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エビリファイ®用途特許を巡るジェネリックメーカーの動き

抗精神病薬エビリファイ®(アリピプラゾール)の特定の効能・効果(「双極性障害における躁症状の改善」、「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められていない場合に限る)」)を保護している、大塚製薬が保有する用途特許(日本特許第4178032号、2022年1月29日満了(さらに存続期間延長登録あり))が、複数のジェネリックメーカーからそれぞれ特許無効審判を請求されている(無効2018-800113; 無効2018-800123; 無効2018-800127; 無効2018-800130)。無効審判を請求しているのは、共和薬品工業、ニプロ、東和、Meiji Seikaファルマ。これらメーカーのジェネリックは「統合失調症」のみを効能・効果とするいわゆる「虫食い」であり、上記特許の無効審決を得て、効能・効果の追加承認を得ようと試みていると思われる。

エビリファイ®の再審査期間のうち、「統合失調症」及び「双極性障害における躁症状の改善」は2006年1月23日~2016年1月22日、「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められていない場合に限る)」は2013年6月14日~2017年6月13日。前者の再審査期間終了を待って2017年2月15日に初承認されたジェネリックは、いずれも効能・効果が「統合失調症」のみの「虫食い」であった。これは、「双極性障害における躁症状の改善」を保護する上記用途特許が有効に存続していたためと考えられる。

2017年3月6日、沢井製薬は、共和薬品工業、ニプロ、東和、Meiji Seikaファルマよりも先んじて、上記用途特許の無効審判を請求し(無効2017-800030)、2018年7月9日に請求を取下げている。沢井製薬は、その後タイミングよく、2018年9月5日に「双極性障害における躁症状の改善」の追加承認(「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められていない場合に限る)」も2019年3月6日に追加承認)を得ていることから、大塚製薬から上記効能・効果に関する実施許諾を得たのではないかと推測される。ジェネリックの中で、上記効能・効果の追加承認を得ているのは沢井製薬だけであり、共和薬品工業、ニプロ、東和、Meiji Seikaファルマ等の他のジェネリックメーカーは、効能・効果の点で沢井製薬に先を越された状況となっている。

コメント

  1. gemedicines より:

    いつも興味深く拝見しています。
    沢井製薬は、上手く抜け駆けに成功したということですかね。
    こういった抜け駆けの可能性があるので、リリカ(プレガバリン)の無効審判の参加人が異様に多いのだと、妙に納得できました。

  2. Fubuki より:

    コメントありがとうございました。
    リリカの情報もありがとうございました。
    リリカについて、Pfizer SEC FILINGS 2018 Q4 FORM 10-Kにも

    "Lyrica is covered by a Japanese method-of-use patent which expires in 2022. The patent is currently subject to an invalidation action."

    と記載されていますね。注目したいと思います。

  3. 匿名 より:

    いつも大変興味深く拝見しています。周辺の事情も含めてコメントされており、とても勉強になります。
    今回の記事の中で、「日本特許第4148032」とありましたが、正しくは「日本特許第4178032」ではないかと思いました。
    また、「特許2017-800030」は、おそらくは事件番号の「無効2017-800030」でしょうか。
    なお、最初の無効審判の後、訂正審判(訂正2018-390120)が行われ、請求項3、6が削除されているようです。

  4. Fubuki より:

    ご指摘ありがとうございました。ご指摘部分を正しい記載に修正しました。また、訂正審判の情報もありがとうございました。

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