Oct 14, 2017

塩野義 欧州特許は無効、メルク社のラルテグラビルに対する差止訴訟敗訴へ

2017年10月13日付け塩野義製薬のプレスリリース(メルク社とのHIVインテグラーゼ阻害薬に関する欧州特許庁審判部での係争について)によると、塩野義が保有するHIVインテグラーゼ阻害薬に関する欧州特許(EP1422218)につき、2017年10月11日、欧州特許庁審判部が、メルク社の主張を認め、当該欧州特許が無効である旨の審決(T1150/15)を出したとのことです。

当該欧州特許についてはメルク社が異議を申立てていましたが、2015年に欧州特許庁異議部が特許有効である旨の審決を出したため、メルク社がその審決を不服として不服申立を行っていました。

現在、塩野義は、当該欧州特許を利用してアイセントレス(Isentress)®(有効成分はラルテグラビルカリウム(raltegravir potassium))を販売するメルク社に対して、ドイツ、英国、オランダ、フランスで差止・損害賠償を求め提訴していますが、これらの国の訴訟でも、当該審決を受けて敗訴判決が出される見込みとのことです。

販売されている抗HIV薬アイセントレスの差止を求め、塩野義がメルク社を各国で提訴しましたが、結局、塩野義特許は無効である(MSDのアイセントレス®(ラルテグラビル) 英国特許訴訟で塩野義が敗訴)か、販売差止を認めない判決(アイセントレスを販売するMSDに塩野義特許の強制実施権が認められる(ドイツ))が出されており、欧州特許も無効審決という塩野義にとっては望ましくない結果となりました。

日本特許(第5207392号)については、メルク社が請求項1ないし3について特許無効審判を請求し特許庁は塩野義による訂正を認めた上で請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする審決を下しました(無効2015-800226)。現在は知財高裁に審決取消訴訟が提起されています(平成29年(行ケ)10172)。

参考:
関連記事:

Oct 12, 2017

興和による東和リバロ後発品の製造販売差止請求で東京地裁が容認判決

2017年10月11日の興和のプレスリリースによると、興和は東和薬品に対し、興和が保有する高コレステロール血症治療剤「リバロ錠」(一般名:ピタバスタチンカルシウム)」の医薬特許(特許第5190159号)の侵害を理由として、同社が製造販売する「リバロ」の後発医薬品である『ピタバスタチンCa・OD 錠 4mg「トーワ」』の製造販売の差し止めを求める訴訟を東京地裁に提起していましたが、2017年9月29日付で、興和の請求を全面的に認める判決が言い渡されたとのことです。

参考:
ピタバスタチンCa・OD 錠 4mg「トーワ」の組成:
1錠中の有効成分
日局 ピタバスタチンカルシウム水和物
(ピタバスタチンカルシウムとして4mg)

添加物
D-マンニトール、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、メタケイ酸アルミン酸Mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、タルク、黄色三二酸化鉄、酸化チタン、アスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)、香料、ステアリン酸Mg、その他3成分
特許第5190159号:
請求項1
次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;
(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;
を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤が、気密包装体に収容してなる医薬品。

請求項6
次の成分(A)及び(B):
(A)ピタバスタチン又はその塩;
(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;
を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤。
J-PlatPatの経過情報を見る限り、特許無効審判は請求されていない。

Oct 8, 2017

2017.08.08 「FONTEC R&D v. サラヤ」 知財高裁平成28年(行ケ)10269

数値限定発明のサポート要件: 知財高裁平成28年(行ケ)10269

被告(サラヤ)が保有する「高純度羅漢果配糖体を含有する甘味料組成物」に関する特許第3502587号の特許無効審判請求に対する一部無効・一部不成立審決のうち一部不成立部分の取消訴訟。争点は、サポート要件判断の誤りの有無。請求棄却。

