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2022.06.22 「日医工 v. 旭化成ファーマ」 知財高裁令和3年(行ケ)10115 骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判⑧

Summary

旭化成ファーマは、週1回皮下投与の骨粗鬆症治療剤「テリボン®皮下注用56.5μg」(テリパラチド酢酸塩)を製造販売している。

本件(知財高裁令和3年(行ケ)10115)は、旭化成ファーマが特許権者でありテリパラチドの週1回投与に関する特許第6198346号に対する無効審判事件(無効2019-800062号)において、請求は成り立たないとの特許庁審決を受けた日医工が、その取消しを求めて知財高裁に提起した審決取消請求事件である。

知財高裁(第4部)は、日医工が主張する取消事由(甲1発明に基づく進歩性判断の誤り)には理由があるから、その他の点について判断するまでもなく、本件審決を取り消すとの判決をした。

  • 甲1発明との相違点1ないし3(甲1発明の骨粗鬆症治療剤について、①投与対象患者を「本件3条件を全て満たす骨粗鬆症患者」とすること、②「骨折抑制のための」ものとすること、③「48週を超過して72週以上までの間投与される」ものとすること)に係る本件発明1の構成を想到することは容易と認められ、本件発明1の効果も当業者において予測できない顕著なものとは認められないから、相違点1ないし3が容易に想到できないと認定して本件発明1の進歩性を認めた本件審決の判断には誤りがある。
  • そうすると、本件発明2が本件発明1を限定した発明であることを理由に、本件発明1と同様の理由により直ちに本件発明2の進歩性を認めた本件審決の判断にも誤りがある。

>⑦から続く

2022.06.22 「日医工 v. 旭化成ファーマ」 知財高裁令和3年(行ケ)10069 骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判⑦
Summary週1回皮下投与の骨粗鬆症治療剤「テリボン®皮下注用56.5μg」(テリパラチド酢酸塩)を製造販売する旭化成ファーマが特許権者であるPTH週1回投与に関する特許第6522715号に対して日医工が請求した無効審判事件において、請求は成り立たないとの特許庁審決を受け、日医工がその取消しを求めて知財高裁に提起した訴訟。知財高裁(第4部)は、日医工が主張する取消事由(甲7発明に基づく進歩...
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1.背景

旭化成ファーマが製造販売しているテリパラチド(Teriparatide)酢酸塩を有効成分とする週1回皮下投与の骨粗鬆症治療剤「テリボン®皮下注用56.5μg」のジェネリック参入障壁となっている(いた)と考えられるのが、週1回投与を特徴とする医薬用途発明に係る特許群である。

本件知財高裁令和3年(行ケ)10115は、旭化成ファーマのその特許群のうちのひとつである特許第6198346号に対する無効審判事件(無効2019-800062号)において、請求は成り立たないとの特許庁審決を受けた日医工が、その取消しを求めて知財高裁に提起した審決取消請求事件である。

表1 テリパラチド酢酸塩を有効成分とする骨粗鬆症治療剤ないし予防剤に関する特許権7件の請求項1
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2.裁判所の判断(一部抜粋)

知財高裁(第4部)は、日医工が主張する取消事由(甲1発明に基づく進歩性判断の誤り)には理由があるから、その他の点について判断するまでもなく、本件審決を取り消すとの判決をした。

  • 甲1発明との相違点1ないし3(甲1発明の骨粗鬆症治療剤について、①投与対象患者を「本件3条件を全て満たす骨粗鬆症患者」とすること、②「骨折抑制のための」ものとすること、③「48週を超過して72週以上までの間投与される」ものとすること)に係る本件発明1の構成を想到することは容易と認められ、本件発明1の効果も当業者において予測できない顕著なものとは認められないから、相違点1ないし3が容易に想到できないと認定して本件発明1の進歩性を認めた本件審決の判断には誤りがある。
  • そうすると、本件発明2が本件発明1を限定した発明であることを理由に、本件発明1と同様の理由により直ちに本件発明2の進歩性を認めた本件審決の判断にも誤りがある。

