2019/10/26

パリエット®(ラベプラゾール)逆流性食道炎の再発抑制に関する用法・用量特許を巡るジェネリックメーカーの動き

エーザイは、2017年9月22日にパリエット®錠5mg/10mg(一般名: ラベプラゾールナトリウム(Rabeprazole Sodium))について、プロトンポンプ阻害剤抵抗性逆流性食道炎(プロトンポンプ阻害剤の1日1回投与による従来の治療で効果不十分な逆流性食道炎)に対する維持療法に関して、ラベプラゾールナトリウムとして1回10mg、1日2回投与の用法・用量追加の承認を取得している。この用法・用量について、エーザイの子会社であるEAファーマ(株)は日本特許第6283440号(登録日2018年2月2日; 満了日2037年4月4日(延長なし))を保有しており、沢井製薬が当該特許に対して無効審判を請求している(無効2019-800035; 請求日2019年4月15日; 大原薬品工業が参加)。

【請求項1】
ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を有効成分とし、維持療法を行う前の治療により治癒したプロトンポンプ阻害剤抵抗性逆流性食道炎患者に対する維持療法のために、プロトンポンプ阻害剤抵抗性ではない逆流性食道炎患者に対する治療期の常用量のベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を1日2回、4週間以上投与され、
前記プロトンポンプ阻害剤抵抗性ではない逆流性食道炎患者に対する治療期の常用量が10mgであり、
前記ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤が、ラベプラゾール、ラベプラゾールのプロドラッグ、又はそれらの薬学上許容される塩若しくは溶媒和物であることを特徴とする、逆流性食道炎の再発抑制剤。

沢井製薬及び大原薬品工業が販売しているラベプラゾールNa錠10mg「サワイ」及びラベプラゾールNa塩錠10mg「オーハラ」の用法及び用量には、「プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法においては、1回10mgを1日2回経口投与」が承認されている。

パリエット®のジェネリックは多数参入しており、それらジェネリックにおいて「プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法においては、1回10mgを1日2回経口投与」の用法及び用量の追加承認が認められたのは2017年12月13日(上記EAファーマ特許の登録日よりも前)であったが、登録された当該特許が存続する以上、ジェネリックの販売は特許権侵害の問題を孕んでいる(日刊薬業website 2018.12.17 【謹告】ラベプラゾールナトリウムの用法・用量に関する特許権について)。

沢井製薬及び大原薬品工業は、本件特許の無効審決を得て、自社が販売するラベプラゾールの上記逆流性食道炎の維持療法にEAファーマ特許の問題がないことの確信を得たいと考えているようだ。他方、他のジェネリックメーカーは現時点で無効審判を請求していない。

パリエット®(ラベプラゾールナトリウム)のヒストリー(日本)
製品ヒストリー
売上(億円)
特許ヒストリー(物質特許及び用法・用量特許)
沢井製薬等ジェネリックの動き
1986
・ラベプラゾールナトリウムが見出される

11/13 物質特許出願優先日

1987


11//13 物質特許出願日(特願昭62-286668

1988
・臨床試験を開始



1993
・「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群」について申請



1994


9/21 物質特許公告日(公告平06-074272

1995


7/28 物質特許登録(特許1953321

1997
10/14 「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群」について承認取得
12/12 薬価収載・発売
再審査期間(~2003.10.13

・「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群」について物質特許存続期間延長登録出願(09-700059)→延長の期間: 2215日(20101月に満了)
・医薬品の原料用途として物質特許存続期間延長登録出願(09-700058) →延長の期間: 2215日(20101月に満了)

2003
7/17 「再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法」に関する用法追加に伴う承認事項の一部変更承認(再審査期間~2007.07.16
146


10/13 「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群」の再審査期間終了
2007
1/26 「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」に関する効能追加に伴う承認事項の一部変更承認(再審査期間~2011.01.25
8/23 本剤とアモキシシリン水和物及びメトロニダゾールによるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助に関する用法・用量追加に伴う承認事項一部変更承認
371
・「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」について物質特許存続期間延長登録出願(2007-700025) →延長の期間: 5年(つまり満了日は2012.11.13
11/13 物質特許存続期間20年満了日

2010
6/18 「非びらん性胃食道逆流症」に関する効能追加に伴う承認事項の一部変更申請、並びに、「胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃に対するヘリコバクター・ピロリ除菌の補助」に関する効能追加に伴う承認事項一部変更承認
12/21 プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎に対する用法・用量追加に伴う承認事項の一部変更承認
602
1月 「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群」について延長された物質特許存続期間満了日
7/15 ジェネリック医薬品が初承認
11/19 ジェネリック医薬品が初薬価収載(2142品目)

11/15 「非びらん性胃食道逆流症」の効能・効果が追加承認
2011
1/25 「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」に関する効能追加の再審査期間終了
609

4/5 プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎に対する用法・用量が追加承認
2012

501
11/13 「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」について延長された物質特許存続期間満了日
11/19 「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、
胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃
におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」の効能・効果が追加承認
2013
2/21 「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」の効能追加に伴う承認事項の一部変更承認
473

6/17 「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」の効能・効果が追加承認
2014
12/26 「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」の効能追加に伴う承認事項の一部変更承認請(5mg錠の剤形追加を含む)(再審査期間~2018.12.25
371


2016
10/28 プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法に対する用法・用量追加に伴う承認事項の一部変更申請
212
10/27 プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法に対する用法・用量を保護する特許出願の優先日

2017
9/22プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法に対する用法・用量追加に伴う承認事項一部変更承認
172
4/4上記用法・用量特許出願日(特願2017-74712
12/13 プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法に対する用法・用量が追加承認
2018
12/25 「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」の効能追加の再審査期間終了
129
2/2上記用法・用量特許登録(特許6283440
12/17 【謹告】ラベプラゾールナトリウムの用法・用量に関する特許権について

2019



4/15 沢井が特許無効審判を請求(無効2019-800035
2037


4/4 上記用法・用量特許存続期間満了日


  • オレンジ色は、パリエット®の再審査期間及び特許の存在が、ジェネリックの参入(又は効能・効果追加)阻止に働いた(ている)と思われる部分。
  • あずき色は、パリエット®のプロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法に対する用法・用量を保護する特許に関する部分。パリエット®については、2016年10月28日に「プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法に対する用法・用量」追加に伴う承認事項の一部変更申請が行われ、その前日に、EAファーマにより当該維持療法に対する用法:用量を保護する特許出願(優先権の基礎となる出願)がされている。この申請日前日の出願というタイミングから、申請ギリギリまで待っての出願という計画的なものだったと想像できる。しかし、1年を待たずに優先権を主張して出願、早期審査請求を行い、登録(2018年2月2日)させることができたものの、その特許登録よりも前に、パリエット®の当該維持療法に対する用法・用量についての一部変更申請は承認となり(2017年9月22日)、結果、ジェネリック医薬品にも特許登録前に同用法・用量について追加承認を許してしまった。当該維持療法に対する用法・用量について、既に承認を取得した沢井製薬含め多数のジェネリックと、それを保護する用法・用量特許を保有するEAファーマ(またはエーザイ)との間の攻防が今後どうなるか注目したい。

参考:


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