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2024.01.16 「ユーピー ケミカル v. バーサム マテリアルズ」 知財高裁令和4年(行ケ)10097 ― 化学物質名の記載が特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」であること(引用発明の適格性)の判断基準 ―

Summary

  • 「ジイソプロピルアミノシラン」に係る特許発明の新規性等が争点となった無効請求不成立審決取消訴訟で、引用文献には、同物質が記載されているといえるものの、その製造方法に関する記載がないことから、同物質を特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」として認定することの可否が問題となった。
  • 知財高裁は、引用文献に接した本件優先日前の当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、技術常識に基づいて、同物質の製造方法その他の入手方法を見いだすことができたとはいえないから、引用文献に記載された「ジイソプロピルアミノシラン」を「刊行物に記載された発明」として認定することはできないと判断し、原告の請求を棄却した。
  • 化学物質の発明が「刊行物に記載された発明」といえるか否かについて知財高裁が説示した判断基準は、過去の多くの判決とも合致する。
  • 日本と韓国では判断が異なっており、その判断の分かれ道を考察することは、化学物質の発明の特許性判断における引用発明の認定の重要性を再認識させる。
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1.背景

本件(知財高裁令和4年(行ケ)10097)は、バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー(以下、「被告」または「バーサム マテリアルズ」という)が特許権者であり、発明の名称を「アミノシラン、シリコン含有膜の形成用前駆体、シリコン含有膜の形成用組成物」とする特許第4824823号の請求項1~7(以下、「本件発明1」~「本件発明7」といい、これらを併せて「本件各発明」という)に対して、ユーピー ケミカル カンパニー リミテッド(以下、「原告」または「ユーピー ケミカル」という)がした無効審判請求(無効2019-800092号事件)を不成立とした審決の取消訴訟である。

原告が主張した取消事由は、

  • 本件審決の甲1(特開2000-195801号公報)に基づく新規性・進歩性欠如の判断誤り(取消事由1、2)
  • 本件審決の甲4(特開平6-132284号公報)に基づく新規性・進歩性欠如に関する判断の誤り(取消事由3、4)
  • 本件審決の手続違背(取消事由5)

である。

例えば、本件発明1は以下のとおりである。

【請求項1】
以下の式により示されるアミノシラン。
【化1】

本件各発明は、半導体デバイスの製作に必須の化学的に不活性な誘電材料の薄い不動態層に用いられる炭窒化ケイ素(SixCyNz)を化学気相成長(CVD)により生成するための前駆体に関するものであって、CVDにこれまで用いられている幾つかの前駆体とは対照的に、室温及び室圧において液体であり、好都合な取扱いを可能にするアミノシランを提供するものである。

ニャー
ニャー

医薬品に関連した技術分野ではありませんが、化学物質の発明の新規性・進歩性に関して争われた事件ですので、裁判所の判断は、医薬品の分野においてもとても参考になりそうです。

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2.裁判所の判断

知財高裁第1部(以下、「裁判所」)は、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、本件審決にこれを取り消すべき違法は認められないとして、原告の請求を棄却する判決をした。

原告が主張した取消事由のうち、

  • 本件審決の甲1(特開2000-195801号公報)に基づく新規性・進歩性欠如の判断誤り(取消事由1、2)
  • 本件審決の甲4(特開平6-132284号公報)に基づく新規性・進歩性欠如に関する判断の誤り(取消事由3、4)

についての裁判所の判断を一部抜粋して紹介する。

(1)甲1における記載内容

裁判所は、甲1(特開2000-195801号公報)には、実質的に「SiH3[N(C372]」との化学式に対応した化学物質の名称である「ジイソプロピルアミノシラン」が記載されているといえると判断した。

甲1の【0022】には、Rとしてアルカンを用いたSiH3[NR2]系の原料として、「ジイソプロピルアミノシラン」を適用することができることが記載されている。ここで、甲1に記載された「ジイソプロピルアミノシラン」なる名称自体は、一般には本件発明1の【化1】の式で示されるアミノシランを示しているものと理解され、この点について当事者間に争いはない一方、裁判所は、【0022】の「SiH3[NH(C372]」なる化学式は、「SiH3[N(C372]」の誤記であると理解するのが合理的であるとした。

(2)「刊行物に記載された発明」に認定することの可否

裁判所は、甲1には化学物質の名称である「ジイソプロピルアミノシラン」が記載されているといえると判断したが、甲1に記載された「ジイソプロピルアミノシラン」を特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」と認定することはできないとし、よって、「ジイソプロピルアミノシラン」を「刊行物に記載された発明」とすることを前提とする原告の主張はいずれも理由がないと判断した。

