Apr 25, 2017

2017.03.22 「コスメディ製薬 v. バイオセレンタック」 知財高裁平成28年(ネ)10094

訴訟提起した者が敗訴した場合、訴えの提起が相手方に対する違法な行為とされるのか?知財高裁平成28年(ネ)10094

【背景】

本件は、バイオセレンタックが提起した特許権侵害訴訟(バイオセレンタックが敗訴。東京地裁平成25年(ワ)4303; 知財高裁平成26年(ネ)10109)の被告であったコスメディと同社の代表取締役であるXが、同訴訟の原告であったバイオセレンタック、同訴訟でバイオセレンタックを代表した代表取締役のY1、バイオセレンタックの代表取締役であり本件特許の発明者であるY2並びに同訴訟で訴訟代理人を務めたY3に対し、バイオセレンタックが「コスメディによる本件特許権侵害及びY2の研究成果盗用」という虚偽の事実をコスメディの協業相手である岩城製薬及び資生堂に告知した行為は不競法2条1項14号(現行法では15号)の不正競争に該当する或いは上記告知がXの名誉を毀損したと主張して、不競法4条、民法709(719条1項)または会社法429条1項に基づき損害賠償の支払を求めた事案である。

【要旨】

知財高裁は、必要な範囲で判断を付加したほかは、原判決を引用し、控訴を棄却した。付加判断のうち、不正競争の成否について以下に引用する。
「訴えの提起が相手方に対する違法な行為となるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られる(最高裁第三小法廷昭和63年1月26日判決・民集42巻1号1頁参照)。かかる要件を満たさないのに,訴訟提起という形による虚偽事実の告知が形式的に不正競争に当たることを理由として,これを違法とすることは,たとえ訴訟提起の相手方(本件では岩城製薬)との関係で違法と評価するものではなかったとしても(不正競争かどうかは,飽くまで競業者である控訴人コスメディとの関係において問題となるものである。),結局はこれを不当提訴であると断じるに等しく,裁判制度の自由な利用を著しく阻害することとなり妥当でない(むしろ,特許権者が自己の権利を侵害されているとの認識の下に,当該侵害者を相手方として訴訟を提起することは,当該訴訟が不当訴訟と評価されるような特段の事情がない限り,裁判を受ける権利の行使として当然許される行為であるというべきである。)。
したがって,かかる制度的観点からは,特許権者が,競業者ないしその取引先に対する関係でおよそ請求が成り立たないことを知りながら,あるいは,当然そのことを知り得たはずであるのに,あえて当該取引先をも共同被告として訴訟を提起するなど,訴訟制度を濫用的に利用したと評価し得るような特別な事情が存する場合は格別として,そのような場合でなければ,外形的には不正競争に当たり得るとしても,訴訟提起自体を違法と評価することはできないというべきである。

これを本件についてみるに…(略)…被控訴人バイオが,あらかじめ本件特許にかかる無効理由が存することを知りながら,あるいは,これを当然知り得たはずであるのに,あえて(無理を承知で)同訴訟を提訴したというような事情はうかがわれないし…(略)…,被控訴人バイオに,専ら控訴人コスメディの信用を毀損する目的など,訴訟制度を濫用的に利用したと評価されるべき不当な目的があったことを認めるに足りる的確な証拠もない。

以上によれば,被控訴人バイオが岩城製薬を共同被告として別件侵害訴訟を提起したのは,正当な権利行使の一環というべきであって,それが外形的には不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当し得る行為であったとしても,正当行為として違法性が阻却されるものと認めるのが相当である。原判決の認定判断もかかる趣旨を述べるものと理解することが可能であって,論旨不明との指摘は当たらない。」

従って、裁判所は、コスメディの主張は採用できないと判断した。

また、研究成果盗用の指摘が虚偽事実の告知に当たるとのコスメディの主張について、これを主張したコスメディは独自に開発した過程を明らかにして具体的に主張立証すべきところ、これを全く行わなかったため、虚偽事実の告知の成否についても裁判所はコスメディの主張は採用できないと判断した。

【コメント】

バイオセレンタックから「侵害だ、盗用だ」と訴えられたコスメディが、非侵害判決を受け、「言いがかりをつけやがって。どうしてくれるんだよ。責任とれ。」ということで、会社だけでなく代表取締役及び当時の訴訟代理人も相手にして訴え返したという事件。訴えの提起が違法な行為となるかどうかについては、判決文中でも引用されている下記最高裁判決での判示事項が参考になる。
  • 1988.01.26 最高裁昭和60(オ)122
    「民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、右訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。」
本件特許は、「経皮吸収製剤,経皮吸収製剤保持シート,及び経皮吸収製剤保持用具」に関する特許第4913030号。

参考:

