Aug 17, 2017

2017.07.12 「デビオファーム v. ホスピーラ・ファイザー」 知財高裁平成29年(ネ)10009・平成29年(ネ)10023

出願経過を参酌して「オキサリプラティヌムの水溶液」の技術的範囲を判断: 知財高裁平成29年(ネ)10009・平成29年(ネ)10023

「オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」に関する特許第3547755号(本件特許1)及び「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許第4430229号(本件特許2)を有する控訴人(デビオファーム)が、被控訴人(ホスピーラ)の製造、販売する各製品(被告各製品)は上記各特許の特許請求の範囲請求項1記載の発明(本件発明1及び本件発明2)の技術的範囲に属する旨主張して、被控訴人に対し、被告各製品の生産等の差止め及び廃棄を求めた事案。原判決は、被告各製品は,延長された本件特許権1の効力が及ぶものではなく、また、本件発明2の技術的範囲に属しないとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。

原審:

知財高裁(第3部)は、被告各製品は本件発明1の構成要件1Cを充足せず,また,本件発明2の構成要件2B,2F及び2Gを充足しないから,その余の構成要件について検討するまでもなく,被告各製品は,本件発明1及び2のいずれの技術的範囲にも属しないと判断した。控訴棄却。

1 構成要件1C(オキサリプラティヌムの水溶液からなり)の充足性)について
「・・・本件明細書1の記載及び本件特許1の出願経過を総合的にみれば・・・本件発明1の特許請求の範囲における「オキサリプラティヌムの水溶液からなり」(構成要件1C)とは,本件発明1がオキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であって,他の添加剤等の成分を含まないものであることを意味すると解するのが相当である。
・・・被告各製品は,オキサリプラティヌムと水のほか,酒石酸及び水酸化ナトリウムが添加されているものであるから,構成要件1Cを充足しない。」
2 構成要件2B,2F及び2Gの「緩衝剤」の充足性)について
「本件発明2における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないものと解されるべきである。したがって,解離シュウ酸を含むのみで,シュウ酸又はそのアルカリ金属塩が添加されていない被告各製品は,構成要件2B,2F及び2Gの「緩衝剤」を含有せず,これらの構成要件を充足しない。」
知財高裁(第3部)は、延長された特許権の効力について判断した地裁判決については触れることなく、地裁では判断しなかった構成要件1Cの充足性の争点も含めて、そもそも被告各製品は本件特許発明の技術的範囲に属しないと判断して決着させた。


Aug 16, 2017

2017.07.11 「デビオファーム v. ナガセ医薬品・日本ケミファ」 知財高裁平成29年(ネ)10034

オキサリプラチンが分解して生じた解離シュウ酸は「緩衝剤」には当たらない: 知財高裁平成29年(ネ)10034

「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許権(第4430229号)を有する控訴人(一審原告:デビオファーム)が、被控訴人(一審被告:ナガセ医薬品)(日本ケミファは補助参加人)に対し、被控訴人各製品の生産等が特許権侵害に当たると主張して、被控訴人各製品の生産等の差止及び廃棄を求めた事案。原判決は、本件特許は進歩性欠如により無効にされるべきものであるとして控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人は本件控訴を提起した。

知財高裁(第4部)は、
「争点(1)(技術的範囲への属否)について,本件各発明における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないものと解されるところ,解離シュウ酸を含むのみで,シュウ酸が添加されていない被告製品は,本件各発明の技術的範囲に属するものではないから,控訴人の請求はいずれも棄却すべき」
と判断し、請求を棄却した原判決は結論において相当であるから、本件控訴を棄却した。

参考:

Aug 11, 2017

アクテムラの追加ロイヤルティ支払い求め英国MRCが中外に対して仲裁申立

2017年8月10日付の中外製薬ニュースリリースによると、英国Medical Research Council(MRC)およびLifeArcは中外製薬に対して、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体『アクテムラ(Actemra)®(有効成分: トシリズマブ(tocilizumab))』の開発に際し締結した1990年8月15日付の研究協力契約に関して契約義務違反があると主張し、当該契約に基づく追加のロイヤルティの支払いを求め、2017年5月10日、英国にて仲裁を申し立てたとのことです。