ア 判断基準

裁判所は、特許法29条1項3号の「刊行物」に化学物質の発明が記載されているといえるか否かについて、以下のととおり、判断基準を示し、甲1に記載された「ジイソブロピルアミノシラン」の認定可否を検討した。

「a 特許法29条1項は、同項3号の・・・「刊行物」に物の発明が記載されているというためには、同刊行物に当該物の発明の構成が開示されていることを要することはいうまでもないが、発明が技術的思想の創作であること(同法2条1項)に鑑みれば、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその技術的思想を実施し得る程度に、当該発明の技術的思想が開示されていることを要するものというべきである。

特に、少なくとも化学分野の場合、化学物質の化学式や名称を、その製造方法その他の入手方法を見いだせているか否かには関係なく、形式的に表記すること自体可能である場合もあるから、刊行物に化学物質の発明としての技術的思想が開示されているというためには、一般に、当該化学物質の構成が開示されていることに止まらず、その製造方法その他の入手方法を理解し得る程度の記載があることを要するというべきである。また、刊行物に製造方法その他の入手方法を理解し得る程度の記載がない場合には、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができることが必要であるというべきである。

b 以上を前提として検討するに、・・・甲1には、実質的に「SiH3[N(C372]」との化学式に対応した化学物質の名称である「ジイソプロピルアミノシラン」が記載されているといえるものの、甲1によってもその製造方法その他の入手方法を理解し得る程度の記載は見当たらない。

したがって、甲1に記載された発明の化学物質として「ジイソプロピルアミノシラン」を認定するためには、甲1に接した本件優先日前の当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、本件優先日前の技術常識に基づいて、「ジイソプロピルアミノシラン」の製造方法その他の入手方法を見いだすことができたといえることが必要である。」

イ 技術常識の検討

上記のとおり、本件優先日前の技術常識に基づいて「ジイソプロピルアミノシラン」の製造方法その他の入手方法を見いだすことができたといえるかどうかが本件の判断の鍵であったが、この点について、裁判所は、本件優先日前の当業者がジイソプロピルアミノシランの製造方法その他の入手方法を容易に見いだすことができたと認めるべき事情はうかがわれないと判断した。

「原告が本件審判で本件優先日前のアミノシランを製造する方法に関する技術常識の根拠として提示をした甲12及び甲16・・・によると、ジメチルアミノシランやジエチルアミノシランが、ジメチルアミンやジエチルアミンと、ヨードシランやクロロシランの反応により製造できること、当該反応は気相中、室温下で進行することについては、本件優先日前の技術常識であったといえる。他方、「ジイソプロピルアミノシラン」の製造方法が本件特許の優先日前に知られていたことを認めるに足りる証拠はない。

また、原告は「アルキル基の嵩高さによる立体障害の存在により、反応が進行しにくくなることはあっても、反応そのものが進行しないわけではなく、反応速度や反応生成物の収率の問題が生ずる程度である」と主張するが、原告作成の甲218(36頁)によっても「立体障害とは、Rが嵩高いことで、SiとNの間の結合が邪魔されて、反応が進行しにくくなること」と説明されているように、一般に、化学反応の進行のしやすさは、分子の立体障害の違いにより変わることが知られているところ、原告が本件優先日当時のアミノシラン類の合成に係る技術常識を示すものとして提出する甲202においても、「ジイソプロピルアミノシラン」の合成方法に関する文献の記載がないことに加え、甲202に挙げられている合成方法に関する文献が記載されたアミノシラン類の7つの化合物(ジメチルアミノシラン、ジエチルアミノシラン、ジフェニルアミノシラン、1-アゼチジニルシラン、1-ピロリジニルシラン、1-ピロリルシラン、1-ピペリジニルシラン)の合成方法や条件を比較しても化合物によって合成の反応条件が異なることからも、仮に反応式が一般化できたとしても、当業者にとって、その下位概念に含まれる化合物の合成方法が直ちに理解できるとか、又は技術常識であったとまでは認められない。

そうすると、本件優先日前において、甲12及び甲16に記載されるように、メチルアミノシランやジエチルアミノシランが、ジメチルアミンやジエチルアミンと、ヨードシランやクロロシランの反応により製造できることは技術常識であったとしても、ジイソプロピルアミノシランを製造できることまでは知られていなかったものといえる。