Apr 17, 2017

2017.03.08 「ホスピーラ v. デビオファーム」 知財高裁平成27年(行ケ)10167

「緩衝剤」としての「シュウ酸」は添加シュウ酸に限られ、解離シュウ酸を含まない(審決取消): 知財高裁平成27年(行ケ)10167

【背景】

被告(デビオファーム)が保有する「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許第4430229号の無効審判請求を不成立とした審決(無効2014-800121)の審決取消訴訟。

請求項1(訂正発明1):

オキサリプラチン,有効安定化量の緩衝剤および製薬上許容可能な担体を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物であって,製薬上許容可能な担体が水であり,緩衝剤がシュウ酸またはそのアルカリ金属塩であり,
1)緩衝剤の量が,以下の:
(a)5x10-5M~1x10-2M ,
(b)5x10-5M~5x10-3M ,
(c)5x10-5M~2x10-3M ,
(d)1x10-4M~2x10-3M ,または
(e)1x10-4M~5x10-4M
の範囲のモル濃度である,pHが3~4.5の範囲の組成物,あるいは
2)緩衝剤の量が,5x10-5M~1x10-4Mの範囲のモル濃度である,
組成物。

【要旨】

審決を取り消す。

本件訂正発明の「緩衝剤の量」とは、解離シュウ酸をも含んだ「オキサリプラチン溶液組成物に現に含まれる全ての緩衝剤の量」ではなく、解離シュウ酸を含まない「オキサリプラチン溶液組成物を作製するためにオキサリプラチン及び担体に追加され混合された緩衝剤の量」を意味するものと解釈すべきであり、そうすると、本件審決が、本件訂正発明の「緩衝剤の量」は「オキサリプラチン溶液組成物に現に含まれる全ての緩衝剤の量」を意味するとの解釈に基づいてした本件訂正発明の要旨認定は誤りであるといえる。そして、本件審決は、当該要旨認定を前提として、実施可能要件違反、サポート要件違反、新規性欠如及び進歩性欠如の各無効理由(無効理由2ないし5)についての判断をしたものであり、上記「緩衝剤の量」が「オキサリプラチン溶液組成物を作製するためにオキサリプラチン及び担体に追加され混合された緩衝剤の量」を意味することを前提とした場合の上記各無効理由の有無については判断していない。特に、進歩性欠如の無効理由(無効理由5)については、請求人(原告)が当該解釈を前提とした場合の本件訂正発明1ないし17に係る進歩性の欠如を具体的に主張していたところ、本件審決は、当該解釈が採用できないことを理由に、請求人(原告)の上記主張を検討の対象とせず、これについて何ら判断をしていない。してみると、本件審決の上記要旨認定の誤りは、少なくとも本件訂正発明1ないし17に係る進歩性欠如の無効理由についての審決の判断に影響を及ぼすものといえる。したがって、原告主張の取消事由2には理由がある。

【コメント】

裁判所は、無効審判における要旨認定において問題となった「緩衝剤」についての「シュウ酸」が添加シュウ酸に限られ解離シュウ酸を含まないことを意味するものと解釈すべきであることを、特許請求の範囲の記載、明細書における定義の記載及び定義以外の記載、並びに、発明の目的及び発明と引用発明との関係に照らして丁寧に検討し、結論を下した。

Apr 10, 2017

2017.02.28 「ザ・ヘンリー・エム・ジャクソン・ファンデイション v. 特許庁長官」 知財高裁平成28年(行ケ)10107

臨床効果が証明されていなければ引用発明にならない?知財高裁平成28年(行ケ)10107

【背景】

「乳癌再発の予防用ワクチン」に関する特許出願(特願2011-540853; 特表2012-511578; WO2010/068647)の拒絶審決(不服2014-19365)取消訴訟。争点は、引用発明の認定の適否。

請求項1:
製薬上許容される担体,配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドの有効量及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含み,配列番号3のアミノ酸配列を有するE75ペプチドを含まないワクチン組成物。

すなわち、「製薬上許容される担体,GP2の有効量及びGM-CSFを含み,E75を含まないワクチン組成物。」
審決は、引用文献には「GP2とGM-CSFを含有するワクチン」の発明(引用発明)が記載されているものと認め、本願発明と引用発明は一致し、両者の発明を特定するための事項に差異はないと判断したが、原告は、引用発明は「GP2とGM-CSFを含有し,E75と組み合わせて使用される細胞傷害性T細胞(CTL)誘導剤」と認定されるべきであり、審決は引用発明の認定を誤ったものであり取り消されるべきであると主張した。