本件発明:
甘味料組成物を調製するための羅漢果エキスであって,モグロサイドⅤ,モグロサイドⅠⅤ,11-オキソ-モグロサイドⅤおよびシアメノサイドⅠの合計含有量が,35重量%以上である,羅漢果エキス。
原告は、
「本件明細書に接した当業者は,本件4成分のうち1成分のみを含有する実施例2及び実験例1は,本件発明の実施例ではなく,成分の単離に関する記述と認識するにすぎず,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明の構成を満たすサンプルとして,4成分合計含有量が35.10重量%,53.00重量%,60.80重量%の例が記載されているにすぎないから,4成分合計含有量が「35重量%以上」という本件発明の全範囲(特に4成分合計含有量が60.80重量%を超えるもの)まで,これを拡張又は一般化することはできない。」
などと主張した。

裁判所は、平成17年(行ケ)10042号「偏光フィルムの製造法」大合議判決に言及して、
「本件明細書には,4成分合計含有量が35.10重量%~60.80重量%であるサンプルH~Jが,ショ糖の甘味質と類似した優れた甘味質を示す水溶液であることが開示されている上,4成分合計含有量が60.80重量%を超える範囲においては,本件4成分のいずれかを増加させることになるところ,前記(3)のとおり,本件4成分は,いずれも,本件味覚9要素のいずれにおいてもショ糖との乖離の程度は小さく,ショ糖と類似した優れた甘味質を有することが開示されているから,本件明細書に接した当業者は,4成分合計含有量が35重量%以上の羅漢果エキスは,ショ糖よりも少量で,ショ糖と同等の甘味強度を得ることができ,ショ糖と類似した優れた甘味質を示すものと理解することができる。
したがって,本件特許の請求項2に記載された本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり,サポート要件に適合するものと認められる。」
と判断した。

参考:

http://www.lakanto.jp/products/lakanto/


Oct 4, 2017

オキサリプラチン(解離シュウ酸事件)特許侵害差止訴訟 最高裁上告不受理

日本化薬は、2015年5月8日、日本化薬が製造販売している抗悪性腫瘍剤「オキサリプラチン点滴静注液50mg『NK』」、「オキサリプラチン点滴静注液100mg『NK』」、「オキサリプラチン点滴静注液200mg『NK』」について、デビオファーム社から特許権侵害に基づく製造販売の差止訴訟を提起され、2016年3月3日の東京地裁判決(2016.03.03 「デビオファーム v. 日本化薬」 東京地裁平成27年(ワ)12416)では、日本化薬の主張が認められませんでしたが、2016年12月8日、知財高裁は、東京地裁の判決を取り消し、デビオファーム社の請求をいずれも棄却するとの判決を言い渡しました(2016.12.08 「日本化薬 v. デビオファーム」 知財高裁平成28年(ネ)10031)。

2017年10月4日の日本化薬のpress releaseによると、この判決に対してデビオファーム社は、最高裁に上告していましたが、2017年10月3日、最高裁第三小法廷は、裁判官全員一致の意見で、デビオファーム社の上告を棄却するとともに、上告不受理決定をしたとのことです。

参考:

Oct 1, 2017

2017.07.27 「 中外製薬 v. 岩城製薬・高田製薬・ポーラファルマ」 東京地裁平成27年(ワ)22491

特許権侵害に当たる後発医薬品薬価収載に伴う先発医薬品の薬価引下げによる損害賠償東京地裁平成27年(ワ)22491

【背景】

「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法」とする特許権(特許第3310301号)を第三者(コロンビア大学)と共有する原告(中外製薬)が、マキサカルシトール製剤を販売等する被告ら(岩城製薬・高田製薬・ポーラファルマ)に対し、これらの行為が上記特許権の均等侵害に当たるものであるところ、
  • 被告ら製品の販売により原告製品(オキサロール軟膏)の市場におけるシェアが下落し、損害を被ったとして、民法709条ないし特許法102条1項に基づき、被告らに対し、それぞれ損害賠償金及び遅延損害金の支払、
  • 被告ら製品の薬価収載により原告製品(オキサロール軟膏及びオキサロールローション)の薬価が下落し、その取引価格も下落したことにより、損害を被ったとして、民法709条に基づき、被告らに対し、連帯して損害賠償金及び遅延損害金の支払
を、それぞれ求めた事案である。

【要旨】

先発医薬品メーカーの特許を侵害していた後発医薬品メーカーが後発医薬品を薬価収載したことと先発医薬品薬価引下げによる損害との間に因果関係が認められ、結果、原告先発医薬品メーカーによるその損害賠償請求(下記争点(4))が認められた判決である。

