2019/09/16

2019.08.28 「盐城捷康三氯蔗糖制造有限公司(ジェイケー スクラロース) v. 三栄源エフ・エフ・アイ」 知財高裁平成30年(行ケ)10164

酸味のマスキング方法の容易想到性: 知財高裁平成30年(行ケ)10164

被告(三栄源エフ・エフ・アイ)が保有する「酸味のマスキング方法」に関する特許第3916281号に対して原告(ジェイケー スクラロース)が請求した無効審判(無効2014-800118)の無効審決(一次審決)を取消す旨の判決(2017.07.19 「三栄源エフ・エフ・アイ v. ジェイケー スクラロース」 知財高裁平成28年(行ケ)10157)の後、特許庁は訂正請求を認めた上で、本件発明(請求項1)は引用発明等に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたとはいえないなどとして無効審判請求は成り立たない旨の審決を下した(本件審決)。本件はその無効審判請求不成立審決の取消訴訟。

請求項1:
醸造酢を含有するドレッシング,ソース,漬物,及び調味料からなる群より選択される少なくとも1種の製品に,スクラロースを該製品の0.0028~0.0042重量%の量で添加することを特徴とする該製品の酸味のマスキング方法。
引用発明との相違点2:
酸味のマスキング剤が,本件発明では,スクラロースであり,その添加量が製品の0.0028~0.0042重量%であるのに対し,引用発明では,アスパルテームであって,その添加量が製品濃度で1~200mg%である点。

裁判所は、アスパルテームを製品濃度1~200mg%(=0.001~0.2重量%)で添加する引用発明から、スクラロースを製品の0.0028~0.0042重量%で添加することは、容易に想到することができたものである、と判断し、原告の請求を認容することとし、本件審決中、請求項1に係る部分を取り消した。以下、裁判所の判断の抜粋。
「(4) 相違点2の容易想到性
ア ・・・各文献には,・・・ノンカロリー高甘味度甘味料であるスクラロースが,アスパルテーム・・・等の他の高甘味度甘味料と比較して,甘味の質においてショ糖に似ているという特徴があることから,多くの種類の食品において嗜好性の高い甘味を付与することが見込まれているとの記載があり,加えて,・・・本件出願前に,ショ糖や,アスパルテーム,ステビア,サッカリンといった慣用の高甘味度甘味料が酸味のマスキング剤としての機能を備えることが,当業者に周知であったことからすると,引用発明のアスパルテームに代えてスクラロースを採用してみることは,当業者が容易に想到することができたというべきである。
イ また,・・・各文献・・・の記載によれば,スクラロースの添加については,向上させようとする風味や製品によって使用量は上下するものの,下限値として,製品に対して0.0001重量%,0.0025重量%,0.005重量%で用いたものなどが知られており,スクラロースの甘味を感じさせない量であっても製品の風味の向上が可能であることを当業者は認識していたものと認められる。
他方,引用例には,アスパルテームによる酸味緩和効果を得るための下限値として1mg%(0.001重量%),1.5mg%(0.0015重量%),5mg%(0.005重量%)が挙げられ,上記のスクラロースと同様のレベルの使用量で酸味のマスキングが行えることが記載され,更に,アスパルテームの甘味により,食品・調味料の呈味バランスが崩れないようアスパルテームの添加量は食品・調味料の種類に応じ,適宜設定すべきであるとされている。
また,酸味のマスキングは,甘味の付与を目的とするものではなく,所望の酸味のマスキング効果を奏する場合には,甘味がつきすぎて味のバランスが崩れることがないように,甘味料の使用を減らすことは考えても,増量することは考えないから,スクラロースを酸味のマスキング剤に使用する場合であっても,当業者は,酸味のマスキングが実現可能な低い濃度でスクラロースを使用することを指向する。
そうすると,スクラロースを,引用発明の食酢を含む食品(ドレッシング,ソース,漬物,及び調味料などの製品)における,酸味のマスキング剤として使用するにあたり,酸味緩和効果が得られるものの,スクラロースの甘味により前記製品の旨味バランスを崩さない濃度範囲のうち低い濃度を,製品ごとに選択して,スクラロースの従来の使用濃度である0.0001~0.005重量%に重複する0.0028~0.0042重量%という濃度範囲に至ることは,当業者に容易であったということができる。
ウ そして,本件明細書の実施例2~4を参照しても,0.0028~0.0042重量%の濃度範囲を境にして,当業者の期待,予測を超える格別顕著な効果を奏しているとは評価できない。」

参考:


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