・・・このほか、本件優先日前の当業者が、ジイソプロピルアミノシランの製造方法その他の入手方法を容易に見いだすことができたと認めるべき事情はうかがわれない。」

ウ 原告による実験結果の採否

原告は、提出された実験結果をもって、本件優先日当時、ジイソプロピルアミノシランが製造できたと主張した。

しかし、裁判所は、

「そもそもこれらの実験は、本件優先日後に事後的に行われたものである上に、これらの実験結果についてみると、甲30や甲212に記載された沸点はジイソプロピルアミノシランの沸点と一致せず、甲216には、それらの記載の沸点が誤記であることの説明がされているものの、誤記の合理的な説明がされていないこと、甲31の実験は液相反応であって甲16の実験の条件である気相反応を満たしていないことなどの疑義があり、その信用性に疑問があるほか、これらの具体的な実験内容によっても、当業者が思考や試行錯誤等の能力を発揮するまでもなく、製造方法その他の入手方法を見いだすことができたと評価できるものではな(い)」

として、原告の上記主張は採用できないとした。

(3)甲1に基づく判断について

本件審決で認定した甲1発明は「Rとしてアルカンを用いたSiH3[NR2]系の有機アミノシラン。」であるところ、裁判所は、

「刊行物に製造方法その他の入手方法を理解し得る程度の記載がない場合には、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができることが必要であるというべきである。」との前提において、刊行物に記載された発明としての内容を把握すべきものといえるから、一見すると、甲1発明・・・の有機アミノシランに包含されるような化合物であっても、上記前提を満たさないものについては、刊行物に記載された発明としての甲1発明・・・の有機アミノシランには包含されないものと解される。

したがって、本件審決の新規性の判断における「甲1には、「SiH3[N(C372]」で示される「ジイソプロピルアミノシラン」という化学物質の発明が記載されているとは認められないとして、甲1発明に「「SiH3[N(C372]」で示されるジイソプロピルアミノシラン」を包含しないとする認定判断に誤りがあるとはいえない。」

としたうえで、以下a~cのとおり、本件発明1の相違点1(甲1発明は「ジイソプロピルアミノシラン」を包含していない点)に係る構成を、本件優先日前に当業者が容易になし得たものとはいえないと判断した。

本件優先日前にジメチルアミノシランやジエチルアミノシランが製造できることは知られていても、ジイソプロピルアミノシランを製造・入手できることまでは知られていなかったといえ、通常の創作能力を有する当業者であっても、本件優先日前に本件発明1のジイソプロピルアミノシランを得ることが容易であったとはいえない。

甲1発明に対し、置換基を構成する炭化水素基の大きさが大きい(炭素数の大きい)有機置換基を導入したものの方が、より安定するといったアミノシラン類の安定性に関する当業者の技術常識を勘案した場合でも、本件発明1に記載されている「ジイソプロピルアミノシラン」が、本件明細書【0023】に記載される「従来の取扱い及び処理条件下において安定性を提供する」ことまでは予測できるといえるものの、それと同時に、本件明細書【0072】【0073】に要約されるように炭窒化ケイ素誘電膜を比較的低温で形成できるような反応性の高さを兼ね備えるという、安定性とは相反するような性質をも両立させられる効果までは、予測できたものとはいえない。そうすると、仮に、本件優先日前にジエチルアミノシランを製造・入手できる技術常識が存在していたとしても、予測できない効果を奏する本件発明1のジイソプロピルアミノシランを得ることが容易であったとはいえない。

また、甲2には、化学蒸着法に関する用語「化学蒸着」の定義「気相化学反応によって、基板上に膜を形成させること。化学気相成長ともいう。略称、CVD。」、化学蒸着法に関する用語「前駆体」の定義「化学反応において、生成物のすぐ前段階に存在して、生成物と構造上密接な関係がある物質。」、化学蒸着法に関する用語「原料ガス」の定義「膜形成時に使用される膜成分を含むガス。反応ガスともいう。」、化学蒸着法に関する用語「MOCVD」の定義「有機金属化合物を原料ガスとするCVD。有機金属気相成長ともいう。」との記載があるが、甲2には「ジイソプロピルアミノシラン」に関する記載はなく、その製造方法その他の入手方法を把握することはできない。

なお、裁判所は、仮に、甲1の請求項1に記載された「ジメチルアミノシラン」や「ジエチルアミノシラン」等の具体的な化合物を選択し、甲1発明に代えて引用発明を認定した場合を考えても、上記と同様に、本件優先日前に当業者が容易になし得たものとはいえないと言及し、本件審決に誤りがあるとはいえないと判断した。

(4)甲4に基づく判断について

甲4(特開平6-132284号公報)に「ジイソプロピルアミノシラン」に相当する化合物が実質的に記載されているといえるか否かという点にも関連して、甲4の請求項3に係る特許請求の範囲並びに【0011】及び【0014】における「ジプロピルアミノシラン((C372N)SiH3」との記載について、「ジノルマルプロピルアミノシラン」及び「ジイソプロピルアミノシラン」という構造の異なる2種類の化合物を意味するのか、「ジノルマルプロピルアミノシラン」のみを意味するのかに争いがあった。