主 文(他略)
1 被告岩城製薬は,原告に対し,2億0363万2798円・・・を支払え。
2 被告高田製薬は,原告に対し,1億1815万9458円・・・を支払え。
3 被告ポーラファルマは,原告に対し,1億6822万3686円・・・を支払え。
4 被告らは,原告に対し,連帯して5億7916万9686円・・・を支払え。
裁判所の判断(抜粋)

1 争点(1)(本件製造方法について,本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの「特段の事情」の有無)について
「乙A10にはトランス体のビタミンD構造を出発物質とすることを内容とする本件発明と同一の構成の発明が記載されているとは認められず,被告らの上記主張は前提を欠くものであるから,原告が,本件特許出願の際に,本件製造方法(トランス体のビタミンD構造を出発物質とするマキサカルシトールの製造方法)を特許請求の範囲から意識的に除外したものに当たるなどの特段の事情が存するとはいえない。・・・本件製法方法は本件発明の構成と均等であるものと認められる。」
2 争点(2)(原告が本件特許権の共有者の1人であることに関し,原告が被告らに対して損害賠償請求できる範囲)について
「原告は,自らが有する本件特許権の持分2分の1に基づき,特許権侵害に係る逸失利益の損害賠償請求権を有しているほか,・・・コロンビア大学の共有持分2分の1について独占的通常実施権を有するから,被告らによる本件特許権侵害は,原告に対する上記独占的通常実施権の積極的債権侵害に当たるといえ,原告は被告らに対し,同侵害行為による逸失利益の損害賠償を請求することができる。・・・なお,原告・コロンビア大学間の本件ライセンス契約においては,・・・既に原告が被告らに対して訴訟を提起した本件において,コロンビア大学が,別途,被告らに対して損害賠償請求し,被告らがコロンビア大学に二重払いしなければならないリスクがあるとは解されない。・・・以上によれば,原告は,被告らに対し,本件特許権の侵害によって被った損害(独占的通常実施権者として受けた損害も含む。)の全額について賠償を請求し得る。」
3 争点(3)(外用ビタミンD3製剤の市場でのオキサロール軟膏のシェア喪失による原告の損害額)について
「被告らは,オキサロール軟膏には複数の競合品(ボンアルファ,ボンアルファハイ,ドボネックス)があるところ,被告製品は,その性能が上記各競合品と同等であることに加え,安価であるため,原告製品だけでなく,上記各競合品のシェアをも奪ったものであるとし,上記各競合品は,乾癬の治療薬としての外用ビタミンD3製剤の市場において42%のシェアを有しているから,42%分について推定を覆滅すべきである,と主張する。
確かに,・・・ボンアルファ,ボンアルファハイ及びドボネックスは,いずれもオキサロール軟膏の競合品であって,被告製品は,オキサロール軟膏だけでなく,上記各競合品のシェアをも一定程度奪っていたものと認められる。・・・他方で,・・・オキサロール軟膏や被告製品,上記各競合品は,いずれも医師の処方箋を必要とする薬品であり,・・・オキサロール軟膏から被告製品に変更する場合と比較すると,上記各競合品から被告製品に変更するのは容易ではないというべきであって,上記各競合品(ボンアルファ,ボンアルファハイ,ドボネックス)が,乾癬の治療薬としての外用ビタミンD3製剤の市場で42%程度のシェアを有していたとしても,被告製品が同シェアをそのまま代替したものとは到底認められない。以上の諸事情を総合的に考慮すると,被告製品は,上記各競合品のシェアを一定程度奪ったものとして,特許法102条1項本文による推定が覆滅される割合を10%と認定するのが相当である。以上を前提とすると,前記(2)で計算した金額につき,10%分を控除した後の金額が,シェア喪失による原告の損害額となる。なお,民法709条のみに基づく請求についても,特許法102条1項に基づき計算した額を超える損害額は認められない。」