【要旨】

裁判所は、原告請求の取消事由1(引用発明はCTL誘導剤であってワクチンではないこと)には理由があるとして審決を取り消した。以下、裁判所の判断の抜粋。
「本願優先日当時,「癌ワクチン」について,以下の技術常識が存在したものと認められる。ペプチドが「ワクチン」として有効であるというためには,①当該ペプチドが多数のペプチド特異的CTLを誘導し,②ペプチド特異的CTLが癌細胞へ誘導され,③誘導されたCTLが癌細胞を認識して破壊すること,が必要である。あるペプチドにより,多数のペプチド特異的CTLが誘導されたとしても,誘導されたCTLが癌細胞を認識することができない,誘導されたCTLが癌細胞を確実に破壊するとは限らないなどの理由により,当該ペプチドに必ずしもワクチンとしての臨床効果があるということはできない。

引用発明は・・・標準治療後のHLA-A2型のリンパ節転移陰性乳癌患者について,GP2ペプチドとアジュバントのGM-CSFを6か月接種したところ,全ての患者においてGP2特異的CTL細胞のレベルが増加したというものであり,GP2ペプチドがワクチンとして有効であるというために必要な,当該ペプチドが多数のペプチド特異的CTLを誘導したことを示したものである。これに対し,本願発明は,上記1のとおり,GP2ペプチドとGM-CSFを投与した無病の高リスク乳癌患者に,GP2特異的CTLが増大したのみならず,再発率が低減した,すなわち,誘導されたCTLが腫瘍細胞を認識し,これを破壊することによって,臨床効果があることを示したものである。・・・本願優先日当時,あるペプチドにより多数のペプチド特異的CTLが誘導されたとしても,当該ペプチドに必ずしもワクチンとしての臨床効果があるとはいえない,という技術常識に鑑みると,ペプチド特異的CTLを誘導したことを示したにとどまる引用発明は,本願発明と同一であるとはいえない。」

これに対し、被告は、

「CTLが誘導されれば癌に効くという技術的事項は,本願優先日前から周知であるから,引用発明の組成物は本願発明の「ワクチン」と同一である」

と主張した。

しかし、裁判所は、

「本願優先日当時の技術常識を踏まえると,CTLが誘導されることは,癌ワクチンとして有効であるための前提条件であるものの,さらにCTLが癌細胞へ誘導され,癌細胞を破壊することが必要であり,そのような誘導や破壊ができない場合があるから,CTLが誘導されることと,癌ワクチンとして有効であることが技術的に同一であるとはいえない。したがって,被告の主張は,理由がない。」

と判断した。

また、被告は、

「引用文献の組成物は,フェーズIの臨床試験の結果を開示するものである上,「ワクチン」と表記されている」

と主張した。

しかし、裁判所は、

「引用文献(甲1)は,フェーズIの臨床試験の結果の概要を示すものであるが,引用発明は,・・・標準的治療後のHLA-A2型のリンパ節転移陰性乳癌患者について,GP2ペプチドとアジュバントのGM-CSFを6か月接種したところ,全ての患者においてGP2特異的CTL細胞のレベルが増加したというものであって,ペプチド特異的CTLを誘導したことを示したにとどまるものであるし,また,引用文献には「ワクチン」と表記されている箇所があるものの,「ワクチン」としての使用の可能性があることから,そのように述べたものと解されるから,引用発明が本願発明と同一であるということはできない。」
と判断した。

【コメント】

引用文献の著者は本願発明の発明者自身であり、自ら引用文献で「抗癌ワクチンとしてGP2+GM-CSFの臨床試験を実施し」、「6カ月間ワクチン接種した」と表記している。
引用文献中の臨床試験は、本願発明者がワクチンとしての効果を期待して実施したことは明らかであるし、そのような可能性が期待されて実施されたのだろうということは引用文献を見た当業者であれば認識できるわけであるが、裁判所は、引用文献には、その臨床効果、すなわち癌の再発率が低減したことまで示されていないことから、引用発明はワクチンではないと判断した。

すなわち、引用文献からその効果を期待して実施されたことが当業者が見て明らかであっても、臨床効果が証明されたという記載がなければ、医薬用途発明の引用発明として認定されないということを示した判断であり、本事件の個別具体的な判断だったとしても、医薬用途発明の新規性判断における引用発明の適否に関して極めてインパクトのある判決であると思われる。

今回の判決は、下記過去判決とは異なる考え方を示したものである。
ワクチンに限らず、医薬品分野の技術常識として、非臨床試験でデータを積み上げてきたとしても、必ずしも薬剤としての臨床効果があると証明することはできない(臨床効果があるかどうかは臨床試験しなければ証明できない)のは当たり前の話である。一方で、臨床効果を証明していなくても、非臨床試験データからでも、医薬品として有用であろう/期待できる/推論できるとの技術思想の創作は当業者であればできるわけである。臨床試験で結果確認しないかぎり、ワクチンとして開発中であることが知られても、当業者は本当にワクチンとしての発明をそこから認識できないのか。

