2020/02/24

WIPO Conversation on Intellectual Property (IP) and Artificial Intelligence (AI): Second Session

On December 13, 2019, WIPO invited member states and all other interested parties to provide comments and suggestions to help define the issues related to intellectual property (IP) and artificial intelligence (AI) based on a Draft Issues Paper on IP Policy and AI.

The submissions period closed on February 14, 2020.  These comments will be used to prepare a revised issues paper for discussion at the second session of the WIPO Conversation on IP and AI (WIPO/IP/AI/2/GE/20; May 11-12, 2020).

Comments:

2020/02/21

2020年2月 シアリス®(タダラフィル(tadalafil))のジェネリックが初承認

2020年2月19日、タダラフィル(tadalafil)を有効成分とする勃起不全治療剤シアリス®錠のジェネリックが初承認されました。承認されたのは下記3製品。
  • タダラフィル錠10mgCI「クラシエ」/タダラフィル錠20mgCI「クラシエ」(製造販売元: シオノケミカル、発売元: クラシエ薬品)
  • タダラフィル錠10mgCI「サワイ」/ タダラフィル錠20mgCI「サワイ」(製造販売元: 沢井製薬)
  • タダラフィル錠10mgCI「あすか」/ タダラフィル錠20mgCI「あすか」(製造販売元: 大興製薬、発売元: あすか製薬、販売: 武田薬品工業)
シアリス®錠は、選択的なホスホジエステラーゼ タイプ5(PDE5)阻害作用を有するタダラフィル(tadalafil)を有効成分とする勃起不全治療剤であり、日本では2007年7月に承認されました(通常1日1回タダラフィルとして10mg。一定の場合には20mgまで増量可)(薬価基準未収載。保険適用外)。2007年9月より日本イーライリリーにて発売されていましたが、2009年7月1日から日本新薬が販売を受託・発売しています。再審査期間は2007年7月31日から2015年7月30日(8年)。

また、同じ有効成分タダラフィルを含有する前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤ザルティア®錠および肺動脈性肺高血圧症治療薬アドシルカ®錠の再審査期間はそれぞれ2014年1月17日から2018年1月16日(4年)および2009年10月16日~2019年10月15日(10年)。 日本新薬の決算発表資料によると、同じ有効成分タダラフィルを含有するシアリス®錠、ザルティア®錠、アドシルカ®錠の2019年度売上はそれぞれ46億円、121億円、52億円であり、2020年度売上はそれぞれ39億円、130億円、54億円を予想しています(日本新薬2020年3月期第3四半期決算短信(2020年2月5日))。2020年の第一四半期を目処に日本新薬が日本におけるタダラフィル製剤の製造販売元となります(2019.05.10 日本新薬 press release: 「ホスホジエステラーゼ5阻害剤 タダラフィルに関する契約締結のお知らせ」)。

シアリス®錠と同じ有効成分タダラフィルを含有する前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤ザルティア®錠のジェネリックも2020年2月17日に初承認となっています。

1.シアリス®錠を保護する3つの特許
  • タダラフィルの物質特許(特許3808095号)は、1995年1月19日に出願され、2006年5月26日に登録されました。勃起不全症を処分対象の特定用途とした特許存続期間延長登録(特願2007-700102; 特願2007-700103; 特願2007-700104)が認められ、その延長期間(1年2月4日)は2016年3月で満了しました。
  • タダラフィルの勃起機能不全治療用途特許(特許4169365号)は、1996年7月11日に出願され、2008年8月15日に登録、2016年7月11日に満了しました。
  • シアリス®錠の特定用量製剤を保護する特許(第4975214号)は、2000年4月26日に出願され、2012年4月20日に登録、存続期間満了日は2020年4月26日です。この特定用量製剤特許に対してジェネリックメーカーによる無効審判が請求されました(下記)。

2.東和薬品の動き

シアリス®錠の特定用量製剤特許(第4975214号)は、下記事件において、東和薬品による特許無効審判請求(2013年12月27日)を不成立とする審決(無効2013-800243)の取消判決がなされていました。
知財高裁の判決後、2016年5月6日付で上告受理申立、2017年4月13日付で上告受理申立却下、無効2013-800243事件の審理が再開、同年8月2日付で予告審決となりましたが、8月23日付で東和薬品により請求取下書が提出され、審判は取下げとなっていました。

東和薬品は、上記無効審判請求を行い、2016年中にはシアリス®錠のジェネリックの承認を得て販売に踏み切ってもいいくらいの有利な上記判決を勝ち取りながらも、審判請求取下げをして現時点で承認・販売に至っていないようです。東和薬品と特許権者側との間で何かしらの和解契約をした可能性よりも、むしろ東和薬品はシアリス®錠のジェネリック参入をしないことを決断したのかもしれません。一方で、東和薬品は、シアリス®錠と同じ有効成分であるタダラフィルを含有する前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤ザルティア®錠のジェネリックであるタダラフィルOD錠2.5mgZA/5mgZA「トーワ」を2020年2月17日に承認取得しています。シアリス®錠(保険適用外)よりもザルティア®錠(保険適用)の売上が大きいことを考えれば、ザルティア®錠のジェネリック参入だけに絞ったとしても不思議ではないのかもしれません。

3.シオノケミカル、マイラン製薬の動き

上記東和薬品によるシアリス®錠の特定用量製剤特許(第4975214号)に対する無効審判請求取下げ後の2017年11月7日(東和薬品が無効審判請した2013年末に遅れること約4年)、シオノケミカルは同特許に対する無効審判請求(無効2017-800140号事件)を行い(同年12月15日付でマイラン製薬が請求人側に参加申請)、2019年7月25日、シオノケミカル及びマイラン製薬は無効審決を勝ち取りました。同年11月29日、特許権者であるイコス(又は参加人イーライリリー)は、本件無効審決を不服として審決取消訴訟を提起したようです。
審決取消訴訟が係属中であることから審決が取消されるリスクは残されているものの、審決が無効判断を下したことで、シオノケミカル及びマイラン製薬は、シアリス®錠のジェネリックの承認を得て販売に踏み切る判断もありえました。今後の審理がどうであれ、シアリス®錠の特定用量製剤特許(第4975214号)の存続期間満了日は2020年4月26日に迫っているからです。少なくともシオノケミカルは下記シアリス®錠のジェネリックの承認を取得したようで、6月の薬価収載・発売に踏み切ると思われます。
  • タダラフィル錠10mgCI「クラシエ」/タダラフィル錠20mgCI「クラシエ」(製造販売元: シオノケミカル、発売元: クラシエ薬品)
シオノケミカルは、シアリス®錠と同じ有効成分であるタダラフィルを含有する前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤ザルティア®錠のジェネリックであるタダラフィル錠2.5mgZA「フソー」/タダラフィル錠5mgZA「フソー」(製造販売元: シオノケミカル、発売元: 扶桑薬品)も2020年2月17日に承認取得しています。

