2020/02/02

ハーセプチン®の乳癌治療に関連する特許を巡るジェネリックメーカーの動き

抗HER2ヒト化モノクローナル抗体・ハーセプチン®のバイオ後続品(バイオシミラー)の上市を果たしたのは、現在、日本化薬、セルトリオン社、ファイザー社、第一三共の4社です。しかし、ジェネンテック社が保有するハーセプチン®の乳癌治療に関連する特許に対する各社の対応の違いにより、バイオ後続品の【効能・効果】および【用法・用量】(乳癌について3週間1回投与(B法)の有無)が先発品と同一となる時期に差が生じたようです。

1.セルトリオン社・日本化薬

2016年
セルトリオン社は、ハーセプチン®の乳癌治療に関連する2つの特許(特許5623681及び特許5818545)に対してそれぞれ無効審判請求を行った。

2017年
ハーセプチン®の乳癌治療に関連する特許の侵害を理由として、専用実施権者である中外製薬は、ジェネンテック社とともに、セルトリオン社と共同開発を進めてきたバイオ後続品の製造販売承認申請を2017年4月11日に行ったとプレスリリース(「トラスツズマブ(遺伝子組換え)製剤のバイオ後続品(バイオシミラー)の製造販売承認申請について」)した日本化薬に対して、同バイオ後続品の製造販売等の差止めを求め、2017年8月17日付で東京地裁に訴訟を提起した(過去記事: 2017.09.09 「中外がハーセプチン®バイオシミラー承認申請した日本化薬に対し用途特許侵害で製造販売差止訴訟提起」)。

2018年
中外製薬は、製造販売承認となった日本化薬のバイオ後続品の効能・効果が「HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌」のみであり、「HER2過剰発現が確認された乳癌」は含まないことから、日本化薬を被告として提起していた特許侵害訴訟について、請求放棄の手続を執った(過去記事: 2018.04.11 「ハーセプチン®用途特許侵害訴訟。日本化薬バイオシミラーの承認効能効果受け、中外が差止請求放棄」)。日本化薬とセルトリオン社のバイオ後続品は、胃癌について承認となり(乳癌は含まない)、8月に販売が開始された。しかし、同年10月、上記無効審判の請求不成立審決は知財高裁によって取消されることになる(セルトリオン社・ファイザー社の勝訴)。
2019年
2016年から係争中だった、セルトリオン社による特許無効審判請求は、和解により解決することで合意に至り(2019年7月22日公表)、セルトリオン社は審判請求を取下げ、8月21日付でセルトリオン社及び日本化薬は乳癌について3週間1回投与(B法)を追加する承認事項一部変更承認を取得。これにより、セルトリオン社及び日本化薬のバイオ後続品の【効能・効果】および【用法・用量】は、先行バイオ医薬品ハーセプチン®と同様となった。

2.ファイザー社

2017年
ファイザー社は、ハーセプチン®の乳癌治療に関連する特許(特許5818545)に対して無効審判請求を行った。

2018年
中外製薬は、ジェネンテック社とともに、ハーセプチン®バイオ後続品の胃癌及び乳癌(1週間1回投与(A法))について製造販売承認を取得したファイザーに対し、特許侵害を理由として、10月12日付で東京地裁に同バイオ後続品の製造販売等の差止めを求める訴訟を提起した(過去記事: 2018.10.12 「中外がハーセプチン®バイオシミラー承認取得した第一三共とファイザーに対し用途特許侵害で差止訴訟提起」)が、同月31日には取下げた(2018.10.31 中外製薬 press release: 「訴訟および仮処分命令申立ての取り下げについて」)。

2019年
2017年から係争中だった、ファイザー社による特許無効審判請求は、4月25日付でファイザー社により取下げられ、2019年7月17日付でファイザー社は乳癌について3週間1回投与(B法)の用法用量を追加する承認事項一部変更承認を取得。ファイザー社のバイオ後続品の【効能・効果】および【用法・用量】は、先行バイオ医薬品ハーセプチン®と同じとなり、8月22日より発売。審判請求の取下げや乳癌B法の追加承認取得・発売のタイミングなどから、同特許についてジェネンテック社との間で何らかの和解による合意がされたものと推測される。