同日付で、本件特許第6198346号と同じ特許ファミリーである特許第6522715号に対する無効請求不成立審決を受けた日医工が提起した審決取消請求事件の知財高裁判決も言い渡されており(第4部)(2022.06.22 「日医工 v. 旭化成ファーマ」 知財高裁令和3年(行ケ)10069 骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判⑦)、本事件において進歩性を否定した相違点1及び2の容易想到性についての判断とその内容は一部共通する。

2022.06.22 「日医工 v. 旭化成ファーマ」 知財高裁令和3年(行ケ)10069 骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判⑦
Summary週1回皮下投与の骨粗鬆症治療剤「テリボン®皮下注用56.5μg」(テリパラチド酢酸塩)を製造販売する旭化成ファーマが特許権者であるPTH週1回投与に関する特許第6522715号に対して日医工が請求した無効審判事件において、請求は成り立たないとの特許庁審決を受け、日医工がその取消しを求めて知財高裁に提起した訴訟。知財高裁(第4部)は、日医工が主張する取消事由(甲7発明に基づく進歩...

本記事では、(1)相違点3の容易想到性について、及び(2)発明の効果について、の知財高裁の判断を以下に一部抜粋する。

(1)相違点3の容易想到性について

「48週」及び「72週以上」それ自体が技術的意義を持つものとして規定されているのではなく、本件発明の「48週を超過して72週以上までの間」との特定の時期をもって始期及び終期とする限定には格別の技術的意義を見いだすことができず、単に、便宜上区切られた試験期間の適宜の区間について、PTHの投与継続につれて骨折発生率が低下していることを示すに当たり、試験結果を示す事実として、当該期間において新規椎体骨折が発生していなかったことに着目してこの期間を採用したにすぎないというのが相当である。

・・・甲1文献の試験は、48週までの投与についてのものであるが、その増加率に逓減傾向があるとしても、腰椎BMDが継続的に増加していることが見て取れ(甲1文献の図1)、投与が48週を超えると、これが減少に転じるとする根拠は見当たらない。

以上からすると、連日投与のPTHに関して48週を超えての投与がされ、それによる骨密度の上昇及び骨折発生の減少が報告されていたことを踏まえ、甲1発明の骨粗鬆症治療剤においても、骨密度の上昇と骨折の予防のために48週を超えて投与するようにすることは、本件基準日においても、当業者として容易に想到することといえ、これにより本件発明1に至るものというべきである。

(2)発明の効果について

ア 予測できない顕著な効果について

発明の効果が予測できない顕著なものであるかについては、当該発明の特許要件判断の基準日当時、当該発明の構成が奏するものとして当業者が予測することのできなかったものか否か、当該構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点から検討する必要がある(最高裁判所平成30年(行ヒ)第69号令和元年8月27日第三小法廷判決・集民262号51頁参照)。もっとも、当該発明の構成のみから、予測できない顕著な効果が認められるか否かを判断することは困難であるから、当該発明の構成に近い構成を有するものとして選択された引用発明の奏する効果や技術水準において達成されていた同種の効果を参酌することは許されると解される。なお、予測できない顕著な効果の立証責任は特許権者にあるから、当該発明の構成から奏する効果が不明であるからといって、直ちに予測できない顕著な効果があるとすることはできない。


参考: 2019.08.27 「アルコン・協和キリン v. X」 最高裁平成30年(行ヒ)69・・・化合物の医薬用途に係る特許発明の進歩性の有無に関し当該特許発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定した原審の判断に違法があるとされた事例

2019.08.27 「アルコン・協和キリン v. X」 最高裁平成30年(行ヒ)69
化合物の医薬用途に係る特許発明の進歩性の有無に関し当該特許発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定した原審の判断に違法があるとされた事例: 最高裁平成30年(行ヒ)69【背景】「アレルギー性眼疾患を処置するためのドキセピン誘導体を含有する局所的眼科用処方物」に関する特許(第3068858号)に対する無効審判請求の不成立審決取消訴訟において、原審(2017.11.21 「X v. ...