4.他のジェネリックメーカーの動き

他のジェネリックメーカーも、シアリス®錠の特定用量製剤特許(第4975214号)の存続期間満了日である2020年4月26日をターゲットにシアリス®錠のジェネリックの承認を取得して、販売に踏み切ることができると思われます。少なくとも2020年2月19日にシアリス®錠のジェネリックである
  • タダラフィル錠10mgCI「サワイ」/ タダラフィル錠20mgCI「サワイ」(製造販売元: 沢井製薬)
  • タダラフィル錠10mgCI「あすか」/ タダラフィル錠20mgCI「あすか」(製造販売元: 大興製薬、発売元: あすか製薬、販売: 武田薬品工業)
が承認されたことが明らかとなっています。沢井製薬及びあすか製薬は、それぞれシアリス®錠と同じ有効成分であるタダラフィルを含有する前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤ザルティア®錠のジェネリックであるタダラフィル錠2.5mgZA「サワイ」/ タダラフィル錠5mgZA「サワイ」又はタダラフィル錠2.5mg ZA「あすか」/ タダラフィル錠5mg ZA「あすか」を2020年2月17日に承認取得しています。


2020/02/20

2020年2月 セレコックス®(セレコキシブ)のジェネリックが初承認

2020年2月17日、非ステロイド性消炎・鎮痛剤(COX-2選択的阻害剤)セレコックス(Celecox)®錠のジェネリックが初承認となりました(20社40品目)。20社のジェネリックの中には、ファイザーのセレコキシブ「ファイザー」があり、これはオーソライズド・ジェネリック(AG)のようです。

有効成分であるセレコキシブは、1992 年に米国サール社(現 米国ファイザー社)で合成されました。日本では、1996 年4月から山之内製薬(現 アステラス製薬)と日本モンサント(現 ファイザー)が共同開発を実施し、2007年1月26日に「関節リウマチ、変形性関節症」を効能・効果としてアステラス製薬がセレコックス®錠の製造販売承認を取得しました(販売提携 ファイザー)。2009年6月17日には「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、腱・腱鞘炎」、さらに2011年12月22日には、「手術後、外傷後並びに抜歯後の消炎・鎮痛」の効能・効果が追加承認されました。

再審査期間は、「関節リウマチ、変形性関節症」については、2007年1月26日~2015年1月25日(8年間)、「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、腱・腱鞘」及び「手術後、外傷後並びに抜歯後の消炎・鎮痛」についても、「関節リウマチ、変形性関節症」の残余期間(2015年1月25日)までということで、再審査期間が終了した2015年以降、セレコックス®錠の市場独占性は特許によって守られていました。

しかし、2019年11月14日に、セレコックス®錠を保護する物質特許は満了したことから(偶然にも、組成物特許の無効理由を認める判決も同日付で出された)、2020年2月にはジェネリックの承認がされると推測されていました(2019.11.14 「東和薬品・日本ケミファ・ヘキサル v. ジー.ディー.サール」 知財高裁平成30年(行ケ)10110; 10112; 10155)。
  • 物質特許(第3025017号)・・・2019年11月14日に延長存続期間(5年間)満了。
  • 組成物特許(第3563036号)・・・20年の存続期間満了日は2019年11月30日、期間延長登録により、「関節リウマチ、変形性関節症」については2022年6月26日、「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、腱・腱鞘炎」及び「慢手術後、外傷後並びに抜歯後」については2024年11月30日が満了日だった。しかし、本件特許に対する無効審判(無効2016-800112号)の請求不成立審決とされた部分は取り消されるべき(サポート要件に適合しない)とした2019年11月14日付の知財高裁判決(2019.11.14 「東和薬品・日本ケミファ・ヘキサル v. ジー.ディー.サール」 知財高裁平成30年(行ケ)10110; 10112; 10155)がだされていた。

2020/02/17

2020年2月 ゼチーア®(エゼチミブ)ジェネリック承認 10社以上が参入

2020年2月17日、高脂血症治療剤ゼチーア®錠のジェネリック(昨年8月承認のAGを除く)の承認を取得したジェネリックメーカーは10社以上となりました。2020年6月の薬価基準収載・発売が見込まれます。ゼチーア®錠の再審査期間(2007年4月18日~2015年4月17日)が終了しているため、エゼチミブを保護する物質特許(第2803908号)の満了(5年の延長のため2019年9月14日)以降、早ければ2020年2月にジェネリックが承認されると推測されていました。

ゼチーア®錠は、米国シェリング・プラウ社(現 Merck Sharp & Dohme Corp., a subsidiary of Merck & Co.,Inc.)により創製された世界初の小腸コレステロールトランスポーター阻害剤である高脂血症治療剤(有効成分: エゼチミブ(Ezetimibe))。日本ではMSD/バイエル薬品が販売していますが、第一三共エスファが2019年8月にオーソライズド・ジェネリック(AG)であるエゼチミブ錠 10mg「DSEP」の承認を取得し、発売開始を2020年6月に予定していると発表しています。従って、AGと他のジェネリックとが横並びで同時期に一斉に発売になると思われます。

ゼチーア®錠およびAGの効能・効果は「高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、ホモ接合体性シトステロール血症」であるのに対し、他のジェネリックの効能・効果は「高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症」のみとなっています。「ホモ接合体性シトステロール血症」については用途特許(第4614460号および第4711600号)が存続しているため(2022年1月25日満了)、パテントリンケージによりジェネリックは効能効果の虫食い承認となったと思われます。


2020/02/02

ハーセプチン®の乳癌治療に関連する特許を巡るジェネリックメーカーの動き

抗HER2ヒト化モノクローナル抗体・ハーセプチン®のバイオ後続品(バイオシミラー)の上市を果たしたのは、現在、日本化薬、セルトリオン社、ファイザー社、第一三共の4社です。しかし、ジェネンテック社が保有するハーセプチン®の乳癌治療に関連する特許に対する各社の対応の違いにより、バイオ後続品の【効能・効果】および【用法・用量】(乳癌について3週間1回投与(B法)の有無)が先発品と同一となる時期に差が生じたようです。

1.セルトリオン社・日本化薬

2016年
セルトリオン社は、ハーセプチン®の乳癌治療に関連する2つの特許(特許5623681及び特許5818545)に対してそれぞれ無効審判請求を行った。

2017年
ハーセプチン®の乳癌治療に関連する特許の侵害を理由として、専用実施権者である中外製薬は、ジェネンテック社とともに、セルトリオン社と共同開発を進めてきたバイオ後続品の製造販売承認申請を2017年4月11日に行ったとプレスリリース(「トラスツズマブ(遺伝子組換え)製剤のバイオ後続品(バイオシミラー)の製造販売承認申請について」)した日本化薬に対して、同バイオ後続品の製造販売等の差止めを求め、2017年8月17日付で東京地裁に訴訟を提起した(過去記事: 2017.09.09 「中外がハーセプチン®バイオシミラー承認申請した日本化薬に対し用途特許侵害で製造販売差止訴訟提起」)。

