Nov 29, 2007

2007.10.11 「プロクター&ギャンブル (P&G) v. 特許庁長官」 知財高裁平成18年(行ケ)10509

効果の言及が定性的な記載のみの場合でもサポート要件は満たされるのか?: 知財高裁平成18年(行ケ)10378

【背景】
原告が「中間鎖分岐界面活性剤」に関する特許出願(特表2000-503700号)の拒絶審決取消訴訟。サポート要件(特36条6項1号)が主たる争点となった。

【要旨】
裁判所は、
「特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。」
との一般原則を示し、本件について下記のとおり判断した。

「本願発明の解決すべき課題に低水温洗浄性及び生分解性が含まれることは明らかであるから,発明の詳細な説明には,本願発明がこれらの性能において有効であることが客観的に開示される必要があるというべきである。~洗剤界面活性剤組成物の性能については,「得られた組成物は,標準布帛洗濯操作で用いられたときに,優れたしみおよび汚れ除去性能を発揮する,安定な無水重質液体洗濯洗剤である。」(上記(2)コ(オ))との記載があるものの,この記載からは低水温洗浄性及び生分解性に関する具体的な評価を導くことはできない。以上述べたところに照らせば,本願発明の詳細な説明には,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が本願発明1の組成物が発明の課題である低水温洗浄性及び生分解性を解決できるものであると認識できるに足る記載(旧36条4項参照)を欠いているといわざるを得ない。」

また、裁判所は、原告主張について下記の補足的説明をした。
「本願発明の背景にかんがみれば,本願発明に係る洗剤界面活性剤の組成等を定性的に記載するのみでは,当業者が低水温洗浄性能等の本願発明の課題の解決について具体的に認識することは困難といわざるを得ないのであって,これを当然の前提として記載を省略することは許されないというべきである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。」

請求棄却。

【コメント】
効果の言及が定性的な記載のみだったためにサポート要件違反と判断された。
本事件は医薬関連発明ではないが、医薬(用途)発明ならば、サポート要件のみならず実施可能要件を満たすために客観的なデータが要求されるのは、下記のとおり、裁判例や審査基準でも明らかにされている。

サポート要件:

  • 審査基準第I部第1章2.2.1.1 例9参照
    例9:
    請求項においては成分Aを有効成分として含有する制吐剤がクレームされているが、発明の詳細な説明には、薬理試験方法及び薬理データについては記載がなく、しかも、成分Aが制吐剤として有効であることが、出願時の技術常識からも推認可能といえない場合。

実施可能要件:


1 comment:

モリモト said...

はじめまして。
いつもブログで勉強させていただいています。
私も製薬出身で、今は特許事務所で弁理士業に勤しんでいます。
弁理士のかたわら、技術士としてのスキルもアップさせようと技術コンサルの勉強会も開催しています。興味があるようでしたら、ぜひご参加ください。