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2009.07.07 「オシリス セラピューティクス v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10193

骨形成増強と骨形成の違い: 知財高裁平成20年(行ケ)10193

【背景】

「間葉幹細胞を用いる骨の再生および増強」に関する発明(特表2000-508911)を進歩性無しとした拒絶審決の審決取消訴訟。

請求項1:

骨形成増強のための組成物であって,骨形成増強を必要とする個体に分離ヒト間葉幹細胞と共に前記個体に投与され,前記分離ヒト間葉幹細胞からの骨形成を生じるのに十分な範囲で前記分離ヒト間葉幹細胞の骨形成系列への分化を支持することを特徴とする組成物。

引用発明の相違点は、

本願発明は「骨形成増強のための組成物」であって、骨形成を必要とする個体」に投与されるものであるのに対し、引用例には、ヌードマウスの皮下に移植したものが骨形成することが記載されているにとどまり、実際に形成増強を必要とする個体に投与されてはいない点

だった。

【要旨】

裁判所は、

「「増強」の語に格別の意味があるとは解されないから、「骨形成増強」と引用発明における「骨形成」とが相違する旨の原告の主張は採用することができない。~本願明細書における「骨形成」と引用発明における「骨形成」とが同様の現象を意味していることは明らかであり、これらが異なるものであるとの原告の主張を採用することはできない。」

と判断した。

原告は、

「上記摘記事項の記載が本願発明の動機付けとならないことについて,間葉幹細胞の分化がどの分化経路を進むのかは,機械的影響及び又は内因性の生物活性因子(例えば,成長因子,サイトカイン,及び/又は宿主組織により定められる局所的な微小環境条件)に依存しており,制御することは困難である」

と主張した。

しかしながら、裁判所は、

「もともと骨が存在しない皮下等の部位に比して,骨が本来存在する部位においては,間葉幹細胞の分化を骨の分化経路へと導く微小環境条件がより整っているであろうことは,当業者であれば容易に着想し得ることであり,異所性移植で骨形成がみられた材料に対して,同所性移植によって同様の骨形成することを期待することは,当業者にとって極めて自然な発想であるというべきである。」

と判断した。

請求棄却。

【コメント】

「骨形成」と「骨形成増強」とは違うし分化がどう進むかを予測するのは困難である、と原告は主張したが、認められなかった。当業者であれば容易に着想したであろう仮説を確認したにすぎないという結論のようである。

参考:

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