裁判所は、甲4全体の記載等を検討すると、名前に「ノルマル」との表記が入った化合物は何ら見当たらない一方で、「イソ」との表記が入った化合物が確認でき、それぞれ、複数の異性体が存在しているところを「イソ」の表記を用いながら1種類の構造の化合物だけに特定したものとなっていることに鑑みると、甲4(請求項3等)において、これら化合物と並列的に列挙記載されている「ジプロピルアミノシラン」を、「ジノルマルプロピルアミノシラン」及び「ジイソプロピルアミノシラン」という構造の異なる2種類の化合物と解するのは不自然であり、 「IUPAC命名法」のように、側鎖を表す接頭語がないことをもって、一義的に直鎖構造の化合物を意図していると解するのが自然であることから、甲4に「ジイソプロピルアミノシラン」に相当する有機シラン化合物が記載されているとは認められないとして、甲4に「ジイソプロピルアミノシラン」に相当する有機シラン化合物が記載されていることを前提とする原告の主張はいずれも理由がないと判断した。

そして、本件審決は、甲4に記載された発明として、次の発明を認定している。

  • 甲4発明「一般式(R12N)nSiH4-n(ただし、上式において、R1、R2がH-、CH3-、C25-、C37-、C49-のいずれかであり、そのうち少なくとも一つがH-でない。nは1~4の整数である)で表される有機シラン化合物。」

原告は、本件審決における甲4発明の認定内容に誤りがあると主張したが、裁判所は、以下のとおり、本件審決の認定判断に誤りがあるとはいえないとした。

「「刊行物に製造方法やその他の入手方法を理解し得る程度の記載がない場合には、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができることが必要であるというべきである。」との前提において、刊行物に記載された発明としての内容を把握すべきものといえるから、一見すると、甲4発明・・・の有機アミノシランに包含されるような化合物であっても、上記前提を満たさないものについては、刊行物に記載された発明としての甲4発明・・・の有機アミノシランには包含されないものと解される。

したがって、本件審決の新規性の判断における「甲4発明の「C37-」が「ノルマルプロピル基」及び「イソプロピル基」のいずれを示しているのかが明らかでないことに加えて、甲4には、「ジイソプロピルアミノシラン」という化学物質が記載されているとは認められないとして、甲4発明に「「SiH3[N(C372]」で示されるジイソプロピルアミノシラン」を包含しないとする認定判断に誤りがあるとはいえない。 」

そして、本件審決の甲4に基づく新規性・進歩性欠如に関する判断について、裁判所は、甲4発明と本件発明1との相違点2(甲4発明は「ジイソプロピルアミノシラン」を包含していない点)は前記甲1の相違点1と実質同じ内容のものであるから、前記と同様のことがいえるとして、本件発明1は、甲4に記載された発明ではなく、甲4に記載された発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件審決に誤りがあるとはいえないと判断した。

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3.コメント

(1)「刊行物」に発明が記載されているとは

本件は、特許法29条1項3号の「刊行物」に化学物質の発明が記載されているというため(引用発明の適格性)には何が必要とされるのかについて、知財高裁が判断基準を示し判断したものである。

特許法29条1項3号の「刊行物」に化学物質の発明が記載されているというためには、同刊行物に化学物質の発明としての技術的思想が開示されている必要がある。

なぜなら、発明が技術的思想の創作であること(同法2条1項)に鑑みれば、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその技術的思想を実施し得る程度に、当該発明の技術的思想が開示されていることを要するものというべきであるからである。

また、裁判所は、「化学物質の化学式や名称を、その製造方法その他の入手方法を見いだせているか否かには関係なく、形式的に表記すること自体可能である場合もあるから」とも述べている。

すなわち、極端な例を言えば、化学物質の化学式や名称をでっちあげて書き連ねようと思えば誰でも出来てしまうわけであり、そのような「でっちあげ」の記載に対してまで、技術的思想が開示されているとして引用発明であると認定することは妥当ではない。

従って、刊行物に化学物質の発明としての技術的思想が開示されているというためには、一般に、①当該化学物質の構成が開示されていること、さらに、②その製造方法その他の入手方法を理解し得る程度の記載があることが必要とされる。

但し、②の要件を満たさない場合には、③当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができることが必要とされる。

本件では、上記③の要件を満たすか否かが問題となった。

特許法29条1項3号の「刊行物」に化学物質の発明が記載されているといえるか(引用発明の適格性)が上記③の有無で争われた最近の事件として、化学物質名が引用文献に記載されているといえるものの、その製造方法に関する記載が見当たらないことから、同物質を引用発明として認定することはできないと判断した「5-アミノレブリン酸リン酸塩」事件が記憶に新しい。

2023.03.22 「東亜産業 v. neo ALA」 知財高裁令和4年(行ケ)10091(5-アミノレブリン酸リン酸塩事件) - 刊行物に新規化学物質の発明が記載されているといえるか(引用発明の適格性)の判断基準 -
Summary 5-アミノレブリン酸リン酸塩(5-ALAホスフェート)に係る特許発明の新規性が争点となった審決取消請求事件で、引用文献には、同物質が記載されているといえるものの、その製造方法に関する記載が見当たらないことから、同物質を引用発明として認定することの可否が問題となった。 知財高裁は、引用文献からは同物質を引用発明として認定することはできないと判断し、本件発明は引用発明に対して新規性を欠...
2023.07.28 「neo ALA v. 東亜産業」 東京地裁令和4年(ワ)9716(5-アミノレブリン酸リン酸塩事件) - 製品には特許発明に係る化学物質を含むがその純度は低いと主張して発明の技術的範囲の属否を争った事例 -
Summary 「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を巡る特許権侵害訴訟で、東京地裁は、neo ALA(原告)の請求を認め、東亜産業(被告)による各製品の製造等の差止め及び廃棄を命じる判決を言い渡した。 本件発明は新規な化学物質の発明であるところ、被告は、「各被告製品は、5-アミノレブリン酸リン酸塩を含んでいるものの、単離されておらず、高純度のものではないから、本件発明を充足しない」と主張した。 しか...

これら「5-アミノレブリン酸リン酸塩」事件判決においても、知財高裁は、化学物質発明の引用適格性の判断について本判決と同様の判断基準を採用している。

「「刊行物」に「物の発明」が記載されているというためには、同刊行物に当該物の発明の構成が開示されていることを要することはいうまでもないが、発明が技術的思想の創作であること(同法2条1項参照)にかんがみれば、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその技術的思想を実施し得る程度に、当該発明の技術的思想が開示されていることを要するものというべきである。

特に、当該物が新規の化学物質である場合には、新規の化学物質は製造方法その他の入手方法を見出すことが困難であることが少なくないから、刊行物にその技術的思想が開示されているというためには、一般に、当該物質の構成が開示されていることに止まらず、その製造方法を理解し得る程度の記載があることを要するというべきである。そして、刊行物に製造方法を理解し得る程度の記載がない場合には、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができることが必要であるというべきである。」

– 知財高裁令和4年(行ケ)10091の裁判所の判断より

この判断基準は、主に医薬品に関する新規の化学物質の発明について、新規性(進歩性)を判断するための引用発明の適格性(特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」であるか否か)、特に、その製造方法や入手方法が引用文献に記載されているかどうか又は出願時の技術常識に基づいて理解できるかどうか、について争われた過去の裁判での知財高裁の説示と合致している。

