訟でV114の特許クリアランスを確保したい。ファイザーとしては、この特許紛争でMSDの114に対して優位な結果を得ることで、新製品Prevnar20の市場浸透に弾みをつけたいところであろう。

以下の図1は、肺炎球菌に関する特許出願件数の変化をファイザー/ワイスMSDとで対比したものである。両社が承認を受けた各肺炎球菌ワクチン(Prevnar、Pneumovax)を保護するための特許出願がどれなのかまで確かめていないが、2000年過ぎからファイザー/ワイスの出願件数が増加していることは肺炎球菌に関する研究開発の活発化を意味していると考えられ、その後Prevnar13®が2009年に初めて承認となった。また、2019年頃に顕著な件数を示しているMSDの出願公開の多くは肺炎球菌”結合型”ワクチンに関わるものであることから、それら出願群はMSDが現在開発・申請中の肺炎球菌”結合型”ワクチンV114に関連するものだろうと想像される。肺炎球菌ワクチン市場はファイザー/ワイスの肺炎球菌”結合型”ワクチンPrevnar13®が優勢である状況にあり、MSDのV114は、”結合型”ワクチンとしてはファイザー/ワイスのPrevnar13®やPrevnar20の後を追い駆けている新参者である。MSDの肺炎球菌ワクチン事業にとって、本件訴訟の対象特許を含むPrevnar関連特許群に対するFTOを確保していくことは極めて大きな課題であるといえるだろう。

本判決の判断については上述してきたとおり議論点があるが、それにしても、製剤の課題を発見し、内在する技術的特性をうまくクレームにしてグローバルに特許を取得したワイス(現・ファイザー)の特許出願戦略は、競合品(MSDのV114)参入に対する特許障壁を見事に築いており、その戦略実行の成果は今後予期される侵害訴訟の結果次第とはいえ、肺炎球菌ワクチン事業での競合優位性に大きく貢献している点において称賛に値すると思う。このような「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性について知恵を絞り権利化を試みることは、特許を取得する側にとっては大変参考になる事例であるとも思うところである。

コメント

  1. Fubuki Fubuki より:

    引用いただきましてありがとうございます!

    そーとく日記:
    2021年06月25日 課題が非容易なら物の構成は容易でも「物の発明」に進歩性はあるのか(肺炎球菌結合型ワクチン事件;令和2年(行ケ)10015)
    http://thinkpat.seesaa.net/article/482129280.html

  2. Fubuki Fubuki より:

    2021.07.15 MERCK press release: Clinical Data Supporting Approval Demonstrated Non-Inferior Immune Responses for the Serotypes Shared with PCV13 (1, 3, 4, 5, 6A, 6B, 7F, 9V, 14, 18C, 19A, 19F and 23F)
    VAXNEUVANCE Elicited Superior Immune Responses for Serotypes 3, 22F and 33F Compared to PCV13, Which Are Major Causes of Disease
    https://www.merck.com/news/merck-announces-u-s-fda-approval-of-vaxneuvance-pneumococcal-15-valent-conjugate-vaccine-for-the-prevention-of-invasive-pneumococcal-disease-in-adults-18-years-and-older-caused-by-15-serot/
    メルクの15価肺炎球菌結合型ワクチン(VAXNEUVANCE=V114)がFDA承認。訴訟係属中であると言及。
    “Merck is involved in litigation challenging the validity of several Pfizer Inc. patents that relate to pneumococcal vaccine technology in the United States and several foreign jurisdictions.”

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