4 争点(4)(原告製品の取引価格下落による原告の損害額)について
「原告は,新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度によって,被告製品が薬価収載されるまでは,現に原告製品について薬価の維持という利益を得ていたところ,後発品である被告製品が薬価収載されたことにより,平成26年4月1日に原告製品の薬価が下落したものである。この薬価の下落は被告製品の薬価収載の結果であり,本件特許権の侵害品に当たる被告製品が薬価収載されなければ,原告製品の薬価は下落しなかったものと認められるから,被告らは,被告製品の薬価収載によって原告製品の薬価下落を招いたことによる損害について賠償責任を負うべきである。被告らは,そもそも薬価の維持は保護に値する利益ではなく,厚生労働省の薬価政策による結果にすぎないとも主張するが,新薬創出・適応外薬解消等促進加算という制度が実際に存在し,しかも,同制度に基づく加算は厚生労働省が裁量で行うものではなく,所定の要件を充たす新薬であれば一律に同制度による加算を受けられる以上,これは法律上保護される利益というべきであって,被告らの上記主張は採用できない。・・・現に,後記ウのとおり,原告・マルホ間での原告製品の取引価格の下落率は,薬価の下落率とほぼ同一である。以上によれば,原告・マルホ間の取引価格の下落分は,その全てが被告製品の薬価収載と相当因果関係のある損害と認められる。」
5 争点(5)(被告らの過失の有無)について
「被告らは,特許法103条は均等侵害を前提としておらず,均等侵害の場合に侵害者の過失を推定することは,立法趣旨にも反するから,均等侵害の場合に同条は適用されない旨主張する。しかしながら,均等侵害も特許権侵害に当たることに変わりはないところ,特許法103条は「他人の特許権…を侵害した者は,その侵害の行為について過失があったものと推定する。」と規定し,文言侵害と均等侵害とを何ら区別していないし,同条について均等侵害が成立する場合にその適用が排除されることを裏付けるような立法趣旨を認めるに足りる証拠もないから,本件のような均等侵害の事案においても,特許法103条が適用され,被告らの過失が推定されるものと解すべきである。」
6 争点(6)(過失相殺の成否)について
「本件全証拠によっても,被告らについて過失の推定を覆滅させるような事情が存在するとは認めるに足りず,被告らの主張は採用できない。」
7 争点(7)(特許法102条4項後段の適用の有無)について
「被告らは,本件において被告らには故意・重過失がない上,原告が特許出願時に容易にクレームに記載し得る技術をクレームに記載しなかった以上,特許法102条4項後段を適用して損害額を減額すべき旨主張する。しかし,前記5のとおり,被告らは,いずれも医薬品の製造販売等を業としているのであるから,その販売する医薬品の特許権侵害については高度の注意義務を負うというべきところ,被告製品の販売前に,本件特許の内容や本件製造方法が本件特許権を侵害する可能性について慎重に検討したならば,本件製造方法が本件発明の構成と均等であると判断される可能性について十分認識可能であったこと,前記6のとおり,原告に特許請求の範囲の記載について過失があったとまでは認められないこと等を考慮すれば,本件において,特許法102条4項後段を適用して原告の損害額を減額すべきほどの事情は見当たらず,被告らの上記主張は採用できない。」
【コメント】