今後の見通しとして、中外製薬は、申立人の主張は無効だと考えており、仲裁の場において、積極的に反論を行っていく方針とのことです。

アクテムラ(Actemra)®(有効成分: トシリズマブ(tocilizumab))は、国内で開発された IgG1サブクラスのヒト化抗ヒトインターロイキン 6(IL-6)レセプターモノクローナル抗体。遺伝子組換え技術により、可変領域の中でも特に抗原との親和性が高い相補性決定領域(CDR)をマウス型ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体とし、その他の部分をヒトIgG1 としてチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いて創製されました。1990年に開始された英国MRCとの共同研究で中外製薬は研究員を派遣し抗体ヒト化技術を習得、結果ヒト化抗体であるトシリズマブの作製に成功したとされています。

参考:

中外製薬 press release: 2017.08.10 「当社に対する仲裁申立に関するお知らせ




Aug 10, 2017

2017.07.11 「デビオファーム v. マイラン」 知財高裁平成29年(ネ)10013

オキサリプラチンが分解して生じた解離シュウ酸は「緩衝剤」には当たらない: 知財高裁平成29年(ネ)10013

「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許権(第4430229号)を有する控訴人(一審原告:デビオファーム)が、被控訴人(一審被告:マイラン)に対し、被控訴人各製品の生産等が特許権侵害に当たると主張して、被控訴人各製品の生産等の差止及び廃棄を求めた事案。原判決は、被控訴人ら各製品はいずれも本件特許発明の技術的範囲に属しないとして控訴人の各請求をいずれも棄却したため、控訴人は本件控訴を提起した。

知財高裁(第4部)は、
「争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について,本件発明における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないものと解されるところ,解離シュウ酸を含むのみで,シュウ酸が添加されていない被告製品は,構成要件B,F及びGを充足せず,本件特許発明の技術的範囲に属するものではないから,控訴人の請求は棄却すべき」
と判断し、請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却した。

原審: 2016.12.06 「デビオファーム v. マイラン」 東京地裁平成27年(ワ)29001

Aug 9, 2017

2017.06.29 「デビオファーム v. 共和クリティケア」 知財高裁平成29年(ネ)10008

オキサリプラチンが分解して生じた解離シュウ酸は「緩衝剤」には当たらない: 知財高裁平成29年(ネ)10008

「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許権(第4430229号)を有する控訴人(一審原告:デビオファーム)が、被控訴人(一審被告:共和クリティケア)に対し、被控訴人各製品の生産等が特許権侵害に当たると主張して、被控訴人ら各製品の生産等の差止及び廃棄を求めた事案。原判決は、被控訴人各製品はいずれも本件特許発明の技術的範囲に属しないとして控訴人の各請求をいずれも棄却したため、控訴人は本件控訴を提起した。
知財高裁(第2部)は、
「当審における主張及び立証を踏まえても,本件発明における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないものと解されるから,解離シュウ酸を含むのみで,シュウ酸が添加されていない被控訴人各製品は,構成要件B,F及びGの「緩衝剤」を含有するものではなく,したがって,本件発明又は本件訂正発明の技術的範囲に属しない」
と判断し、原判決は相当であるから、本件控訴を棄却した。

原審: 2016.12.07 「デビオファーム v. 共和クリティケア」 東京地裁平成27年(ワ)29158

Aug 8, 2017

2017.06.29 「デビオファーム v. 第一三共エスファ・富士フイルムファーマ・ニプロ」 知財高裁平成29年(ネ)10010

オキサリプラチンが分解して生じた解離シュウ酸は「緩衝剤」には当たらない知財高裁平成29年(ネ)10010

「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許権(第4430229号)を有する控訴人(一審原告:デビオファーム)が、被控訴人ら(一審被告:第一三共エスファ、富士フイルムファーマ、ニプロ)に対し、被控訴人ら各製品の生産等が特許権侵害に当たると主張して、被控訴人各製品の生産等の差止及び廃棄を求めた事案。原判決は、被控訴人ら各製品はいずれも本件特許発明の技術的範囲に属しないとして控訴人の各請求をいずれも棄却したため、控訴人は本件控訴を提起した。

知財高裁(第2部)は、
「当審における主張及び立証を踏まえても,本件発明1における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないものと解されるから,解離シュウ酸を含むのみで,シュウ酸が添加されていない被控訴人ら各製品は,いずれも,構成要件B,F及びGの「緩衝剤」を含有するものではなく,したがって,本件発明1又は本件訂正発明1~の各技術的範囲に属しない」
と判断し、原判決は相当であるから、本件控訴を棄却した。

