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2013.04.18 「三菱化学 v. Y」 知財高裁平成24年(ネ)10028, 10045

アンプラーグ関連職務発明対価請求事件、消滅時効の進行の中断: 知財高裁平成24年(ネ)10028, 10045

【背景】

原審参照: 2012.02.17 「X v. 三菱化学」 東京地裁平成21年(ワ)17204

【要旨】

主 文

1 本件控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
(1) 控訴人は,被控訴人に対し,5900万円及びこれに対する平成19年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。
2 本件附帯控訴を棄却する。
3 訴訟費用は,全審級を通じて,4分の1を控訴人兼附帯被控訴人の負担とし,その余を被控訴人兼附帯控訴人の負担とする。
4 この判決は,1(1)に限り,仮に執行することができる。

裁判所の判断

1 相当対価の額について

相当対価の額については原判決の認定判断を支持する。

2 消滅時効の成否について

数量的に可分な債権の一部につき訴えを提起したとしても,当該訴訟においてその残部について権利を行使する意思を継続的に表示していると認められる場合には,当該残部の債権についても消滅時効の進行が中断する。当該訴訟係属中に訴えの変更により残部について請求を拡張した場合には,消滅時効が確定的に中断する。
被告が指摘する最高裁判所昭和34年2月20日第二小法廷判決(民集13巻2号209頁)は,一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えの提起があった場合に,訴えの提起による消滅時効中断の効力は,その一部の範囲についてのみ生じ残部に及ばない旨を判示したものであって,原告が訴状において残部について権利を行使する意思を明示していた本件とは事案を異にする。
被告が指摘する他の最高裁判所判決も,上記判断と抵触するものとはいえない。

3 遅延損害金の始期について

本件各発明に係る相当対価の支払請求債権は期限の定めのないものと認めざるを得ず,本件各発明が実施された日から5年を経過した日が消滅時効の起算点であるとしても,その翌日からの遅延損害金の発生は認めることができず,催告のあった日の翌日から発生する。

【コメント】

原告が債権の一部につき訴えを提起する際、訴状においてその残部について権利を行使する意思を明示しておけば、残部についても消滅時効の進行を中断させることができるということを示した判決。

裁判所は、本事案は原告がその意思を明示していたという点で、過去の最高裁判決の判断と抵触しないとしている。

参考: 昭和34年02月20日 最高裁 昭和31年(オ)388(民集13巻2号209頁)

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