注目すべき点は、後発品3社による侵害品の販売によって、中外製薬のオキサロール軟膏の販売が失われたことによる損害についての後発品3社の賠償責任を認めただけでなく、オキサロール軟膏及びオキサロールローションの薬価加算分の引き下げについて後発品3社の賠償責任も認められた点。2017年7月27日付の中外製薬のニュースリリース(「オキサロール®軟膏製法特許侵害に対する損害賠償請求訴訟の判決に関するお知らせ」)によると、薬価算定において新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象だった中外製薬のオキサロール軟膏及びオキサロールローションは、オキサロール軟膏の後発品の参入により、本来の時期より早く加算分の引き下げが行われた。本件は、薬価加算分の引き下げに起因して先発医薬品企業に生じた損害について判断された初めての事例とのこと。

後発医薬品メーカーは、特許侵害判断される可能性が残されている段階で、たとえそれが物質特許や用途特許ではなく製法特許のような特許であったとしても、薬価収載して販売に踏み切ることには、今回のような薬価引下げ分の損害賠償という金銭的なリスクも伴い得る、ということが判決上でも明らかとなったといえる。

過去に、セフゾン(Cefzon、一般名:セフジニル(Cefdinir)、経口用セフェム系製剤)の特許侵害訴訟に勝訴したアステラス製薬が、大洋薬品に対して、セフゾン特許存続期間中に大洋薬品がした後発品薬価申請行為が不法行為であるとしてセフゾンの2006年4月の薬価改定時の特例引下げ(通常改定に加えて8%の追加引下げ)分を逸失利益とする損害賠償を請求した訴訟はあった(2008.03.05 「アステラス v. 大洋薬品 セフゾン訴訟和解へ」; アステラス プレスリリース: 2007.08.09 経口用セフェム系製剤「セフゾン®」の損害賠償請求提訴のお知らせ)。しかし、この事件は、大洋薬品がアステラス製薬へ和解金を支払うことなどを内容とする和解契約を締結したことで一連の係争は終結しており(アステラス プレスリリース: 2008.03.05 大洋薬品工業との経口用セフェム系製剤「セフゾン®」に関する訴訟等の和解のお知らせ)、特許権侵害に当たる後発医薬品薬価収載に伴う先発医薬品の薬価引下げによる損害賠償請求を認めるという判決に至ったケースはこれまでなかった。

参考:

Sep 28, 2017

田辺三菱 タリオン®後発品薬価収載希望書提出したジェネリックメーカーに対し特許侵害差止仮処分命令申立て

田辺三菱製薬は、アレルギー性疾患治療剤「タリオン®(有効成分: ベポタスチンベシル酸塩)」について、同製品の後発品薬価収載希望書を提出した東和薬品、シオノケミカルおよび大興製薬に対して、田辺三菱が保有する物質特許等の侵害行為の差止めを求める仮処分命令の申立てを2017年9月15日付で東京地裁および大阪地裁に行ったとのことです。

田辺三菱および宇部興産は、ベポタスチンベシル酸塩を有効成分とする医薬品に関し、下記日本特許を有しています。下記物質特許(第4704362号)と医薬用途特許(第4562229号)についてだけ見れば、いずれも2017年12月19日に存続期間満了を迎えることから、特許期間満了後のそれら後発品の製造販売行為自体は特許権の効力が及ばないことになります。特許期間満了後の製造販売を目的として特許期間中に後発品薬価収載(12月)に向けて活動する行為が、侵害又は侵害のおそれに該当するとして、裁判所が差止仮処分命令申立てを認めるかどうかが気になるところです。
参考:


Sep 24, 2017

2017.07.27 「デビオファーム v. 武田テバファーマ」 知財高裁平成29年(ネ)10016

出願経過を参酌して「オキサリプラティヌムの水溶液」の技術的範囲を判断: 知財高裁平成29年(ネ)10016

「オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」に関する特許第3547755号(本件特許)を有する控訴人(デビオファーム)が、被控訴人(武田テバファーマ)の製造、販売する各製品(被控訴人各製品)は本件発明の技術的範囲に属し、かつ、存続期間の延長登録を受けた本件特許権の効力は被控訴人各製品の生産等に及ぶ旨主張して、被控訴人各製品の生産等の差止め及び廃棄を求めるとともに、損害賠償請求を追加した事案。原判決は、存続期間が延長された本件特許権の効力が被控訴人各製品には及ばないとして控訴人の請求を棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した。

