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2015.02.24 「大長企画 v. 特許庁長官」 知財高裁平成26年(行ケ)10159

緑イ貝を選択することの容易想到性: 知財高裁平成26年(行ケ)10159

【背景】

「健康食品」に関する特許出願(特願2009-114271)の拒絶審決取消訴訟。争点は進歩性。

請求項1:

A.大豆イソフラボンまたは大豆イソフラボン配糖体,B.クルクミン,C.緑イ貝,およびD.コール酸,またはシムノールまたはシムノール硫酸エステルのA,B,C,Dを含むことを特徴とする健康食品。

【要旨】

主 文

1 原告の請求を棄却する。(他略)

裁判所の判断

「当業者が,引用発明1の成分に加えて「その他成分」として,効能をより増大するために引用発明1が有する効能と同様の効能を有する成分を選択して添加することとし,リウマチ等の関節炎に対して効能のある引用発明1の成分に加えて,引用例2に記載のリウマチ等の関節痛に効能のある成分である緑イ貝を選択することは,当業者が容易になし得る程度のことであり,格別の創意工夫を要しない。したがって,補正発明が,引用発明1及び引用例2に記載の事項により,容易に想到し得たものであるとした審決の判断に誤りはない。」

原告は、

「引用例1と引用例2がともにリウマチを効能とするものであるとしても,リウマチを効能とする食品は複数あるから,その中から引用例2の「緑イ貝」を選択することは動機付けられない」

と主張したが、裁判所は、

「健康食品の分野において,効能をより増大させるために,同じ効能を有する食材を混合することは,本願出願前の周知の技術であり,引用例1においても,引用特許発明の請求項記載の成分に,他の有効成分と組み合わせることが記載され,緑イ貝を粉末又はエキスの形で健康食品として,他の健康食品と混合摂取することは,技術常識であったことに照らすと,緑イ貝を複数の選択肢の中から選択することは,当業者が任意になし得ることである。」

として、原告の上記主張は採用できないと判断した。

また、原告は、

「有効成分を組み合わせるときには,配合禁忌ないし合食禁の問題があるから,引用例1の成分に,同様の効能を有するすべての他の成分を配合できるものではないことを理由に,緑イ貝を選択することは動機付けられることはない」

と主張したが、裁判所は、

「健康食品に複数の材料,成分を混合して摂取することは技術常識であり,緑イ貝が健康食品として他の食品とともに摂取されることも技術常識であったことからすれば,引用例1に接した当業者が,緑イ貝を加えた場合に,各有効成分の作用が阻害されたり,重篤な副作用が出たりといった配合禁忌の問題が生じると考えるとはいえず,引用発明1に緑イ貝を添加する動機付けを阻害するものとはいえない。原告の主張は,化学物資の配合における抽象的危険性を,市販されるような通常の健康食品の併用にあてはめようとするものであり,失当といえる。」

として、原告の上記主張は採用できないと判断した。

また、原告は、

「自己免疫疾患,特に,関節リウマチ,花粉症に有効であり,また,緑イ貝のリウマチの痛みを和らげる効果に加えて「A.大豆イソフラボンまたは大豆イソフラボン配糖体,B.クルクミンおよびD.コール酸,またはシムノールまたはシムノール硫酸エステル」の強筋肉作用により,リウマチに対する作用が相乗効果により更に優れた効果を発揮するなど文献からは予測できない優れた効果を得ることができたのであるから,補正発明は進歩性を有する」

と主張したが、裁判所は、

「本願明細書には,効果として,「~」と記載されているが,実施例1~20においても,「A.大豆イソフラボンまたは大豆イソフラボン配糖体,B.クルクミンおよびD.コール酸,またはシムノールまたはシムノール硫酸エステル」に緑イ貝を添加しない対照実験は行われておらず,緑イ貝の分量によって効果に差異が生じたとの実験結果も示されていない。しかも,「A.大豆イソフラボンまたは大豆イソフラボン配糖体,B.クルクミンおよびD.コール酸,またはシムノールまたはシムノール硫酸エステル」を含む引用発明1に関する引用例1に「強筋肉作用,抗炎症作用」,「衰えた筋肉を強化し,リウマチなどに有効」,「リウマチなどの関節炎に対して著効」である旨記載されていること,緑イ貝の乾燥粉末に関する引用例2には,緑イ貝が関節痛に有効であり,関節痛,リウマチの特効食品とされている旨記載されていること,上記のとおり,健康食品の分野において,効能をより増大させるために,同じ効能を有する食材を混合することは,本願出願前の周知の技術であったことからすれば,上記~に記載された効果は,当業者が予測し得る範囲のものといえる。」

として、原告の上記主張は採用できないと判断した。

【コメント】

引用発明の成分に加えて「その他成分」として効能をより増大するために引用発明と同様の効能を有する副引用例に記載の成分を選択することは、当業者が容易になし得る程度のことであり,格別の創意工夫を要しない。複数有効成分からなる組成物の発明の進歩性が否定される典型例といえる。

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