エーザイは、経口チロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ®(Lenvima®)」(一般名:レンバチニブ)に関する特許権(米国特許第10,407,393号及び第11,186,547号、以下、本特許)の侵害を理由として、本剤に関する後発医薬品の簡略新薬承認申請(Abbreviated New Drug Application:ANDA)を行った後発医薬品メーカーであるTorrent Pharmaceuticals Ltd.(以下、Torrent)に対し、米国ニュージャージー州連邦地方裁判所に特許権侵害訴訟を提起していましたが、2025年11月6日にTorrentと和解契約(以下、本和解)を締結した、と発表しました(2025.11.07 エーザイ press release: 米国におけるレンバチニブに関する特許侵害訴訟の和解について)。
本和解契約に基づき、Torrentは、一定の状況下を除き、2030年6月30日までレンバチニブの後発医薬品販売を行わないとのことで、本和解は同裁判所の同意後に発行するとのことです。
これまでエーザイが提起した本特許に係る他の後発医薬品メーカーに対する特許権侵害訴訟については、以下のことが確認されています。
- SUN Pharmaceutical Industries Ltd.及び SUN Pharmaceutical Industries Inc.に対しては、2024年3月21日に和解契約を締結し、一定の状況下を除き、2030年6月30日までレンバチニブの後発医薬品販売を行わない(2024.03.25ブログ記事「エーザイ、米国におけるLenvima®(レンバチニブ)に関する特許侵害訴訟でSUN Pharmaと和解」参照)。
- Dr. Reddy’s Laboratories, Ltd. 及び Dr. Reddy’s Laboratories, Inc.に対しては、2025年9月22日に和解契約を締結し、一定の状況下を除き、2030年6月30日までレンバチニブの後発医薬品販売を行わない(2025.09.24ブログ記事「エーザイ、米国におけるLenvima®(レンバチニブ)に関する特許権侵害訴訟でDr. Reddyʼsと和解」参照)。
- Shilpa Medicare Limitedに対しては、2025年5月28日にニュージャージー州連邦地方裁判所はエーザイ勝訴の判決を下しましたが、米国連邦高等裁判所に上訴されている。
Lenvima®のOrangebookによると、本特許の存続期間満了日は2036年2月26日(小児延長含む)です。にもかかわらず、2030年6月30日までの参入阻止とした和解であることから、エーザイは一定の妥協をしたものと想像されます。
本特許は、「レンビマ®(Lenvima®)」に含まれる高純度のレンバチニブに関するものであり、例えば、米国特許第第11,186,547号のclaim 1は以下のとおり。
米国における2025年3月期の「レンビマ®(Lenvima®)」の売上収益の実績は2,296億円(1,505百万米ドル)であり、エーザイは本件による2026年3月期の業績予想への影響はないとしています。

レンビマ®(Lenvima®)はエーザイの主力品。今後期待されるレケンビ®が成長するまでは後発医薬品の市場参入は阻止したいところです。




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