原審:
知財高裁(第2部)は、
「延長登録された特許権の効力を及ぼすに当たっては,相手方の製品が特許発明の技術的範囲に属することが前提となるところ,本件特許に係る構成要件A③の「オキサリプラティヌムの水溶液からなり」との文言は,オキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であって,他の添加剤等の成分を含まないことを意味するものと解されるから,オキサリプラチンと注射用水のほか,有効成分以外の成分として乳糖水和物を含有する被控訴人各製品は,同構成要件を充足せず,したがって,被控訴人各製品に対し延長登録された本件特許権の効力は及ばない」
と判断した。控訴棄却。以下、判決抜粋。
「本件明細書の前記記載や上記出願経過を総合的にみると,本件発明の課題は,公知の有効成分である「オキサリプラティヌム」について,承認された基準に従って許容可能な期間医薬的に安定であり,凍結乾燥物から得られたものと同等の化学的純度及び治療活性を示す,そのまま使用できるオキサリプラティヌム注射液を得ることであり,その解決手段として,オキサリプラティヌムを1~5mg/mlの範囲の濃度と4.5~6の範囲のpHで水に溶解したことを示すものであるが,更に加えて,「該水溶液が,酸性またはアルカリ性薬剤,緩衝剤もしくはその他の添加剤を含まない」ことをも同等の解決手段として示したものである。以上によると,本件発明の特許請求の範囲の記載の「オキサリプラティヌムの水溶液からなり」(構成要件A③)との文言は,本件発明がオキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であって,他の添加剤等の成分を含まないことを意味すると解するのが相当である。そうすると,被控訴人各製品は,オキサリプラチンと注射用水のほか,有効成分以外の成分として,乳糖水和剤を含有するものであるから,被控訴人各製品は,構成要件A③を充足しないものというべきである。
・・・したがって,被控訴人製品は,その余の構成要件について検討するまでもなく,本件発明の技術的範囲に属しないので,延長登録された本件特許権の効力は,被控訴人各製品に及ばない。」
上記のとおり、知財高裁第2部は、延長された特許権の効力について判断した知財高裁大合議判決(2017.01.20 「デビオファーム v. 東和薬品」 知財高裁平成28年(ネ)10046)とは異なり、知財高裁第3部の判決(2017.07.12 「デビオファーム v. ホスピーラ・ファイザー」 知財高裁平成29年(ネ)10009・平成29年(ネ)10023)と同様に、延長された特許権の効力について判断した地裁判決について触れることなく、そもそも被控訴人各製品は本件特許発明の技術的範囲に属しないと判断して本事件を決着させた。

Sep 19, 2017

2017.07.20 「デビオファーム v. 沢井製薬」 知財高裁平成29年(ネ)10015

オキサリプラチンが分解して生じた解離シュウ酸は「緩衝剤」には当たらない知財高裁平成29年(ネ)10015

「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許権(第4430229号)を有する控訴人(一審原告:デビオファーム)が、被控訴人(一審被告:沢井製薬)に対し、被控訴人各製品の生産等が特許権侵害に当たると主張して、被控訴人ら各製品の生産等の差止及び廃棄を求めた事案。原判決は、「本件発明等における『緩衝剤』には,外部から添加したシュウ酸のみならず,オキサリプラチン水溶液において分解して生じるシュウ酸も含まれる」という原告の主張を前提とすると、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるとして、控訴人の各請求をいずれも棄却したため、控訴人は本件控訴を提起した。
知財高裁(第2部)は、
「本件発明における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないものと解されるから,解離シュウ酸を含むのみで,シュウ酸が添加されていない被控訴人各製品は,構成要件B,F及びGの「緩衝剤」を含有するものではなく,したがって,本件発明の技術的範囲に属せず,本件訂正発明の技術的範囲にも属しない」
と判断し、原判決は結論において相当であるから、本件控訴を棄却した。

原審: 2016.12.20 「デビオファーム v. 沢井製薬」 東京地裁平成27年(ワ)28698

Sep 17, 2017

2017.07.20 「デビオファーム v. 武田テバファーマ」 知財高裁平成29年(ネ)10014

オキサリプラチンが分解して生じた解離シュウ酸は「緩衝剤」には当たらない知財高裁平成29年(ネ)10014

「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許権(第4430229号)を有する控訴人(一審原告:デビオファーム)が、被控訴人(一審被告:武田テバファーマ)に対し、被控訴人各製品の生産等が特許権侵害に当たると主張して、被控訴人ら各製品の生産等の差止及び廃棄を求めた事案。原判決は、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるとして、控訴人の各請求をいずれも棄却したため、控訴人は本件控訴を提起した。
知財高裁(第2部)は、
「本件発明における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないものと解されるから,解離シュウ酸を含むのみで,シュウ酸が添加されていない被控訴人各製品は,構成要件B,F及びGの「緩衝剤」を含有するものではなく,したがって,本件発明の技術的範囲に属せず,本件訂正発明の技術的範囲にも属しない」
と判断し、原判決は結論において相当であるから、本件控訴を棄却した。

