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2006.10.30 「X v. 特許庁長官」 知財高裁平成17年(行ケ)10820

当業者に過度の試行錯誤を強いる: 知財高裁平成17年(行ケ)10820

【背景】
本発明(特願平4-507654)は、骨形成用の活性剤複合体を生成する方法であり、明細書中には、具体的手段や操作に関する記載がなかったため、実施可能要件違反を理由に拒絶査定、拒絶審決を受けたため、原告は審決取消訴訟を提起した。原告は、周知慣用技術を用いて当業者であれば試行錯誤して容易に実施できる等主張した。

請求項1:
「骨形成用の活性剤複合体を生成するための方法であって,
骨から,コラーゲン,エラスチン,プロテオグリカン及びその混合物の形態における少なくとも一種の構造成分,少なくとも一種の走化学性ペプチド又はアラキドン酸代謝物の形態における少なくとも一種の補充成分,フィブロネクチン,テネイシン,ラミニン,コラーゲンタイプⅠⅤ型,Ⅴ型,ⅤⅠⅠ,L-CAM,N-CAM又はインテグリンの形態における少なくとも一種の接着成分並びに少なくとも一種のサイトカインの形態における少なくとも一種の増殖及び成熟成分を含んでなる少なくとも一の初期複合体を調製し,そしてそれを次の工程に従って処理する,
a)当該初期複合体に変性手段を供給するか,又は当該初期複合体を変性手段で処理して,当該初期複合体の前記成分の少なくとも一部を変性させて均質相を獲得し;
b)このようにして形成された均質相を二以上の部分に分割し;
c1)当該均質相を二部に分けたなら,当該均質相の一の部における前記成分のうち枯渇もしくは富化を所望する1又は複数種の成分を選定し;
c2)当該均質相を二部超に分けたなら,当該均質相の少なくとも一の部における前記成分のうち枯渇もしくは富化を所望する1又は複数種の成分を選定し;
d)当該均質相の少なくとも一の部から前記選定した成分を分画し;
e)このようにして獲得した画分の少なくと(も)一部を前記均質相の他の部と混合し;
f)工程eにより得られた混合均質相を,前記変性手段を取り除くことにより,又は前記変性剤による処理を停止させることにより再生し,これにより
g1)前記活性剤複合体を構成する最終複合体を形成する;又は
g2)前記工程a)ないしf)を1又は複数回繰り返して前記活性剤複合体を構成する最終複合体を形成する;
ことを特徴とする方法。」

【要旨】
裁判所は、
明細書中に具体的手段や操作に関する記載がなければ、当業者に過度の試行錯誤を強いるものというべきであって、実施可能要件を満たさない、
と判断した。
請求棄却。

【コメント】
当業者に過度の試行錯誤を強いることとならないように、発明を実施できるように記載しなければならない。

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