原審: 2016.12.02 「デビオファーム v. 第一三共エスファ・富士フイルムファーマ・ニプロ」 東京地裁平成27年(ワ)28699・平成27年(ワ)28848・平成27年(ワ)29004

Aug 7, 2017

2017.06.28 「ヤクルト・デビオファーム v. 日本化薬」 知財高裁平成28年(ネ)10112

オキサリプラチンが分解して生じた解離シュウ酸は「緩衝剤」には当たらない: 知財高裁平成28年(ネ)10112

「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許権(第4430229号)を有するデビオファーム及び専用実施権者であるヤクルト(控訴人ら)が、被控訴人(日本化薬)に対し、被控訴人各製品の生産等が特許権侵害に当たると主張して、損害賠償支払いを求めた事案。原判決は、被控訴人各製品は本件特許発明1及び2の技術的範囲に属しないとして控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らは本件控訴を提起した。

知財高裁(第3部)は、
「争点1-1(構成要件1B,1F及び1Gの充足性)について,本件発明1における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないものと解されるから,解離シュウ酸を含むのみで,シュウ酸又はそのアルカリ金属塩が添加されていない被告各製品は,構成要件1B,1F及び1Gの「緩衝剤」を含有するものではなく,これらの構成要件を充足しない~以上によれば~被告各製品は,いずれも本件発明1の技術的範囲に属しない。」
と判断し、請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却した。

参考:


Aug 1, 2017

2017.06.22 「X v. 特許庁長官」 知財高裁平成28年(行ケ)10141

プロダクト・バイ・プロセス・クレームの「不可能・非実際的事情」が明らかでないと判断された事例: 知財高裁平成28年(行ケ)10141

【背景】

「苦味マスキング食材,及び苦味マスキング方法」に関する特許出願(特願2011-185374)の拒絶審決(不服2014-5021)取消訴訟である。主な争点は、①本願発明と引用発明との相違点は実質的な相違点ではないとした新規性判断の誤りの有無、②プロダクト・バイ・プロセス・クレームの「不可能・非実際的事情」が明らかでないとした明確性要件の判断の誤りの有無である。

請求項1:
可食物の苦味をマスキングする作用を有する無塩可溶性可食凝集剤を有効成分とすることを特徴とし,及び,さらに,前記可食凝集剤は,凝集作用のないナトリウムやカリウムやマグネシウム等の水酸化物は無効であり,凝集奇特作用を有する水酸化カルシウムを主成分とすることを特徴とする,pH測定の為に何度も水に溶解が不可欠で,かつ非常に変動しやすいpHの調節限定など非常に不安定で手間がかかる面倒な工程をなんら必要とせずに,単に混ぜるだけで有効な,苦い可食物の苦味を奇特強力にマスキングするものであることを特徴とする,苦味マスキング剤。
請求項5:
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の苦味マスキング剤を使うことを特徴とする苦味マスキング方法。
請求項11:
請求項5乃至請求項10のいずれか1項の方法を用いて製造されたことを特徴とする可食物。
【要旨】

請求棄却。

1.取消事由1(新規性判断の誤り)について

裁判所は、本願発明1と引用発明(ポリフェノールを含有する食品に添加してポリフェノールの渋味,苦味または収斂味を軽減する水酸化カルシウム)との相違点1~4は、いずれも実質的に相違するということはできないから、本願発明1は引用発明であると判断し、本願発明1は新規性がないとした。

原告は、
「引用発明の実施例は,水酸化ナトリウムと重曹のみであり,水酸化カルシウムは,いろいろなアルカリとして列挙されているうちの一つにすぎない」
と主張したが、裁判所は、
「引用文献には,前記(1)のとおり,ポリフェノールの渋味等の軽減の機序として,ポリフェノールを,水酸化ナトリウム,水酸化カルシウム,水酸化マグネシウム及び水酸化カリウムより成る群から選ばれるアルカリを用いて,ポリフェノールのナトリウム塩,カルシウム塩,マグネシウム塩又はカリウム塩とすることが記載されているとともに,水酸化ナトリウムを用いた実施例により,ポリフェノールの渋味等の軽減効果が得られたことが記載されているから,このような記載に接した当業者は,引用文献に水酸化カルシウムの実施例の記載がなくても,ポリフェノールに水酸化ナトリウムに代えて水酸化カルシウムを添加した場合にも,ポリフェノールがポリフェノールのカルシウム塩となることにより,渋味等の軽減効果が得られるという技術的思想を理解することができる。したがって,引用文献に水酸化カルシウムの実施例の記載がないことをもって,引用文献から引用発明を認定した本件審決が誤りであるということはできない。原告の主張は,理由がない。」
と判断した。