原審: 2016.12.20 「デビオファーム v. 武田テバファーマ」 東京地裁平成27年(ワ)28467

Sep 9, 2017

中外がハーセプチン®バイオシミラー承認申請した日本化薬に対し用途特許侵害で製造販売差止訴訟提起

2017年9月8日付の中外製薬(株)プレスリリースによると、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体「ハーセプチン®注射用60」および「ハーセプチン®注射用150」のバイオ後続品(バイオシミラー)の製造販売承認申請者である日本化薬(株)に対し、ロシュ・グループのジェネンテック社が保有する用途特許の侵害を理由として、専用実施権者である中外製薬は、ジェネンテック社とともに、8月17日付で東京地裁にバイオ後続品の製造販売等の差し止めを求める訴訟を提起し、併せて仮処分命令の申立てを行ったとのことです。

日本新薬は、韓国セルトリオン社と共同開発を進めてきたトラスツズマブ(開発コード CT-P6)のバイオ後続品の製造販売承認申請を2017年4月11日に行っており、承認はまだ得られていません(日本新薬
press release: 2017.04.11 「トラスツズマブ(遺伝子組換え)製剤のバイオ後続品(バイオシミラー)の製造販売承認申請について」)。

中外製薬は、日本新薬のバイオ後続品はまだ承認されていない(従って、薬価収載・製造販売には至っていない)現時点で、差し止め請求及び仮処分命令申立という訴訟提起に踏み切ったことになります。


ハーセプチン®(Herceptin®)について

ハーセプチン®(Herceptin®)注射用は、ジェネンテック社が創製したHER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type 2:ヒト上皮増殖因子受容体 2 型)の細胞外領域に結合し、HER2過剰発現ヒト腫瘍細胞の増殖を抑制する抗HER2ヒト化モノクローナル抗体「トラスツズマブ(Trastuzumab)(遺伝子組換え)」を有効成分とする抗悪性腫瘍剤。米国において1992年より臨床試験が開始され、1998年乳癌治療薬としては世界で最初のヒト化モノクローナル抗体治療薬として、FDAで認可されました。国内では2001年4月4日承認され、HER2過剰発現が確認された乳癌、HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌に効能・効果が認められています。用法及び用量は下記の通りです。
HER2過剰発現が確認された乳癌にはA法又はB法を使用する。HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌には他の抗悪性腫瘍剤との併用でB法を使用する。
A法: 通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には4mg/kg(体重)を、2回目以降は2mg/kgを90分以上かけて1週間間隔で点滴静注する。
B法: 通常、成人に対して1日1回、トラスツズマブ(遺伝子組換え)として初回投与時には8mg/kg(体重)を、2回目以降は6mg/kgを90分以上かけて3週間間隔で点滴静注する。
なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。

ジェネンテックが保有する特許について

ジェネンテックが保有する「抗ErbB2抗体を用いた治療のためのドーセージ」に関する特許権(第5818545号)が2015年10月9日に設定登録がなされました。存続期間満了日は2020年8月25日。2016年6月にセルトリオンが特許無効審判請求をし、2017年3月にはファイザーが参加人として加わりましたが、特許庁は請求は成り立たないとの審決(無効2016-800071)を2017年7月に下しています。また、同特許に対して、別途ファイザーが2017年5月に無効審判を請求しています(無効2017-800062 )。今回の中外製薬のプレスリリースにある「ジェネンテック社が保有する用途特許」とはおそらく、少なくとも、この特許のことではないかと推測され、特許の有効性や侵害訴訟の行方など、今後の動向が注目されます。

特許第5818545号の請求項1:
(i)抗ErbB2抗体huMab4D5-8を含有し、8mg/kgの初期投与量と6mg/kg量の複数回のその後の投与量で前記抗体を各投与を互いに3週間の間隔をおいて静脈投与することにより、HER2の過剰発現によって特徴付けられる乳癌を治療するための医薬組成物が入っている容器、及び(ii)前記容器に付随するパッケージ挿入物を具備するパッケージ。

参考: