レミッチ®用途特許の延長登録に関する審決取消請求事件 最高裁が上告棄却・上告不受理決定したことにより知財高裁の審決取消(延長登録有効)判決が確定

東レ株式会社(以下、「東レ」)の2021年10月25日付お知らせ「経口そう痒症改善剤レミッチ®の用途特許に関する審決取消訴訟の判決確定について」によると、東レが医薬品製造販売承認を取得した経口そう痒症改善剤レミッチ®に関する用途特許(特許第3531170号)の特許延長登録に関して、東レは、2021年3月25日に知財高裁にて、

  • 延長登録拒絶審決の取消判決(下表1のNo. 4)
  • 延長登録無効審決の取消判決(下表1のNo.1, 2, 3)
  • 用途特許に対する特許無効審判審決維持(特許有効)判決(下表1のNo. 5)

を得ていましたが、このたび、これら全ての判決が確定したとのことです。

これら審決取消訴訟において、知財高裁は、いずれも東レの主張を認める判決を下していました(表1)。

No.判決判決要旨
12021.03.25 「東レ v. 沢井製薬・ニプロ」 知財高裁令和2年(行ケ)10098レミッチ®OD錠の特許権の存続期間の延長登録「腹膜透析患者のそう痒症」についての無効審決部分を取消す判決。知財高裁は、特許権の存続期間延長制度の趣旨に照らして、実質的に登録可否を判断すべきであるとの一般原則を示したうえで、本件においては、実質的には、効能・効果を生ぜしめる成分はフリー体の「ナルフラフィン」であるから、「ナルフラフィン」も本件医薬品の有効成分であると認め、従って、本件発明(「ナルフラフィン」のフリー体)の実施に本件処分を受けることが必要であった、と判断した。
22021.03.25 「東レ v. 沢井製薬・ニプロ」 知財高裁令和2年(行ケ)10097レミッチ®カプセルの特許権の存続期間の延長登録「腹膜透析患者のそう痒症」についての無効審決部分を取消す判決。知財高裁は、特許権の存続期間延長制度の趣旨に照らして、実質的に登録可否を判断すべきであるとの一般原則を示したうえで、本件においては、実質的には、効能・効果を生ぜしめる成分はフリー体の「ナルフラフィン」であるから、「ナルフラフィン」も本件医薬品の有効成分であると認め、従って、本件発明(「ナルフラフィン」のフリー体)の実施に本件処分を受けることが必要であった、と判断した。
32021.03.25 「東レ v. 沢井製薬・ニプロ」 知財高裁令和2年(行ケ)10096ノピコール®カプセルの特許権の存続期間の延長登録「慢性肝疾患患者のそう痒症」についての無効審決を取消す判決。知財高裁は、特許権の存続期間延長制度の趣旨に照らして、実質的に登録可否を判断すべきであるとの一般原則を示したうえで、本件においては、実質的には、効能・効果を生ぜしめる成分はフリー体の「ナルフラフィン」であるから、「ナルフラフィン」も本件医薬品の有効成分であると認め、従って、本件発明(「ナルフラフィン」のフリー体)の実施に本件処分を受けることが必要であった、と判断した。
42021.03.25 「東レ v. 特許庁長官」 知財高裁令和2年(行ケ)10063レミッチ®OD錠の特許権の存続期間の延長登録出願「血液透析患者、慢性肝疾患患者のそう痒症」の拒絶審決を取消す判決。「ナルフラフィン塩酸塩」のみを本件医薬品の有効成分と解し、「ナルフラフィン」は本件医薬品の有効成分ではないと認定して、本件発明の実施に本件処分を受けることが必要であったとはいえないと判断した本件審決の認定判断は、誤りであると知財高裁は判断した。
52021.03.25 「沢井製薬 v. 東レ」 知財高裁令和2年(行ケ)10041無効審判請求不成立審決の取消請求を棄却する判決。知財高裁は、公知文献の仮説や推論が動機付けを基礎づける場合はあるが、本件においては、技術的な裏付けの乏しい一つの仮説にすぎないものであり、「止痒剤」用途を動機付けるとは認められない、と判断した。
表1 用途特許(特許第3531170号)について知財高裁で争われてた審決取消請求事件

さて、東レは、レミッチ®の後発医薬品(ナルフラフィン塩酸塩OD錠)を製造販売する沢井製薬及び扶桑薬品工業(被告ら)に対して、当該用途特許に係る延長された特許権を侵害していると主張して、被告らの製品の製造販売差止と損害賠償等を求めて訴訟を提起しています。

2021年3月30日、東京地裁は、東レの請求を棄却しましたが、その理由は、本件発明の構成要件である「有効成分」という用語の意義を狭く解釈し、被告らの製剤は構成要件を充足しないというものでした。

参考記事: 2021.03.30 「東レ v. 沢井製薬・扶桑薬品工業」 東京地裁平成30年(ワ)38504, 平成30年(ワ)39508・・・延長特許権の効力について判断せず。「有効成分」を狭く解釈し、被告ら製剤は非充足。しかし別件審決取消訴訟で知財高裁は広く解釈・・・

2021.03.30 「東レ v. 沢井製薬・扶桑薬品工業」 東京地裁平成30年(ワ)38504, 平成30年(ワ)39508・・・延長特許権の効力について判断せず。「有効成分」を狭く解釈し、被告ら製剤は非充足。しかし別件審決取消訴訟で知財高裁は広く解釈・・・
1.はじめに経口そう痒症改善剤レミッチ®の後発医薬品(ナルフラフィン塩酸塩OD錠)を製造販売する沢井製薬及び扶桑薬品工業(被告ら)に対して、東レが、ナルフラフィンの用途特許に係る特許権(延長登録出願によりみなし延長された)を侵害していると主張して、被告ら製品の製造販売差止と損害賠償等を求めていた訴訟で、東京地裁は、東レの請求をいずれも棄却した。延長された特許権の効力は被告ら製剤に及ぶのか...

しかし、その「有効成分」という用語の意義については、同特許権に係る延長登録の無効を争っていた前記審決取消訴訟でも争点となり、知財高裁は、東京地裁と同様に狭い解釈をした審決を誤りであるとしてそれら審決を全て取り消しました。そして、2021年10月25日の東レのお知らせにあるとおり、それら判決は確定したわけです。

東レは、上記特許権侵害訴訟における東京地裁判決を不服として、知財高裁に控訴したようです(2021.06.17 日本経済新聞「東レ、知財高裁に控訴 かゆみ改善薬の特許侵害として」)。

知財高裁が、用途特許について延長された特許権の効力は沢井製薬及び扶桑薬品工業の製剤に及ぶと判断するのかどうか・・・その結論を導く判決内容は延長された特許権の効力が及ぶ範囲についての明確なガイダンスを与えてくれることを大いに期待して、その判決を待ちたいと思います。

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