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2012.01.30 「メルク v. ミスターマックス」 知財高裁平成23年(行ケ)10190

メルクとメルクス: 知財高裁平成23年(行ケ)10190

【背景】

ミスターマックス(被告)が保有する下記商標登録に対して、メルク(原告)がした無効審判請求を不成立とした審決(無効2010-890055)の取消訴訟。争点は、①本件商標と引用商標の類否(商標法4条1項11号)、②本件商標が原告の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれの有無(同項15号)、③本件商標は原告の著明な略称を含むか(同項8号)、であった。

本件商標

登録第5281405号
指定役務:
第35類に属する商標登録原簿記載の役務

【要旨】

裁判所は、下記のとおり判断した。

1 取消事由1(商標の類否の認定判断の誤り)について

「本件商標と引用商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れることのない非類似の商標というべきであるとして,本件商標は11号に該当しないとした審決の判断に誤りはない。」

2 取消事由2(周知性の認定判断の誤り),取消事由3(混同のおそれの認定判断の誤り)について

「前記のとおり,本件商標と原告及びそのグループ企業が商標権者である引用商標は類似しない商標である。すなわち,引用商標3,5と本件商標中の片仮名文字「メルクス」の部分は,「メルク」の部分が共通するものではあっても,両者は4文字(4音),3文字(3音)という短い文字数・音から成るものであり,「ス」文字及び音の有無が外観及び証拠全体に与える影響は大きく,両商標は全体の語調・語感が異なるものであって,需要者は商標そのものをもって,両者を区別することができるというべきであって,他に両商標間に誤認混同を生じる事由は認められない。
そうすると,本件商標が~本件商標の指定役務として登録されているもののうち原告の業務と重複ないし関連するに使用された場合に,本件商標から原告又はそのグループ企業が想起されることはないと解するのが相当である。本件商標は,原告又は原告と何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれは認められないというべきであり,このことは,原告商標が医薬品や化学製品の需要者のみならず,一般消費者の間において周知・著名であったとしても左右されるものではない。
よって,本件商標は15号に該当しないとした審決はその結論において誤りはない。」

「他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては,単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく,その部分が他人の略称等として客観的に把握され,当該他人を想起・連想させるものであることを要する。
かかる見地から見るに,本件商標の片仮名文字部分「メルクス」は需要者に一体として看取されると見るのが相当であり,「メルク」を独立して看取することはできないことは前記のとおりである。そうすると,「メルク」,「MERCK」,「Merck」が原告の名称の略称として,医薬品や化学製品の需要者のみならず,一般消費者の間において周知・著名であるとしても(その点において審決の認定には誤りがある),本件商標はそれを含む商標ではないとして8号に該当しないとした審決はその結論において誤りはない。」

請求棄却。

【コメント】


取消事由1(商標の類否の認定判断の誤り)について、原告が4条1項11号該当について主張した引用商標は左記のとおり(指定商品・役務は省略)。
メルクとメルクス。語尾の「ス」の有無を大きな差異と考えるか、些細な差異と考えるか。裁判所は、本件のような4文字ないし3文字の文字数からなる商標における類比判断としては、その差異は影響大と判断したようである。

株式会社ミスターマックスのウェブページ: http://www.mrmax.co.jp/

本件商標は、被告の営業に係るショッピングセンター及びそこでの商品の小売(総合小売)において提供される役務を表示する商標として使用されている。

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