臨床試験プロトコールが引用文献に記載されていたとしても、試験結果が記載されていない引用文献の内容からだけでは、(判決の文言を借りれば)「必ずしも[医薬品]としての臨床効果があるとはいえない」から、ヒト用医薬用途発明の新規性判断において、引用発明として認定されないことになってしまうのか。

裁判所の技術常識のあてはめ方は、医薬品として効果が「有用であろう/期待できる/推論できる」と当業者が認識できるかどうかという観点での技術常識をあてはめるべきところ、医薬品として効果が「証明できる」と当業者が認識できるかどうかという観点での技術常識をあてはめた点で、本判決における引用発明の認定判断は妥当だったのかどうか疑問が残る。

米国では、クレームを乳がんや患者細胞での遺伝子発現レベルについて限定することによって特許になっている(欧州でも同様の補正をして特許許可されたようである)。

US 9,114,099 B2
1. A method of preventing breast cancer recurrence in a subject, comprising: a) selecting the subject, wherein the subject is in remission following treatment with a standard course of therapy, and wherein the subject, prior to remission, had breast cancer cells with low or intermediate expression of HER2/neu, wherein low or intermediate expression of HER2/neu is an immunohistochemistry (INC) rating of 1+ or 2.sup.+ protein expression or a fluorescence in situ hybridization (FISH) rating of less than about 2.0 for HER2/neu gene expression; and b) administering to the subject selected in step a) a composition in an amount effective to prevent breast cancer recurrence, wherein the composition comprises a pharmaceutically effective carrier, a peptide consisting of the amino acid sequence SEQ ID NO: 2, and granulocyte macrophage-colony stimulating factor, and wherein, other than the peptide consisting of the amino acid sequence of SEQ ID NO: 2, the composition does not contain any other Her2/neu-derived peptides.



Apr 3, 2017

2017.02.22 「エヌ・エル・エー v. 東洋新薬」 知財高裁平成27年(行ケ)10231

「一部」、僅かな部分のサポート要件違反知財高裁平成27年(行ケ)10231

【背景】

東洋新薬(被告)が保有する「黒ショウガ成分含有組成物」に関する特許権(第5569848号)の無効審判(無効2015-800007)請求不成立の審決取消訴訟。

請求項1:
黒ショウガ成分を含有する粒子を芯材として,その表面の一部又は全部を,ナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤にて被覆したことを特徴とする組成物。
原告は、
  • 請求項1における「ナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤にて被覆した」との文言は,コート層の厚み,被覆率等が規定されていない以上,コート剤に含まれるナタネ油あるいはパーム油の量が極小量である構成をも許容していることが明らかであるところ,これらが極小量の場合には,当該ナタネ油あるいはパーム油に起因して本件発明の効果を奏するとはいえないこと
  • 「その表面の一部又は全部を…」との文言は,芯材(黒ショウガ成分を含有する粒子)におけるコート剤によって被覆されている部分がごく一部である構成を許容していることが明らかであるところ,例えば,芯材におけるコート剤によって被覆されている部分が全表面積の10%,露出部分が同90%である場合に,「摂取前の黒ショウガ成分の酸化を防止して保存安定性も高め,摂取後の胃液等による変性を防止することができる」とする根拠が不明であること
の2点を理由に、本件発明は、発明の目的である「ポリフェノール類の体内への吸収性の向上」や「黒ショウガ成分の酸化の防止」を達成し得ない範囲を包含しており、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているのに、本件審決がサポート要件違反を認めなかったのは誤りであると主張した。

【要旨】

裁判所は、上記原告主張を認め、サポート要件違反を認めなかった審決を取り消した。

裁判所の判断(抜粋)
「特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,①発明の詳細な説明に記載された発明で,②発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。」
「当業者は,たとえ,「黒ショウガ成分を含有する粒子」の表面を「油脂を含むコート剤」で被覆することにより,本件発明の課題が解決できると認識し得たとしても,その量や程度が不十分である場合には,本件発明の課題を解決することが困難であろうことも予測するといえる。
ところが…(略)…コート剤による被覆の量や程度が不十分である場合には,本件発明の課題を解決することが困難であろうとの当業者の予測を覆すに足りる十分な記載が本件明細書になされているものとは認められないのであり,また,これを補うだけの技術常識が本件出願当時に存在したことを認めるに足りる証拠もない。したがって,本件明細書の記載(ないし示唆)はもとより,本件出願当時の技術常識に照らしても,当業者は,「黒ショウガ成分を含有する粒子」の表面の僅かな部分を「油脂を含むコート剤」で被覆した状態が本件発明の課題を解決できると認識することはできないというべきである。…(略)…そうすると,本件発明の特許請求の範囲の記載は,いずれも,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願当時の技術常識に照らして,当業者が,本件明細書に記載された本件発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており,サポート要件に適合しないものというべきである。」
被告は、
「芯材である「黒ショウガ成分を含有する粒子」におけるコート剤によって被覆されている部分がごく一部である態様等,本件明細書の記載や本件出願当時の技術常識からみて,当業者が通常想定しないような極端なケースを挙げてサポート要件違反とすることは,適切な発明の保護が観点からみて不当である」
と主張した。