参考となるその他の過去の判決を以下に列挙した。

  • 2008.06.30 「シオノケミカル v. ファイザー」 知財高裁平成19年(行ケ)10378(争点は新規性、2水和物の引用発明としての認定が問題となった)・・・「特許法29条1項は,同項3号の「特許出願前に・・・頒布された刊行物に記載された発明」については,特許を受けることができないと規定するものであるところ,上記「刊行物」に「物の発明」が記載されているというためには,まず,同刊行物に当該物の発明の構成が開示されていることが必要であり,また,発明が技術的思想の創作であること(同法2条1項参照)にかんがみれば,当該物の発明の構成が開示されていることに止まらず,当該「刊行物」に接した当業者が,特別の思考を経ることなく,容易にその技術的思想を実施し得る程度に,当該発明の技術的思想が開示されていることを要するものというべきである。そして,当業者が,特別の思考を経ることなく,容易にその技術的思想を実施し得る程度に 当該発明の技術的思想が開示されていることを要するという点は,「刊行物」に記載されている「物の発明」が,新規の化学物質の発明である場合と,公知の化学物質の発明である場合とを問わず,何ら変わりがない。ただ,それが公知の化学物質である場合には,先行技術文献の記載や技術常識等により,当該「刊行物」自体に当該化学物質の製造方法その他の入手方法が記載されていなくとも,当業者がその入手方法を理解し得ることが多いのに対し 新規の化学物質の場合には,一般に製造方法その他の入手方法を見出すことが困難であることが少なくないから,当該「刊行物」にその技術的思想が開示されているというために,製造方法を理解し得る程度の記載があることを要する場合が少なくないということができる。新規の化学物質と公知の化学物質とで 「刊行物」に記載されているというために ,必要な記載内容(特に製造方法の記載の要否)が異なるように説明されることがあるのは,この点に由来するものである。」
  • 2008.04.21 「藤川 v. ファイザー」 知財高裁平成19年(行ケ)10120(争点は新規性、2水和物の引用発明としての認定が問題となった)・・・「特許法29条1項は,同項3号の「特許出願前に・・・頒布された刊行物に記載された発明」については,特許を受けることができないと規定するものであるところ,上記「刊行物」に「物の発明」が記載されているというためには,同刊行物に当該物の発明の構成が開示されていることを要することはいうまでもないが,発明が技術的思想の創作であること(同法2条1項参照)にかんがみれば,当該物の発明の構成が開示されていることに止まらず,当該刊行物に接した当業者が,特別の思考を経ることなく,容易にその技術的思想を実施し得る程度に,当該発明の技術的思想が開示されていることを要するものというべきである。そして,当該物が,例えば新規の化学物質である場合には,新規の化学物質は,一般に製造方法その他の入手方法を見出すことが困難であることが少なくないから,刊行物にその技術的思想が開示されているというために,製造方法を理解し得る程度の記載があることを要することもあるといわなければならない。
  • 2010.08.19 「メルク v. 日本薬品工業」 知財高裁平成21年(行ケ)10180(争点は進歩性、3水和物の引用発明としての認定が問題となった)・・・「ところで,特許法29条1項は,同項3号の「特許出願前に‥‥頒布された刊行物に記載された発明」については特許を受けることができないと規定するものであるところ,上記「刊行物」に「物の発明」が記載されているというためには,同刊行物に当該物の発明の構成が開示されていることを要することはいうまでもないが,発明が技術的思想の創作であること(同法2条1項参照)にかんがみれば,当該刊行物に接した当業者が,思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく,特許出願時の技術常識に基づいてその技術的思想を実施し得る程度に,当該発明の技術的思想が開示されていることを要するものというべきである。特に,当該物が,新規の化学物質である場合には,新規の化学物質は製造方法その他の入手方法を見出すことが困難であることが少なくないから,刊行物にその技術的思想が開示されているというためには,一般に,当該物質の構成が開示されていることに止まらず,その製造方法を理解し得る程度の記載があることを要するというべきである。そして,刊行物に製造方法を理解し得る程度の記載がない場合には,当該刊行物に接した当業者が,思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく,特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができることが必要であるというべきである。
  • 2012.02.08 「オルガノサイエンス・CHIRACOL v. 特許庁長官」 知財高裁平成23年(行ケ)10115(争点は新規性、化合物の引用発明としての認定が問題となった)・・・「本願発明は・・・特定の新規な化合物をその特許請求の対象とするものであるから,引用例に本願発明が記載されているといえるためには,引用例の記載及び本件出願日当時の技術常識を参酌することにより,当業者が,本願発明に包含される引用発明を製造することができたといえなければならない。・・・引用例に記載された引用発明を合成しようとすれば,当業者は,・・・を使用することにより,引用発明を得ることができると認識するものといえる。そして,このことは・・・引用例には引用発明の誘電異方性及び光学異方性の値が明記されており,したがって引用発明の発明者が引用発明を現実に製造していたことによっても裏付けられる。」

(2)バーサム マテリアルとユーピー ケミカル

Air Products and Chemicals, Inc.が本件特許に係る権利を当初保有していたが、分割会社化したバーサム マテリアルズ(Versum Materials)に移転されたようである。

その後、2019年10月、バーサム マテリアルズは独Merck社により買収され、同社はこの買収により半導体やディスプレイ産業にフォーカスした世界有数の電子材料サプライヤーになると期待されると発表した(2019.10. 07 Merck KGaA, Darmstadt, Germany, Completes Acquisition of Versum Materials)。

一方、無効審判請求人(原告)であるユーピー ケミカル(UP Chemical Co., Ltd.(유피케미칼))は、様々な製品を韓国内外の半導体生産ラインに供給している韓国企業であり、そのホームページから製品情報を見ると、以下のとおりDIPAS [Di-isopropylamino Silane] が製品として掲載されている(2024年2月3日閲覧時URL: https://www.upchem.co.kr/eng/product/display.php?ptype=view&prdcode=1706210014&catcode=111310&page=&)。

「ジイソプロピルアミノシラン」製品を製造販売するユーピー ケミカルにとって、本件特許は、その製品を日本で実施することにおいて障害となっており、そのためユーピー ケミカルは本件特許に対する無効審判請求に至ったと考えられる。