3.第一三共

2018年
中外製薬は、ジェネンテック社とともに、ハーセプチン®バイオ後続品の胃癌及び乳癌(1週間1回投与(A法))について製造販売承認を取得した第一三共に対し、特許侵害を理由として、10月12日付で東京地裁に同バイオ後続品の製造販売等の差止めを求める訴訟を提起した(過去記事: 2018.10.12 「中外がハーセプチン®バイオシミラー承認取得した第一三共とファイザーに対し用途特許侵害で差止訴訟提起」)が、同月31日には取下げた(2018.10.31 中外製薬 press release: 「訴訟および仮処分命令申立ての取り下げについて」)。

2019年
第一三共は、セルトリオン社やファイザー社が請求した特許無効審判には参加していなかった。セルトリオン社やファイザー社が特許無効審判請求を取下げたことで、同特許は有効に存続していることになり、第一三共は、それら請求取下げ直後の5月31日に無効審判を請求した。

2020年
現時点で、第一三共は、特許の無効審決を得るに至っていない。セルトリオン社、日本化薬、ファイザー社は、ハーセプチン®と【効能・効果】および【用法・用量】が同じバイオ後続品を発売しているが、第一三共は、乳癌について3週間1回投与(B法)についての追加承認を得るには至っていない。ハーセプチン®の乳癌に関連する特許の存続期間は5月または8月で満了する。

表: ハーセプチン®及びバイオ後続品の製品・特許ヒストリー(特許5623681(
特許5818545())

ハーセプチン®
のヒストリー
トラスツズマブ・バイオシミラーのヒストリー
日本化薬
セルトリオン
ファイザー
第一三共
2000
5/9 出願日
8/25 原出願日




2001
4/4 製造販売承認(乳癌)




2004
2/26 剤形追加承認




2008
2/29 乳癌について効能効果及び用法用量追加承認




2011
3/10 胃癌について効能効果及び用法用量追加承認
4/3 再審査期間終了
11/25乳癌について効能効果及び用法用量追加承認




2013
6/14 乳癌について用法用量は1週間1回投与(A)又は3週間1回投与(B)となる




2014
10/3 特許登録日




2015
10/9 特許登録日




2016


2/15 審判請求(無効2016-800021)
6/17 審判請求(無効2016-800071)
12/27 訂正認めた上で請求不成立審決(無効理由なし)


2017

4/11 承認申請







8/17 東京地裁に販売等差止訴訟提起される
3/17 ファイザー参加申請
5/10 審決取消訴訟提起(H29行ケ10106)
7/5 請求不成立審決(無効理由なし)
8/10 審決取消訴訟提起(H29行ケ10165; 10192)


5/10 審判請求(無効2017-800062)





10/17 セルトリオン参加申請

2018

3/23 胃癌について承認
4/10 差止請求取下げられる
5/30 薬価収載
8/20 発売













11/28 乳癌について追加承認(1週間1回投与(A))
3/23 胃癌について承認


5/30 薬価収載
8/28 発売



10/11 審決取消判決(無効理由あり)
10/22 審決取消判決(無効理由あり)
11/12 上告受理申立
11/12 上告受理申立
11/28 乳癌について追加承認(1週間1回投与(A))






9/21 胃癌及び乳癌(1週間1回投与(A))について承認
10/12 東京地裁に販売等差止訴訟提起される

10/31 差止請求取下げられる




12/10 審決の予告(進歩性欠如)






9/21 胃癌及び乳癌(1週間1回投与(A))について承認
10/12 東京地裁に販売等差止訴訟提起される

10/31 差止請求取下げられる



11/28 薬価収載・発売
2019











7/22 和解プレスリリース
8/21 乳癌について3週間1回投与(B)の用法用量追加承認
3/7 上告受理申立却下
3/26 審判審理再開
4/25 ファイザイー参加取下げ
5/13 審判請求取下げ
5/13 審判請求取下げ
7/22 和解プレスリリース
8/21 乳癌について3週間1回投与(B)の用法用量追加承認




4/25 審判請求取下げ
5/13 セルトリオン参加取下げ

5/29 薬価収載
7/17 乳癌について3週間1回投与(B)の用法用量追加承認
8/22 発売









5/31 審判請求(無効2019-800043)
2020

5/9特許満了日(延長なし)
8/25特許満了日(延長なし)



2/21 口頭審理

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