Oct 5, 2014

2014.08.07 「ノバルティス(脱退前の原告 QLT; 訴訟承継参加人 バリアント) v. 特許庁長官」 知財高裁平成25年(行ケ)10183; 平成26年(行ケ)10019

「反復」の進歩性: 知財高裁平成25年(行ケ)10183; 平成26年(行ケ)10019

【背景】

「眼の光力学的治療による視力改善用組成物」に関する特許出願(特願2006-64119号)の拒絶審決(不服2012-2261号)取消訴訟。争点は進歩性。

請求項1:
下記処置を含む反復ホトダイナミックセラピーにより,眼に不所望の血管新生を含有する人の視力を改善するための組成物であって,薬理学的に許容可能な賦形剤と光活性化合物を含有し,該光活性化合物がグリーンポルフィリンである薬剤組成物:
a)該光活性化合物により吸収される少なくとも1つの波長の光を,その治療を必要とする人の眼に対し,該組成物を投与して該眼中に該化合物の有効量が局在化した後に照射する第1回の処置(但し,該光活性化合物の投与用量は,2~8mg/M2体表面積の範囲とする),並びに
b)該第1回の処置が反復される第1回の反復処置(但し,該平均視力は,該第1回の反復処置により,平均視力の維持のレベルを超えて,増大する)。
審決が認定した引用発明の内容と本願発明との相違点は、引用発明には、b)を含む「反復」ホトダイナミックセラピーに用いるものであることが記載されていない点であった。

【要旨】

裁判所は、容易想到性について
「引用例1の単回のホトダイナミックセラピー臨床試験では,部分的な新生血管の閉止とある程度の視力の改善という目的に沿った結果が得られたものの,閉止されずに残存する新生血管や再発も観察されたのであるから,それらを閉止して視力をさらに改善するよう再度のホトダイナミックセラピー処置を試みることは,前記アの技術水準からみても,医療従事者にとってごく自然な発想である。
したがって,引用発明のホトダイナミックセラピー処置を反復して本願発明に至ることは,当業者が容易に想到し得たことである。」
と判断した。

そして、効果の顕著性について、裁判所は、
「引用発明のホトダイナミックセラピー処置を反復することで,残存あるいは再発した新生血管を閉止でき,その結果,単回の処置に比べて視力がさらに改善するであろうことは,上記(1)のとおり,引用例1の記載から当業者が予測し得ることである。
~本願明細書~によれば,~反復による改善が認められる。しかし,視力の改善は1回の処置でも得られていることに加えて,複数回の処置を繰り返すことによる改善の程度は相加的というべき範囲内のものにすぎず,反復することで予測される範囲を超えた視力の改善が得られたとまでは認められない。まして,本願発明は,処置の間隔や回数について何らの限定もないから,そのような発明の全体にわたって格別顕著な効果が奏されるということはできない。
したがって,本願発明の効果が引用例1の記載から当業者が予測し得る範囲を超えた格別顕著なものとは認めることができない。」
と判断した。

請求棄却。

【コメント】

本願(特願2006-64119号)は、特願平9-532132号(特表2000-506173; WO97/33619; 出願日1997.02.25)の分割出願である。特願平9-532132号でも、「反復」の進歩性が問われ、拒絶審決取消訴訟で請求棄却となっている。治療を「反復」すると言う点での進歩性について本判決とあわせて参考になる。

欧州では、「反復ホトダイナミックセラピーにより」との構成要件を含めたクレームで特許成立(EP0894009B)。米国でもクレームの文言は異なるものの複数の特許が成立している(US5756541A、US5910510A、US6548542B1)。
特に、米国特許US5756541Aは、Visudyne®のOrangebook収載特許のひとつである(patent expirationはMar 11, 2016)。

日本で仮に本願が特許となれば、2017年2月まで製品を保護する特許になるはずだった。本願には、分割出願として特願2012-023024号(特開2012-092145)が存在しており、現在審査中である。

Visudyne®(ビスダイン®)(一般名:ベルテポルフィン(verteporfin))は、中心窩下の脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性症(age-related macular degeneration:AMD)の治療剤としてノバルティ
ス社が開発した光線力学的療法用製剤であり、日本では2003年10月16日に輸入承認されている。


参考:

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