2018年
中外製薬は、製造販売承認となった日本化薬のバイオ後続品の効能・効果が「HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌」のみであり、「HER2過剰発現が確認された乳癌」は含まないことから、日本化薬を被告として提起していた特許侵害訴訟について、請求放棄の手続を執った(過去記事: 2018.04.11 「ハーセプチン®用途特許侵害訴訟。日本化薬バイオシミラーの承認効能効果受け、中外が差止請求放棄」)。日本化薬とセルトリオン社のバイオ後続品は、胃癌について承認となり(乳癌は含まない)、8月に販売が開始された。しかし、同年10月、上記無効審判の請求不成立審決は知財高裁によって取消されることになる(セルトリオン社・ファイザー社の勝訴)。
2019年
2016年から係争中だった、セルトリオン社による特許無効審判請求は、和解により解決することで合意に至り(2019年7月22日公表)、セルトリオン社は審判請求を取下げ、8月21日付でセルトリオン社及び日本化薬は乳癌について3週間1回投与(B法)を追加する承認事項一部変更承認を取得。これにより、セルトリオン社及び日本化薬のバイオ後続品の【効能・効果】および【用法・用量】は、先行バイオ医薬品ハーセプチン®と同様となった。

2.ファイザー社

2017年
ファイザー社は、ハーセプチン®の乳癌治療に関連する特許(特許5818545)に対して無効審判請求を行った。

2018年
中外製薬は、ジェネンテック社とともに、ハーセプチン®バイオ後続品の胃癌及び乳癌(1週間1回投与(A法))について製造販売承認を取得したファイザーに対し、特許侵害を理由として、10月12日付で東京地裁に同バイオ後続品の製造販売等の差止めを求める訴訟を提起した(過去記事: 2018.10.12 「中外がハーセプチン®バイオシミラー承認取得した第一三共とファイザーに対し用途特許侵害で差止訴訟提起」)が、同月31日には取下げた(2018.10.31 中外製薬 press release: 「訴訟および仮処分命令申立ての取り下げについて」)。

2019年
2017年から係争中だった、ファイザー社による特許無効審判請求は、4月25日付でファイザー社により取下げられ、2019年7月17日付でファイザー社は乳癌について3週間1回投与(B法)の用法用量を追加する承認事項一部変更承認を取得。ファイザー社のバイオ後続品の【効能・効果】および【用法・用量】は、先行バイオ医薬品ハーセプチン®と同じとなり、8月22日より発売。審判請求の取下げや乳癌B法の追加承認取得・発売のタイミングなどから、同特許についてジェネンテック社との間で何らかの和解による合意がされたものと推測される。

3.第一三共

2018年
中外製薬は、ジェネンテック社とともに、ハーセプチン®バイオ後続品の胃癌及び乳癌(1週間1回投与(A法))について製造販売承認を取得した第一三共に対し、特許侵害を理由として、10月12日付で東京地裁に同バイオ後続品の製造販売等の差止めを求める訴訟を提起した(過去記事: 2018.10.12 「中外がハーセプチン®バイオシミラー承認取得した第一三共とファイザーに対し用途特許侵害で差止訴訟提起」)が、同月31日には取下げた(2018.10.31 中外製薬 press release: 「訴訟および仮処分命令申立ての取り下げについて」)。

2019年
第一三共は、セルトリオン社やファイザー社が請求した特許無効審判には参加していなかった。セルトリオン社やファイザー社が特許無効審判請求を取下げたことで、同特許は有効に存続していることになり、第一三共は、それら請求取下げ直後の5月31日に無効審判を請求した。

2020年
現時点で、第一三共は、特許の無効審決を得るに至っていない。セルトリオン社、日本化薬、ファイザー社は、ハーセプチン®と【効能・効果】および【用法・用量】が同じバイオ後続品を発売しているが、第一三共は、乳癌について3週間1回投与(B法)についての追加承認を得るには至っていない。ハーセプチン®の乳癌に関連する特許の存続期間は5月または8月で満了する。

表: ハーセプチン®及びバイオ後続品の製品・特許ヒストリー(特許5623681(
特許5818545())

ハーセプチン®
のヒストリー
トラスツズマブ・バイオシミラーのヒストリー
日本化薬
セルトリオン
ファイザー
第一三共
2000
5/9 出願日
8/25 原出願日




2001
4/4 製造販売承認(乳癌)




2004
2/26 剤形追加承認




2008
2/29 乳癌について効能効果及び用法用量追加承認




2011
3/10 胃癌について効能効果及び用法用量追加承認
4/3 再審査期間終了
11/25乳癌について効能効果及び用法用量追加承認




2013
6/14 乳癌について用法用量は1週間1回投与(A)又は3週間1回投与(B)となる




2014
10/3 特許登録日




2015
10/9 特許登録日




2016


2/15 審判請求(無効2016-800021)
6/17 審判請求(無効2016-800071)
12/27 訂正認めた上で請求不成立審決(無効理由なし)


2017

4/11 承認申請







8/17 東京地裁に販売等差止訴訟提起される
3/17 ファイザー参加申請
5/10 審決取消訴訟提起(H29行ケ10106)
7/5 請求不成立審決(無効理由なし)
8/10 審決取消訴訟提起(H29行ケ10165; 10192)


5/10 審判請求(無効2017-800062)





10/17 セルトリオン参加申請

2018

3/23 胃癌について承認
4/10 差止請求取下げられる
5/30 薬価収載
8/20 発売













11/28 乳癌について追加承認(1週間1回投与(A))
3/23 胃癌について承認


5/30 薬価収載
8/28 発売



10/11 審決取消判決(無効理由あり)
10/22 審決取消判決(無効理由あり)
11/12 上告受理申立
11/12 上告受理申立
11/28 乳癌について追加承認(1週間1回投与(A))






9/21 胃癌及び乳癌(1週間1回投与(A))について承認
10/12 東京地裁に販売等差止訴訟提起される

10/31 差止請求取下げられる




12/10 審決の予告(進歩性欠如)






9/21 胃癌及び乳癌(1週間1回投与(A))について承認
10/12 東京地裁に販売等差止訴訟提起される

10/31 差止請求取下げられる



11/28 薬価収載・発売
2019











7/22 和解プレスリリース
8/21 乳癌について3週間1回投与(B)の用法用量追加承認
3/7 上告受理申立却下
3/26 審判審理再開
4/25 ファイザイー参加取下げ
5/13 審判請求取下げ
5/13 審判請求取下げ
7/22 和解プレスリリース
8/21 乳癌について3週間1回投与(B)の用法用量追加承認




