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エドキサバンに関する特許権について

2026年8月26日、日刊薬業に「【謹告】エドキサバンに関する特許権について」が掲載されました(日刊薬業「【謹告】エドキサバンに関する特許権について」)。第一三共株式会社が、エドキサバントシル酸塩水和物を有効成分とする「リクシアナ®錠15mg/30mg/60mg」及び「リクシアナ®OD錠15mg/30mg/60mg」について、その製品を保護する特許権を改めて明示したものです。同じ内容の謹告が2026年2月17日にも掲載されています。

今回の謹告で第一三共が挙げているのは、次の8件の日本国特許です。

特許番号 発明の名称 主な位置付け
特許第4128138 ジアミン誘導体 エドキサバンそのものをカバーする基本物質特許
特許第4109288 ジアミン誘導体 エドキサバンそのものを含有する医薬特許
特許第4510088 光学活性なジアミン誘導体およびその製造方法 エドキサバンの製造方法特許
特許第4463875 医薬組成物 エドキサバンのコーティング錠剤特許
特許第5305421 ジアミン誘導体の製造方法 エドキサバンの製造方法特許
特許第5390014 抗凝固剤の溶出改善方法 エドキサバン製剤の製造方法特許
特許第6061438 ジアミン誘導体含有医薬組成物 エドキサバンおよびフマル酸含有医薬組成物特許
特許第6325627 口腔内崩壊錠及びその製造方法 OD錠特許

エドキサバン(Edoxaban)は、第一三共が創製した低分子の経口抗凝固剤で、FXaを選択的、可逆的かつ直接的に阻害することにより、血栓形成抑制作用を発現します。日本では、2011年4月22日にリクシアナ®錠として承認を取得しました。

エドキサバンは、第一三共にとって単なる一製品ではありません。

2020年にこのブログで第一三共の知的財産活動を取り上げた際にも、エドキサバンを有効成分とするリクシアナ®(米国での商品名:SAVAYSA®)は、特許権存続期間が満了したオルメサルタンに代わる主力品として位置付けられていました。2019年度には全世界で1,500億円を超える売上に達しており、第一三共の成長を支える重要な製品でした(2020.05.16ブログ記事「第一三共の知的財産活動の景色(2019)」参照)。

第一三共の知的財産活動の景色(2019)
2020年4月27日、第一三共は2019年度(2020年3月期)本決算を発表しました(第一三共2020年3月期決算短信)。本記事では、現時点での第一三共の知的財産活動の景色を2019年度決算資料や他の公表情報・過去記事から振り返ります。第一三共バリューレポート2019より引用1.オルメサルタン・パテントクリフのその後第一三共は、2016年度から2020年度までの第4期中期経営計画を2025年ビジョ...

2025年度のエドキサバンのグローバル売上は 3,677億円、国内売上は 1,418億円(前年度比6.6%増)と報告されています。これは、同年度の国内医薬品売上ランキングで第二位に位置しており、MSDの「キイトルーダ®」に次ぐ数字です。

8件の特許を眺めると、第一三共のエドキサバン特許ポートフォリオは、有効成分そのもの、原薬の製造、製剤の製造、医薬組成物、コーティング錠、OD錠といった複数のレイヤーからエドキサバンを取り囲んでいることが分かります。

今回の謹告で特に目を引くのが、特許第4128138号と第4109288号についての記載です。

第一三共は、特許第4128138号を「有効成分に関する」特許、特許第4109288号を「有効成分の効能及び効果に関する」特許として位置付け、この2件についての特許権の存続期間が5年延長されていると説明しています。

この2件の特許権については、20年の存続期間は既に経過しており、現在、延長された期間として存続しています。

第一三共は、存続期間延長に係る部分も含めてすべて満了するまでは、これまで承認されたすべての効能・効果と、通常錠・OD錠等のすべての剤形が保護されている、としています。

医薬品に関する特許権の存続期間延長は、単純に「この特許は○年○月○日まで」と一つの日付で語れるとは限りません。処分対象となった医薬品、効能・効果、剤形などによって、個々の延長登録と効力範囲の意味を確認する必要があります。2020年の調査でも、特許第4128138号と特許第4109288号について、延長登録ごとに異なる満了日が存在することを確認していました。

したがって、今回の謹告にある「5年延長」という記載だけを見て、直ちに「エドキサバンの特許権の存続期間がすべて一律5年間延長された」と理解するのは適切ではありません。

むしろ、どの延長登録が、どの製品・効能・剤形を対象としているのかを確認することが重要です。

今後、エドキサバン後発品の承認や発売、パテントリンケージに関連する動きが出てきた際には、今回の8件のどの特許権が実際の参入障壁として機能するのかを追ってみると、先発品の「特許権による製品保護」がどこまで実効性を持つのかが見えてくるでしょう。


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