イ 本件発明の効果について

被告は、発明の効果が予測できない顕著なものであるか否かを該発明の構成に基づいて判断すべきであるとすると、本件においては、本件発明1の構成である3条件充足患者に対して奏される骨折抑制効果について検討すればよく、3条件充足患者に対する骨折抑制効果と非3条件充足患者に対する骨折抑制効果とを対比する必要はなく、本件明細書にも記載されている必要はない旨主張する。

しかしながら、本件発明1は、本件基準時においてはPTHが骨粗鬆症治療剤として周知であるとの前提の下に、PTH投与群の中で特に優れた効果を奏する患者群に投与することに進歩性を見出したとするものであるから、本件3条件の全てを満たす患者について骨折抑制効果を確認するためには、高リスク患者に対する骨折抑制効果と低リスク患者(高リスク患者以外の患者)に対する骨折抑制効果とを対比する必要がある。

単に本件発明の骨粗鬆症治療剤を投与された高リスク患者とプラセボ投与患者を対比して上記高リスク患者に対する骨折抑制効果があることを示しただけでは、それはPTH投与群に含まれる一群がプラセボ投与群に対して骨折抑制効果が優れることを示しただけであり、高リスク患者群がそれ以外の患者群に比較して、PTH投与群の中で特に効果を奏する患者群であることを明らかにしたことにはならず、PTH投与群の骨折抑制効果を確認したことになるにすぎない。

したがって、被告の上記主張を採用することはできない。

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3.コメント

本特許第6198346号に対しては、別途無効審判事件(無効2018-800065号)において請求不成立審決を受けた沢井製薬が、審決取消訴訟を提起し、知財高裁(第4部)は本件と同様に進歩性を否定して審決を取消した(2021.12.09 「沢井製薬 v. 旭化成ファーマ」 知財高裁令和2年(行ケ)10069 骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判⑤)。さらに、最高裁が上告受理申立を却下し、審決の取消しの判決が確定したため、審判事件の審理が再開されている。

2021.12.09 「沢井製薬 v. 旭化成ファーマ」 知財高裁令和2年(行ケ)10069 骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判⑤
・・・特許6198346(投与期間を発明特定事項とする医薬用途発明)の進歩性を認めた審決を取り消す。>④から続く前回記事: 2021.09.28 「沢井製薬 v. 旭化成ファーマ」 知財高裁令和2年(行ケ)10038 骨粗鬆症治療剤テリボン®(テリパラチド酢酸塩)の週1回投与特許を巡る裁判④1.はじめに旭化成ファーマが製造販売する週1回皮下投与の骨粗鬆症治療剤「テリボン®皮下注...

本件で争われた特許第6198346号は元をたどると特願2011-530844(出願日2010年9月8日; 再表2011/030774; WO2011/030774)を原出願とするものであり、PTH週1回投与を特徴とする発明に係る7つの特許により構成される特許ファミリーのうちのひとつである。

知財高裁は7つの特許いずれも進歩性を否定する判決をしており、いくつかの特許は審決取消の判決が確定したことにより特許庁での審理が再開されている。

これらの知財高裁の判断内容はほぼ同じ争点・観点と結論で共通するため、上記記事のコメントも参照してほしい。各記事でのコメントの主な点は以下のとおり。

  • 旭化成ファーマの敗因
  • 効果の程度についての判断に参酌できる観点
  • 進歩性のための明細書記載要件
  • 特許庁は進歩性を認めていた
  • 主張立証責任を負う出願人は比較試験の妥当性を慎重に検討すべき
  • 欧州特許庁での審査
  • 被告製品(対象患者)の一部が発明の技術的範囲に属する場合の問題点
  • 沢井製薬がジェネリックの承認を取得。パテントリンケージは?
  • テリボン®は凍結乾燥剤からオートインジェクターへシフト
  • 沢井製薬との係争は高純度PTH凍結乾燥製剤発明に係る特許権へ

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