4/25 審判請求取下げ
5/13 セルトリオン参加取下げ

5/29 薬価収載
7/17 乳癌について3週間1回投与(B)の用法用量追加承認
8/22 発売









5/31 審判請求(無効2019-800043)
2020

5/9特許満了日(延長なし)
8/25特許満了日(延長なし)



2/21 口頭審理

2020/01/26

2019.07.25 「シオノケミカル v. イコス」 特許庁審決 無効2017-800140号事件

タダラフィルの特定用量製剤(シアリス®錠)特許: 特許庁審決 無効2017-800140号事件

イコス・コーポレイションが保有する「単位製剤」に関する特許(第4975214号; 存続期間満了日2020.4.26)に対してシオノケミカル(株)が請求した無効審判。審判合議体は、訂正を認めたうえで、本件発明1~13は無効理由2(進歩性欠如)により無効にすべきものであると判断した。

訂正後の請求項1(本件発明1):
1日あたり10mgの総用量を上限として、以下の構造式:
を有する化合物を単位製剤あたり1乃至10mg含み、ヒトにおける勃起不全の処置に使用される内服用単位製剤であって、有効に勃起不全を処置しつつ副作用の発生を抑制することができる、内服用単位製剤

以下、請求項1における訂正された部分(上記下線部分)についての判断を抜粋。
「甲12発明について、1日あたりの総用量の上限を10mgに設定することは、当業者が容易に想到することができたものである以上、単位製剤あたりの含有量の上限を、1日あたりの総用量の上限と同じ10mgに設定することも、当業者が容易に想到し得るものである。また、単位製剤あたりの含有量の下限について、甲第12号証に記載の含有量の範囲「0.2-400mg」から、上記10mgよりも低い値である1mgと設定することは、当業者が適宜なし得ることである。」

「本件発明1の「有効に勃起不全を処置しつつ副作用の発生を抑制することができる」なる文言は、「1日あたり10mgの総用量を上限として、タダラフィルを単位製剤あたり1乃至10mg含み、ヒトにおける勃起不全の処置に使用される内服用単位製剤」が当然備えているはずの性質を単に記載したにすぎず、物の発明をさらに特定するものではない。」

【コメント】

1.内在する(備わった)性質的構成の意義

「有効に勃起不全を処置しつつ副作用の発生を抑制することができる」なる文言は、当然備えているはずの性質を単に記載したにすぎず、物の発明をさらに特定するものではないと判断された。そのような議論(内在する性質的構成の意義)に関係してきそうな判決の例ついては、下記記事コメント2参照。

2.本件特許(第4975214号)が保護する製品

本件特許は、シアリス(Cialis)®錠(有効成分: タダラフィル(tadalafil))を保護する特許と思われる。タダラフィルは選択的なホスホジエステラーゼ タイプ5(PDE5)阻害作用を有する化合物として創薬され、本剤は日本では2007年7月に勃起不全治療剤として承認された(通常1日1回タダラフィルとして10mg。一定の場合には20mgまで増量可)。2007年9月より日本イーライリリー(株)にて発売されていたが、2009年7月1日から日本新薬(株)が販売を受託し、発売している。日本新薬の決算発表資料によると、シアリス®錠の2019年度売上は46億円であり、2020年度売上は39億円を予想している(日本新薬2019年3月期第2四半期決算短信(2019年11月6日))。再審査期間は2007年7月31日から2015年7月30日(終了)。本件特許の存続期間満了日は2020年4月26日。シアリス®錠のジェネリックは現時点で承認されていない。

3.本件特許(第4975214号)を巡るジェネリックメーカーの動き

本件特許(第4975214号)は、下記事件において、東和薬品による特許無効審判請求を不成立とする審決(無効2013-800243)の取消判決がなされていた。
知財高裁の判決後、2016年5月6日付で上告受理申立、2017年4月13日付で上告受理申立却下、無効2013-800243事件の審理が再開、同年8月2日付で予告審決となったが、8月23日付で東和薬品により請求取下書が提出され、審判は取下げとなっていた。
シオノケミカルによる本件無効審判請求(無効2017-800140号事件)は上記無効審判請求取下げ後の2017年11月7日付でなされている。2017年12月15日付でマイラン製薬が請求人側に参加申請した。2019年11月29日、イコス(又は参加人イーライリリー)は、本件無効審決を不服として審決取消しを求めて知財高裁に出訴したようである。

2020/01/19

2019.10.23 「ワイス v. 国(処分行政庁 特許庁長官)」東京地裁平成31年(行ウ)162

特許料の追納期間徒過の救済要件「正当な理由」に関する事案(ファイザーのgedatolisibを保護する物質特許)東京地裁平成31年(行ウ)162

【背景】

PKI-587
本件は、特許法112条1項所定の特許料追納期間中に特許料等を納付せず同条4項により消滅したものとみなされた「PI3キナーゼおよびmTOR阻害剤としてのトリアジン化合物」に関する特許第4948677号の特許権の原特許権者である原告が、法112条の2第1項に基づいて行った特許料等の追納手続は同項所定の「正当な理由」があり、同手続を却下した特許庁長官の処分は違法であると主張して(原告は、特許庁長官に対して行政不服審査法2条に基づく審査請求をしたが棄却裁決)、その取消しを東京地裁に求めた事案である。

原告は、本件特許権に係る特許料の納付期限を管理していたファイザー社の担当者において、本件訂正(訂正2013-390093)時特許証の「登録日」欄の日付である平成25年9月30日が本件設定時特許証の「登録日」欄の日付である平成24年3月16日と異なっていたことから、特許料の納付期限の起算日となる本件特許権の設定登録日が本件訂正時特許証のとおり訂正されたものと誤解し、本件期間徒過が生じたとし、①特許料等に関する法107条ないし112条の3の各規定によって、訂正をすべき旨の審決が確定しても設定登録日が変わらないことや特許証に複数の種類があることを認識することはできないこと、②本件設定時特許証及び本件訂正時特許証には「登録日」としか記載されていないため、どちらが本件特許権の設定登録日であるか不明確であり、米国や欧州の実務と比べても、我が国の特許証の記載は紛らわしいものであること、③特許証の大半は設定登録時に発行されるものであるから、ファイザー社において、訂正すべき旨の審決が確定したときに発行される特許証が存在することを当然に把握しておくべきであったとはいえないことなどに照らし、原告には、本件期間徒過について法112条の2第1項所定の「正当な理由」が認められる旨主張した。

