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2010.02.02 「QLT/ノバルティス v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10384

治療行為を反復すること: 知財高裁平成20年(行ケ)10384

【背景】

「眼の光力学的治療による視力の改善」に関する出願の拒絶審決取消訴訟。審決理由は進歩性無し。

請求項1:

人の視力を改善するための反復ホトダイナミックセラピーに使用される組成物であって,薬理学的に容認可能な賦形剤と光活性化合物を含有し,前記光活性化合物が,グリーンポルフィリン,ヘマトポルフィリン誘導体,クロリン,フロリン又はプルプリンである組成物

【要旨】

原告らは、

  • 各引用例についての審決の引用には都合のよい箇所のみを拾い集めた結果、重大な事実誤認と判断の誤りに陥っている
  • 各引用例は、すべて単回の治療であって、反復使用される組成物については記載されていない
  • 周辺組織への損傷という副作用があるから、反復使用すればするほどかえって視力低下を招くこともあったというのが本願出願時の実情であった

等主張した。

しかしながら、裁判所は、

  • 審決の認定は実質的に影響を与えるものではなく、
  • 治療行為を反復することに重大な阻害事由があるなど特段の事情がない限り、治療を再度実施することは普通に行われることであるから、引用例の記載に基づいて当業者が容易に想到し得ることであるとした審決の判断に誤りはなく、
  • 治療行為を「反復」することに重大な阻害事由はなく、
  • 予測できない効果が奏されたとも認められない

と判断した。

請求棄却。

【コメント】

裁判所は治療行為を反復する点について下記のように言及した。

「治療に関する事項は治療者である医師等が検討するものであり,研究段階や臨床試験も含め,治療者が人の疾病に対する治療行為を考えるとき,例えば,ある治療行為について一応の治療効果はあったものの,なお効果が十分でないと判断された場合や,一度十分な治療効果があったものの疾病が再発した場合には,その治療に大きな副作用があるなど,治療行為を反復することに重大な阻害事由があるなど特段の事情がない限り,治療者が同じ治療を再度実施することは普通に行われていることであると考えられる。」

単回の治療が知られていたら、その治療行為を反復することは当業者が容易に想到し得るだろう。

参考: QLT Inc.

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