本件特許の20年の存続期間は2026年5月15日に満了する。 

(3)欧・米・韓での状況

本件日本特許第4824823号の出願ファミリーが欧州、米国、そして原告ユーピー ケミカルの本拠地である韓国でどのような状況になっているか確認した。

欧州

EP2110459Bが登録されている(2012年8月8日)。クレーム2が「ジイソプロピルアミノシラン」に相当する。European search opinionにおいて、甲4(特開平6-132284号公報)は新規性または進歩性を否定するD1文献として挙げられたが、出願人は、クレームを補正するとともに、D1に記載された「ジプロピルアミノシラン((C372N)SiH3」とは、「ジノルマルプロピルアミノシラン」を意味するものであると主張(09.02.2011 Request for further processing)することによって、その拒絶理由を解消した。甲1(特開2000-195801号公報)は審査官から引用されることなかった。異議申立てはされなかった。

米国

US7,932,413が登録されてる(2011年4月26日)。クレーム2が「ジイソプロピルアミノシラン」に相当する。IDSにおいて甲1(特開2000-195801号公報)及び甲4(特開平6-132284号公報)が出願人から外国特許文献として提出されたが、それらは審査官からのOffice Actionにおける拒絶理由に引用されることはなかった。

韓国

KR100822154B1が登録された(2008年4月7日)。クレーム26が「ジイソプロピルアミノシラン」に相当する。KIPRISで確認したところ、当該特許に対しては、無効審判請求(審判番号2008100002024(2008당2024))がなされた。

無効審判請求人は、比較対象発明2として甲1(特開2000-195801号公報)を挙げ、「SiH3[NR2](ただし、Rはアルカン、アルケン、アルキン、アリル又はアリール等の有機基である)を用いて・・・半導体層を製造する方法が開示され(段落[0009]、[0019])、また、上記原料であるSiH3[NR2]の具体例として、SiH3[N(CH3)2]で表示されるジメチルアミノシラン、SiH3[N(C2H5)2]で表示されるジエチルアミノシラン、 SiH3[N(C3H7)2]で表示されるジプロピルアミノシランやジイソプロピルアミノシラン、SiH3[N(C4H9)2]で表示されるジブチルアミノシラン、ジイソブチルアミノシランやジイソブチルアミノシランが開示され(段落[0022])ていることを特徴とする。」と主張した。

これに対し、被請求人(特許権者)は、比較対象発明について、化合物の製造方法や入手方法が具体的に記載されなければ先行技術として不適当であると主張した。

特許審判院は、この点について検討し、以下のように判断した。

「発明の新規性又は進歩性の判断に提供される比較対象発明は、その技術的構成全体が明確に表現されているだけでなく、未完成発明又は資料の不足により表現が不十分であったり、一部内容に誤りがあるとしても、その技術分野で通常の知識を有する者が発明の出願当時の技術常識を参酌して技術内容を容易に把握することができれば、先行技術になることができる(大法院1997年8月26日判決(大法院1997年8月26日)。判決96後1514判決、最高裁2006年3月24日判決2004後2307判決など参照)。 「出願発明の新規性又は進歩性の判断に提供される先行技術は、発明の構成が開示されたものであれば足り、上記のような事情で比較対象発明が記載不備や未完成発明などを理由に特許を受けられない事由になることは別として、上記物質が比較対象発明に具体的に開示されていないという事由になることはできず、…(中略)…このような物質発明が比較対象発明に具体的に開示されているとするためには、比較対象発明にその物質の構成が記載されていれば十分であり(特許法院2008年6月26日判決参照)。判決 2007허 6928判決参照)」という判決の内容及び法理に照らすと、請求人が提出した比較対象発明1~3は、その技術分野における通常の知識を有する自己発明の出願当時の技術常識を参酌して技術内容を容易に把握できるものであり、本件特許訂正発明の新規性又は進歩性を判断できる物質の構成が開示されているといえるという点で、本件特許訂正発明の無効を主張する根拠である先行技術として認められるので、これを否定する被請求人の上記主張は理由がない。したがって、請求人が提出した比較対象発明1~3は、この事件特許訂正発明の無効を主張する先行技術として適切である。」(筆者による仮訳のため正確には原文に当たってください)

また、本件において引用文献として主張された甲4(特開平6-132284号公報)も当該韓国での無効審判請求において比較対象発明1として挙げられており、訂正後クレーム26(訂正請求が認められ「化学蒸着プロセスによって誘電体膜を蒸着するための」という構成要件がクレームに加わった)のイソプロピルが比較対象発明1に記載されたC3H7よりも優れた顕著な効果があるとは認められないから、当該訂正後クレーム26は選択発明としての進歩性が認められないとして、無効であるとの審決が下された。

特許権者は審決の取消しを求めて特許法院に訴訟を提起したが請求棄却(2011200002374(2011허당2374))、さらに大法院へ上訴(2011300003797(2011후당3797))したが退けられた(2012年3月)ようである(これら判決の内容は確認していない)。