【要旨】

裁判所は、本件期間徒過について法112条の2第1項所定の「正当な理由」があるとはいえず本件特許権は消滅しているとして、本件納付書による追納手続を却下した本件却下処分が違法であるとはいえないと判断した。請求棄却。以下、裁判所の判断の抜粋。

1.法112条の2第1項所定の「正当な理由」の解釈
「法112条の2第1項は,追納期間経過後に特許料等を追納することができる場合の要件として,特許権の管理は特許権者の自己責任の下で行われるべきものであること,失効した特許権の回復を無制限に認めると第三者に過大な監視負担をかけることなどを踏まえて,所定の期間内に特許料等を納付することができなかったことについての「正当な理由」があることを規定する。
上記の要件は,平成23年法律第63号により,国際調和の観点から,より柔軟な救済を図るため,手続期間を徒過した場合の救済を認める要件として,特許法条約において認められている「Due Care(相当な注意を払っていたこと)」の概念を採用して,追納期間徒過後に特許料等を追納することができる場合について,原特許権者の「責めに帰することができない理由」があることを定めていた従前の規定を改正して設けられたものであると解される。
これらを踏まえると,法112条の2第1項にいう「正当な理由」があるときとは,原特許権者(代理人を含む。以下同じ。)として相当な注意を尽くしていたにもかかわらず,客観的にみて追納期間内に特許料等を納付することができなかったときをいうと解するのが相当である。」
2.本件の検討
「(2) 本件特許権に係る特許料の納付期限を管理していた担当者は,原告の主張が本件回復理由書及び本件審査請求書における主張(甲6,10)から変遷し,判然としないが,ファイザー社の担当者において,前記のような誤解をしていたと認められたとしても,以下のとおり,本件期間徒過について,原告が原特許権者として,相当な注意を尽くしていたにもかかわらず,客観的にみて追納期間内に特許料等を納付することができなかったときに当たると認めることはできない。
ア すなわち,原告は,日本の特許権を保有していたのであるから,特許料の納付等の管理を行うに当たり,一般に求められる相当な注意として,日本の特許法及びその他の関係法令を理解しておくべきであるといえるところ,①特許料の納付期限については,法107条,108条において,特許権の設定登録日から起算されることが規定されており,訂正をすべき旨の審決が確定してその登録がされた場合に特許権の設定登録日が変更される旨の規定は存在しないから,本件特許権について,本件審決が確定してその登録がされたからといって,特許権の設定登録日が変更されないことは条文上明らかであること,②特許証の交付についても,法28条1項において,特許権の設定の登録があったときに交付されることのほかに,訂正をすべき旨の審決が確定した場合にその登録があったときなどにも交付されることが規定されていることなどからすると,担当者において,これらの規定を理解していれば,本件訂正時特許証に「登録日」として「平成25年9月30日」と記載されていても,本件訂正時特許証に「この発明は,訂正をすべき旨の審決が確定し,特許原簿に登録されたことを証する。」と記載されていることをも踏まえれば,上記の「登録日」が本件審決の確定等に係る登録日を記載したものであり,特許料の納付期限の起算日となる特許権の設定登録日が変更されたものではないと理解することは可能であったと認められる。
イ 本件訂正時特許証及び本件設定時特許証の「登録日」欄記載の年月日には1年半ものずれがあり,特許権の設定登録日が訂正されたと考えることに疑念を生じさせるものであったといえるところ,特許権の設定登録日は,ウェブサイトに公開されている特許情報や特許登録原簿等によっても確認することができるから,担当者において,上記疑念を抱いて,相当な注意を尽くしてそのような確認をしていれば,本件特許権の設定登録日が変更されていないことを認識することは容易であったというべきである。
ウ 本件全証拠によっても,担当者において,本件訂正時特許証の「登録日」欄の記載を上記アのように理解すること又は上記イのような確認をすることが困難であったことをうかがわせる事情は認められない。
(3) したがって,本件期間徒過について法112条の2第1項所定の「正当な理由」は認められない。」

【コメント】

1.特許法112条の2第1項所定の「正当な理由」の解説

平成23年法律改正(平成23年法律第63号)解説書の「第10章 出願人・特許権者の救済手続の見直し」には、第三者の監視負担に配慮しつつ実効的な救済を確保できる要件として、P特許法条約(Patent Law Treaty)第12条(1)で加盟国に認めている手続期間を徒過した場合の救済要件の選択肢のうち「Due Care(いわゆる『相当な注意』)を払っていた」を採用することとし、具体的な条文の文言は、行政事件訴訟法第14条第 1 項等の規定に倣い、「その責めに帰することができない理由」に比して緩やかな要件である「・・・することができなかつたことについて正当な理由があるとき」としたことが解説されいる。

平成23年法律改正(平成23年法律第63号)において、特許料の追納期間徒過の救済要件を緩和する改正後の特許法112条の2第1項は以下のとおり。
(特許料の追納による特許権の回復)
第百十二条の二 前条第四項若しくは第五項の規定により消滅したものとみなされた特許権又は同条第六項の規定により初めから存在しなかつたものとみなされた特許権の原特許権者は、同条第一項の規定により特許料を追納することができる期間内に同条第四項から第六項までに規定する特許料及び割増特許料を納付することができなかつたことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなつた日から二月以内でその期間の経過後一年以内に限り、その特許料及び割増特許料を追納することができる。
2 (略)

平成23年法律改正(平成23年法律第63号)解説書より


2.本件特許権が保護するもの

本件特許の発明者を含む原告所属著者が発表した論文(Clin Cancer Res. 2011 May 15;17(10):3193-203: Antitumor efficacy of PKI-587, a highly potent dual PI3K/mTOR kinase inhibitor.)に記載されている化学構造情報から、「PI3キナーゼおよびmTOR阻害剤としてのトリアジン化合物」に関する本件特許第4948677号は、ファイザー社が開発中(?)のGedatolisib (PF-05212384, PKI-587)を保護している物質特許と考えられる。特許満了日は2029年5月21日だった。

PKI-587


2020/01/13

大鵬薬品がNatco社によるLONSURF(ロンサーフ)®のANDAに対して特許侵害訴訟提起

Law360からの情報によると、2019年12月30日、大鵬薬品は、Natco社によるLonsurf®のANDA(paragraph IV certification)に対して特許侵害であると主張して、デラウェア州連邦地裁に訴訟を提起したようです(2019.12.30 「Taiho Pharmaceutical Co., Ltd. et al v. Natco Pharma Ltd. et al」US District Court for the District of Delaware 1:2019-cv-02368)。

