Sep 1, 2014

2014.07.30 「エフ.ホフマン-ラ ロシュ v. 特許庁長官」 知財高裁平成25年(行ケ)10208

化合物の製造方法の進歩性: 知財高裁平成25年(行ケ)10208

【背景】

「炭酸ジメチルを用いたインドール化合物のメチル化」に関する特許出願(特願2007-129662; 特開2007-254487)の拒絶審決(不服2011-22536)取消訴訟。争点は進歩性の有無。

請求項1(本願発明):
一般式(I):

で表わされるメチル化されたインドール化合物の製造方法であって,
炭酸カリウム(K2CO3)および/または相間移動触媒としての臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)の存在下で,周囲圧にて,以下の一般式:


で表わされる化合物を炭酸ジメチルと反応させる操作を含む方法。
本件審決が認定した本願発明と引用発明の相違点:
インドール系化合物のメチル化に際し,本願発明は,「炭酸カリウム(K2CO3)および/または相間移動触媒としての臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)の存在下,周囲圧にて,炭酸ジメチルを用いて行う」が,引用発明は,NaHの存在下,CH3Iを用いて行う点。
【要旨】

主 文
原告の請求を棄却する。(他略)
裁判所の判断
「上記(ア)ないし(ウ)の事実からすると,本願の優先権主張日において,構造が相当程度異なる様々な有機化合物についてメチル化剤として炭酸ジメチルが使用されており,その際には,弱塩基である炭酸カリウム(K2CO3)と相間移動触媒の存在下,周囲圧で反応を行っていると認めることができる。
したがって,①有機化合物の窒素原子をメチル化する場合,炭酸ジメチルがメチル化剤の候補となること,②メチル化剤として炭酸ジメチルを使用する場合には,弱塩基である炭酸カリウムと相間移動触媒の存在下,周囲圧で反応を行うことが,当業者に周知であったと認められる。
また,上記(ア)及び(ウ)からすると,この周知のメチル化方法は,ヨウ化メチル(CH3I)のような生理学的に好ましくない薬剤や水素ナトリウム(NaH)のような高価な塩基を用いた方法の問題点(安全上の問題,副生成物の廃棄の問題,経済上の問題)を解決する可能性がある方法としても当業者に認識されていたと認められる。
以上の検討を総合すると,引用発明は,6-ニトロ-1H-インドールの窒素原子のメチル化をヨウ化メチル(CH3I)を用いて水素ナトリウム(NaH)の存在下で反応を行ったものであるが,刊行物1の趣旨からすれば,窒素原子のメチル化が生じれば足り,メチル化剤や塩基は変更し得るものと理解される一方で,ヨウ化メチルには毒性があり,水素ナトリウムは反応性の高い強塩基であることにかんがみると,当業者にとって,安全上,副生成物の廃棄,経済上の問題を解決するために,引用発明のメチル化方法を,周知の方法であった安全性の高い炭酸ジメチルを用いる上記の方法を試してみることには動機付けがあるといえる。そして,本願発明と引用発明の相違点を構成する「炭酸カリウムおよび/または相間移動触媒としての臭化テトラブチルアンモニウムの存在下で」との点は,その文言からして,炭酸カリウム(K2CO3),臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)又はそれら両者のいずれかの存在を必須とするが,その他の塩基や相間移動触媒が存在することを妨げないものと解されるから,弱塩基である炭酸カリウムを用いる上記周知の方法は,これに含まれると認められる。
したがって,相違点に係る本願発明の構成は,当業者が刊行物1の記載及び周知技術に基づいて容易に想到し得たものである。

顕著な作用効果について
~高温又は高圧が必要でなく,環境に配慮した方法でインドール化合物の窒素原子のメチル化を行う点は,上記周知のメチル化方法の効果として知られていたものにすぎない。
また,~少なくとも本願発明全体が,望む生成物が高品質かつ高い収率で得られるという効果を有すると認めることはできない。
したがって,本願発明は進歩性を推認するに足りる格別顕著な効果を有するものとは認められない。」
【コメント】

米国では成立(US6326501 (B1))、欧州ではかなり限定的になっているようだが成立している(EP1276721 (B1))。
ところで、INPADOCでファミリーを調べると、ヨルダンへ出願しており、成立させている(JO2395 (B))。
PatentScopeでOffice CodeをJO(ヨルダン)にしてデータベース上の全ヨルダン出願を検索、出願人別の分析をすればわかるのだが、実は、PCT経由でヨルダンに出願している出願人のトップがF. Hoffmann-La Roche AG(اف . هوفمان لاروش ايه جي)なのである。

本願発明は、プロテインキナーゼC(“PKC”)の選択的阻害剤である3-(1-メチルインドール-3-イル)-4-(1-メチル-6-ニトロインドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオンという化合物の製造中間体の製造方法として、本願明細書に説明されている。


Public availableなデータベースで上記化合物を検索した情報によれば、現在、CASI Pharmaceuticals, Inc.がRocheからライセンスを受けて、MKC-1というコード名(元コード名はRo 31-7453, R 440)で開発中のようである。

CASI Pharmaceuticals, Inc.のSEC Form 10-K (2013)より抜粋:
MKC-1. Through the acquisition, the Company acquired rights to MKC-1, a Phase 2 clinical candidate licensed from Hoffman-LaRoche, Inc. (“Roche”) by Miikana in April 2005. Under the terms of the agreement, Roche may be entitled to receive future payments upon successful completion of Phase 3 developmental milestones. The Company does not anticipate reaching any of these milestones in 2014. Roche is also eligible to receive royalties on sales and certain one-time payments based on attainment of annual sales milestones. The Company is also obligated to make certain “success fee” payments to ProPharma based on successful completion of developmental milestones under the Roche license agreement. MKC-1 is currently not under active clinical evaluation.

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