世界保健機関(WHO)は2026年9月25日、ニューヨークの国連本部で開催された第2回国連総会ハイレベル会合(Pandemic Prevention, Preparedness and Response)について、各国が将来のパンデミックへの備えを強化する必要性を改めて確認したと発表しました。
今回の会合で特に注目されるのが、WHO Pandemic Agreementの発効に向けたPathogen Access and Benefit-Sharing(PABS)附属書です。
WHOによれば、各国は、PABSシステムを構築するための附属書の交渉を早急に「successfully finalize」する必要があるとの認識を示しました。PABS附属書は、パンデミック・ポテンシャルを持つ病原体の試料や配列情報を迅速に共有する一方、それらの利用から開発されたワクチン、治療薬、診断薬などについて、迅速かつ公平な利益共有を実現することを目的としています(2026.09.25 WHO公式発表: World leaders renew commitment to protect the world from future pandemics)。
これは、9月18日にジュネーブで終了したWHO Pandemic Agreementの第8回政府間作業部会(IGWG)の交渉を受けたものです。この会合では、PABS附属書について「equitable, feasible and implementable」な制度を目指して交渉が進められました。WHOは、今回の会合で交渉が前進したとしつつ、PABS附属書の最終化が必要であるとの認識を示しています(2026.09.19 WHO公式発表: Member States advance negotiations on pathogen access and benefit-sharing ahead of UN General Assembly meeting on pandemics)。
2025年5月の第78回世界保健総会(WHA78)では、WHO Pandemic Agreementそのものはすでに採択されています(2025.05.20ブログ記事「WHO、パンデミック協定を正式採択 ― 公衆衛生と知的財産のバランスを図る国際枠組みが誕生」参照)。

WHOによれば、次の重要なステップがPABSシステムの詳細を定める附属書の交渉です。附属書が採択されると、各国によるPandemic Agreementへの署名・批准に向けた手続きが進むことになります(WHO Pandemic Agreement 公式ページ)。
また、2026年5月の第79回世界保健総会では、PABS附属書の交渉を継続し、その成果を2027年の第80回世界保健総会に提出することが決定されています。決議では、PABSについてWHOとの間で締結するlegally binding contractsの検討も明記されています(2026.05.22 WHO: WHA79(7) Outcome of the open-ended Intergovernmental Working Group on the WHO Pandemic Agreement in relation to the drafting and negotiation of the ANNEX described in Article 12 of the WHO Pandemic Agreement)
9月25日のハイレベル会合で、WHOのテドロス事務局長はPABSについて「The final piece of the puzzle」と表現し、「get PABS done, as soon as possible」と各国に交渉の早期妥結を呼びかけました(2026.09.25 WHO newsroom: WHO Director-General’s remarks at the High-Level Meeting on Pandemic Prevention, Preparedness and Response – 25 September 2026)。
WHOは今回の発表で、PABS附属書を2027年5月の世界保健総会で採択することが、各加盟国がPandemic Agreementの批准に向けた国内手続きを開始するために必要だと説明しています。なお、9月25日の政治宣言については、WHOは国連総会で「further consideration」のために送られる予定としています。
医薬品知財の観点からは、PABSが単なる病原体の共有ルールにとどまらず、病原体・遺伝子配列情報を利用して開発されたワクチン、治療薬、診断薬等について、どのような利益共有を求めるのかが重要なポイントとなります。今後の附属書の具体的な制度設計は、製薬企業の研究開発、知的財産、技術移転、製造・供給戦略にも影響し得るため、その内容を引き続き注視する必要があります。
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