抗悪性腫瘍剤ロンサーフ(Lonsurf)®配合錠は、有効成分としてトリフルリジン(Trifluridine (FTD))及びチピラシル塩酸塩(Tipiracil hydrochloride (TPI))を1:0.5のモル比で配合した経口ヌクレオシド系抗悪性腫瘍剤。FTDは本剤の抗癌活性成分であり、経口投与することで直接DNAに取り込まれてDNA機能障害を起こすことで抗腫瘍効果を示すと考えられている。TPIはFTDの分解酵素であるチミジンホスホリラーゼ(TPase)を特異的に阻害することにより、FTDのバイオアベイラビリティを高めることを可能にしている。2014年に世界に先駆けて日本で発売。米国においては、2015年9月22日に承認され、大鵬薬品の米国子会社である大鵬オンコロジー社が販売。親会社の大塚ホールディングスの決算資料によると、2018年度の北米でのLonsurf®の売上は200億円、2019年度では225億円を計画している(大塚ホールディングス2019年度第3四半期決算補足資料(2019年11月12日発表))。

Lonsurf®のOrangebookに収載されている米国特許群は以下のとおり。なお、特許権者は、5,744,475特許、6,479,500特許及び7,799,783特許について、Lonsurf®の承認(2015年9月22日)に基づくPTEを2015年11月19日に出願し、認められればそのうちどれか一つをPTEとして選択するという特許延長審査戦略をとった。そのうち、5,744,475特許はTPIを保護する物質特許であり、1996.3.28出願、1998.4.28登録、PTAなし、2015.12.29にPTE出願は特許権者により自主的に取下げられ、2016.3.28満了となっている。
  • 6,479,500・・・TPI投与により抗癌剤による副作用を軽減する方法特許。2000.3.16出願、2002.11.12登録、PTAなし、PTE出願は特許権者により自主的に取下げられ(2017.8.3)、2020.3.16に満了する。
  • RE46,284・・・FTDとTPIの特定用法用量で消化器癌と乳癌を治療する方法特許。2005.1.26出願、7,799,783特許登録(2010.9.21)、PTAが688日、reissue請求し(2015.12.20)、RE46,284特許として登録(2017.1.24)、特許権者は7,799,783特許のPTEをRE46,284特許に転用するよう特許庁に請求している(2017.4.20)。7,799,783特許のPTEについてのUSPTO宛FDA Final Eligibility Letterは2018.10.10発せられている状況。Orangebook上では、満了日は2026.12.16のままであり、PTE付与反映には至っていないようである。
  • 10,456,399・・・FTDとTPIの特定用法用量で腎障害を伴った癌患者を治療する方法特許。満了日は2037.2.3(20年)。
  • 9,527,833・・・TPIの特定結晶形特許。満了日は2034.6.17(20年)。
  • 10,457,666・・・TPIの特定結晶形特許。満了日は2034.6.17(20年)。

参考:
  • 2020.01.03 Natco Pharma press release: NATCO files ANDA for Trifluridine/ Tipiracil Hydrochloride Tablets for the USA market


2019/12/30

2019年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。

特許第4954326号より
2019年は、抗体医薬発明に関わる特許訴訟が特に顕著だった印象がありました。
抗体医薬のバイオシミラー(バイオ後続品)の登場だけでなく、新しい抗体技術モダリティーが花開いた結果としてその技術帰属の争いも目立ちました。開発や製造にコストがかかるにもかかわらず抗体医薬のバイオシミラーが次々と登場してきていることは、抗体医薬発明が産業の発展と種々疾患の治療に大きく貢献していることの証明でもあります。また、いわゆる抗体の機能的表現クレームの争いが起きていることは、まだまだパイオニア的な新しい発見・発明が生まれていることを意味しており、クレームが法律的にどのように解釈・判断されたとしても、技術革新は間違いなく起きつづけていることを示しているのだろうと思います。2020年は、抗PD-1抗体オプジーボ/OPDIVO®(有効成分: ニボルマブ/nivolumab)に関する特許・発明帰属を巡る本庶氏まわりの動きも気になるところです。

1.抗PCSK9抗体製剤を巡る争い

2.抗IL-23抗体製剤を巡る争い

3.リサイクリング抗体創製技術を巡る争い

4.抗CD20抗体を巡る争い

5.第IXa/X因子二重特異性抗体(バイスペシフィック抗体)を巡る争い

6.抗体薬物複合体(antibody drug conjugation(ADC))技術を巡る争い

7.抗PD-1抗体を巡る争い


参考: 過去の「医薬系"特許的"な判決を振り返る。」
  • 「2018年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2017年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2016年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2015年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2014年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2013年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2012年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2011年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2010年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2009年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2008年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら


2019/12/28

2019.12.25 「杏林製薬、メルク・シャープ・アンド・ドーム v. 東興薬品工業」 知財高裁平成31年(行ケ)10006; 知財高裁平成31年(行ケ)10054

ナゾネックス®点鼻液 モメタゾンフロエート水性懸濁液を含有する1日1回鼻腔内投与されるアレルギー性鼻炎治療薬の進歩性判断とオーソライズド・ジェネリック戦略: 知財高裁平成31年(行ケ)10006(第1事件); 知財高裁平成31年(行ケ)10054(第2事件)

【背景】

メルク・シャープ・アンド・ドームが保有する「気道流路および肺疾患の処置のためのモメタゾンフロエートの使用」に関する特許(第3480736号)に対して東興薬品工業がした無効審判請求(杏林製薬は同審判に被請求人側に参加)を認容した審決(無効2015-800166)の取消訴訟。

本件特許(第3480736号)については、別途先行して審理されていた無効審判請求不成立審決(無効2014-800055号事件)に対し知財高裁において審決取消しの判決(2016.03.30 「東和薬品 v. メルク シャープ アンド ドーム」 知財高裁平成27年(行ケ)10054)があり、同判決についての上告審の結果が出るまで、東興薬品工業が請求していた本件無効審判(無効2015-800166号事件)の審理は手続中止されていた。

上記判決(2016.03.30 「東和薬品 v. メルク シャープ アンド ドーム」 知財高裁平成27年(行ケ)10054)については上告棄却及び上告受理申立不受理の決定を経て、特許庁でさらに審理され、請求項1~3に係る発明についての特許を無効とすることの審決予告(2018年1月18日)がなされたが、東和薬品が2018年2月13日に審判請求を取下げたことで当該事件は無効審決に至らず確定した。東興薬品工業は、東和薬品が上記事件で特許無効を確定してくれるだろうと期待していたに違いない。審判請求取下げを知った東興薬品工業は2月19日付で参加申請書を提出したが、特許庁は審判請求取下げ後のためその申請書を返戻した。

こうして翌3月に東興薬品工業が請求した本件審判事件の審理が再開された。審決は、本件発明の構成については容易に想到することができ、効果も当業者が容易に予測できたものであるから、本件発明は進歩性を欠如するというものだった。