2.取消事由2(明確性要件の判断の誤り)について

裁判所は、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームにおいて特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか又はおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在するときに限られると解するのが相当である、という最高裁判決(平成24年(受)第1204号)を参照しつつ、
「請求項11は,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合に当たる。そして,本願明細書には,不可能・非実際的事情について何ら記載がなく,当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであることを認めるに足りる証拠もない。・・・そうすると・・・請求項11の記載は,特許法36条6項2号所定の「発明が明確であること」を充足しないから,本願は,全体として特許を受けることができない。」
と判断した。

原告は、
「『不可能・非実際的事情』が存在することの主張・立証をする。出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であり,かつ,およそ実際的でないという事情である。つまり,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが,当方にとって,全く不可能であり,かつ,当方にとって,全く実際的でないという事情である。また,本願明細書[0008]に『新しいマスキング方法を提供する』と,明記してある。」
と主張した。

しかし、裁判所は、
「本願明細書の【0008】には,「新しい苦味マスキング剤及び方法を提供する事を目的とする。」と記載されているが,この記載が,不可能・非実際的事情を直ちに基礎付けるものでないことは明らかであり,原告の上記主張によっても,不可能・非実際的事情が存在するとは認められない。」
と判断した。

また、原告は、
「水酸化カルシウムによる苦味マスキングの機序が,動植物体内の連続反応の様々な locus(loci)に係っていると推測され,これを解明することができないことが,不可能・非実際的事情に当たる」
旨主張した。

しかし、裁判所は、
「水酸化カルシウムによる苦味マスキングの機序を特定することが困難であるとしても,請求項11の「可食物」をその構造又は特性により直接特定するに当たり,このような機序を記載しなければならないものとは認められないから,原告主張の機序の特定が困難であるという事情は,不可能・非実際的事情を基礎付けるものとはいえない。」
と判断した。

【コメント】

1.新規性判断について

原告は、引用文献に記載された「水酸化カルシウム」はいろいろなアルカリとして列挙されているうちの一つにすぎないと主張したが、裁判所は、引用文献の記載に接した当業者は「水酸化カルシウム」を添加した場合にも渋味等の軽減効果が得られるという技術的思想を理解することができるとして原告の主張を退けた。新規性を否定する引用発明の成立性/適格性/根拠データは必要かどうかについて、これまで収集した過去事例はこちら(記載要件/引例適格/データは必要か)

2.プロダクト・バイ・プロセス・クレームの「不可能・非実際的事情」の判断について

裁判所は、本願プロダクト・バイ・プロセス・クレームの「不可能・非実際的事情」は明らかでないとして、特許法36条6項2号所定の「発明が明確であること」を充足しないと判断した。出願人が一定の事情が存在すること(直接特定が不可能・非実際的であること)を主張立証しなければならないわけであるが、具体的にどのような主張をすれば「不可能・非実際的事情」が存在することを立証することができたと判断されるのか、この事例を見ても判然としないままである。主張立証出来たと判断された判決の蓄積を待つしかないだろう。