しかしながら、裁判所は、
「サポート要件の趣旨は,要するに,発明の詳細な説明に記載していない発明が特許請求の範囲に記載され,公開されていない発明について独占的,排他的な権利を認めることを許容しないことにあるところ,本件発明には,「黒ショウガ成分を含有する粒子」の表面の僅かな部分を「油脂を含むコート剤」で被覆した態様が包含されているといえるのであるから,このような態様についてのサポート要件を検討することが不当であるとはいえないことはもちろんであって,上記被告の主張は採用することができない。」
と判断した。

【コメント】

「その表面の一部又は全部を」というクレームの構成をサポートできるほどの記載が明細書になかった。クレーム自体どのように表現すればよかったか、明細書にどこまで詳細に記載すべきだったかという点を考えてみることは、製剤関連発明の出願をする際の参考になるかもしれない。

本特許においては分割出願があり、特許5964344号及び特許5997856号が登録されているが、いずれも無効審判請求はされていないようである。
  • 特許5964344号
    請求項1: 黒ショウガの乾燥粉末を芯材として、その表面の一部又は全部を、ナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤にて被覆したことを特徴とする経口用組成物。
    請求項2: 黒ショウガ抽出物の乾燥粉末を芯材として、その表面の一部又は全部を、ナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤にて被覆したことを特徴とする経口用組成物。
  • 特許5997856号
    請求項1: 黒ショウガの乾燥粉末に対してナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤を噴霧することにより、前記黒ショウガの乾燥粉末を前記コート剤で被覆することを特徴とする経口用組成物の製造方法。
    請求項2: 黒ショウガ抽出物の乾燥粉末に対してナタネ油あるいはパーム油を含むコート剤を噴霧することにより、前記黒ショウガ抽出物の乾燥粉末を前記コート剤で被覆することを特徴とする経口用組成物の製造方法。
参考:

Mar 25, 2017

2017.03.24 「マキサカルシトール事件(均等の第5要件)」 最高裁平成28年(受)1242

均等の第5要件(特段の事情)の判断基準(マキサカルシトール事件)最高裁平成28年(受)1242

【背景】

「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法」に関する特許権(特許第3310301号)の共有者である中外製薬(被上告人)が、上告人らの販売に係る各マキサカルシトール製剤の製造方法は、本件発明と均等であり、その技術的範囲に属すると主張して、上告人ら製品の輸入、譲渡等の差止め及び廃棄を求めた事案。

原審である知財高裁大合議判決( 2016.03.25 「DKSH・岩城製薬・高田製薬・ポーラファルマ v. 中外製薬」 知財高裁平成27年(ネ)10014)では、均等の成否の判断における第5要件(特段の事情)について、本件では「特段の事情」が存するとはいえず、上告人らの製造方法は本件特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして本件発明の技術的範囲に属するとし、被上告人の請求を認容すべきものとした。それに対し、上告人らの主張は、原審の上記判断は「特段の事情」が認められる範囲を狭く解しすぎている旨をいうものである。

【要旨】

最高裁は、原審である知財高裁大合議判決( 2016.03.25 「DKSH・岩城製薬・高田製薬・ポーラファルマ v. 中外製薬」 知財高裁平成27年(ネ)10014)と同様に、均等の成否の判断における第5要件(特段の事情)の判断基準について以下のように判示した。
(1) 出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合であっても,それだけでは,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するとはいえないというべきである。

(2) もっとも,上記(1)の場合であっても,出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合において,客観的,外形的にみて,対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するというべきである。
最高裁は、本件について、事実関係等に照らすと、被上告人が、本件特許の特許出願時に、本件特許請求の範囲に記載された構成中の上告人らの製造方法と異なる部分につき、客観的、外形的にみて、上告人らの製造方法に係る構成が本件特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて本件特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたという事情があるとはうかがわれないから、原審の判断は、これと同旨をいうものとして是認することができると判断した。上告棄却。