請求項1(本件発明1):
モメタゾンフロエートの水性懸濁液を含有する薬剤であって,1日1回鼻腔内に投与される,アレルギー性または季節性アレルギー性鼻炎の治療のための薬剤。
請求項2(本件発明2):
前記1日1回の投与量が100~200マイクログラムであり,未変化のモメタゾンフロエートの絶対的バイオアベイラビリティが約1パーセント未満である,請求項1に記載の薬剤。

【要旨】

裁判所は、原告ら(杏林製薬、メルク・シャープ・アンド・ドーム)の請求を棄却した。

1.鼻の炎症状態を「アレルギー性または季節性アレルギー性鼻炎」とすることへの容易想到性について
「甲1発明は,炎症状態を治療するための,モメタゾンフロエート一水和物の鼻腔投与用水性懸濁液であるところ,甲2文献には,・・・モメタゾンフロエートがアレルギー性鼻炎の鼻腔内吸入による治療のための有望な新薬候補であることが記載され,治療の対象としてアレルギー性鼻炎の記載があるといえる。そして,甲1文献と甲2文献には,いずれも局所活性ステロイドであるモメタゾンフロエートを鼻腔内に投与することが記載されていると認められるところ,鼻の炎症には, 急性鼻炎・慢性鼻炎等のほかアレルギー性鼻炎や季節性アレルギー性鼻炎が含まれる(弁論の全趣旨)ことをも考慮すれば,甲1発明の治療の対象である「炎症状態」を,「アレルギー性または季節性アレルギー性鼻炎」とすることは,当業者が容易に想到し得たものといえる。したがって,甲1発明において,相違点2(治療の対象である炎症状態につき,本件発明1では「アレルギー性または季節性アレルギー性鼻炎」と特定されているのに対し,甲1発明では特定されていない点。)に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たといえる。」

2.1日1回投与の用法を選択することへの容易想到性について
「本件優先日当時,モメタゾンフロエートを含有する鼻腔内投与剤の用法・用量について公知のものはないところ,モメタゾンフロエート一水和物の鼻腔投与用水性懸濁液を用いて炎症状態を治療する場合に,その薬理効果や副作用等を考慮し,他の局所活性ステロイドの鼻腔内投与における投与回数及び投与量を参考にして,モメタゾンフロエートにとって最適な投与回数及び投与量を設定することは,製薬分野の当業者にとって通常のことであったということができる。・・・また,・・・本件優先日当時,鼻腔内投与される局所活性ステロイド薬には,1日1~4回の用法が存在し,患者の好みやコンプライアンスの観点から,1日1回の投与が利点を有することは周知であった。・・・以上によれば,甲1発明の,「炎症状態を治療するための,モメタゾンフロエート一水和物の鼻腔投与用水性懸濁液」について,モメタゾンフロエートの薬理効果や副作用等を考慮して,鼻腔内に投与される局所活性ステロイド薬の用法として最適とされていた,1日1回投与の用法を選択することは,当業者が容易に想到し得たものといえる。したがって,甲1発明において,相違点1(薬剤の用法・用量につき,本件発明1では「1日1回」と特定されているのに対し,甲1発明では特定されていない点。)に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たといえる。」

3.モメタゾンフロエートの1日当たりの用量として100~200マイクログラムを選択することへの容易想到性について
「モメタゾンフロエートの薬理効果や副作用等を考慮し,他の局所活性ステロイドの鼻腔内投与における投与量を参考にして,モメタゾンフロエートにとって最適な投与量を設定することは製薬分野の当業者にとって通常のことである。・・・そして,本件優先日当時,モメタゾンフロエートは極めて強い局所抗炎症作用を示す一方,副作用は弱く,主作用と副作用の乖離が大きい局所活性ステロイドであることが技術常識として知られていたから,上記の鼻腔内に投与される他の局所活性ステロイドについて200~440μg/日といったオーダーの用量が用いられているといった情報を参考にしつつ,モメタゾンフロエートの1日当たりの用量としてそれより低い100~200マイクログラムを選択することは,当業者が容易に想到し得たものといえる。したがって,甲1発明において,相違点3-1(本件発明2では「前記1日1回の投与量が100~200マイクログラムである」とされるのに対し,甲1発明ではその特定がない点。)に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たものといえる。」

4.「未変化のモメタゾンフロエートの絶対的バイオアベイラビリティが約1パーセント未満である」は、甲1発明に現れる客観的な性質(備わった構成)であるので実質的な相違点ではない
「絶対的バイオアベイラビリティとは,血管内投与以外の投与経路(例えば鼻腔内投与)で得られる血漿中濃度曲線下面積と,静脈注射時の血漿中濃度曲線下面積とを比較することにより得られる割合であるから,投与した薬物の量や濃度には依存しないものといえる。そうすると,「未変化のモメタゾンフロエートの絶対的バイオアベイラビリティが約1パーセント未満」は,モメタゾンフロエートの水性懸濁液を含有する薬剤を鼻腔内に投与した場合に現れる客観的な性質であって,甲1発明が備えた構成でもあると推認でき,これを否定する証拠もない。したがって,相違点3-2は,実質的な相違点であるとはいえない。」

5.優先日当時の技術常識に基づき予測できた範囲について
「本件優先日当時の当業者は,技術常識並びに甲1文献及び甲2文献の上記記載により,副作用が低いモメタゾンフロエートの鼻腔投与用水性懸濁液につき,皮膚への局所投与と鼻腔への局所投与により薬物動態等の相違があるとしても,1日1回の鼻腔内投与でアレルギー性鼻炎に治療効果を有し,全身への吸収が低く,バイオアベイラビリティが優れていることも,予測できた範囲のものと認められる。以上によれば,本件優先日当時の当業者は,本件発明の構成について,「アレルギー性鼻炎に対して,1日1回の鼻腔内投与で,プラセボとの対比において治療効果があり,かつ,モメタゾンフロエートのバイオアベイラビリティが低く,血流中への全身的な吸収が実質的に存在せず,全身性副作用が存在しない」という効果について,予測することができたというべきである。そして,「バイオアベイラビリティが約1%未満である」との数値についても,その程度が,本件優先日当時の技術常識に基づき予測できた範囲を超える顕著なものであることを認めるに足りる的確な証拠はない。・・・第1事件原告は,本件発明が1日1回投与と1日2回投与とで効能に有意な差がなく,ステロイド点鼻薬として本件優先日当時に望み得る,最も高いレベルの作用・効能の持続的効果を奏すること,また,非常に低いバイオアベイラビリティでありながら,本件発明が上記効果を奏することは,本件優先日当時驚くべきことであり,それ自体,本件発明の顕著な効果であると主張する。しかし,・・・そもそも本件発明の構成によれば,1日1回の投与によって有効な治療効果をあげられることが予測し得たことは上記(2)で認定したとおりなのであるから,それ以上に,1日1回の投与と1日2回の投与の効果を比較することに意味があるとは考えられず,これを予測し得ない効果の根拠とすることはできない。」

