Jun 4, 2017

2017.05.10 「コスメディ製薬 v. バイオセレンタック」 大阪地裁平成27年(ワ)11759

敗訴となった訴訟行為が不法行為を構成するのか大阪地裁平成27年(ワ)11759; 別紙1

【背景】

本件は、バイオセレンタックが提起した特許権侵害訴訟(バイオセレンタックが敗訴。東京地裁平成25年(ワ)4303; 知財高裁平成26年(ネ)10109)の被告であったコスメディと同社の代表取締役であるP1が、同訴訟の原告であったバイオセレンタック、同訴訟でバイオセレンタックを代表した代表取締役のP2、バイオセレンタックの代表取締役であり本件特許の発明者であるP3並びに同訴訟で訴訟代理人を務めたP4に対し、バイオセレンタックが「コスメディによる本件特許権侵害及び研究成果盗用」という虚偽の事実をコスメディの取引先である岩城製薬及び資生堂に告知した行為は不競法2条1項14号(現行法では15号)の不正競争に該当する或いは上記告知がP1の名誉を棄損したと主張して、不競法4条、民法709(719条1項)または会社法429条1項に基づき損害賠償の支払を求めた事案である。

「告知行為」に関するコスメディの主張は主に下記の点であった。
  • 「被告バイオは,別件侵害訴訟において,原告コスメディの取引先である岩城製薬を共同被告として訴えていたから,同訴訟を通じて,原告コスメディの営業上の信用を害する虚偽の事実を岩城製薬に継続的に告知したといえる。」
  • 「原告ら製品は,原告コスメディから資生堂に販売され,資生堂で製品として完成されて岩城製薬に販売される関係にあるので,原告コスメディは,別件侵害訴訟の情報を資生堂に提供せざるを得なかったが,被告バイオは上記取引関係を認識しながら岩城製薬を共同被告にしたのであるから,被告バイオは虚偽の事実を資生堂にも告知していたといえる。」
【要旨】

主 文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

裁判所の判断(抜粋)

1.資生堂に対する関係での告知行為について
「不正競争防止法2条1項14号にいう「告知」とは,自己が関知した一定の事実を特定の人に知らせる伝達行為をいうところ,そもそも資生堂に対する関係で被告バイオが告知したわけではないことは原告コスメディも認めているところである。また原告コスメディは,取引関係上,同原告が資生堂に同事実を伝えざるを得なかったことを指摘するが,もし,そうであったとしても,そのことをもって被告バイオが告知したことになるわけではない。」
2.岩城製薬に対する関係での告知行為について
「被告バイオは,原告ら製品の販売が本件特許権の侵害行為に該当するとして岩城製薬を共同被告として訴えているところ,岩城製薬に対する請求を理由づけるためには,岩城製薬が販売している原告ら製品が本件発明の技術的範囲に属するという事実を主張立証する必要があり,その事実関係を具体的に主張立証するためには,結局,共同被告である原告コスメディによる原告ら製品の製造販売が本件特許権の侵害行為であること,すなわち原告ら製品が本件特許権の侵害品であることを主張立証すべきことは避けようがない。

したがって,別件侵害訴訟における原告ら製品が本件特許権の侵害品である旨の事実主張が,共同被告である岩城製薬との関係で不正競争防止法2条1項14号の虚偽事実の告知に該当するということはできない(仮に岩城製薬だけを被告として本件特許権侵害を理由に訴訟を提起したとしても,岩城製薬が販売する製品が本件特許権の侵害品である旨主張することは,その購入先を知っている岩城製薬にとっては,原告ら製品が本件特許権の侵害品であるとの事実指摘を受けたと同じになるから,原告コスメディの論が失当であることは明らかである。)。

なお,被告バイオによる別件侵害訴訟の提起が,権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したことなどを理由として裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くため違法な行為といえるような場合には,同訴訟の被告それぞれに対する訴訟提起が不法行為を構成するとともに,取引先である岩城製薬を共同被告とされた原告コスメディに対する関係では,訴訟制度を濫用的に利用した不正競争防止法2条1項14号に該当する虚偽の事実の告知として不正競争となる余地はあり得ると考えられる。しかし,…別件侵害訴訟の審理経過に照らせば,同訴訟提起が違法な行為であるという余地がないことは明らかであり,そうであれば,やはり岩城製薬を原告コスメディの共同被告として提起された別件侵害訴訟においてなされた原告ら製品が本件特許権の侵害品である旨の事実主張は,不正競争防止法2条1項14号に該当する余地はないというほかない。」
3.研究成果の盗用指摘について
「仮に上記記載事実が虚偽であるとしても,…上記事実は,別件侵害訴訟の審理判断の上で,全く不要な事実であったとはいえないし,全く根拠のない推認に基づくものであったとも,また原告コスメディをもっぱら誹謗中傷するような態様で主張されたものとも認められないから,民事訴訟が,事実関係を究明するため,紛争当事者が攻撃防御方法として相互に立証命題となるべき事実主張を尽くすことが求められるものである以上,これらの事実主張は,訴訟行為として適法というべきであって,これをもって不正競争防止法2条1項14号に該当する「虚偽の事実を告知」したものということはできないというべきである。」
4.名誉棄損の成否について
「原告P1が名誉棄損である旨指摘する引用に係る別紙一覧表の各記載内容は,要するに,原告P1がアクセスして得た被告P3の研究に係る技術情報を不正に利用して原告ら製品を開発したことを指摘するものであるから,原告P1が原告コスメディの代表取締役であるとともに,大学研究室に所属して研究者としても活動している者であることからすると,その指摘に係る事実は,原告P1の社会的評価を低下させるものであり,その名誉を棄損するものということができる。

しかし,これらの事実指摘のうち別紙一覧表記載3ないし5に係る事実については,いずれも別件侵害訴訟において,被告バイオの訴訟活動の一環としてなされたものであり,その事実が別件侵害訴訟の審理判断の上での必要性が肯定されるべきことは上記…で説示したとおりであり,別紙一覧表記載1,2の各事実も結局,同じ問題であるので,その事実を主張することが名誉棄損として不法行為を構成するものということはできない。」
【コメント】

下記裁判でも同事件が取り扱われている。

民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、「その訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られる」という観点で、その訴えに関連する行為の違法性の当否が判断されるということであろう。

1988.01.26 最高裁昭和60(オ)122
「民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、右訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。」

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