ニャー
ニャー

共通した引用文献が無効理由の材料として主張されましたが、日本と韓国とでは判断が分かれたようですね。何が判断の分かれ道だったのでしょうか。

(4)日韓での判断の分かれ道、引用発明認定の分かれ道

前述のとおり、日本と韓国とでは判断が分かれたことを確認した。

では、何が判断の分かれ道だったのか。

もう一度、韓国と日本での判断を振り返ってみると、韓国では、本件発明は「ジプロピルアミノシラン ((C37)2N)SiH3」の選択発明であると認定されたことで顕著な効果の有無が問題となったが、日本では、「ジプロピルアミノシラン ((C37)2N)SiH3」は「ジノルマルプロピルアミノシラン」を意味するものであって「ジイソプロピルアミノシラン」を包含しないと認定されたことでその相違点である構成自体を当業者が容易になし得たものといえるか否かが問題となった。

結果として、韓国では、顕著な効果があるとは認められないとして進歩性が否定され、一方、日本では、「ジイソプロピルアミノシラン」の製造方法その他の入手方法を把握することはできないからそれを得ることが容易であったとはいえないとして進歩性が肯定された(裁判所は、さらに効果の判断にも踏み込んで本件発明の予測できない効果を肯定している)。

すなわち、引用発明が本願発明を包含するか否かの認定の違いが、日本と韓国とで判断が分かれた点であったようと思われる。

一見すると第三者の引用文献に記載されている発明に包含される(選択発明となる)ような化学物質の発明であっても、当該引用文献に製造方法その他の入手方法を理解し得る程度の記載がなく、当業者が技術常識に基づいてもその製造方法その他の入手方法を見いだすことができないのであれば、「刊行物に記載された発明」としての引用発明には包含されないと主張することによって、選択発明としての顕著な効果の議論に突入することなく、その構成自体の相違点を当業者が容易になし得たものとはいえないとの議論で勝負することが可能である。

なお、韓国での上記事件の判断は10年以上前のものである。韓国では、2021年の大法院判決(BMS社の血栓塞栓症治療薬Eliquis®(有効成分: アピキサバンの化合物特許に関する事件)において、選択発明の進歩性の判断について、その構成の困難性を考慮せずに効果の顕著性のみにより判断してきた従来の特許実務を否定し、選択発明の場合であっても構成の困難性も考慮する一般的な進歩性判断の法理が同じように適用されるべきであるとして、その判断基準を変更した(大法院2021.4.8.言渡し2019フ10609判決)。

参考:

このような、「一見すると引用文献の記載に包含される化学物質の発明」の特許性を判断する上で、引用発明の認定(引用発明の適格性)の是非を問う議論は、下記判決(「ピリミジン誘導体」事件)も参考になるだろう。

  • 2018.04.13 「日本ケミファ v. 塩野義」 知財高裁平成28年(行ケ)10182; 10184(大合議判決)(争点は進歩性、一般式形式記載の化合物の引用発明としての認定が問題となった)・・・「進歩性の判断に際し,・・・引用発明として主張された発明が「刊行物に記載された発明」であって,当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には,特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り,当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず,これを引用発明と認定することはできないと認めるのが相当である。この理は,本願発明と主引用発明との間の相違点に対応する・・・「副引用発明」・・・があり,主引用発明に副引用発明を適用することにより本願発明を容易に発明をすることができたかどうかを判断する場合において,刊行物から副引用発明を認定するときも,同様である。」
2018.04.13 「日本ケミファ v. 塩野義」 知財高裁平成28年(行ケ)10182; 10184
知財高裁大合議判決「膨大な数の選択肢を有する一般式形式記載の化合物が引用発明となる場合とは」: 知財高裁平成28年(行ケ)10182; 10184 【背景】 塩野義製薬が保有していた「ピリミジン誘導体」に関する特許(第2648897号; 2017.05.28満了)無効審判請求(請求人として参加: 日本ケミファ)を不成立とする審決(無効2015-800095号)の取消訴訟。争点は、訴えの利益の有無、...
2018.04.13 「日本ケミファ v. 塩野義」 知財高裁平成28年(行ケ)10260
ロスバスタチンカルシウム(クレストール®)物質特許の無効審判請求取消訴訟: 知財高裁平成28年(行ケ)10260 塩野義製薬(被告)が保有する「ピリミジン誘導体」に関する特許(第2648897号; 2017.05.28満了)の無効審判請求(請求人: 日本ケミファ)を不成立とする審決(無効2016-800032号)の取消訴訟。争点は、訴えの利益の有無、進歩性の有無及びサポート要件違反の有無。本件は請...

本件は、化学物質の発明の特許性における引用発明の認定の重要性を再認識させるものだったといえるだろう。

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