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2006.09.28 「アボット・セントラル硝子 v. バクスター」 東京地裁平成17年(ワ)10524

セボフルラン(Sevoflurane)- 貯蔵方法の特許権が後発品排除に有効に働いた事例: 東京地裁平成17年(ワ)10524

【背景】
ルイス酸抑制剤で被覆する工程を含むセボフルランの貯蔵方法に関する特許(第3664648号)を有する原告(アボット、アエントラル硝子)が、被告(バクスター)に対し、被告が輸入および販売の準備をしている後発品で全身吸入麻酔剤「セボネス」(一般名:セボフルラン)の生産方法が本件特許の技術的範囲に属するとして、被告製品の輸入、販売および販売の申出の差止めを求めた。

請求項1:

「一定量のセボフルランの貯蔵方法であって,該方法は,
内部空間を規定する容器であって,かつ該容器により規定される該内部空間に隣接する内壁を有する容器を供する工程,
一定量のセボフルランを供する工程,
該容器の該内壁を空軌道を有するルイス酸の当該空軌道に電子を供与するルイス酸抑制剤で被覆する工程,及び
該一定量のセボフルランを該容器によって規定される該内部空間内に配置する工程
を含んでなることを特徴とする方法。」

【要旨】
本件特許のルイス酸抑制剤は、明細書に具体的に記載された化合物に限定されず、被告方法のエポキシフェノリックレジンのラッカーもこのルイス酸抑制剤に含まれるとして、被告方法は本件特許発明の構成要件を充足する。被告は、本件特許が36条及び補正要件違反に基づく無効理由を有すると主張したが、裁判所は採用できないと判断した。
請求認容。仮執行できると判決。

【コメント】
不安定な性質を有する有効成分の貯蔵に関する特許が、有効にジェネリックメーカーの実施を差し止めた事案。方法でなく、物を製造する方法の発明とされた(被告は争わなかった)点も、輸入・販売等を差止めできたポイントでは。
セボフルランは1968年に米国トラベノール社(Travenol Laboratories、現米国バクスター(Baxter)社)によって合成された。丸石製薬がトラベノール社より開発権を取得し、日本並びに海外における開発に着手、1990年に「セボフレン」の販売名で世界に先駆けて日本で製造承認申請を行い販売開始。1992年には米国アボットが日本など一部の国を除く全世界の開発権を取得、その開発過程で、本件特許発明を創作したのであろう。セボフルランの合成に成功したバクスターは開発権を手放したにもかかわらず、セボフルランが吸入麻酔剤として成功すると後発品を販売しようとした。しかし、開発権を取得し、本件特許も取得していたアボットにより特許権侵害を理由に差し止められてしまった。
それにしても、分割出願も多いが、無効審判の数も多い・・・(下記)。本判決後にバクスターが請求した無効審判の結果は・・・。

原告特許に関連した日本出願ファミリー:

    • 親出願
      特願平10-532168/特表2000-510159/特許3183520
      無効審判2005-080139(平17.5.6): 高裁出訴
      無効審判2006-080095(平18.5.22): 審判請求取下
      無効審判2007-800138(平19.7.20): 係属中
      (審判請求人はいずれもバクスター)

    • 分割(1世代)
      特願2000-349024/特開2001-187729/特許3664648
      無効審判2006-080264(平18.12.15): 結審通知(平20.2.13)
      無効審判2006-080265(平18.12.15): 結審通知(平20.2.13)
      無効審判2007-800195(平19.9.14): 結審通知(平20.2.13)
      (審判請求人はいずれもバクスター)

    • 分割(2世代)
      特願2005-109476/特開2005-279283: 出願却下処分

  • 分割(3世代)
    特願2005-374621/特開2006-143742: 出願却下処分
  • 分割(3世代)
    特願2005-374622/特開2006-137769: 出願却下処分

参考:

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