【コメント】

本事件は化学(医薬)分野の発明であり、その特許請求の範囲の構成は化学構造として認識でき、当該発明の技術的範囲に包含されるかどうかは文言上明確に判断できるものであったため、そのような発明であっても均等論が柔軟に適用されるのかどうかが注目された事件だったが、均等の成否の判断における第5要件(特段の事情)について一歩踏み込んだ判断基準を知財高裁大合議判決が示したことにより、化学分野だけに限らず、一般的にも、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの「特段の事情」とはどのような事情まで含まれるのかについての解釈が注目されることとなった。知財高裁大合議での解釈は最高裁でも是認されたことになる。

参考:



Mar 24, 2017

オゼックス(トスフロキサシントシル酸塩)製剤特許侵害訴訟でMeiji Seikaファルマ・高田製薬と富山化学工業が和解

2017年3月23日付けのMeiji Seikaファルマおよび高田製薬のプレスリリースによると、Meiji Seika ファルマの「トスフロキサシントシル酸塩小児用細粒15%『明治』」および高田製薬の「トスフロキサシントシル酸塩細粒小児用15%「タカタ」」の製造販売行為が富山化学工業の製剤特許(特許第5799061号)を侵害するとして、富山化学工業は特許権侵害差止請求訴訟を2016年3月7日付で東京地裁に提起していましたが(過去記事)、2017年3月22日付で裁判上の和解が成立したとのことです。先発製品は富山化学工業が製造販売するオゼックス®細粒小児用15%。

参考:

Mar 21, 2017

2017.02.14 「ナンジン キャベンディッシュ v. 特許庁長官」 知財高裁平成28年(行ケ)10112

レブラミド(Revlimid)®の有効成分レナリドミド(lenalidomide)の結晶多形: 知財高裁平成28年(行ケ)10112

【背景】

「3-(置換ジヒドロイソインドール-2-イル)-2,6-ピペリジンジオン多結晶体及び薬用組成物」に関する特許出願(特願2012-535589; 特表2013-509357)の拒絶審決(不服2014-15527)取消訴訟。

請求項1:

Cu-Kα放射を使用したX線回折図が下記の回折ピークを有する,3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオン半水和物の多結晶体I。


【要旨】

結晶形の発明の新規性・進歩性が争点。裁判所は、新規性欠如を理由とした拒絶審決を否定したが、進歩性欠如については審決に誤りはないと判断した。また、引用発明認定の誤りと意見書提出機会の付与に関して一部手続違背はあるもののこれらは審決の結論に影響を及ぼすものでないと判断した。請求棄却。

1. 新規性について
「本願補正発明に係る結晶と引用発明に係る結晶の各粉末X線回折パターンとの間には,おおむね同じ位置(2θ値)に存在する回折ピークであっても,その高さ(相対強度)が異なるものがあるということができる。そして,前記のとおり,粉末X線回折パターンの比較による結晶の同定に当たり,回折ピークの強度は,回折ピークの数や位置と同様に重要なパラメータであるから,本願補正発明に係る結晶と引用発明に係る結晶は同一の結晶ということはできず,よって,本願補正発明は,引用発明と同一のものとして特許法29条1項3号に該当するということはできない。」

2. 進歩性について

(1) 本願補正発明と引用発明との相違点に係る容易想到性について

本願補正発明と引用発明との一致点:
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオン(以下、化合物Pという。)の半水和物の結晶である点
本願補正発明と引用発明との相違点:
本願補正発明に係る結晶は,Cu-Kα放射を使用したX線回折図が,表1記載の19個の2θの数値及びその2θの数値ごとに特定の数値のFlex幅,d-値,強度及びL/LOである,回折ピークの組を有する,化合物Pの半水和物の多結晶体I(すなわち,結晶多形のうちIと称する結晶)であると特定されているのに対し,引用発明に係る結晶は,図6で代表される,約16,18,22,及び27度の2θに回折ピークを有するCu-Kα放射を使用したX線回折図を与える,化合物Pの半水和物の形体Bの結晶である点
動機付けについて、裁判所は、
「(ア) 周知例2の化学便覧には,「おもな結晶特性は,晶癖・粒径・粒径分布・純度・多形・結晶化度である。これらの特性が異なれば,溶解度・溶解速度・安定性…などが異なり,医薬品ではとくにバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)が異なることから,結晶特性の制御は非常に重要である。」との記載があることから,①結晶多形は,晶癖や粒径等と共に主な結晶特性の1つであり,結晶特性が異なれば,溶解度や安定性等が異なってくること,②特に医薬品の場合は,結晶特性によってバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)が異なるので,結晶特性の制御が重要な意義を有することは,本件優先日当時において技術常識であったものと認められる。
そして,引用例には,「発明の分野」として「本発明は,化合物Pの多形相…並びに制限されないが炎症性疾患,自己免疫疾患,及び癌を含む疾患及び状態を治療するためのこれらの使用方法に関するものである。」との記載があることから,化合物Pの結晶を医薬品として用いることは明らかであり,引用例に接した当業者は,上記技術常識を踏まえて,結晶多形を含む主な結晶特性に注目するものということができる。
(イ) さらに,引用例には,…(略)…との記載がある。本件優先日当時の当業者は,これらの記載に接して,前記(ア)の主な結晶特性のうちとりわけ結晶多形に着目し,①化合物Pには,溶解性,安定性,バイオアベイラビリティなど医薬品において特に重視される性質が引用発明に係る結晶よりも優れた異なる構造を有する結晶が存在し得ること,②そのような結晶を,溶媒再結晶化等の公知の方法によって製造するとともに,X線粉末回折法等の周知技術によって検出し得ることを認識するものといえる。したがって,引用発明に接した当業者は,上記の医薬品において特に重視される性質がより優れた異なる構造の結晶を求めて,さらに溶媒再結晶化等の公知の方法による化合物Pの結晶の製造及びX線粉末回折法等の周知技術による検出を試行する動機付けがあるものというべきである。」
と判断した。