【コメント】

1.効果の顕著性

進歩性において主張する顕著な効果は、そもそも予測できた範囲のものであるのか、それを超える顕著なものであるのか、優先日当時の技術常識に基づき判断されるので、技術常識の把握と明細書に示された記載(データ)等からの立証が重要となる。本件では、原告が主張する「驚くべき効果」というものが、技術常識から当業者にとって予測できる範囲であったとの証拠がそろっており、予測を超えるものであったと言えるほどの証拠を原告は示すことができなかった。

2.内在する(備わった)性質的構成の意義

「未変化のモメタゾンフロエートの絶対的バイオアベイラビリティが約1パーセント未満である」は、甲1発明に現れる客観的な性質(備わった構成)であるので実質的な相違点ではないと判断された。医薬用途発明では薬物動態学パラメータの構成を含むようなクレームもあり、そのような構成が、いわゆる発明に本来備わった性質であって、先行技術との比較において実質的な相違点とならないと判断される可能性にも留意は必要である。そのような議論(内在する性質的構成の意義)に関係してきそうな判決の例として以下のものがある。

3.ナゾネックス®点鼻液のジェネリックの参入について

本件特許はナゾネックス®点鼻液(有効成分はモメタゾンフランカルボン酸エステル水和物)を保護するもの。特許期間延長登録を受け、存続期間満了日は2019年10月31日だった。

ナゾネックス®点鼻液は米国シェリング・プラウ社(現 Merck Sharp & Dohme Corp.)によって創製された副腎皮質ステロイドであるモメタゾンフランカルボン酸エステル水和物を含有する定量噴霧式点鼻液である。2008年7月16日に「アレルギー性鼻炎」を効能・効果として国内承認された。再審査期間は~2016年7月15日。MSDが製造販売元、杏林製薬が発売元となっている。

モメタゾン点鼻液 50μg「杏林」は、杏林製薬が販売しているナゾネックス®点鼻液と原薬、添加物及び製造方法・製造場所がそれぞれ同一のオーソライズド・ジェネリック(AG)であり、キョーリンリメディオが後発医薬品として、2017年8月に承認を取得した。しかし、薬価収載は2019年6月14日であり、販売開始は同年8月26日となった(2019.08.23 キョーリン製薬ホールディングス press release 「モメタゾン点鼻液50μg「杏林」56噴霧用・112噴霧用の新発売について」)。

他のジェネリックとして、モメンタゾン点鼻液「MYL」(東興薬品工業)が、2019年2月15日に製造販売承認となり、同年6月14日に薬価収載となってファイザーがマイラン製薬と提携して発売している(2019.06.14 ファイザー press release 「モメタゾン点鼻液50μg「MYL」56噴霧用・同112噴霧用発売」)。東興薬品工業が特許を有する噴霧可能な高粘性ゲル基剤を用いる点鼻剤とのことである。

続いて、モメンタゾン点鼻液「トーワ」(東和薬品)、「JG」(日本ジェネリック)、「タカタ」(高田製薬)、「ニットー」(日東メディック)、「CEO」(東亜薬品)、が2019年8月15日に製造販売承認となり、同年12月13日に薬価収載となって販売されている(2019.12.12 東和薬品 press release 「新製品 2 成分 3 品目を薬価基準追補収載 」)。高田製薬、東和薬品、日東メディック、日本ジェネリックは共同開発を実施し、共同開発グループとして実施したデータを共有している。

表:ナゾネックス®点鼻液のヒストリー(日本)

先発メーカー(MSD/杏林製薬)の動き
ジェネリックメーカーの動き
キョーリンリメディオ (AG)
東和薬品、高田製薬、日東メディック、日本ジェネリック、東亜薬品
東興薬品工業
2008
7/16 ナゾネックス点鼻液が承認



2014


3/31 東和薬品が無効審判請求
(無効2014-800055)

2015


2/3 審判請求不成立審決
3/13 東和薬品が審決取消訴訟提起
8/24東興薬品工業が無効審判請求(無効2015-800166)
2016
7/15 再審査期間終了

3/30 審決取消判決
(知財高裁平成27(行ケ)10054)
8/1 左記事件を待つため審理手続中止
2017

8/15 AG「杏林」承認
6/1 上告棄却及び上告受理申立不受理の決定

2018


1/18 特許無効とする審決予告
2/13 東和薬品が審判請求取下げ
2/19東興薬品工業が参加申請するも返戻



3/7 審理再開
7/20 杏林製薬が参加申請
7/23 MSDが訂正請求
12/5 特許無効審決
2019









10/31 本件特許(3480736)満了日 (20y+4y9m5d)






6/14 薬価収載

8/26 販売開始







8/15「トーワ」(東和薬品)、「JG」(日本ジェネリック)、「タカタ」(高田製薬)、「ニットー」(日東メディック)、「CEO」(東亜薬品)承認
12/13 薬価収載・販売開始
1/18 杏林製薬が審決取消訴訟提起(1事件)
2/15 MYL」(東興薬品工業)承認
4/18 MSDが審決取消訴訟提起(2事件)
6/14 薬価収載・販売開始





12/25 無効審決維持判決
(知財高裁平成31(行ケ)10006(1事件); 10054(2事件))

キョーリンリメディオはオーソライズド・ジェネリック(AG)としての承認を2017年に得たが、他のジェネリックの参入が遅れると見込んだのか先発品の本件特許が切れる直前(2019年)まで薬価収載・販売開始を見送った。

東和薬品が無効審決を得る直前で無効審判請求を取下げた理由は不明(先発側と和解?)だが、東和薬品、高田製薬、日東メディック及び日本ジェネリックの共同開発グループ各社からのジェネリックの承認は2019年となった。

上記共同開発グループではなかった東興薬品工業は単独で本件無効審判・訴訟を進め、キョーリンリメディオのAGと同タイミングで「MYL」の薬価収載に至り、販売開始はAGよりむしろ早く行うことができた。先発側のAG戦略はこの点で東興薬品工業に後れをとってしまったことになる。AGの薬価収載のタイミングは先発品への売上や薬価への影響を考えると難しい判断だったのかもしれないが、もし、AGを2018年12月に薬価収載し他のジェネリックに先駆けて販売に踏み切っていれば、先発品の売上にネガティブな影響を早期に受けることになる一方でAGでの早期シェア獲得によるポジティブな影響もあることから、それらのバランスとしての全体利益はどう変化していくことになっただろうか。それにしても、2019年2月に東興薬品工業のジェネリック「MYL」が承認されたのだから、6月の薬価収載でキョーリンリメディオは何としても同日にAGを販売開始しておきたいところだったのでは。


参考(過去記事):