医薬分野ではないが、プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する最高裁判所判決後にいくつかの知財高裁判決が存在する。これらは、一定の場合には、プロダクト・バイ・プロセス・クレームとみる必要はない又は「不可能・非実際的事情」の主張立証を要しないと解するのが相当であると判断して決着させているようである。
  • 2016.09.20 知財高裁平成27年(行ケ)10242
    「プロダクト・バイ・プロセス・クレームが発明の明確性との関係で問題とされるのは,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているあらゆる場合に,その特許権の効力が当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物に及ぶものとして特許発明の技術的範囲を確定するとするならば,その製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表しているのかが不明であることなどから,第三者の利益が不当に害されることが生じかねないことによるところ,特許請求の範囲の記載を形式的に見ると経時的であることから物の製造方法の記載があるといい得るとしても,当該製造方法による物の構造又は特性等が明細書の記載及び技術常識を加えて判断すれば一義的に明らかである場合には,上記問題は生じないといってよい。そうすると,このような場合は,法36条6項2号との関係で問題とすべきプロダクト・バイ・プロセス・クレームと見る必要はないと思われる。」
  • 2016.09.29 知財高裁平成27年(行ケ)10184
    「PBP最高裁判決が上記事情の主張立証を要するとしたのは,同判決の判旨によれば,物の発明の特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合には,製造方法の記載が物のどのような構造又は特性を表しているのかが不明であり,特許請求の範囲等の記載を読む者において,当該発明の内容を明確に理解することができないことによると解される。そうすると,特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,当該製造方法の記載が物の構造又は特性を明確に表しているときは,当該発明の内容をもとより明確に理解することができるのであるから,このような特段の事情がある場合には不可能・非実際的事情の主張立証を要しないと解するのが相当である。」
  • 2016.11.08 知財高裁平成28年(行ケ)10025
    「本願補正発明1及び2に係る前記の各記載は,いずれも,形式的にみれば,経時的な要素を記載するものといえ,「物の製造方法の記載」がある,すなわち,プロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当するということができそうである。しかしながら,前記最高裁判決が,前記事情がない限り明確性要件違反になるとした趣旨は,プロダクト・バイ・プロセス・クレームの技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定されるが,そのような特許請求の範囲の記載は,一般的には,当該製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表しているのかが不明であり,権利範囲についての予測可能性を奪う結果となることから,これを無制約に許すのではなく,前記事情が存するときに限って認めるとした点にある。そうすると,特許請求の範囲に物の製造方法が記載されている場合であっても,前記の一般的な場合と異なり,当該製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表しているのかが,特許請求の範囲,明細書,図面の記載や技術常識から明確であれば,あえて特許法36条6項2号との関係で問題とすべきプロダクト・バイ・プロセス・クレームに当たるとみる必要はない。」
参考:

Jul 27, 2017

特許権侵害の後発品参入 オキサロール®薬価引下げによる損害賠償 中外が勝訴

2017年7月27日付の中外製薬のニュースリリース(「オキサロール®軟膏製法特許侵害に対する損害賠償請求訴訟の判決に関するお知らせ」)によると、中外製薬が保有する尋常性乾癬等角化症治療剤「オキサロール®軟膏25μg/g(有効成分: マキサカルシトール)」の製法特許(特許第3310301号)に関して、オキサロール軟膏の後発品メーカーである岩城製薬、高田製薬、ポーラファルマの特許権侵害行為に対し中外製薬が損害賠償を求めていた訴訟で、本日、東京地裁にて、後発品3社の賠償責任を認める判決が言い渡されたとのことです。

注目すべき点は、後発品3社による侵害品の販売によって、中外製薬のオキサロール軟膏の販売が失われたことによる損害についての後発品3社の賠償責任を認めただけでなく、オキサロール軟膏及びオキサロールローションの薬価加算分の引き下げについて後発品3社の賠償責任も認められた点です。2017年7月27日付の中外製薬のニュースリリースによると、薬価算定において新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象だった中外製薬のオキサロール軟膏及びオキサロールローションは、オキサロール軟膏の後発品の参入により、本来の時期より早く加算分の引き下げが行われました。本件は、薬価加算分の引き下げに起因して先発医薬品企業に生じた損害について判断された初めての事例とのことです。

なお、後発品3社に対する本件特許の侵害差止訴訟における中外製薬の勝訴は既に確定しています(2017.03.24 「マキサカルシトール事件(均等の第5要件)」 最高裁平成28年(受)1242; 2017.03.24 中外製薬 press release: 「オキサロール軟膏の特許権侵害訴訟における最高裁判所判決勝訴のお知らせ」)。

参考:






Jul 22, 2017

アイセントレスを販売するMSDに塩野義特許の強制実施権が認められる(ドイツ)

2017年7月12日付のJETROからの欧州知的財産ニュースによると、ドイツ連邦通常裁判所(通常裁判権の最高裁判所に相当)は、7月11日、塩野義製薬が保有する欧州特許1422218について、当該特許権侵害を訴えらたHIV治療薬Isentress(アイセントレス、有効成分はラルテグラビル(reltegravir))を販売するMSD社が申立てた強制実施権付与の仮処分申請を認める決定を下したとのことです。

参考: