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2012.01.18 「帝國製薬 v. 特許庁長官」 知財高裁平成23年(行ケ)10143

審理判断の杜撰さを指摘: 知財高裁平成23年(行ケ)10143

【背景】

「貼付剤用支持体およびそれを用いた外用貼付剤」に関する出願(特願2000-48728)の拒絶審決(不服2010-17422)取消訴訟。

争点は進歩性。

【要旨】

原告は、引用例1(特開平7-126156号公報)における引用発明の認定に関して、

「引用例の図2には,本件審決が指摘する「ウエスト弾性部材14とレッグ開口部6の周縁部との間に設けられ,おむつの縦方向へ離間して胴回り方向へ延びる胴回り弾性部材30a~30iが図示されている」との記載は存在しない。

本件審決は,実際には存在しない上記記載を前提として,引用発明について認定しているのであるから,本件審決の当該認定は誤りである。

なお,拒絶査定不服審判手続は,3人の審判官の合議体により審理されるから,上記記載は,審決の内容に影響を及ぼさない単なる誤記や文字変換ミスによる軽微な誤記と解することはできない。仮に被告が指摘するとおり,単なる錯誤によるものにすぎないとしても,そのような誤記が存在する以上,本件審決は誠実な判断に基づくものではないと解さざるを得ないものである。」

という理由で、本件審決の引用発明の認定は誤りであると主張した。

裁判所は、

「確かに,当該記載は,原告が指摘するとおり,本件とは無関係な事項に係る記載であるものというほかなく,このような事項が3行にもわたって記載されたまま本件審決がされたことは,理解し難いところである。被告も,本件とは無関係な記載が錯誤によって紛れ込んだ誤記であるなどと主張して,これを自認している。

しかしながら,それが誤記であったとしても,当事者にとっては,審判合議体の審理判断に疑義をはさませるのに十分であって,そのような誤記が抹消されないまま,審判合議体の最終判断として本件審決が告知されていることに,審理判断の杜撰さを指摘されても止むを得ないのであって,本件とは無関係な記載が錯誤により紛れ込んでしまったなどという主張が許されるものではない。

もっとも,本件においては,当該記載が本件審決の引用発明の認定それ自体に用いられなかったことは,本件審決の判断内容からしても明らかである。本件訴訟において,本件審決を取り消した上で,改めて引用例に記載された発明の認定から審判をやり直すまでの必要はなく,原告の主張は,これを採用するには至らないというべきである。」

と判断した。

その他の進歩性判断についても原告の主張を認めず、請求棄却。

【コメント】

無関係な事項が記載されたまま審決が告知された。なぜ、「おむつ」が出現したのか不明である。審判部における審決の最終文面チェックはどのように行っているのか?

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