原告らは、
「対象化合物の結晶形及び形成可能な条件は予測不可能なものであり,結晶多形の分野において,動機付けがあることと実際に結晶を得ることができることとを単純に結び付けることはできない」
と主張した。

しかし、裁判所は、
「引用発明に接した当業者には,溶解性や安定性など医薬品において特に重視される性質がより優れた異なる構造の結晶を求めて,さらに溶媒再結晶化等の公知の方法による化合物Pの結晶の製造及びX線粉末回折法等の周知技術による検出を試行する動機付けがあったということができる。確かに,当業者は,引用発明から直ちに本願補正発明に係る結晶の構造及びその製造方法を具体的に想定し得たとまではいえないものの,上記動機付けに基づき,公知の方法による化合物Pの結晶の製造及び周知技術による検出を試行する過程において,前記ウ(イ)のとおり本件優先日当時において技術常識ないし周知技術であった貧溶媒晶析の操作及び粉末X線回折法によって本願補正発明に係る結晶を製造・検出し得たといえるのであるから,本願補正発明を容易に想到し得たものというべきである。」
と判断した。

(2) 顕著な効果の看過について

原告らは、
「本願補正発明に係る結晶の製造方法は,引用例及び周知例2から5に接した当業者であれば回避するジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドを溶媒として用いて結晶化を行い,その結果得られる上記結晶は,安定性が高く,また,残留溶媒がほとんどないという顕著な効果を奏するにもかかわらず,本件審決は,これを看過した」
と主張した。

しかし、裁判所は、
「引用例及び周知例2から5に接した当業者が必ずしもジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドを溶媒として使用することを回避するとはいい難い。…(略)…当業者は,引用例の上記の記載により,引用発明に係る結晶は一定の安定性を備えたものであることを認識し,さらに,前記(4)イ(イ)のとおり,化合物Pには,安定性等において引用発明よりも優れた異なる構造の結晶が存在し得ることを認識するものといえる。また,前記(4)ウ(イ)のとおり本願補正発明に係る結晶の製造方法は,本件優先日当時の技術常識であったのであるから,上記結晶の製造に当たり残留溶媒がほぼ生じなかったとしても,それは,当業者において予期し得ないものとまではいうことができない。したがって,原告らが主張する効果は,引用発明に接した当業者において予期し得ない,顕著なものとまでは認めるに足りないというべきである。」
と判断した。

【コメント】

特許庁は、本願発明は粉末X線結晶回折パターンを値によって限定したに過ぎないことからもともとの回折パターン図と引用発明の粉末X線結晶回折パターンが「ほぼ同じ」であることから、測定誤差等の技術常識を踏まえて、同一であるものと推認した。

この審決判断に対して、裁判所は、粉末X線回折パターンの比較による結晶の同定に当たっては回折角及び回折X線の相対強度は重要なパラメータであることを踏まえ、本願発明の剛体強度は異なるから同一ではないと判断した。

互いに現物を持ち寄って直接同時比較しない限り、回折パターンが全く同一なのか、したがって互いに同一の結晶形であるのかどうかの判断には困難を伴う場合があるところ、裁判所は進歩性の問題として結論を導いた。結晶形発明において、①クレームに記載された数値に対して限定的に発明を認定して引用発明との同一性を判断する方向性、および、②新たな結晶形発明を発見しても、既に同一有効成分について他の結晶形が知られている場合にはその進歩性のハードルが高いという方向性、は、これまでのいくつかの判決の流れと変わりはないと思われる(結晶形に関する過去全記事はこちら)。

本件発明の結晶は、レブラミド(Revlimid)®カプセルの有効成分であるレナリドミド水和物(Lenalidomide Hydrate)に関連するものである。レブラミド(Revlimid)®カプセルは、セルジーン(Celgene)社が創製した多発性骨髄腫及び5番染色体長腕部欠失を伴う骨髄異形成症候群を効能・効果とする抗造血器悪性腫瘍剤。本件の引用例はセルジーン(Celgene)社の出願(特表2007-504248)であった。セルジーン社の2016年Financial Information(CELGENE REPORTS FOURTH QUARTER AND FULL-YEAR 2016 OPERATING AND FINANCIAL RESULTS)によれば、2016年のREVLIMID®の売上は69億7400万ドル。

Mar 14, 2017

オゼックス(トスフロキサシントシル酸塩)製剤特許侵害訴訟で東和薬品と富山化学工業が和解

2017年3月13日付の東和薬品のプレスリリースによれば、東和薬品のニューキノロン系経口抗菌製剤トスフロキサシントシル酸塩細粒小児用 15%「トーワ」の製造販売行為が富山化学工業の製剤特許(特許第5799061号)を侵害するとして、富山化学工業は、特許権侵害差止請求訴訟を2016年3月7日付で東京地裁に提起していましたが(過去記事)、2017年3月9日付で裁判上の和解が成立したとのことです。東和薬品は今後も引き続きトスフロキサシントシル酸塩細粒小児用 15%「トーワ」を製造販売できる和解内容とのことです。


Mar 13, 2017

AbbVieアダリムマブ(ヒュミラ®) 用法用量特許 英国で無効判決

2017年3月3日付けの協和キリン富士フイルムバイオロジクス press releaseによると、協和キリン富士フイルムバイオロジクスは、ヒト型抗TNFαモノクローナル抗体製剤「アダリムマブ(Adalimumab)」バイオシミラー(開発番号:FKB327、先発薬:ヒュミラ(Humira)®)の製造販売承認申請に向けて準備しているところ、AbbVie社の「アダリムマブ」の用法用量の特許が公知の技術に照らして無効であるとして、2015年10月29日に当該特許の無効・確認訴訟を英国特許裁判所で提起していました。訴訟の過程で、AbbVie社は訴訟対象の同特許を取下げましたが、同裁判所は確認訴訟を継続する判決を2016年12月に下し、2017年3月3日付で、「アダリムマブ」の関節リウマチ、乾癬(かんせん)および関節症性乾癬の用法用量は公知または自明であるため特許性がないとの判決(Fujifilm Kyowa Kirin Biologics Company Ltd v Abbvie Biotechnology Ltd [2017] EWHC 395 (Pat) (03 March 2017))を下したとのことです。

アダリムマブ(Adalimumab)の英国での基本特許(EP 0,929,578)はSPC 含めて2018年10月15日に満了するため、その後も存続しているアダリムマブの用法用量特許がバイオシミラーの英国での販売の障壁となっていました。2016年度通年のヒュミラの全世界での売上高は営業ベースで160億7,800万ドル。

Mar 6, 2017

2017.02.02 「沢井・テバ・ホスピーラ v. イーライ リリー」 知財高裁平成27年(行ケ)10249; 平成28年(行ケ)10017; 平成28年(行ケ)10070

抗悪性腫瘍剤アリムタ®のビタミン療法特許知財高裁平成27年(行ケ)10249; 平成28年(行ケ)10017; 平成28年(行ケ)10070

【背景】

被告(イーライリリー)が保有する「新規な葉酸代謝拮抗薬の組み合わせ療法」に関する特許5102928について原告(沢井製薬、テバ、ホスピーラ)がした無効審判請求を不成立とした特許庁審決(無効2014-800039)に対して、原告が審決取消しを求めて本件訴訟を提起した。争点は、進歩性、サポート要件、実施可能要件。

請求項1:
葉酸とビタミンB12との組み合わせを含有するペメトレキセート二ナトリウム塩の投与に関連する毒性を低下しおよび抗腫瘍活性を維持するための剤であって,
ペメトレキセート二ナトリウム塩の有効量を,葉酸の約0.1mg~約30mgおよびビタミンB12の約500μg~約1500μgと組み合わせて投与し,該ビタミンB12をペメトレキセート二ナトリウム塩の第1の投与の約1~約3週間前に投与し,そして該ビタミンB12の投与をペメトレキセート二ナトリウム塩の投与の間に約6週間毎~約12週間毎に繰り返すことを特徴とする,該剤。
【要旨】

2017.02.02 「沢井・テバ・ホスピーラ v. イーライ リリー」 知財高裁平成28年(行ケ)10001; 平成28年(行ケ)10018; 平成28年(行ケ)10082

と内容は同じ。